その身に宿すはキングストーン   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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いつもの出来

あと最初に出てきた人物の作品はいるだけ参戦に近いので本格的に絡んでくることはありません

では今回もごゆるりとお楽しみ下さいませ

それと誤字脱字がありましたら報告をください

ではでは

※あと猫魈、のしょうの部分が表示されない、って方は報告ください、直しますので


30

オカルト研究部の面々がそれぞれ自分のトレーニングをこなしている最中、望月翔子はひとり、ホテルの自室にいた

今現在、自分は海外におり、依頼されたはぐれ悪魔の情報を待っている途中である

ベッドに片膝を乗っけて座っており、彼女の視線はテレビに集中している

見ているのは日本にいる友人、梓馬浩太郎に勧められた特撮ドラマの〝仮面ライダー〟という作品だ

もともとこういった空き時間などにDVDを見ることは彼女の趣味でもあったし、ゲームをあまりしない翔子にとってはこういった映像作品は最高の娯楽と言える

おまけに勧められた作品は面白いのも相まって、時間を気にしつつ、望月は〝仮面ライダー〟とい

う物語に引き込まれていった

 

願いのために、笑顔のために、夢のために、人間のために

それぞれがそれぞれの戦う理由を掲げ、信念を貫き、ただ守るためにその身を掲げた人たち、というのが素直な感想だ

どの作品にも共通して言えるのは、〝誰かのために戦っていた〟ということだ

 

なんとなく、自分の変身した姿を思い出す

緑色の肌に赤色の複眼、容姿だけならそれっぽいだろうか

 

「…〝仮面ライダーゼットオー〟か」

 

なんとなく、その単語をつけて自分の名前を名乗ってみる

ゼットオーという名称は改造してくれた時にモチヅキ博士が名付けてくれた名前だ

なんだろう、つけておいてなんだが、自分はそれを名乗るに相応しくない気がする

願いもなければ夢もない、守りたい誰かもいないし、大切な誰かもいない

木場は確かに大事だが、今彼は新たな居場所を見つけているし、自分とは違うのだ

それでも、と自分は思う

この力を手にしたのなら、他でもない誰かのために闘おう、と改めて思い直す

相応しくない、とは思いながらもこれからはその名を名乗らせてもらおう

 

「そうね。私は、人のためにこの力を振るおう。及ばないとは思うけど、ね」

 

そこまで考えて、テレビで放映されているエピソードが終わり、メニュー画面が映された

もう見終わってしまったのか、という心境と同時、続きがどうなるのか、という楽しみを覚える

立ち上がってデッキからDVDを取り出し、パッケージにディスクを戻した時、部屋をノックする音が聞こえ、同時に自分を呼ぶ声が聞こえてきた

 

「ショウコ?」

「あ、はい!」

「掴んだわ。今から向かうわよ」

「わっかりましたー!」

 

パッケージをデッキ付近に置き、望月はその場で軽く背伸びする

続きが見れないのは残念ではあるが、本業を疎かにもできない

惜しむ気持ちを抑え、足早に自室を後にした

道中を歩くとなりの女性は、ふとこんなことを口にした

 

「そういえば、聞いたショウコ?」

「へ? 何をです? レディ姉さん」

「いえね、リアス・グレモリーが、ソーナ・シトリーとレーティングゲームをするっていう話」

「え? それホントですか!?」

 

望月の問いにレディと呼ばれた女性は頷いた

もしそうなら応援には行きたい、せっかくの木場祐斗の晴れ舞台だ

 

「レディ姉さん!」

「うん?」

「なるべく目標は逃がさないようにしましょう」

「ふふ。すっかりやる気ね」

「当然です、祐斗のレーティングゲームデビュー戦ですよ、応援には行きたいです」

「わかったわ。なら始めできっちり仕留めないとね」

「もちろんです」

 

気合は十分、やる気もばっちりだ

意気揚々と隣を歩く望月を見て、レディは小さく微笑んだ

 

◇◇◇

 

小猫の拳を受け止める

 

連日、彼女のトレーニングはアザゼルから指定された基本をこなし、あとは浩太郎との実践的な模擬戦を何度か行う、というスタイルを続けていた

しかしここ最近、彼女の基礎訓練への打ち込みが少し過剰ではないか、とも思い始めてきた

頑張るのは問題ないのだが、それに割く時間が少し長いのではないか、というのが浩太郎の考えだ

それの伴い、浩太郎との組手を比例して増えていったような感じもする

焦燥感に駆られている? そう思いはしても口に出すわけにはいかない

所詮自分は〝友人〟でしかないのだ、下手に聞いて彼女を傷つける訳にもいかない

 

受け止められた拳により、投げを警戒したのか、小猫は一歩後ろへと下がる

その僅かな隙を見逃さない

彼女が一歩後ろへ下がったと同時に接近し、下からの蹴りを繰り出そうと足を動かす

狙いは彼女の左側の腹部、当然小猫もそれを予期し、己の両手を用いて防御しようとした

だがそれはフェイントだ

途中まで繰り出そうとしていたその蹴りを下へとシフトし、彼女の足を払う

 

「あうっ!?」

 

わずかに崩れたバランスに浩太郎は彼女の胸ぐらを掴み、そのまま勢いで引っ張り、そのままダウンを奪う

すでに組み手前のオーバーワークで体力も限界なのか、小猫は頬を紅潮させ、肩で息をしている

 

「ま、参り、ました…」

 

彼女の言葉を聞き、浩太郎は小猫をその場に立たせる

その姿は誰が見てもわかるほどに疲労していた

 

「…小猫、流石にもうそろそろ休憩した方がいいんじゃないか?」

「―――いえ、まだ行けます、やらせてください、浩太郎さん」

「でも」

「強く、強くならなきゃいけないんです。だ、から―――」

 

不意に彼女がぐらりと揺れた

前のめりに倒れてきた彼女を支える

…気絶しているようだ

 

<…どうやらオーバーワークが祟ったようね>

「みたいだね。とりあえず屋敷に運ぼう、ここがリアスさんの家に近くて助かった」

<そうね。ヴェネラナに頼みましょう>

 

倒れて気を失っている小猫をお姫様抱っこし、屋敷へと歩いていく

運んでいる道中、浩太郎はメリディに問いかける

 

「なぁ」

<うん?>

「聞いてもいいかな。小猫のこと」

<…本当は、彼女の口から話した方がいいのだけれど。いいわ。軽く話してあげる>

 

そう短い返答の後、メリディは徒然と語り始める

ある二匹の猫の話を

 

その二匹の姉妹猫は常に互いを助け合いながら、毎日を生きていた

親と死別し、家を失くしても、それでもお互いを拠り所にして生きてきた

そんな二匹はある日ある悪魔に拾われる

姉である黒猫が眷属となることで、妹である白猫も住まわせてあげる、ということを条件に黒猫は転生し、ようやくまともな生活が送れると信じていた

 

しかし現実はそう上手くはいかなかった

 

もともと妖術の才能に秀でた姉だ

彼女は眷属として転生したことにより、魔力の才能を目覚めさせ、さらに仙人のみが使用できるとされる仙術を身につけたのだ

結果、彼女は力に溺れてしまった

姉は主を殺害し、はぐれとなった

それも最大級に危険なはぐれに成り下がってしまった

 

ここで浮上したのが、残った妹の白猫の方である

〝姉がああなったのだ、妹もああなる可能性が高い〟と、決定づけた

 

<その白猫を保護したのが、サーゼクスなのよ。妹に罪はないってね>

「なるほど。大体わかったよ。…いろいろ辛い思いをしてたんだな」

 

梓馬浩太郎は普通の家庭に生まれ、普通に育った人間だ

彼女の境遇に対しては、何も言えない

 

<サーゼクスはその白猫を自分の妹であるリアスに預けたの。姉に裏切られ、言いようのない罵声を浴びせられ崩壊寸前だった彼女の精神は、リアスと触れ合う事によって少しづつ心を取り戻してった。そこでリアスは名前をつけたの、小猫ってね>

 

自分の腕の中で気絶している小猫の顔を覗き込む

少しばかり、その表情は安らいでいる気がした

 

「…猫、ってことは、彼女、猫叉かなにかなのか?」

<察しがいいわね浩太郎。えぇ、彼女は元妖怪。猫叉は猫叉だけど、彼女はその最上位―――仙術や妖術を使いこなす、猫魈なのよ>

 

そんなメリディの話を肯定するように、浩太郎の腕の中で気を失っている小猫の頭から特徴的なものがぴょこんと生えてきた

それは猫の耳だと理解するのに、時間はかからなかった

 

◇◇◇

 

あのあとヴェネラナに話を通してもらい、小猫をベッドへと寝かす

疲弊して体力のない彼女の頭には猫耳、そして下半身にも猫の尾が現れており、隠すほどの力も今は残っていないのだろう

心配ではあるが、これといって特にやることも思い浮かばない浩太郎は小猫の寝ている姿をじっと見守ることしかできない

 

少し待っていると彼女のことを聞いたのか、姫島朱乃が入ってきた

一瞬何かを話そうか迷ったが、浩太郎は黙って彼女に向けて椅子を差し出した

正直に言えばまるっきり話題が思い浮かばなかったから、椅子を差し出すという行動でお茶を濁しただけなのだが

その行動を見た彼女は小さく微笑んで、「お気遣いありがとうございます」と感謝の言葉を言ってくれた

それに浩太郎も「いえ」などと曖昧な返答をし、視線を逸らす

 

「…小猫ちゃんの様子はどうですか?」

「眠っているので、なんとも。ただ、無理はしていたかな、と」

 

短いやり取り

浩太郎の言葉を聞くと朱乃はそう、と俯きながら返答した

重苦しいこの空気の中では、流石に浩太郎は口を開くことはできなかった

そこからさらにしばらくして、また部屋の扉が開かれた

入ってきたのは、兵藤だった

部屋の外にチラリとだが、リアスの姿も見えた

おそらく彼女に案内されたのだろう

また、小猫の猫耳を見てもあまり動揺していないところを見ると、事前に誰かに説明を受けたのだろうと推測できた

 

「う…」

 

ふと、小猫が意識を取り戻す

 

「! 小猫ちゃん」

 

それに気づいた兵藤が彼女のベッドに駆け寄る

小猫はゆっくりと身を起こしながら、少しだけむす、っとしながら兵藤に返した

 

「…なんのようですか」

「小猫」

 

ぶすっと答える小猫の頭を撫でながら浩太郎が戒める

いや、薄々気づいているから、そんな言葉を発してしまったのだろう

それに兵藤に苦笑いを浮かべながら、言葉を続けた

 

「その、いろいろ聞いたよ、小猫ちゃん。その、とにかくオーバーワークはダメだ。地獄のシゴキを受けてる俺が言うのもなんだけど、体は大切にしないと」

「―――つよく、なりたい」

「…え?」

 

小さく呟いた小猫の言葉を、浩太郎が聞き返す

小猫は俯き、組んだ指先に涙を落としながら続ける

 

「強くなりたいんです。祐斗先輩やゼノヴィア先輩に朱乃さん…イッセー先輩みたいに心と身体を強くしたいんです。ギャーくんも確実に強くなってるし、アーシア先輩みたいに回復の力もない、浩太郎さんみたいに戦いのセンスもありません…このままじゃ、私は…〝戦車〟なのに、役立たずになってしまいます。…お役に立てないのは、いやなんです…」

 

それは彼女が初めて見せた弱さだった

普段ポーカーフェイスで、感情を表に出さない、普段の彼女を知っている浩太郎としては、彼女の涙は初めて見た

涙をこぼし、彼女は続ける

 

「だけど、己の内なる力を使いたくない…。使ってしまったら、姉さまのようになってしまうのではないか、そう思うと…怖いんです…。もう、あんなのはいやです…!」

 

彼女の姉は、その力に溺れ、暴走してしまいはぐれへと堕ちた

自分も姉のようになってしまうことに、ひどく恐れを抱いているのだ

不意に、朱乃が立ち上がり兵藤のところに歩み寄る

 

「イッセーくん。あとは彼に任せましょう」

「え?」

 

不意に紡がれた言葉に、浩太郎は聞き返す

聞かれた朱乃はこちらを向くと笑みを浮かべ

 

「この中で、彼女と親しいのは浩太郎くんだもの」

「付き合いが長いのは朱乃さんじゃ…」

「それとこれとは別ですわ」

 

よくわからん

なんだか彼女は人差し指を口元に近づけ、そんなジェスチャーをした

朱乃に言われた兵藤も頷き、浩太郎と小猫、それぞれへと視線を向けて

 

「朱乃さん…小猫ちゃん…浩太郎…。俺は、俺にしかできないことをやってみます」

 

そう言って彼は笑顔を作り、この部屋を後にした

そんな彼を追うようにこの部屋を後にしようとしたとき、朱乃は去り際にふと呟いた

 

「―――私も、自分の力を受け入れねばなりませんわね」

 

短くそう言って、彼女はこの部屋から出て行った

そう言えば、彼女もいろいろ背負っていたな、と思い出す

堕天使と悪魔のハーフ、いわば、彼女と小猫は似た境遇と言えるだろう

そして今ここにいるのは小猫と浩太郎の二人きりだ

寝室に二人きり、というと変な想像をしてしまうが、今の浩太郎にそんな勇気もなければ、実行する気もない

浩太郎は彼女のベッドに腰掛けた

 

「―――」

「…」

 

会話は特にない

しかし浩太郎の内心ではどう話しようか、と脳内で大議論が行われており、未だ結論を出せていない

どうしたものか、と悩んでいると、先に小猫が口を開いてくれた

 

「浩太郎さん」

「うん? なんだい」

「…どうしたら、強くなれると思いますか?」

 

直球で難しい質問をされた

浩太郎はしばし考え

 

「…やっぱり、反復で修練を積むしかないね。君の内に眠る力を使いたくないのであれば、だけど」

「……」

「けれども、最も早く強くなるには、やっぱり自分の中にある力を受け入れないといけない」

「…だけど、私は怖いんです…! この力を使ったら、姉さまのように力に溺れて、みんなを傷つけて、迷惑をかけてしまうかもしれない…! だけど、みんなの足手まといにもなりたくないんです…!」

 

小猫は頭を抱え、大粒の涙を流す

彼女の〝悲しみ〟の感情に、とくんと体に宿るのキングストーンが反応したのを、メリディは感知した

しかし本体である浩太郎は気づいていないようだ

浩太郎が小猫の言葉を聞いている最中、メリディは小さく微笑む

 

(…感情が、彼に力を与える。…今代のキングストーンは洒落てるわね)

 

「浩太郎さん! …私は、私はどうしたらいいんですか…!?」

「―――もし力に飲まれても、そのときは、全力で小猫を助けるさ」

 

涙を流す彼女に浩太郎は言葉を返す

 

「俺だけじゃない。リアスさんも、朱乃さんも、兵藤も木場もゼノヴィアもギャスパーもアーシアも、みんな手伝ってくれる。だから、さ、あんまり一人で抱え込まないでくれ」

 

そ、っと彼女の目にある涙を浩太郎はその両手で拭う

 

「浩太郎…さん…」

「それに知ってるか? 〝迷惑ってのは、かけるもん〟なんだぜ」

 

その〝迷惑〟をどう感じるかは人それぞれだ

鬱陶しく感じれば、問題ないと感じたり

 

「―――でも」

「少なくとも、俺は嫌がったりしない。少しずつでいい。小猫は小猫なんだから。姉がああなったからって、君がそうなるとは限らない。なったらなったで、みんなで力を合わせて君を助け出す。だから―――大丈夫」

 

言葉の最後に、出来るだけ安心させるように、自分ができる精一杯の笑顔を浮かべ、小猫の頭を思いっきり優しく撫でた

最後には小猫のだいぶ落ち着いたのか、目を閉じて浩太郎の撫でを堪能していたようにも見える

最も、実際はわからないのだが

しかしこれで小猫が落ち着いてくれたのなら、それでいい

 

「―――優しいですね。浩太郎さんは」

「曲がりなりにも、〝仮面ライダー〟だから。最も、俺なんて足元にも及ばないけど」

「そんなことありません。…私にとっての〝仮面ライダー〟は、浩太郎さんです」

「…ありがとう。そう言ってくれると、少し嬉しいよ」

 

流石にそんなこと言われると流石に照れる

最も浩太郎はその名を名乗ることに相応しくないと思っているので、尚更だ

ひとまず会話も途切れ、浩太郎は一度この部屋を後にしようとした

しかし不意にきゅ、と小猫の手が浩太郎の服の袖を掴む

怪訝に思った浩太郎は小猫に問いかけた

 

「…小猫?」

「…いえ、明日から、ちゃんと休憩を取り入れて、オーバーワークしないように気をつけます」

「? あぁ。俺も手伝うぜ。頑張ろう」

「は、はいっ。それと、これは単純にワガママなんですけど、その…聞いてくれますか?」

「ワガママ?」

 

小猫は頷くと、わずかに頬を赤く染め、少しだけ顔を横に向けて、それでいて視線を浩太郎の方へ向けつつ言った

 

「…今日、だけでいいんです。―――いっしょに寝てくれませんか?」

「―――オッケー。いいよ」

 

今日ぐらいは、と自分に言い聞かせ、小猫のワガママに付き合うことにした

また明日からトレーニングだ、だから今日一日くらいは、許されるだろう―――

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