その身に宿すはキングストーン   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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ストックはここまで
次回からはまたいつもどおりに戻りますよ


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夕食時

オカルト研究部の一行と梓馬浩太郎はだだっ広いダイニングルームに来ていた

皿の上にはとてもじゃないが一人間の腹に入る量ではない多さの豪華料理が盛られている

美味しそうではあるが、場所が場所であるために味なんてわからないだろう

現在、時刻は夜

一応、そう言った時間は人間界と合わせているようだ

冥界には冥界の時間の流れがあるらしいが、転生悪魔や、下界―――人間界で生活している悪魔のために、魔王の人たちがなんかやってくれているらしい

そんなわけで、〝実は帰ったら百年後でした〟とか〝実は下界の方では数日間の出来事でした〟とかにはなる心配はないそうだ

 

「遠慮なく楽しんでくれたまえ」

 

楽しめるかこんちくしょう、と心の中で突っ込みながら、リアスの父の一声で会食が始まった

夕飯前に案内された部屋も広すぎて逆に落ち着かない

まるでクソ高いホテルに泊まったはいいけれど周りの家具とかが豪華すぎて手がつけられない…そんな気持ちだった

とにかく広すぎる、部屋の一つとても広く、おまけに冷蔵庫や冷房、果てはキッチンまで完備されており、普通にそこで生活できるレベルだ

流石にこれは落ち着かない、そう思った浩太郎は荷物を全部まとめて兵藤のところにレリゴーしようとした

そんな兵藤の部屋の前に、アーシアとゼノヴィアの姿もあった

―――考えることは同じだった

グレイフィアの計らいもあり、浩太郎、アーシア、ゼノヴィア三名は兵藤の部屋に過ごせるようにしてくれた

けど仕方がないと思う

 

そんなわけで時間は夕飯の時に進む

浩太郎は目の前に出された夕飯を、ナイフとフォークを使いながらもくもくと頂いていた

全部他の人たちの見よう見まねなのだが

木場や朱乃は優雅に頂いているし、アーシアやゼノヴィアも苦戦しつつも様になっている

ギャスパーは涙目になりながらも、普通に食べている

この中でフォークとナイフに不得手なのは浩太郎と兵藤の二人だけだ

ふと、自分の隣に座っている小猫を見やる

彼女は食事に手をつけていなかった

いや、手をつけてはいるのだがとてもスローペースだ

リアスの父親が兵藤に話しかけている時に、なんとなく小猫に話しかけてみた

 

「…小猫?」

「…なんです?」

 

もきゅもきゅ、とゆっくりながらも彼女はしっかりご飯を食べている

だがこういった時はもっともきゅもきゅしていると思うのだが

 

「い、いや、その、なんか悩みでもあるのかなってさ」

 

ここ最近小猫の様子がおかしいのはよく見かけていた

なんというか、ボーッとしていることの方が多い気がするのだ

浩太郎は小猫と知り合って、浅いがまだ彼女を全然知らない

図々しく、おこがましいとは思いながらも、浩太郎は言葉を呟く

 

「―――浩太郎さんには、関係、ありません」

 

帰ってきたのは、やんわりと表現した、拒絶の言葉

 

「…そっか」

 

浩太郎はそれ以上何も聞かなかった

否、聞けなかった

確かに小猫とは友達だ、しかしだからといってずかずかと踏み込んでいっていいものではない

浩太郎はそう言ってもくもくと目の前に盛られてある料理に食べ始めた

 

なんでだろうか

小猫に拒絶されたとき、自分でもわからないくらい、少し心の奥の方がズキリときた

けど些細なことだと切り捨て、気にはしなかった

 

 

塔城小猫は悩んでいた

それは自分自身の強さのことだ

はっきりとまず結論だけを言ってしまおう

 

塔城小猫は、オカルト研究部の眷属の中では弱い部類に入ってしまう

 

アーシアは前線に出るタイプではないので、除外するとしよう

木場祐斗は聖魔剣という力に覚醒し、ゼノヴィアは聖剣〝デュランダル〟の使い手

朱乃は魔力の力があるし、一番悪魔としては新米の兵藤一誠にも自分は劣っているだろう

先ほど除外するとは言ったが、アーシアだって戦闘に出る以外に神器(セイクリッドギア)の力による回復がある

こう比べてみると、はっきりと実感する

 

 

 

小猫には、何もないのだ

 

 

 

ただ力が強いだけ、それだけだ

今はまだ問題ないかもしれないが、これから先、何もない自分はグレモリー眷属の足手まといになってしまうかもしれない

何もない、とは言ったが、自分に宿る力を使おうとは思わない

姉と同じように、力に飲まれてしまうことが怖いから

だから、使いたくない

 

「…小猫?」

 

ふと、自分の隣に座っている男性が自分の名前を読んだ

梓馬浩太郎、彼の名前だ

眷属ではないものの、彼はこのオカルト研究部の中では間違いなく最強の部類に入るだろう

そんな彼が、こちらを心配そうに見つめている

つい、そっけなく彼女は返した

 

「…なんです?」

 

目の前にある料理に手をつけながら、そう返した

 

「い、いや、その、なんか悩みでもあるのかなってさ」

 

こちらの様子を伺うような声色

一瞬の沈黙

小猫は口の中にある料理をごくりと嚥下させ、つい口にしてしまった

 

「―――浩太郎さんには、関係、ありません」

 

違う、そんなこと言ってはいけないのに

心配してくれてるのに

 

「…そっか」

 

浩太郎は小さく微笑みながら、再び目の前の料理をつつき始めた

慣れない手つきで、戸惑いながら食を進める彼にかける言葉が見つからず、小猫も目の前の料理をもくもくと食べ始める

美味しいはずの料理なのに、美味しいと感じることができなかった

 

◇◇◇

 

翌日

なんか知らんが兵藤は別室でお勉強らしい

昨日の晩御飯の時、何か話していたのだろうか

浩太郎としては小猫と話していたので、そっちの会話は全く耳に入ってこなかった

他の部員はリアス城観光ツアーに行っているらしく、今はいない

浩太郎は一人、兵藤の部屋でボーッとしていた

昨日の今日で、誘ってくれた方々には申し訳ないが、そんな気分にはなれなかった

そう言えば今日は若手悪魔同士の会合があるとかなんとか言っていた気がする

浩太郎は悪魔ではないので、参加しないでも大丈夫、と言われたが特にすることもないので参加させてもらった

このだだっ広い部屋に一人はさすがに発狂してしまいそうだ

 

やがてリアスたちが観光から戻ってきて直ぐに、浩太郎は兵藤と合流し、そのまま列車で魔王がいるという領土へ移動した

列車に揺られておよそ三時間

降りた先はぶっちゃけ人間界と変わりのない都市部であった

デザインこそ違うがしっかりと自販機とかあるし、駅もホームも近代的だ

どうなってんだ冥界

 

「ここは魔王領の都市、〝ルシファード〟。旧魔王ルシファー様がおられたとされる冥界の旧首都なんだ」

 

ふぅん、と木場の説明に兵藤と二人して頷く

 

「このまま地下鉄に乗り換えるよ。表から行くと騒ぎになっちゃうから」

 

人間界じゃないか、地下鉄まで完備してるとは思わなんだ

思えば人間と悪魔の関係は割と密接してると思う

契約に始まり、〝悪魔の駒〟による転生

これも立派な共存と言えるだろう

 

「きゃあぁぁぁぁぁ! リアス様ぁぁぁっ!!」

 

いきなりこちらに向かって黄色い声援が飛ばされた

いや、正確に言えばリアスに向けて、といった方が正しいのだろう

リアスは冥界でも人気者だ

彼女はそれに苦笑いしながらも応対する

 

「…困ったわね。騒ぎになってしまう前に急ぎましょう。専用の列車は用意してあるのよね?」

「はい、付いてきてください」

 

リアスはボディガードとして追従してくれた男性の一人に問いかけた

男性はそう答え、先を歩いていく

しかし、まだリアスへの黄色い歓声は止まない

 

「リィアス様ぁぁぁぁぁぁ!!」

 

男性の人もいた

やっぱり悪魔も人なのだと改めて実感した

 

◇◇◇

 

やがてたどり着いたのは都市の中で一番大きい建物、の地下にあるホームだ

いろんな悪魔が集まるという会合の会場がそこにある

ちなみにボディガードの方々はエレベータ前までしか同行できず、そこで待機となった

リアスを先頭に、エレベータに乗り込む

無駄に広い

 

「改めて確認するわ。何を言われても平常心を保つこと。手は出さないこと。いるのは将来のライバルたちよ。無様な姿は見せられないわ」

 

彼女の声色には珍しく気合が入っているように感じる

臨戦態勢なのだろう

ごくり、と誰かが生唾を嚥下したような音が聞こえてきた

恐らくは兵藤だろうが、気持ちはわからんでもない

しばらくエレベータは動き続け、ついにその動きを止めた

出た先は結構な広さのホールだ

そこには使用人らしき人たちもいて、その人たちはこちらを確認すると挨拶をしてくる

 

「ようこそグレモリー様。こちらへ」

 

前を歩く使用人

その人に続き通路を進んでいくと前方に何人かの人影が見えた

 

「サイラオーグ!」

 

リアスはその複数のうち一人を知っているのか、名前を呼びかけた

黒い髪をした、野性的な男性だ

その面影はなんとなく、サーゼクスを彷彿とさせる

 

「久しぶりだな、リアス」

「えぇ、懐かしいわ」

 

そう言いながら二人は握手を交わす

そのあとでリアスはこちらに振り向きながら

 

「紹介するわ。彼はサイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主で、私の母方の従兄弟でもあるのよ」

「よろしくな」

 

リアスに紹介されたサイラオーグはこちらに視線を向け、軽く手で挨拶をする

なるほど、バアル家の者だったのか

たしか魔王の次にエラい位置にいると記憶している

 

「それで、貴方はここで何をしていたの?」

「あぁ。くだらないから出てきただけだ」

「? 他のメンバーも来ているの?」

「アガレスとアスタロトももう来ている。あげくゼファードルだ。到着早々、アガレスとやり合いはじめてな」

 

そういうサイラオーグの顔は心底うんざりしたような顔だ

一体何をし始めたのかに疑問に思う暇もなく、ドォンッ!! と建物が揺れ、どこかが壊れるような音が聞こえてきた

音の正体が気になったのか、リアスは躊躇うことなく音のした方向へと向かう

 

「…だから開始前の会合などいらないと進言したんだ」

 

そう呟きながらサイラオーグも己の眷属たちとともにリアスらの後をついていった

先に進み、開かれた大広間はひどくズタボロな状況となっていた

家具やら何やら完全に粉砕してしまっている

その部屋の中央ににらみ合っている眷属一行が二組、そして隅っこでティータイムしている眷属一行が一組

中央の二組は完全に殺気丸出しだ

これから会談だというのにこんなんで大丈夫なんだろうか

 

「ゼファードル、ここで戦っても意味などないのではなくて? それとも自殺願望でもあるのかしら」

「はっ、言ってろクソアマ。せっかく俺がそっちの部屋で一発仕込んでやるって言ってんのによぉ! ったく、魔王眷属の女どもはどいつもこいつも生娘臭くてかなわねぇぜ。だからせっかく俺が開通してやろうってのによ!」

 

下劣極まりない

冥界にはあんな程度の低い奴がいるのだろうか

女性の方はメガネをした知的美人、野郎の方はちゃらちゃらしたヤンキーみたいなやつだ

っていうか本来ここは会合までの待機室なのではないのだろうか

なんでこうなっているんだろう

そんな事を思っていると浩太郎の人間の気配に気づいたのか、ヤンキーがこちらに視線を向けてきた

やばい、目があった

 

「…おいおい、なんでこんなところに人間が来てんだよ?」

 

いかにもなセリフと歩き方でヤンキーがこっちに向かって歩いてきた

浩太郎は内心めんどくさい、と思いながらも兵藤らを守るべく前に出る

眷属ではないにしろ、浩太郎はリアス・グレモリーの協力者

流石に彼女に恥などはかかせられない

けどこういう時なんて言ったらいいのだろうか、自己紹介からか?

 

「どうも、リアスさんの協力者なんてのをやってます梓馬浩太郎です。そっちの方々も、どうかよろしく」

 

とりあえずこの場の空気を少しでも和ませるべく、向こうでヤンキーに殺気を発しているメガネ美人と、紅茶を飲んでいる眷属一行にも挨拶しておく

ヤンキーはこちらを品定めするように視線を向けてくる

人間の名前ではわかりにくかったのだろうか、ならここは皆に知れ渡っているであろう名前を告げてみることにする

 

「あなた方がわかりやすい方で言うなら、〝ブラックサン〟です」

 

瞬間、室内の空気が変わった

それは驚きに満ちたものだ

おまけに眷属内でなんかひそひそと話をしているのもちらほら聞こえてきた(内容はわからない)

あのメガネ美人も口元に手を当ててこちらを見ており、紅茶眷属もお皿に紅茶を置いてこちらを見てきている

ブラックサン効果凄っ

 

「…テメェが〝ブラックサン〟だぁ? おいおい冗談は休み休み言えよ」

 

しかし目の前のヤンキーは信じていなかった

 

「寝言は寝ていえってのは人間界の言葉だろ? 人間界の時間じゃまだ夜になってないぜ? それとも、今寝てんのか?」

「―――」

 

…こんなんが次期当主候補でいいのか、もっと適した奴がいるんじゃないのか

そこのところはよくわからないけど、少なくともこいつ以上の適任はいると思うのだが

目の前のヤンキーは指先をちょいちょいと動かしながら

 

「おら、お前があのブラックサンてんなら証拠見せてみな、この俺が直々に確かめてやんよぉ!」

「待てゼファードル―――!」

 

サイラオーグの静止も聞かず、ヤンキーは浩太郎に殴りかかってきた

相手の方から殴りかかってきたのだ

正当防衛、ですよね? と思いながらその一撃をさらりと避けて、そのみぞおちに己の拳を叩き込む

 

「―――おごっ!?」

 

結構いい感じにヒットしたと思う

ヤンキーは目を見開き、腹部に手を抑えながらゆっくりと後ずさりし、その場でうずくまる

これは正当防衛に入るのだろうか

いや、絶対入る、これは正当防衛だ、あちらから吹っかけてきたのだから自分はそれに反撃しただけだ

ゆっくりとヤンキーは立ち上がりこちらを睨んできた

 

「―――て、テメェ…!」

「そこまでだゼファードル。彼があの〝ブラックサン〟なのは身を持って知っただろう。これ以上は看過できないぞ」

「うるせぇ! バアル家の無能が―――」

 

ヤンキーが言葉を全て言い切る前にサイラオーグの拳がその男を捉えていた

拳の一撃をその身に受けたヤンキーは吹き飛び、壁に叩きつけられ、今度こそ気を失った

 

「言ったはずだ。看過できない、と」

「バアル家め!」

「主を介抱しろ。先にやるべきはそれだろう? 今ここで俺やブラックサンに剣を向けても、お前たちに得はないぞ」

 

サイラオーグがそう言うと舌を打ちながら倒れている主のヤンキーのもとへ駆け寄っていった

次に彼はメガネ美人へと視線を向ける

 

「時間はある。化粧直しをしてこい。邪悪なままで行事もままならん」

「わ、わかっています…!」

 

メガネ美人はそう言い残し、自身の眷属と共にこの場を後にする

そのあと騒ぎを聞きつけてきたスタッフにサイラオーグが事情を説明し、ひとまず事なきを得た

 

「あ、兵藤に梓馬!」

 

ふと聞き慣れた声が耳に届く

声の方へ視線を向けるとそこにはさらに見慣れた制服に身を包んだ人たちがいた

駒王学園生徒会一行である

 

「ごきげんよう、リアス。兵藤くんに、梓馬くん」

 

 

「私はシーグヴァイラ・アガレス。大公、アガレス家の次期当主です」

 

スタッフが頑張ってくれたおかげで大広間も元どうりになり、現在はヤンキー眷属を抜いて改めてこの場で自己紹介する流れになっている

浩太郎自身にとっては関係はないのだが、会話の内容には耳を通しておくことにしよう

ちなみに先のヤンキー眷属はグラシャラボラス家らしい

どうでもいい

テーブルを囲み、各主が座り、その眷属が後方に待機している形だ

ちなみに浩太郎には席も用意されたが、丁重にお断りし、グレモリー眷属のみんなと一緒に並んでいる

 

「ごきげんよう、私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主よ」

「ソーナ・シトリー。シトリー家の次期当主です」

「俺はサイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主だ」

 

威風堂々たる挨拶

あとでリアスに聞いたのだが、なんと彼は若手悪魔のナンバーワンらしい

最後に紅茶をすすっていた眷属なのだが、一瞬アーシアを見る目つきが変わっていたのを浩太郎は見逃さなかった

 

「僕はディオドラ・アスタロト。アスタロト家の次期当主です。よろしく、皆さん」

 

笑顔で言っているが、浩太郎にはそれがひどく作られた笑顔だと感じた

流石に、この場では言えないので、それは思うだけに留めておく

 

「そして、さっきの奴がグラシャラボラス家の次期当主、ゼファードルだ。なんでも、お家騒動があったらしくてな。本来の次期当主だった奴が事故死してな。それであいつが次期当主候補になったんだ」

 

それ絶対あのヤンキーが謀殺してるって、と思わずにはいられなかった

しかし仮にも誇り高き悪魔ゆえにそんな小賢しい手は使わないと思う、しかしあのヤンキーの面構えだとそうしそうで怖い

 

「おい兵藤、間抜けなツラを見せるなよ?」

 

ふとそんな匙の言葉が聞こえてきた

気になったので聞き耳を立ててみる

 

「け、けど上級悪魔の会合だぜ? 緊張しちまうよ」

「何言ってんだよ、お前は赤龍帝だぞ。もっと堂々とすればいいじゃないか」

「そ、そんなこと言ってもよ…ってか、なんでお前が怒ってんだよ」

 

兵藤が聞き返すと同時に、それは浩太郎も思っていた

あそこまで真剣な彼を見たのは今回が初めてだったのだ

 

「眷属はここでは堂々と振舞わないといけないんだ。相手は眷属を見て、主を見るんだからな。お前がそんなだと先輩に失礼だ。だから堂々としろ。お前はグレモリー眷属で、赤龍帝なんだ。―――お前は、先輩自慢の眷属なんだからな」

 

そう苦笑いしながら言う

できちゃった婚を狙っていると暴露した彼から思いもよらない言葉を聞いた

彼も彼なりに、いろいろ考えているのだろう

そんなタイミングに扉が開かれて使用人が入ってくる

 

「大変お待たせしました。皆様がお待ちです」

 

ようやくその会合、とやらが始まるみたいだ

案内のもと、皆が大広間から出る際に匙に歩み寄る

 

「? どした梓馬」

「いやなに。―――頑張れよ」

 

そう言って軽く匙の背中を叩く

今はまだソーナの自慢ではないかもしれないが、いつかなれるさ

そんな事を思いながら浩太郎は先を歩いた

一瞬匙はポカンとしていたがすぐに表情を笑顔にし

 

「―――あぁ!」

 

そう返事して浩太郎の後を追いかけた

彼の表情は少しばかり明るくなっているような気がした

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