その身に宿すはキングストーン   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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時系列:旧校舎のディアボロス後


アクマのおしごと
アクマのおしごと そのいち


その日、浩太郎はアーシアと兵藤と一緒に部室へと趣いていた

 

「ただいま到着しました!」

 

元気よく挨拶するアーシアに浩太郎も続いていく

 

「どうもですー」

「あらあら、三人とも、早いですね。お茶いかが?」

 

部室に入るとニコニコと笑顔を作った姫島朱乃が出迎えてくれる

美しい黒髪をポニーテールにまとめ、彼女はそう言った

さすがはこの学校の二大女神の一角だ

 

「もらいます!」

「お願いします」

 

兵藤と浩太郎の返事を聞いて朱乃はポットの湯を急須へと注ぎ始める

すでに我ら三人以外のメンバーは揃っていた様子で、リアスも奥で優雅にお茶を飲んでいた

浩太郎はソファの一角に座っている後輩へと挨拶する

 

「よ、小猫」

「どうもです、浩太郎さん」

 

挨拶を返したのは後輩である塔城小猫

本日もソファに座りつつようかんをもっきゅもっきゅしている後輩の隣に座る

そしてちらりと部室内を見回してみる

思えばすごい部に自分は在籍しているな、と思う

この学園の二大女神、リアスと朱乃を始め、マスコット的人気を誇る小猫とつい最近加入してきたアーシアを交えるとこのオカルト研究部は美少女しかいない

全クラスの男子が手を伸ばしても届かないところに今自分はいるのだ

 

「やぁ、浩太郎くん」

「おっす、木場。相変わらず爽やかだな」

 

そう言ってこちらに挨拶をしてきたのはこのクラス一のイケメンと名高い男子生徒、木場祐斗だ

 

「さっきいっせーくんにも挨拶したんだけど、軽くスルーされちゃったよ」

「そりゃアイツはイケメンなお前を敵視してるからね」

「全員、揃ったわね」

 

そこでリアスが言葉を発する

部室のメンバーたちが主であるリアスのテーブルを囲うようにソファに座る

もっとも、すでに座っていた浩太郎は座り方を直す程度だが

 

そんな訳で、オカルト研究部の会議がスタートする

 

 

「私が監督役として、イッセーにつきそうわ」

 

夜まで続いた会議の議題が兵藤の話題になったとき、リアスは開口一番そういった

オカルト研究部の活動方針

表向きはオカルトの研究とか言ってるが、実際は違う

ご存知と思うが、浩太郎を除いたメンバーはみんな悪魔だ

夕闇に空の色が変わること、彼らの活動が始まるのだ

そんな場所にどうして浩太郎がいるのかは…前の話を見返して欲しい

ともかく、そんなアクマの仕事とは魔法陣から召喚され、召喚したものと〝契約〟を結び、その願いを叶えること

 

そして対価として何かをもらう

それは金であったり、物であったり、時には命―――ともかく、願いに応じた対価を悪魔側は貰うのだ

最近は何やら魔法陣を描いてまで悪魔を呼び出そうとするものも少なくないらしく、現代悪魔は魔法陣つきのちらしを配って欲深そうな人間に配ってなんとか召喚作業をなんとかしていた

が、未だに新参悪魔である兵藤だけは契約を一つも結んでいなかったりする

だというのに依頼人の評価は最高、という奇跡みたいな出来事ばっかりなのだ

 

「…下品な妄想禁止です」

 

ジト目でざっくり小猫が斬り捨てる

また何か変な妄想でもしていたのか

 

「ふふ、やらしい顔をしてたよ」

 

そんな木場の言葉に兵藤はキレたのか

 

「うるせぇぇ! 俺はお前みたいなイケメンと違って脳内でしかモテないし、エロいことできないんだよ! ちくしょう! 俺もイケメンに生まれたかった! 地球上のイケメンなんていなくなっちまえばいいんだ! ハーレムを作る霊長類はみんな敵だぁぁぁぁ!」

「…やれやれ。相変わらずフルスロットルだなお前」

 

変わらずジト目をする小猫のとなりで浩太郎ははぁ、とため息をついた

そんな兵藤を笑いながらリアスが頭を撫でて慰めている

その時カッと部室の床の魔法陣が光り輝く

こいつが光る、ということはこの街で誰かが悪魔を召喚しようとしている証拠らしいのだ

朱乃が魔法陣へと歩き出して手をかざした

数秒ほどで確認を終えると朱乃はリアスと兵藤に向かって笑みを浮かべる

 

「イッセーくんでもできそうな依頼です」

「わかったわ。じゃあイッセー、行くわよ」

 

リアスが兵藤の手を取り、歩き出そうとしたときふと浩太郎が言葉を発した

 

「リアスさん、俺もついてっていいですか?」

「? えぇ、構わないけど…どうして?」

「いえ、前付き添ったときは襲撃受けて兵藤の仕事ぶり見れなかったので、もう一回改めて見ておきたいなって思って」

「あぁ…確かに以前一緒に行ったときは襲撃を受けたのよね。わかったわ、一緒に行きましょう」

 

リアスはそう言って笑みを浮かべる

浩太郎はソファから立ち上がって軽く背伸びをして軽く気分を変える

前回兵藤に同行したときはわけわからん神父のせいで台無しになってしまった

そんなわけで改めてもう一度友達の仕事っぷりを見ておきたいと思ったのだ

 

「ぶ、部長、本当に一緒に行くんですか?」

「ふふ。貴方は私の可愛い眷属なんだもの。ちゃんと面倒見てあげる、だから付いてきなさい」

 

そうリアスが言うと兵藤は顔を真っ赤にしながら

 

「―――お、お願いします」

 

静かにそう答えた

そんな微笑ましい光景をみながら魔法陣へ歩き出す二人の後ろを浩太郎はついていった

 

「浩太郎さん」

 

そんな時、ふと小猫が自分の名前を呼んだ

 

「いってらっしゃい、です」

「―――俺は何もしないんだけど、まぁ…行ってきます」

 

少し気恥ずかしい気分を感じながら、改めて浩太郎は二人の後を追いかけた

 

 

転移先の家は一言で言えば〝戦国〟だった

正確には戦国グッズばっかりだ

模造刀とか、〝風林火山〟と書かれたなんかとか、もう戦国一色

おまけになんか武者鎧とかまであるのだ

紅具足とか名前がありそうだ

 

「あ、あの」

「うわぁ!?」

 

がしゃん、と唐突に鎧が動いた

声から察するに女性だろう、しかしぱっと見わたしても女性らしい人影は見えない

動いたのはこの鎧具足のみ

…もしやとは思うが、この人なのか

 

「あ、悪魔の方々ですか?」

「―――わお」

 

思わず変な声が出てきた

まさかこんな具足から可愛らしい声が聞こえてくるとは思わなんだ

おまけに、結構可愛らしい声色だ

問われた兵藤はおほん、と咳をしつつ

 

「は、はい。悪魔です」

 

内心驚いているであろう兵藤はゆっくりと肯定した

それに対して具足に身を包んだ女性はほわぁ…なんて声を発しながら

 

「ほ、本当に私は悪魔を呼び出してしまったんですね…。あ、えっと、自己紹介がまだでした。私、スーザンって言います。趣味は戦国グッズを集めることでして」

「外国の方!?」

 

今度の驚きの声は浩太郎だ

てっきり日本人の方かとばかり思っていた

 

「こんな姿でごめんなさい。深夜は何かと物騒ですので、ついこうして武装してしまうんです」

 

貴女が一番物騒なのですがそれは

 

「異文化交流の基本はその国の特色と触れ合うこと。いいわ、素敵ね」

 

リアスさんなんかそれ間違ってます

 

「けど良かったです。もし怖い悪魔さんでしたらこちらの〝国重〟を抜刀しなければ、と思ってましたので…」

 

それ模造刀ですよね?

 

「そ、それで願いっていうのはなんでしょうか?」

「あ、そうでした。…えっと、ですね…」

 

スーザン具足はもじもじしながら兵藤の言葉に答えた

 

「…その、今度、同じ大学の人に、思い切ってアタックしようと思うんです…」

「合戦ですか?」

「ち、違いますよぉ!!」

 

浩太郎の言葉に手をブンブンさせてスーザンは否定する

 

「そ、その、好きな人がいるんです。奥手な自分ですけど、この想いを彼にぶつけたくて…」

「あら、素敵ね。いいわ、その願いを聞き入れましょう」

「本当ですか!? よかった、悪魔さんっていい人なんですね!」

 

リアスの言葉を聞いてスーザンは嬉しそうな声をあげる

 

「それで、私たちはどうすればいいのかしら? 何か演出をするとか?」

「いえ、できれば告白は自分の力で成し遂げたいんです。けど、告白って初めてで…何をしていいかわからなくって」

 

なるほど、己の力で恋を成就させたいわけだ

その意気やよし、である

ふむ、とリアスは考える

 

「浩太郎、貴方はなにか意見あるかしら?」

「そうですねぇ。やっぱり、直接告白するっていうのは?」

「そ、そんな! いきなりは無理です!」

「じゃあ手紙とかは? 自分の想いをまずは手紙に書いて渡せば、伝わるんじゃないですか?」

 

なるほど、とリアスと浩太郎は頷いた

定番かもしれないが、シンプルで伝わりやすいだろう

 

「そうね。ラブレターとかいいと思うわ」

「わ、分かりました! 書いてみます!」

 

そう言ってスーザンは部屋のどこからか何かを引っ張り出してきた

書道セットである

書き初め用紙を下に敷き、ずりずりと硯で墨をすり始めた

 

「いや、別に紙とペンでよくね?」

「え? 書状ですよ? 恋文なんです。…えっと、〝然したる儀にてこれなきの条―――〟」

 

いつの時代だよ

 

「…ちょっと!? それ何語!?」

「日本語ですよ。意味は特別な用事ではないですから、安心してくださいって意味なんです」

「いやそうじゃないから! なんでラブレターなのに特別な用事じゃないんだよ!? いいや、そうじゃなくて、えっと! なんっていうか、それじゃあただの怪文書だって!」

 

兵藤の言葉に絶句するスーザン

どちらかというと暗号文書だと思う

 

「えぇ!? そんな、私これ以外の文字を書けません…」

「なんで!? 日本に留学してるんだから普通の日本語書けるようにしてよ! 留学生なんだから、相手も気になって翻訳してくれるよ!」

「それじゃあ日本に来た意味がありません! 日本男児は〝侍〟の子孫、侍さんとは礼儀を持って付き合いたいんです!」

 

日本にいる人みんなが侍の心を持ってるとは思わないでいただきたい

少なくとも浩太郎は持っていない

っていうか日本をどんな目で見てるんだこの子は

 

「そういえば私もサムライに一度も会ってないわね。街にひとりはいそうだと思ってたけど」

 

不意にそうリアスがつぶやく

 

アンタら日本どんな目で見てるんだ

常に帯刀した連中が闊歩してると思っているのか

それはそれで見たいけど、犯罪になってしまいますから

…しかしこんな具足少女を虜にするとはどんな男性なんだろう

武田信玄みたいなお方なんだろうか

 

「ではこれも意味ないかもしれませんな…」

 

そう言いながら彼女は弓の弦を引きながら嘆息する

矢文か、矢文でしょうね

 

「残念ですがスーザンさん、日本でそれは犯罪ですから」

 

明日の新聞の見出しが決まってしまう

 

「矢文は日本ではトレンドなのだと思ってたんですが」

「なんでそんな偏った知識しかないんだよ。時代が違うよ時代が」

 

彼女は生まれる時代と国を間違えてしまったと思う

 

「けど、仕方ないわね。ラブレターの書き方から教えてあげましょうか」

 

そうリアスが微笑みながら言った

女の子と同じ部屋で一夜を共にする

こう書けば聞こえはいいが、実際は鎧を来た女の子にラブレターの書き方を教える、というマニアックなものだ

オカルト研究部に入って、毎日がいろいろと新鮮だ

 

 

そして数日後

浩太郎と兵藤、リアスの三人はある公園の一角にいた

別に浩太郎は同行しないでも問題ないのだが、あそこまで来たらこの恋の末路がみたいのだ

はっきり言えば興味本位である

 

その場で待つのスーザン(具足)である

ラブレターはなんとか書き上がりそれをなんとか渡したらしい

どうやって渡したのかは聞いていないが、今日その答えを聞くらしい

そこで自分たちは彼女の行く末を見守ってて欲しい、とのことだ

…こんな場所でまで具足姿でいかんでもいいと思う

 

「あ、来たみたいだわ」

 

リアスの言葉に兵藤と二人視線を向ける

そこにはがしゃんがしゃんと音を立てて歩いてくる騎士甲冑に身を包んだ奴がいた

右手にランス、左手に盾を持っている

もしかしなくてもアイツか

 

「…和と洋の奇跡のコラボだな」

「こんなコラボ見たくなかったぜ…!」

 

どうでもいいことをつぶやく浩太郎の横で兵藤が絶句する

そこで兵藤がうん? と気づく

それに釣られて浩太郎も改めて騎士甲冑の男をよく見てみると―――頭に矢が刺さってた

これにはさすがの浩太郎も仰天である

 

「おいぃ! アンタどうやってあの手紙渡したの! まさか射ったんじゃあねぇだろうな!」

「はい。いろいろ考えてみたのですが、私には矢文以外の渡し方ができませんでした」

「直接渡せやぁ! お前のそれ攻撃以外のなんでもねぇだろ! だからランスなんて持ってきたんじゃないのか!」

「立派なランスです。…見とれてしまいそうです…」

 

お前は何を言ってるんだ…?

思わずそう思ったが流石に口には出さなかった

…なんだって兵藤(こいつ)の依頼者はこう一癖も二癖もあるんだろうか

がしゃんがしゃん鳴らしつつ、ついに騎士甲冑が武者具足の前に立つ

傍から見ればこれから殺し合いでも始めるような雰囲気だ

騎士甲冑は地面にランスを突き刺すと懐から何かを取り出す

手紙だ

 

「読ませてもらったよ。…素敵な矢文だった。僕ともあろうものが隙を取られ射抜かれるなんて…。大した弓矢だね」

 

なにをいってるのこの人

 

「そ、そんな…私は、ただ射抜くことしか考えてなくて…」

 

心の臓を射抜くのに?

 

「―――僕でよかったら、キミとお付き合いしたいな…」

「ほ、堀井くん…! …う、うぅ…っ!」

 

涙声のスーザン

どうやら感極まって泣いてるみたいだ

そんな彼女を優しく抱きしめる堀井くん(騎士甲冑)、そんな彼を抱き返すスーザン(武者具足)

どんな光景だ

 

「ふふ、良かったわね」

「はい! みなさんのおかげです。…本当にありがとうございました!」

 

リアスの言葉に彼女はこちらに向かって礼を言う

そんなとなりで浩太郎は兵藤と一緒になってポカンと変な表情をしていた

今目の前に、和と洋の奇跡のカップルが誕生したのだ

 

 

後日譚

そのあとで、仲良くやってるらしいふたりの様子が映った写真が来た、とリアスから連絡があった

しかし先日そんな二人の様子がテレビ報道されたらしく、気晴らしにテレビをつけてたら思わず飲み物を吹きかけた

いい加減甲冑と具足を外してほしいものだ

 

「けど仲良くやってるみたいですね。よかったんじゃないですか?」

「…当人同士が幸せならそれでいいんだけどね。うん」

「だけど、そういう恋愛って憧れますぅ」

「それでも具足と甲冑ってのは勘弁したいなぁ」

 

小猫やアーシアの言葉に答えながら、部室への道を歩く浩太郎

ちなみにそんなスーザンのラブラブ作戦の対価は堀井くんの持っていたランスだった

これは緊急用の武器としても使えるかもしれない

たまに西洋の武器に通じてる木場が手に取って楽しんでた

 

「けど、そういう恋愛ってことは、アーシア好きな人いるんだ?」

「ふぇ!? そ、それは…そのぅ、あのぅ…」

 

顔を赤くしながらモジモジと手を動かしこちらをちらちら視線を送ってくる

? と浩太郎は首をかしげたが、ぽす、と小猫のジャブが浩太郎の腹にヒットした

地味に痛い

 

「そういうのは女の子に聞いてはいけないです」

「で、ですよね…」

 

そんな感じで会話をしていたら、すでに部室の前に到着していた

小猫がノブに手をかけがちゃりと開けた

そして眼前に広がっていたのは―――手をわきわきさせてる兵藤と、いたずらっぽい笑みを浮かべてるリアスの二人だった

 

「うぇ!? こ、浩太郎に、小猫ちゃんに、アーシア!?」

「ごー、お。はい残念、終了よイッセー」

「!? し、しまったぁ!?」

 

何やら本気で落ち込んでいる様子の兵藤

…また何か達成すれば胸でも揉ませてあげる、的な約束でもしてたのだろうか

落ち込んでいる兵藤に向かって小猫が一言

 

「―――変態」

「ぐは!」

 

小猫はそう言ってソファへと歩いて行った

浩太郎も苦笑いを零しつつ、何となく窓際に歩いて行き窓を開けてみる

ふわりと風が頬を撫で、微かだが太陽の光が浩太郎を照らす

 

「…今日も平和だな」

 

なんだかんだあるけれど、こんな日常が嫌いじゃない―――




久しぶりに書いたのでキャラおかしいかも知れない
とりあえずアクマのおしごと編を書いていきます
ただ七巻はしてないので〝楽しい紅髪一家〟は書きません

誤字脱字とか見かけたら連絡をば

追記:ぶっちゃけ蛇足なので読まないでもいいかも
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