井上さんがいい悪役してる
おのれディケイド
出来の方は〝いつもの〟なのでお願いします
誤字脱字見かけましたら連絡をば
ではどうぞ
案内された先は、なんかいかにもな場所である
異様な雰囲気があり、どうしてか高い位置にエラい人たちの席がある
さらにもう一つ上のところにはもっとエラい人たちであろう方々の席
既にサーゼクスやセラフォルーが座っていて、その隣には知らないふたりが座っていた
恐らくはアスモデウスやベルゼブブだろう
他にも誰かいないかなー、なんて思いながら見回してみると、見覚えのある男性が浩太郎の視界に入ってきた
「…ん?」
かったるそうに肘をつき、頬に自分の手を当てている
どこかで見たことがあるぞ、あの顔
そう、それはたしか駒王での会合の時じゃなかったか?
そんな浩太郎の視線に気がついたのか、その男―――影山月彦がこちらを見た
「おお、浩太郎じゃないか」
「や、やっぱり! 影月! なんでここに!?」
浩太郎の驚きに周りが疑問符を浮かべている
そんな浩太郎をスルーして、影月は口を開く
「いやなに。なんでも若手悪魔の会合に出席していただきたい、とビルゲニアを通じて聞かされてな。面倒だから断ろうと思ったのだが、ビルゲニアのやつがしつこく行けとうるさくてな。仕方ないからこの場に来たというわけだ」
はっきり面倒と言い切ったよこの人
いいのか、これで
「そんなわけで、進行もろもろはサーゼクスに任せているわけだが」
ちらりと彼はサーゼクスを見やる
対するサーゼクスは苦笑いを浮かべながら
「えぇ。〝あの〟シャドームーンに来ていただいた、というだけでも意味がありますからね」
相変わらず度量が広いお方だ
とはいえ高いところから見下ろされているというのはどうも落ちつかない
座っている位置が高いから、というのもあるが、サーゼクスやセラフォルー、影月以外の悪魔たちが思いっきり見下しているからだ
浩太郎は兵藤ら眷属と一緒にリアスの後方で待機していた
その後、リアスを含めた若手悪魔が一歩前に出る
先のヤンキーもそこにはいたが、サイラオーグに殴られた頬が痛々しく腫れていたが、知ったことではない
「よく集まってくれた。次世代を担う者たちを改めて確認するために、集まってもらった。この会合は一定周期ごとに行う、若き悪魔を見定める会合でもあるのだ」
初老の格好をした悪魔が言う
そして今度はヒゲを生やした悪魔が
「で、早速やってくれたようだね」
その言葉には先ほどのことも含まれているのだろう
「君たち六人は、家柄、実力、共に申し分ない。だからこそ、デビュー前に互いに競い合い、高め合ってもらいたい」
今度はサーゼクスが口を開いた
となるとこのメンバーでレーティングゲームを執り行う、ということでいいのだろう
そう言えばそんな事をアザゼルが言っていた気がする
今度は応援くらいには行こうかな、と思う
「我々も、いずれは
直球にサイラオーグがとんでもないことを聞いた
「それはまだわからない、しかし、できるなら君たち若い悪魔たちは、投入したくないと考えているね」
「なぜです。我等とて悪魔の一端、この歳になるまで、先人の方々からご厚意を受け―――」
「その勇気は認めよう、サイラオーグ。しかしそれでは無謀だ。成長途中の君達を戦場に送り込むのは出来るだけ避けたい。君達を失うのはあまりに大きいのだよ。だからこそ、段階を踏んで成長して欲しいと思っている」
サーゼクスの言葉にサイラオーグも「わかりました」と納得をしてくれる
しかしその表情から察するに不満ではあるようだ
そのあとはお偉い人たちが専門用語やらなにやらで全く話が入ってこなかった
失礼とは思いながらも、一応手で口元を隠し、つい欠伸までしてしまった
「さて、長い話に付き合わせてしまって申し訳なかった。私たちは君たち若い世代に私たちなりに夢や希望を見ているのだよ。それだけは理解して欲しい。君たちは冥界の宝なのだからね」
その言葉にこの場の悪魔全員が聞き入っていた
やはりリアスの兄だ、基本的には優しいのだろう
「最後に、今後の目標なんかを聞いてみてもいいかな」
サーゼクスの問いに一番最初に答えたのはサイラオーグだ
「俺は魔王になるのが夢です」
迷いもなく、彼は言い切る
「ほう…」
「なるほど…」
お偉方もその言葉に感嘆の言葉を漏らしていた
影月も興味を持ったのかほぉ、なんて言葉を漏らしていた
「大王家から魔王が生まれたとなれば、前代未聞だな」
「俺が魔王になるしかない、と冥界の民が感じればそうなるでしょう」
またも言い切る
溢れ出るカリスマ、とはこういうことか
さすが若手ナンバーワン
彼の次に目標をいったのはリアスだ
「私はグレモリーの次期当主として生き、レーティングゲームの各大会で優勝することが当面の目標ですわ」
なるほど、堅実である
眷属悪魔ではないので、彼女のゲームに参加することはできないが、せめてその夢を応援させていただこう
その後も若手悪魔たちが各々目標を語り、残すはソーナ・シトリーのみとなった
彼女は言う
「私は、レーティングゲームの学校を建てることです」
学校か、と聞いて浩太郎はおぉ、と感心する
しかしお偉方の悪魔にはどうも好印象ではないらしく、何人かが眉をひそめていた
「レーティングゲームを学ぶ場なら、すでにあると思うのだが?」
「それは上級悪魔など、一部悪魔のみが行くことを許される場所です。私は、下級悪魔も上級悪魔も、ひいては転生位悪魔も通える、分け隔てない学舎です」
差別のない学校、か
それは大変いいかもしれない、それならもっとレーティングゲームを広げることが出来るだろう
心なしか、匙も誇らしげだし、月影も腕を組みながら感心したように首を動かしていた
しかし、現実は違った
返ってきたのは、一部の悪魔たちの爆笑だった
「はっはははは! それは無理だ、ケッサクだ!」
「若い、というのはいい! 可愛いものですな!」
ここでわからないのは、どうしてソーナが馬鹿にされているかだ
夢を語れとサーゼクスが言ったのに、あそこに居るジジィはなぜ爆笑しているのか
聞き入っていた月影も珍しく目をパチクリさせていた
「―――私は本気です」
ひるむことなく、ソーナはいった
それを聞いてセラフォルーもうんうんと頷いている
立場上応援できないのだろう
「ソーナどの。そのような施設を作っては伝統と誇りを重んじる旧家の顔を潰すこととなりますぞ? いくら世界が変革しつつあると言っても、変えていいものと変えてはならないものがあるのです。関係ない、たかが転生悪魔に教えるなどとは、あまりにバカバカしい」
その冷徹な一言に叫んだのは、匙だった
「―――どうして、会長の、ソーナ様の夢を馬鹿にするんですか!! 叶えられないなんて決まってないのに、なんでそんなこと言えるんすか!」
「口を慎め転生悪魔の―――」
「黙れ」
そのご老体の声を遮ったのは影山月彦だった
彼はじろりと視線だけを動かし、その悪魔を睨みつける
ひどく、低く、苛立ちが混じった声色だった
「し、しかしシャドームーン様! ソーナ殿の夢など到底叶うものでは―――」
「―――もう一度言うぞ」
しかし言葉は言い切れることはない
影月はじろり、と目でお偉いの一人を威嚇し、今度は殺気も込め言い放つ
その場の空気を捻じ曲げた存在に、周囲がピリピリしている
つぅ、とその男の額から冷や汗のようなものが流れ落ちた
「〝黙れ〟」
その一言に気圧され、お偉いさんは押し黙った
それを確認すると影月は今度はソーナの方へと視線を向けた
先程のような殺気の込められた視線ではなく、彼にしては珍しい、優しさのこもった視線だった
「ソーナといったな。これから先その夢を打ち明ければこの男のように心無い罵倒が飛んでくるだろう。それでも、お前はその夢を貫けるか」
ソーナは答える
「―――えぇ、貫き通してみせます」
「よく言った。貴様の夢、見事成就してみせろ」
「…はい…!」
ソーナはそれに笑みを交えた返事で答え、最後に影月の視線は匙へと向かった
「そして貴様、名を何と言う」
「さ、匙元士郎です!」
「うむ、匙とやら。主のために地位が上の者であっても怒りを露にするその姿勢、見事。これからも主を支えていけ」
「は、はい! もちろんであります!!」
元気いい匙の言葉を聞き、影月は小さい笑みを浮かべる
浩太郎も影月の言葉には全面的に肯定だ
夢を否定する権利など誰にもない、子供の願い事は未来の現実
それを嘲笑うのは、もはや人ではないっておばあちゃんも言ってた
話し終えたタイミングを見計らい、サーゼクスが口を開いた
「―――さて。ソーナ、リアス。早速だが、戦ってみないか」
唐突なその言葉に、二人はお互いの顔を見合わせて呆然としていた
流石にその言葉は予想外だったのか、彼女たちの眷属も戸惑っていた
構わずにサーゼクスは言葉を続ける
「もともとリアスのゲームは近日中に行う予定だった。アザゼルが各勢力のレーティングファンを集めてデビュー前の若手悪魔の試合を観戦させる名目だったらしいからね、故にちょうどいい。リアスとソーナで、一つワンゲームをしてみようじゃないか」
となると、リアスたちの初戦のゲーム相手はソーナたち率いる生徒会の人たちのようだ
浩太郎自身は眷属ではない為、参加はできないが、戦う人らが知人だとどうも応援しづらい
部長は一つ息を吐くと挑戦的な笑みを浮かべ、ソーナもそれに答えるように笑みを浮かべる
「…まさか初戦の相手がソーナだなんてね。けど、やる以上は勝ちに行くわよ」
「望むところです、リアス。競う以上は負けません」
「時間は人間界での言うところの八月二十日。それまで各自自由に時間を割り振ってくれて構わない。詳細は折って連絡する」
そんなわけで、リアスとソーナのレーティングゲームが開催される運びとなった
◇◇◇
グレモリーの家へ戻ってきた時に待っていたのはアザゼルだった
広いリビングへと集まり、会合で起こったことを報告する
「なるほど、シトリー家とね。ゲームまでおおよそ二十日間か」
「しゅ、修行ですか?」
おずおずと言った様子で兵藤が問う
「もちろんだ。明日から予定している。しっかりとトレーニングメニューは構築済みだ。そんな訳だから、お前らは明日は朝から庭に集合だ。そこで各自の修行方法を教える。覚悟しろよ」
『はいっ!』
アザゼルの言葉に浩太郎を除いた眷属一行が返事をする
しかし友人同士の戦いか、どちらを応援しようか迷ってしまう
双方ともにベストを尽くしてくれればいいのではあるけど
◇
あのあとグレイフィアがやってきて、〝温泉の用意ができました〟と言ってきてくれた
そんなわけで今現在、浩太郎を含めた男子陣はグレモリー家の用意してくれた温泉に浸かっている
あまり温泉とかは詳しくないが、それでも十分癒されるものがある
すぐ近くでは兵藤と木場のなんか妙にホモホモしいやり取りを聞いたり、入口付近でしぶっているギャスパーに兵藤がセクハラまがいなことをしたり、色々笑いの絶えない時間だった
すぐ横では女湯が広がっており、女性陣のガールズトークが繰り広げられている
しかしその中でもやっぱり小猫の声はあまり聞こえてこなかった
<気になるの? 浩太郎>
思ったことを聞いてくるのは、自分の内側にいる先代ブラックサン、〝メリーディエース・ルークス〟だ
浩太郎は頷きながら小さく言葉を返す
「そりゃね。けど、他人のくせにあまり個人の事情に踏み込めないだろ。関係ないって言われたし」
<―――彼女にも、色々事情があるのよ。時が経てば話しくれると思うけど…>
「その口ぶりだと、やっぱり彼女が抱えている何かを知ってるね?」
<当たり前じゃない。何万年私が生きたと思ってるのよ>
そう言って内側でふふん、と胸を張るメリディの姿が浮かび上がる
いや、実際には見えておらず、浩太郎の想像なのだが
とはいえ興味本位で詮索するのは、小猫に失礼だ
そんな思考に埋没していると、なんだか兵藤がアザゼルに投げ飛ばされていた
飛んだ方向は、というか女湯方面しかない
綺麗に弧を描いて飛んでいった兵藤は重力に逆らえずそのまま女湯の方へ落下していった
なんでアザゼルに投げ飛ばされたのか知らないが
「あっと、そうだ浩太郎」
不意にアザゼルがこちらに声をかけてくる
浩太郎は適当にタオルを絞るとそれを畳んで頭の上に乗せ、アザゼルの話に耳を傾ける
「例の話しの件なんだが、早速今日作ってみるとするぜ」
「え、けど明日特訓なんだろ? 大丈夫なのか?」
「流石に響くまではやらねぇよ。とりあえず、動画で見たのをベースに、そこに俺なりに脚色していく感じでいいか?」
「作ってもらう身だ、多くは望まないさ。作りやすいように作ってくれて構わない」
「サンキュー、そう言ってもらえると助かるぜ。とりあえず期待して待ってろよ」
そう言ってニヒルに笑うアザゼル
指導者でありながら、それでいて研究者でもある、器用貧乏(?)な人だ
とりあえずこれ以上入っているとのぼせてしまいそうなので、一足先に温泉から上がることにする
お風呂上がりに頂いた牛乳(みたいな飲み物)は美味しかった
◇
翌日
庭に集まったオカルト研究部メンバーは浩太郎を除いて皆ジャージ姿だった
なんとアザゼルまでもジャージだ
またジャージではないものの、浩太郎も動きやすい服装をしている
アザゼルが手に持った資料やらデータやらを見ながら言う
「まず、こいつは将来性を見据えたトレーニングだ。すぐに効果が出たり、後に効果が出るものもいるだろう。お前らはまだ若い、方向性を間違えなければ、必ずいい成長をするだろう。最初はリアスだ」
そう言って最初にリアスのメニューを告げていく
彼女のトレーニング自体は別段特殊ではなく、あくまで基礎能力を高めるためのものらしい
もともと高スペックな彼女は、だからこそ基礎能力の向上、そして己の知識の強化を図るものらしい
戦場にいる以上、何か起こるかわからない、だからこそ、常に戦況を把握し、臨機応変に対応できるようになれれば、彼女は間違いなく強くなれるだろう、とのこと
次は朱乃
彼女に告げられた特訓は己の中に眠っている堕天使の力を受け入れること
本人としてはその力を使うことにまだ抵抗があるみたいだが、これから先を生きる以上、そんなことは言っていられない
雷の巫女、から雷光の巫女になることが彼女の特訓だ
次は木場
彼は禁手状態になれることから始めるらしい
この時師匠っていたんだ、と思ったのは内緒である
次にゼノヴィア
彼女はまず己の聖剣デュランダルにさらに使いこなすことからだ
また、もう一本また特別な剣が彼女に届くらしい
アザゼルが言うには特別な剣らしいが、よくわからない
次はギャスパー
前提条件としては彼は外界になれるところからだ
血筋、
まず本人が心身ともに強くなれなければ意味がないのだ
次にアーシア
彼女もまた基礎能力の向上、そして
なんでも鍛えていけば回復能力を飛ばせるようになるとか
確かに回復能力を飛ばすことができれば近づいて回復する手間がなくなり、戦略に幅が出る
そんなこんなで一人ずつ特訓のメニューを告げていき、次は小猫の番となった
アザゼルは小猫へと視線を移し、彼女の名前を呼ぶ
「んで、小猫」
「…はい」
彼女としては少し気合の入った言葉だった
「お前は戦車としての素質は十分に持っている。しかしリアスの眷属にはお前よりもオフェンス向けの奴が多い」
「―――わかってます」
そう言われてしまうと、ううむ、と考えるものがある
確かに最近の彼女の眷属は木場やゼノヴィアと、彼女より前線向きの人物がいる
ここに禁手予定の兵藤が加われば、わからないだろう
「お前も朱乃と同じように、自分の中にあるものをさらけ出せ。自分を受け入れねぇと、成長なんてできやしねぇぞ」
「…」
アザゼルの言葉に小猫は黙ってしまった
やはり彼女は何かを抱えているようだ
「浩太郎」
「ん?」
不意に言葉を投げられた
浩太郎はアザゼルに視線を移しながら彼に向かって歩いていく
「お前は、小猫の手伝いだ」
「了解、ついでに、俺の特訓メニューは?」
「お前にそんなもん必要ねぇよ。メリディと戦ってれば、自然とお前は強くなるさ」
アザゼルにそう言われ、ふむぅ、と頷く
なんだろう、それはそれで悲しいような、そうでないような
「まぁともかく、よろしく、小猫」
「…はい。それと、この前はすいませんでした。関係ない、なんて言って」
「気にしないでくれ。悪いのはこっちなんだし」
そもそも気安く踏み込んだ質問をしたこちらが全面的に悪いのだ
彼女が謝る必要などない
「さて、最後はイッセーだが…待ってろ、もう少しで来るはずなんだが」
そう言って空を見上げるアザゼル
今のところ空にはせいぜい雲や空しか写っておらず、目新しいモノなどは見えない
みんなして少し空を眺めているとこちらに向かって何かが猛スピードで突っ込んでくるものが見えた
やがてソレは付近に着陸し、大きな土煙と共に、その姿を現した
大きな鱗に左右に広がる二枚の翼―――その姿はまさしく
「ドラゴン…!?」
兵藤の言葉にアザゼルが頷く
やはりこの目の前に現れたのはドラゴンで間違いないようだ
驚く兵藤らを尻目に、ドラゴンは口を開く
「アザゼル。よく悪魔の領土に堂々と入れたな」
「ちゃんと許可はもらったぜ? 文句あるか? タンニーン」
「カカ。まぁいい。サーゼクスの頼みだから来てやったのだ、そこを忘れるなよ堕天使の総督どの」
「わぁってるよ。…てなわけで、こいつがお前の先生だ。イッセー」
先生、という言葉を聞いて兵藤はフリーズする
数秒の間の後、叫んだ
「え、えぇぇぇぇぇぇぇ!?」
言葉に発しはしなかったが、このドラゴンが先生役だということには浩太郎も驚いた
てっきりアザゼルが教えるのかとも思ったが、ドラゴンのことはドラゴンの方が知っている、ということか
タンニーンはちらりと兵藤を見て、口を開く
「久しいなドライグ」
<懐かしいな、タンニーン>
タンニーンの言葉に反応し、兵藤の左腕に
「し、知り合いなのか?」
<あぁ。タンニーンは〝六大龍王〟だった頃の一匹だ。聖書で記されたタンニーンとはこいつだ>
「タンニーンが悪魔になって、〝五大龍王〟になったんだっけな。今じゃ転生悪魔じゃタンニーンはトップ、最強クラスの最上級悪魔だ」
ドライグの説明にアザゼルが補足する
なるほど、転生悪魔で出世したいい例、というわけでもあるのか
おまけに最上級、リアスよりも格上だ
「む、お前が今代のブラックサンか?」
「あぁ。梓馬浩太郎ってんだ。よろしく」
「カカ。俺を見てそこまでフランクに話しかけた人間はお前が始めてだ。さすがブラックサンといったところか」
そもそも冥界にまでくる人間なんているのだろうか
何はともあれ、友好的な関係を築けそうだ
「そんなわけでタンニーン、こいつにドラゴンの使い方を一から教えてやってくれ」
タンニーンは少し嘆息しながら
「しかし、ドライグがやったほうがいいのではないか?」
「それでも限度がある。やはりドラゴンの修行といえば…」
「元来から実践形式。なるほどな、ならば任せろ。徹底的にイジメぬいてやろう。ドラゴンを宿すものを鍛えるのは初めてだ」
そう言って笑うタンニーン
今更だが大丈夫だろうか、特訓が終わる頃ボドボドになっている兵藤の姿が容易に浮かび上がる
<加減してくれよタンニーン。俺の宿主は想像以上に弱いからな>
「死ななきゃいいのだ。問題ない」
ワイルドだな龍王
なんか横では驚きまくっている兵藤が視界に入るが無視する
「期間は人間界で換算すると二十日間。それまで禁手化に至らせたい。イッセー、それまで死なない程度に気張れや」
そう言ってアザゼルはひらひらと手を振ってどこかに歩き去っていった
アザゼルの姿が見えなくなるのを見計らい、リアスがパチンと両手を叩く
「さ、それじゃあみんなは各々のメニューをこなすこと」
『はい』
戸惑いうろたえまくる兵藤をスルーして話は進んでいく
それもそうだ、あれは兵藤の特訓だし、みんなにはみんなのトレーニングがあるのだ
浩太郎には応援するくらいしかできない
そんなわけで
「兵藤」
「こ、浩太郎!?」
浩太郎は兵藤の肩に己の手を置き、サムズアップをしながら言ってやった
「がんばれ」
「ちょ!? いや、わかってるけどさ!?」
「リアス嬢。あそこの山を貸してもらえるか? そこでこいつを鍛えよう」
「えぇ。お願いするわ」
「任せろ。死なない程度には鍛えてやるさ」
タンニーンはそう言うとひょいと兵藤をつまみ上げ、そのままバッサバッサと翼を羽ばたかせ、山の方へと飛んでいった
なんだか「部長ぉぉぉぉぉ!!」なんて断末魔が聞こえたけどきっとそれは幻聴だ
そんなわけで、冥界での修行の日々が始まった―――