その身に宿すはキングストーン   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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相変わらずの出来

そしてRXの相棒たるマシンの片方がようやく登場
無理やりな感じがするが何、気にすることはない川´_ゝ`)

モチーフとして登場させているのものすごくわかりやすいが、そこのところのご想像はお任せします

そして次回は、あいつが来る…!?

ではどうぞ


31

一夜明けた

ぱちくりと目を開閉させ、ゆっくりと上半身をあげる

すぐ横にはまだ寝息をたてている小猫がいる

なんでいるんだろう、と一瞬アホなことを考えてすぐ、そうだ、一緒に寝たんだったと思い出す

すやすやと眠る彼女の頭には猫の耳がある

時折ぴょこぴょこ動いて愛らしい

そんな彼女の頭を軽く撫でながら、浩太郎は彼女が覚醒するのを待った

 

 

そんなわけで小猫が起きて、朝食のあと軽く食休みを挟んで彼女のトレーニングはスタートする

今度はオーバーワークをしない、という約束を小猫はしっかりと守っているようだ

幸太郎から見ても、今のところはそんな様子は見られない

それに何より、昨日以降彼女の表情が柔らかくなった(気がする)

 

もっとわかりやすく言えば、浩太郎に甘えてくるようになった気がする

 

それを喜べばいいのか、戸惑えばいいのかわからないところだが、ひとまず彼女の調子がいつものように戻ってくれたのは嬉しいことだろう

今現在は彼女がアザゼルに指示された基礎訓練を終わるのを待っている最中だ

その待っている間、少し時間ができたので、その間、メリディがトレーニングに付き合ってくれている

下手な小細工など一切ない、純粋な拳と拳のぶつかり合い

彼女のシゴキは全くの容赦がなく、油断すれば割とマジで命に関わる一撃を放ってくる

そんなもんだから気の抜ける時間などないのだ

 

目前に放たれた拳を受け止め、さらに時間差で右足のすね付近に放たれた彼女の足をなんとか防ぐ

そこから一瞬の静寂のあと、メリディは微笑んだ

今まではこの時間差で放たれる下段の攻撃にいつもやられていたが今回は防ぐことができた

 

「ふふ、成長したわね浩太郎」

「そりゃあんだけ殴り合ってりゃあね」

 

その言葉にもう一度微笑んで今度はその体をタックルの要領でぶつけてきた

メリディの突然の行動に対応できず、そのタックルの直撃をもらい、バランスを崩してしまう

そこからのメリディの動きは迅速だった

素早く体制を整えさらに足を払い完全にダウンを奪い、その手刀を首筋に突きつける

 

「…でも、まだまだね」

「―――くそ、まだアンタには勝てないな」

 

いまだ先代の腕は衰えていない

分かってはいるが、改めてそれを実感させられた

そんなタイミングで小猫がこちらに向かって歩いてきていた

彼女も基礎を終えて浩太郎に模擬戦を申し込みに来たのだろう

 

「…浩太郎さんも、先代の方には勝てないみたいですね」

「まったくだ。それで小猫、始めるのか?」

「はい。ちょっと休んだら、お願いします」

 

小猫の言葉に浩太郎は頷く

こちらも割と派手に動いて体力を消耗していて、流石に連戦はしんどいので、小猫の提案にはありがたく乗っておく

とりあえず適当に腰をかけ、体力の回復に努める

小猫も浩太郎の隣に腰を下ろし、軽く息を吐いた

 

「ひとまずお疲れ。どうだい? 調子は」

「問題ありません。…だだ、、自分の力を使うのな、まだ出来そうにありません」

「それでいい。焦る必要なんかないよ、小猫のペースで強くなればいい」

 

そう言って軽く小猫の頭を撫でる

彼女の頭を撫でると、小猫は気持ちよさそうに目を細めている

可愛い

 

そんな感じでナデナデしていると、ふとこちらに向かってなんか赤い車のようなものがこちらに走ってきていた

見慣れない車だ、と思いよくよく見てみると、なんと乗っているのはアザゼルだったのだ

その赤い車は近くで停まり、ドアが開かれそこからアザゼルが降りてくる

 

「よう。特訓は順調か?」

「えぇ。無理はしないようにしています」

「ならいい。頑張れよ」

 

そう言って小猫の肩を軽く叩くアザゼル

そして今度はこちらに向かってアザゼルは視線を向けた

 

「んで、浩太郎。頼まれたのが出来たぜ」

 

アザゼルは言って乗ってきた赤い車をコツンと叩いた

その発言に浩太郎は目を見開いて驚きつつ

 

「マジでか」

「マジだ。あの動画に出てくる〝赤い車〟をベースに、俺なりにいろいろ付けくわえてみて、お前専用に作り上げた…名前を〝光の重装機(ライドロン)〟だ」

 

浩太郎はそんなアザゼルの説明を聞きながら、彼が乗ってきた〝ライドロン〟を眺めていた

彼にしては珍しく、なんだか目をキラキラさせている

そんな浩太郎の姿を見て、小猫は少し驚いていた

なんだか子供みたいだ

 

「…いや、けどまさか本当に作り上げるなんて。…さすがだぜアザゼル」

「当たり前だ。俺を誰だと思っていやがる?」

 

アザゼルと受け答えしながら、浩太郎はライドロンを見ていく

どことなく丸みを帯びたデザイン、とてもスタイリッシュであり、ハイカラだ

海外の車みたいだ

 

「一応カテゴリとしては、人工神器(セイクリッドギア)って感じか? お前のデータを登録してあるから、お前が呼べば、どこからでも駆けつけてくるぜ」

「マジすか、スーパーマシンじゃないですか」

 

今後の冥界での移動手段はこれに決まった

さらに言えば人間界でもこれを乗り回したい、が、流石にそれはやめておく

というかまだ免許を持っていない、時期が近づいたら最速で取ろう

 

「…頼んでたのは車だったんですか?」

「あぁ。けどまさかこんなすごいのが来るとは思ってなかったから、ちょっと驚いたよ」

 

ペチペチとライドロンを軽くたたきつつ、笑顔を浮かべる浩太郎

この日、新しい浩太郎を見れた気がした小猫は、少しだけ嬉しくなった

 

「浩太郎さん、そろそろ始めましょう」

「っと、そうだな、始めるか」

 

◇◇◇

 

そんなわけで、あっという間に修行の期間が過ぎた

毎日シンプルなトレーニングの繰り返しだったが、浩太郎でもわかるほど小猫は実力をつけていった

これが冥界や今後の的に通用するかはわからないが、もし通用しなかったらしなかったで、また特訓すればいい

何度でも浩太郎は付き合うつもりだ

 

ついでに今日は修行しに外に出たメンバーが帰ってくる日だ

皆がどんな成長をしたのか個人的に楽しみでもある

一番気になっているのはやはり兵藤だ、あれだけ大きなドラゴンに鍛えられたのだから、強くなっていないはずがないだろう

そんなわけで小猫と一緒に出迎えに行く

本邸前に行くと、そこにはドラゴンに乗った兵藤の姿が見えた

…なんでだか知らんが上半身裸で

 

兵藤もこちらに気づくと大きく手を降ってきた

そんな彼に浩太郎も軽く手を振ってそれに答える

バッサバッサと翼を羽ばたかせ、ドラゴンが着陸する

 

「では俺はこれで。パーティには俺も出席する。その時にまた会おう、兵藤一誠、そしてドライグ」

「あぁ! おっさんありがとう!」

<すまんなタンニーン。また会おう>

「なに。俺も楽しかったぞ。なんせあのドライグに手を貸したのだからな。そうだ、もしよかったら俺に乗ってパーティ入りするか?」

「え? いいのか?」

「問題ない。俺の眷属も連れて開催日にここに来よう。詳しい話はあとでグレモリーに連絡する。ではな!」

 

タンニーンはそう言って再度大きく翼を羽ばたかせ何処かへと飛び去っていった

兵藤はそれに手を振って見送る

 

<甘い龍王だ>

「けどいい人だと思うぜ。やっぱドラゴンってかっこいいな!」

「お前もドラゴンなんだけど?」

 

呟く兵藤に浩太郎が突っ込む

もっともベースは人間なんだが

 

「いや、そりゃそうなんだけどな。ってか俺は左手だけだけどな」

 

ははは、と笑いながら改めて兵藤の体を見てみる

なんだろう、前に見たときよりだいぶ男らしくなった気がする

さらにいろいろ引き締まったと言えるだろう

 

「やあ、イッセー君、浩太郎くん、小猫ちゃん」

「―――祐斗先輩」

 

聞き覚えのある声に三人が振り返す

そこには同じようにジャージ姿でボロボロな木場祐斗がいた

その表情も兵藤と同じように引き締まったように見える

木場は兵藤の体を一目見て

 

「―――いい体になったね」

「発言が危ないぞ木場。兵藤が怯えているだろう」

 

どうしてこうも彼は発言がホモホモしいのか

たまに彼がわかんなくなる

 

「そ、そうかな。僕はただ筋肉がついたねって言いたかったのに」

「そういう祐斗先輩は変わりませんね」

「僕は筋肉が付きにくいからね。ちょっと羨ましいよ」

「む。そこにはいるのはイッセーと浩太郎、木場に小猫か」

 

そこに聞こえてきたのは見知った女の声だった

その声の方に振り向くと、何やら包帯でぐるぐる巻きにされたゼノヴィアがいた

なにがあったのか

 

「だれだきみは」

「誰だとはご挨拶だな浩太郎。私だ、ゼノヴィアだ」

「や、ごめん、言いたかっただけだ」

「っていうか、なんだよその格好」

 

浩太郎の言葉に続いて、思っている疑問を兵藤が問いかける

ゼノヴィアはふむ、と頷きながら

 

「いや、怪我をしたら包帯を巻く、という工程を繰り返していたらこうなった」

「さ、さいですか」

 

なんて突っ込めばいいのか反応に困った浩太郎はとりあえず苦笑いを浮かべる

彼女も彼女で結構大変だったようだ

 

「浩太郎さん、イッセーさん! 木場さんにゼノヴィアさん、小猫ちゃんも!」

 

城門から姿を現したのはシスター服を着込んだアーシアだ

たまに浩太郎と子猫のふたりは会ってはいたのだが、彼女もイッセーら外出組と会うのは今日が久しぶりだったりする

 

「おお、アーシア。久しぶりだな」

「ぜ、ゼノヴィアさん!? なんでぐるぐるなんですか!?」

 

彼女もまたゼノヴィアの状態を見て驚いている

多分誰だって驚く

 

「あら。外出してた子達は帰ってきたみたいね」

 

そんなアーシアの次に現れたのはリアスだった

久しぶりに彼女の姿を確認した兵藤は声をあげる

 

「部長ぉぉぉ! 会いたかったですぅ!」

「ふふ。たくましくなったわね」

 

兵藤に抱きつき、頭を撫でるリアス

彼としてもおおよそ役二週間ぶりとなるリアスだ

今のうちにリアス分を補給しているのだろう

 

その後、みんなが屋敷に戻り軽くシャワーを浴びて報告会する流れとなった

みんなが普通に報告をし合うなか、ただひとり過酷なサバイバルを送っていた兵藤には流石に少し同情した

一ヶ月一万円生活とかでもきっと乗り切れるだろう

 

で、その日の夜のことである

今現在浩太郎はグレイフィアが用意してくれた兵藤の部屋にお邪魔している

とはいえ流石にベッドに四人で寝るのは少し気恥ずかしいので浩太郎はお願いしてグレイフィアが用意してくれた布団を床に敷いてそこに寝る

しかし流石に広すぎるベッドで寝るのはイマイチ慣れないのか、ここに来た当初は皆が眠るまで軽い雑談をしているのが常だった

だが未だにゼノヴィアはこの環境に慣れないのか、彼女はよく遅くまで起きているのがよく見えた

ちなみにアーシアと兵藤は特訓の疲れからかはよくわからないが、ぐっすりと眠っている

いい寝顔である

 

「…で。まだ寝れないのかゼノヴィア」

「浩太郎。…はは、情けない話だが、男と寝るのはまだ慣れないんだ。性的でなくても、これは緊張するな」

「…よくそんなんで子供作ろうとか言ってきたな、おまえ。いや、わからんでもないけど」

「でも、今は慣れたよ。ふふ、アーシアの寝顔を見ると、安心するな」

 

そう言ってむにゃむにゃと気持ちよさそうに寝息を立てるアーシアの頭を軽く撫でた

撫でられるとアーシアはむにゅ、と言葉を発しながら口元に小さい笑みを浮かべる

その様子を見て、くすりとゼノヴィアは笑みを漏らした

 

「ふふ、君やイッセーが彼女を可愛がる理由が、なんとなくわかった気がするよ」

 

ゼノヴィアの苦笑い

浩太郎もその笑みも見ながら、改めて目を閉じた

案外眠気はすぐに襲ってきて、浩太郎はその眠気に身を差し出した

 

◇◇◇

 

そして翌日

時間は夕方、浩太郎は夏の駒王の制服に身を包み、アザゼルが作成してくれたライドロンに乗り込んでいた

簡単な操作方法を確認するためである

ちなみに制服には彼にしては珍しく腕章が付けられている

その腕章にはグレモリーの文様があり、これでパーティオッケーらしい

 

一通りの確認を終え、客間で一息つくために浩太郎はのんびりと廊下を歩く

そうすると奥から見知った顔が見えた

匙だ

 

「匙。来ていたのか」

「お、浩太郎か。あぁ、会長がリアス先輩と会場入りするって言ってさ。客間に行ったら兵藤がいたんだ。んで、少ししてちょっと歩きたくなってさ、廊下を歩いたらお前がいたんだ」

 

ここは本邸、慣れていないと本当に迷うのはわかる

いろいろ巡ってここに来たのだろう

 

「それで、もうそろそろレーティングゲームだな」

「そうだな」

「俺はゲームに出ないけど、自信のほどはどうだ?」

「わかんねぇや。―――だけど、勝つ気で行くぜ」

 

そう言って拳を握る匙

恐らく匙も匙で苦しいトレーニングをこなしてきたのだろう

そして主に勝利を捧げなければならないのだから尚更だ

 

「…なぁ、浩太郎」

「うん? ついさっき兵藤にも話したんだけどさ。俺、夢があるんだ」

「夢?」

「あぁ。会長が学校作るって言ってたっみたいに、俺にも、会長の作った学校で先生になるのが夢なんだ」

 

そのカミングアウトに浩太郎は少し驚いた

まさか彼からそんな言葉を聞くとは思わなかったのだ

彼は言葉を続ける

 

「会長はレーティングゲームの学校を設立しようとしている。普通の学校じゃなく、みんなが入れる自由な学校なんだ。確かに少しづつ差別とか伝統とか緩和されてるけど、根底の部分ではまだまだ受け入れがたい部分もあるって。その証拠にゲームの学校も、みんな上級悪魔の貴族しか受け入れてない。ゲームは誰にも平等でなければいけない、けど平等なのにゲームの道が遠いんだ。貴族じゃなくても上に上がれるはずなのに、可能性はゼロじゃないんだ」

 

その真剣な言葉に、いつしか浩太郎は聞き入っていた

 

「会長はその差別を何とかしたいって言ってた。だからこの冥界に、みんな入れる学校を作るんだ! 会長はそのために人間界でも勉強をしている、スポットが当たらない人たちに未来を与えるために! 可能性はゼロじゃない、ゼロに近くても、ゼロじゃなきゃ上級悪魔になれるんだ!」

 

兵藤も匙も、しっかりとした目的を持って上級悪魔を目指している

可能性がゼロであっても、それは限りないゼロではないのだ

匙は拳を握る

 

「だから俺はそこで先生をするんだ。たくさん勉強して戦って、兵士を教える先生になる! 昔はバカやって、いろいろな人に迷惑をかけた。けど会長とならこんな俺でも夢を見れるんだ! 俺は生涯会長のお側にいて、手助けをする! 会長の夢が、俺の夢なんだ!」

 

匙は照れた様子で言葉を発する

 

「おふくろにはさ、悪魔になったこと内緒だけど、それでも将来のこと話したら泣いちまってよ。先生になるんだ、って柄にもないこと言ったからかもしれないな。けど、悪くないよ、おふくろの安心した顔ってさ」

 

そんな匙の顔は、とてもじゃないが眩しく見えた

はっきりとした夢を持ち、確固たる信念がある

―――自分とは大違いだ

 

「なれるよ、お前なら。立派な先生を目指せよ」

「あぁ。ありがとうな、浩太郎」

 

屈託ない笑みを浮かべる匙

やはり夢を持つ、ということは大きな原動力になるのだろう

 

「匙、先行っててくれないか?」

「? なんで?」

「や、ちょっとトイレ行きたくなってさ。後から行くから」

 

ちょっとしたウソだった

あまりこの屋敷に詳しくはない、トイレの場所なんて把握していないのである

 

「そっか、わかった。じゃあ後でな」

 

そんな浩太郎の心情を知ってか知らずか、彼はそう言って軽く手を振りながら先を行く匙の背中を見送る

そしてなんとなく窓から見える景色を眺め始めながら思った

夢、か

 

浩太郎自身、ここ最近夢なんて考えたこともなかった

だいぶ先のことだろうと考えていたからだ

強いて夢と言うなら普通に暮らすのが夢だった

あの日、堕天使に殺された時以降、それはもう、永劫叶わぬ夢となる

 

「…考えても仕方ねぇや」

 

確かに自分に夢はない

けど、誰かの夢は、守っていきたい

なんとなく、そう思った

 

◇◇◇

 

やがてリアスとその女性眷属、そしてソーナと彼女の眷属がドレスを着込んでやってきた頃、タンニーンが迎えに来てくれた

浩太郎もそのドラゴンの背中に乗ってはみたかったが、その申し出を断った

なぜなら、浩太郎は早速、アザゼルからもらったライドロンでパーティ入りしようと思ったからだ

正直に言えばドラゴンに乗って大空を駆けてはみたかったが、こういうところでないと乗れないと思ったのだ

 

そんなわけで運転席に乗り込み、ちらりと助手席部分を見てみる

そこにはドレスを着込んだ小猫がちょこんと座っていた

後ろの座席には同じようにドレスを着込んだアーシアと彼女についてきたゼノヴィアが乗っており、そこそこな人数だ

ちなみにリアス眷属、ソーナ眷属両陣営の女性はドレスを着込んでいる(ギャスパーも着てたけどツッコまない)

 

なんでも浩太郎がこれで行く、と言った時小猫とアーシアが乗ってみたいと言い、浩太郎はそれを承諾、今にいたるわけだ

念のための地図もグレイフィアからもらったし、最悪道に迷ったら上空のタンニーン達を見ながら走ろうそうしよう、そう思い改めてハンドルを握る

 

「そんなわけで行くぞー」

 

浩太郎の言葉に小猫が頷き、アーシアとゼノヴィアが返事をする

とりあえず安全運転を心がける

なんでも最高時速は千五百キロだとかなんとか

早すぎである

 

流石にながら運転は危ないので地図を小猫に持ってもらい、案内を貰いつつ運転していく

結構運転はしやすく、割と雑音とかも感じることもなく、割と快適な道中となった

小猫の指示通りライドロンを走らせると、やがて舞台となる会場が見えてきた

目的地へと近づくなか、ふと隣に小猫が口を開いた

 

「浩太郎さん」

「うん? どうした小猫」

「―――いいえ、今はやめときます」

 

苦笑いと一緒に再び小猫は前を向く

何を言おうとしたのか、気にはなったがよそ見は危ないので、そのことを頭の中に留めることにした

 

◇◇◇

 

会場に到着し、ライドロンを指定の場所に待機させ、リアスらと合流すべく歩いてく

その後タンニーンに連れられて到着したリアスたちと合流して、そしてここの従業員であろう方々に連れられた先はリムジンだった

人生の初のリムジンが冥界とは思わなんだ

 

ホテルの周囲には各施設とかもあり、軍も待機しているらしく、リアスが言うには下手な都市部よりよほど厳重、らしい

ちなみにアザゼルはサーゼクスと合流してから別ルートで向かうらしい

少し前までは敵同士だったのに、今やすっかり仲良しだ

いいことなのだが

不意にリアスが言葉をつむぐ

 

「宣戦布告されたわ。〝私たちの夢のために、あなたたちを倒します〟ってね」

「―――そう、ですか」

 

兵藤はタンニーンの頭部に、浩太郎はライドロンに搭乗していたので、彼女に起こった出来事は知らない

やはり自分の知らないところでそんなドラマがあったようだ

 

「それで、リアスさんはどうするんです?」

「勝つわ。ソーナたちにはソーナたちの夢があるように、私たちには私たちの夢があるんだもの」

 

当然の返答が笑みとと共に返ってきた

当たり前のことである

お互いが親友であるからこそ、真剣勝負にて手を抜くことは相手を舐めていることにほかならない

それならそれで構わない

ぶつかり合うことでわかるものもあるのだ

 

そんなわけでリムジンは到着し、出るとたくさんの従業員に迎えられる

そのまま朱乃がフロントで確認を取り、エレベータへと乗り込む

揺られること数十秒、やがてエレベータが到着し、会場の入口も開かれた

フロア中に大勢の悪魔と豪華な食事、大きなシャンデリア

 

『おおっ』

 

そしてリアスの登場に驚く来客悪魔一同

彼女に誰もが感嘆し、注目を集めていた

 

「ますます美しくなられて…」

「サーゼクス様もさぞご自慢でしょうな」

 

さすがはリアス・グレモリー

どんな場所でも人気者だ

 

 

しかしこんな豪勢なパーティは生まれて初めてな浩太郎は、自分に挨拶をしに来る悪魔の対応に少し疲れていた

すでに冥界中に知れ渡っているブラックサンの復活、それを知っているいろいろな悪魔の方々が何かしらんが挨拶しに来るのだ

正直しんどい、浩太郎自身挨拶などされるようなタマではないからだ

正直受け答えには中にいるメリディの助言に従いつつ、のらりくらりと躱していた

はぁ、とため息をつきながらふと視線を感じた

なんか金髪縦ロールな女性がこっちを睨んでいる(ような気がする)

 

「…えっと」

「―――お、お久しぶりですわね、ブラックサン様」

 

…誰だっけ

完全に記憶から抜け落ちている

というわけで聞いてみる

 

「…ごめんなさい、どちら様でしょうか」

「お!覚えていらっしゃらないのですか!? …いいえ、貴方と初めて会ったのは兄との決闘時、名前も名乗っていませんでしたし、仕方ないですわね。…それでも、頭の片隅くらいにはとどめておいてもよろしいのでは…」

 

ごめん、覚えてない

あの時はライザー殴ってすっきりしていたし、ほかのことなど頭に入っていないのだ

 

「改めて自己紹介します。私はレイヴェル・フェニックス。貴方に叩きのめされたライザー・フェニックスの妹ですわ」

「あぁ、あの焼き鳥の妹か。どうだ、あの焼き鳥は最近」

 

そんな事を聞くとレイヴェルは嘆息する

 

「貴方に負けたショックでふさぎ込んでしまいましたわ。まぁ調子に乗っていたので、いい薬ではあるのですけど」

「結構手厳しいこと呟くのね? 妹さん?」

「本当のことですもの」

 

バッサリだ

 

「ちなみに、私は現在お母様の眷属ですわ。お母様がご自分のみ使用の駒とトレードしてくださいましたの。私が眷属になりたい方を見つけたら、トレードしてくれるとおっしゃていますから、実質フリーの〝僧侶〟ですわ。お母様はゲームはしないですし」

「? トレード?」

「あら、知らないのですか? ゲームのルールの一つで、〝王〟である悪魔の間で、眷属の交換ができますの。同じ駒が条件ですのよ。〝兵士〟と〝兵士〟みたいな」

 

その話を聞いて浩太郎はふーん、と頷いた

同じようにゲームをしない、というかできない浩太郎には興味ないからだ

 

「あの、ところでブラックサン様」

「そのブラックサンってのやめてくれ。俺は梓馬浩太郎だ。普通に名前で呼んでくれ。俺もレイヴェルって呼ぶから」

「よ! よろしいのですか!? っていうか、お名前で!?」

「? なんでそんなに驚くんだ。友達が名前で呼ぶのは普通だろう」

 

兵藤は兵藤って呼んでるけど

そう言われたレイヴェルはなんだか嬉しそうな感じだ

なんでだ?

すると彼女は、また誰かを見つけたのか、こほんと息を吐きながら

 

「で、では浩太郎様、私、赤龍帝にも挨拶してきますね」

「お、おう」

 

そう言って浩太郎は彼女を見送る

様付けで呼ばれるのは思いのほか慣れない

メイド喫茶じゃないんだから

少しして、浩太郎の視線の隅に、見知った誰かが横切った

 

それは小猫だ

 

何かに夢中になっているのか、視線はまっすぐに絞られている

ほかの誰かに見向きもなく、彼女はどこかへと駆け抜ける

気になった浩太郎は悪いと思いながらも彼女を尾けることにした

しっかりとした足取りで、彼女はエレベータへと向かっていく

 

下に降りるのだろうか

ちょうど小猫が乗ったエレベータがしまったタイミングで、三つあるエレベータの一つが停まり、そこから貴族悪魔が出てきていた

浩太郎はそのエレベータに乗り込み、一階のボタンを押す

 

なんでだろうか

エレベータの中でふと思う

どういうわけだか、妙な胸騒ぎがする、何かが起こる予感がする―――

そんな気がした




ライドロンは喋りません
申し訳ない
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