その身に宿すはキングストーン   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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やりすぎたでしょうか
相変わらずグダっています

ちょっとばかり小ネタを仕込んでみました
本当にちょっとだけどね!

次回からは戦闘校舎のフェニックスに移ります




「兵藤! 行くぞ」

 

BLACKのその言葉に一瞬兵藤は返事をするのが遅れた

しかしすぐに表情に決意を宿し篭手の宿った左腕を握り締め

 

「おお! 仇を討とうぜ、セイクリッドギアぁぁァっ!!」

<ドラゴン ブースター!>

 

彼の叫びに応えるかのように、篭手の宝玉が輝きを増していく

しかし天野夕麻は未だに嘲笑を浮かべるだけだ

 

「ふん! いいわ、わかるように説明してあげるわよ! それは単純な戦力差!」

 

一気に彼女に向かって駆け出した兵藤はその拳を突き出した

しかし夕麻はその場で舞うように身を動かしそれを躱す

 

「私が千で、あなたたちが一! どうあっても埋めることなどできないこの差を―――」

「ごちゃごちゃうるせぇな!」

 

ぺちゃくちゃと喋るその顔面に向かって、今度はBLACKが殴りつけた

この一撃も余裕で躱せると思ったのか、彼女は笑んだままだった

割と鈍い感触

 

「―――がっ!?」

「兵藤ォ!」

「おおっ!!」

 

叫びに呼応するかのように、再度彼の神器(セイクリッドギア)の宝玉が輝きを増す

そのとき、彼の篭手の宝玉に浮かぶ文字に、Ⅱという数字が見えた

BLACKは首を掴み、兵藤の方へと投げつけた

 

「っぐ!! 人間風情がっ!!」

 

しかし羽を動かし空中で姿勢を御することにより、力の倍加したその拳を躱す

しまった、羽の一つでももいでおけばよかったか

空を飛ぶ天野夕麻の手に光が集まっていく

あれは光の槍だ

 

「食らいなさいなッ!!」

 

投げる瞬間、BLACKは跳躍し兵藤を庇うように前に出た

着地と同時に天野夕麻から投げられたその槍を、BLACKは力を込めた手刀で容易く破壊する

その光景を見た彼女が、今度こそぎょっとしたような表情をした

 

「ば、馬鹿な! 光は悪魔にとって猛毒なのよ!? それに触れる、ましてや破壊なんて…! 貴様、本当に人間か!!?」

「あいにくと、人間だ。少なくとも、心は!」

 

BLACKは両手を広げて、胸の前で拳を打ち付ける

瞬間、彼のベルトから強烈な光が発せられた

眩いその閃光に、思わず天野夕麻は片手で軽くを目を隠す

 

「なっ! こ、この光…! これは…!」

 

ベルトからの強烈な光に姿勢を御せなくなったのか、天野夕麻は地上に落下する

その隙を逃さず、兵藤が駆け出した

 

「おおおおおぉっ!!」

 

閃光に視界が奪われている彼女に、その拳をどうにかする術はなかった

まっすぐ突き出されたその拳は、ガラ空きのボディにぶち当たる

 

「がっ! はぁっ!」

 

肺の中から空気を吐き出した

まだだ、アーシアが受けた苦痛は、こんなものじゃない

兵藤のボディブローが決まり、腹を抑える彼女に、BLACKは容赦なく顔面に廻し蹴りを叩き込んだ

みっともなく、堕天使は地面を転がっていく

ゲホゲホ、と咳き込みながら、彼女は何かを詠唱した

 

直後、現れた魔法陣を介して、そこから十数人の神父たちが徒党を組んで現れる

 

「―――ふ、ふふふ! いくらあなたたちでも、この数相手じゃどうすることもできないでしょう! 私に楯突いたことを、後悔しながら死になさい!」

 

天野夕麻がそう叫んだ

確かに、ざっと数えると十二~三人はいるか

さすがにこの光景を見た兵藤も、焦りの色を浮かべている

そんな彼を励ますかのように、兵藤に言った

 

「兵藤、周りの雑魚は俺が引き受ける」

「え、け、けど浩太郎! いくらなんでもこの数じゃあ…!」

「俺が道を開く。お前は、あの堕天使をぶん殴るために、その力を込めるんだ」

「こ、浩太郎…」

「安心しろ。お前は俺が守る」

「―――へっ! 俺が男で良かったな、女だったら惚れてたぜ!」

「気色悪いこと言うな!」

 

そんな軽口を交わしながら、BLACKはその神父に向かって駆け出した

持っているのはかつてあのイカれた神父が持っていたビームサーベル的な光の剣だ

だがそれがなんだ

不思議と力が湧いてくる

まずこちらに向かって剣を振り下ろす神父の手を攻撃し、光の剣を叩き落とす

地面へと落ちそうになったその剣の柄をBLACKは蹴り上げ、それをキャッチすると同時、その柄を後ろで構えていた別の神父に向かって投げつける

真っ直ぐとんだその柄は勢いよく男の額にぶち当たり、ゆっくりと後ろに向かって倒れていく

しかし彼の動きを止めようと、一人の神父が両腕をホールドし、身動きを封じてきた

確かに手の自由は聞かないが、足は十二分に動く

勢いよくBLACKは剣を突き刺そうとしてきた男の顎をサマーソルトの要領で蹴り上げる

そのまま勢いを利用して、羽交い締めの状態を解き、その神父の背後を取り、そのまま蹴り飛ばす

蹴り飛ばされた神父は自身の前にいた数人の神父に当たり、その行動を抑制する

 

「逃がさんっ!」

 

BLACKは吹き飛ばした神父は見据え、拳を握る

 

 

「―――なあ、神様。いいや、こういう場合は悪魔様かな」

 

兵藤の前で神父と戦っている浩太郎―――いいや、BLACKを見守りながら、彼はその想いを乗せる

あいつらの奥で、笑っている天野夕麻をぶん殴るために

 

「今からほくそ笑んでるあのクソ堕天使を殴りたいんです。あれ以上の増援はいりません、乱入とかもマジでゴメンです。今戦ってる俺の友達が、負けるのも見たくありません。怒りが振り切れそうで―――、だから」

 

兵藤の言葉が終わる時、BLACKが最後の神父を殴り飛ばす

十数人との戦いはBLACKの勝利で終わる

BLACKは、無傷だ

 

「―――う、嘘よ!? あれだけの数がいたのよ!? なのに、なんで傷の一つもついてないないの!? 

「―――行こうぜ、俺の神器(セイクリッドギア)!」

<エクスプロージョン!>

 

兵藤の篭手の宝玉の輝きがさらに光を増していく

それに合わせて、BLACKも構える

兵藤に戦闘経験はない

なら、あいつが殴りやすいように、こちらがアイツの動きを止めればいいだけだ

 

「そんな!? なんで、どうして!? アイツの神器(セイクリッドギア)は〝龍の手(トワイスクリティカル)〟のはず!? たかが力を倍加させる程度の能力なのに、あの男の魔力は、上級悪魔のそれと同等…!?」

 

怯えながらも彼女は最後の抵抗として、再度光の槍を生成し、兵藤に向かって投げつける

しかし今度は、それを弾こうとはしなかった

そんな必要などなかったからだ

ブン、と横薙ぎに振るった兵藤の篭手がいとも容易く光の槍を消し飛ばす

 

「い、いや!?」

 

ついに彼女はその翼を羽ばたかせ、逃走しようとする

しかし、それを許すわけがない

 

「どうした、お前は千じゃなかったのか!」

 

BLACKは一気に跳躍し距離を詰め、勢いを利用し、力を込めた手刀で天野夕麻の片翼を切り裂く

言葉にならない悲鳴と、激痛が彼女を襲っているはずだ

しかし、念には念を要らなければならない

躊躇なく、BLACKはもう片方の羽も引きちぎる

そしてそのまま、兵藤の方へと視線をやり、天野夕麻を投げ捨てる

 

それが合図だった

同時に兵藤は夕麻に向かって一気に駆け出し、BLACKは拳を握り、構えを取る

ギリリ、とより強く力を込める

 

ゆっくりと痛みに耐えながら天野夕麻は立ち上がった

しかし、気がついたときには、兵藤の拳が目の前にあった

 

「吹き飛べクソ野郎ォォォォォっ!!」

 

ゴォン! と鈍い音がした

兵藤が拳を振り抜き、吹き飛ばされた方向にはBLACKが跳躍していた

跳躍のさなか、BLACKは己の足を突き出す

 

「ライダーキック(ケェッ)ッ!!」

 

力の込められたその飛び蹴りは、天野夕麻を確かに射抜く

感触は腹部に当たったか

天野夕麻は地面に激突し、そのままゴロゴロと転がる

ピクピクと痙攣しているあたりまだ生きてはいるのだろう

もっとも、もう活動は出来ないだろうが

 

「―――やったな。浩太郎」

「…あぁ、そうだな」

 

篭手のある腕を出し、BLACKはそれに応えるようにハイタッチを交わす

一瞬篭手の宝玉の輝きが増したような気がしたが、誰もそれに触れることはなかった

敵は討った

だが、彼女が帰ってくるわけではない

もう、笑った顔は見れないのだ

 

 

「二人共!」

 

二人して少し呆然としていると、地下から二人が走ってくる

掃討が終わったのか、二人共少し肩で息をしている

 

「…少し、時間がかかりました」

「お疲れ様。…こっちも終わった」

 

BLACKの言葉に一瞬小猫は首をかしげた

そして木場も気になっている言葉を小猫は投げかけた

 

「…浩太郎、さんですか?」

 

当然の疑問である

ようやっと神父たちを蹴散らして駆けつけたと思ったらなんか真っ黒い人が兵藤の隣にいたのだ

幸いにも声でわかったが

小猫の問いにBLACKは頷いた

 

「そっちは大丈夫か?」

「はい。数に手こずりましたけど」

 

服に付いたホコリを払うように、小猫は手を動かす

木場も服の乱れを整えながら笑みを浮かべた

そんな時、また別の声が彼らの耳に届く

 

「もう終わっていたのね。流石だわ」

 

木場らと同じように地下への階段から紅の髪をしたリアスが笑みを浮かべながら歩いてくる

その横には随伴しているであろう朱乃もいた

リアスは言う

 

「勝ったみたいね。二人…共?」

 

しかしリアスはBLACKを見ると首をかしげる

当然の疑問だが

 

「俺です。リアスさん」

「コウタロウ? …その様子だと、覚醒したと見て間違いなさそうね」

 

再度笑みを浮かべるリアス

今度はその表情を兵藤に向ける

 

「イッセーもお疲れ様。さすが私の下僕くん」

「は、はは。恐縮です」

 

彼女は歩いてきて彼の鼻先をコツンと小突く

それに対し、朱乃の表情は困り顔だった

 

「あらあら。教会がボロボロですわね。よろしいのですか部長?」

「大丈夫ね。ここは捨てられた教会で、私たちはそこでちょっとした喧嘩をしただけ。いわば野良試合みたいなものね」

 

ちなみに、こういった教会を堕天使が保有していたとして、そこで暴れてしまってボロボロにしてしまった場合、待っているのは報復と恨みらしい

どうやら今回は運が良かったようだ

 

「それ、で」

 

リアスは視線を倒れている天野夕麻へと移す

同時に、その惨状を見て若干引いているようにも見えた

 

「…派手にやったわね、想像以上だわ。…とりあえず、起きてもらいましょうか」

「了解です」

 

リアスは朱乃に指示を飛ばす

すると彼女は自分の手に水の塊を生み出した

それをぶっ倒れている天野夕麻にぶっかけた

軽く咳き込んだあと、天野夕麻が目を開ける

 

「ごきげんよう。レイナーレ」

「ぐ、グレモリー一族の娘、か」

 

今更だがコイツの堕天使としての名前はレイナーレというのか

どうでもいいけど

 

「はじめまして。私はリアス・グレモリー、短い間だけど、お見知りおきを」

 

笑顔で言う、が目が笑っていない

彼女は続ける

 

「先に言っておくけど、貴女の仲間は助けにこないわ。私が葬ってあげたから」

「―――な、う、嘘よ!」

 

先手を打たれたのか、彼女はどうにか上半身を起こしその言葉を否定する

リアスは懐から三枚の羽を取り出し、それをレイナーレに見せつけた

 

「カラワーナ、ミッテルト、ドーナシーク。この羽を見ただけでわかるわね?」

 

その羽を見て、更にレイナーレの表情は戦慄する

どうやら彼女が言ったことは真実だったようだ

 

「以前イッセーたちが襲われた時からこの街で複数の堕天使が何かしらの計画を立てていたのは察していたわ。けど、それは堕天使全体の計画だと思って、それを無視していたの。さすがの私も堕天使全体を敵に回すなんて愚は犯したくないからね。けど、何やらこそこそしてる連中がいたと報告を聞いたから、朱乃を連れて少しだけ話に行ったの。実際会ったら、気持ち悪いくらいペラペラと話してくれたわ」

 

リアスが嘲笑い、それを見ていたレイナーレが歯噛みする

 

「甘く見ていたのでしょうね。冥土の土産に教えてもらったのよ。ホント、程度が低い奴らだったわ。どちらが冥土に近いのかもわからないくせにね」

 

リアスが言っていた急用とはこれのことだったのか

…なかなかどうして、面倒見が言いというか

 

「その一撃をもらえばどんなものでも消し飛ばされる。滅亡の力を宿す公爵家のご令嬢…。リアス部長は若い頃から、天才と呼ばれるほどの実力の持ち主ですからね」

 

彼女を褒め称えるかのように木場がつぶやく

同時にうふふ、と朱乃が笑った

 

「別名、〝紅髪の滅殺姫(ルインプリンセス)〟と呼ばれるほどの持ち主なのですよ?」

 

なんですかその別名

ふと、リアスが兵藤の篭手を見る

 

「レイナーレ、貴女の敗因は、コウタロウを人間として甘く見ていたことと、イッセーの神器(セイクリッドギア)をただの神器(セイクリッドギア)と侮ったからよ」

 

リアスの言葉に、レイナーレは怪訝な表情をする

 

「―――赤龍帝の篭手。神器(セイクリッドギア)中でもとびっきりのレア。この篭手に浮かぶ赤い文様が何よりの証拠よ。…あなたでも、名前くらいは知っているでしょう?」

「う、嘘…!? 神滅具(ロンギヌス)の一つ…!? 一時的とはいえ、神や魔王すらも、超えるという代物が…! こんな子供の手に…!?」

「言い伝え通りなら、人間界の時間で十秒ごとに持ち主の力を倍にしていくのがそれの能力。最初が一でも、十秒ごとに倍になればいずれは幹部悪魔に匹敵する力になるわ。極めれば、神を屠る」

 

どうやら彼の神器(セイクリッドギア)はとんでもない力を秘めているらしい

確かによく見てみると彼の篭手には何やら赤い龍の紋章が刻まれている

ブーストブースト言ってのはその都度兵藤の力を増していたのか

最後にあの天野夕麻が恐れていたのは、いつの間にか彼の力が自分をゆうに超えていたから

宝玉の部分をジロー、と見ていたら一瞬、誰かに見られたような感覚があった

? と思い軽くBLACKは自分の周りを見てみたが、それっぽいのは見当たらなかった

なんだったんだろうか、あの感覚は

 

「…とりあえず、お勤めを果たさせてもらおうかしら」

 

そう呟き、彼女はその手に魔力の塊を作り出す

 

「死んでもらおうかしら」

「じょ、冗談じゃない! この力で、私は―――!?」

「愛に生きる。それもいいかもしれないわね、でもあなたは薄汚れてる」

 

愛に生きる?

アイツはいつ愛に生きていたというのだろうか

後半の薄汚れている、という言葉には全面的に同意できるが

ていうかアイツは汚れてる

 

そんな時だ

 

「はーい。どうもこんばんわー」

 

いつぞやのクソ神父である

そういえば刺客とやらはコイツだったのか

浩太郎はいなかったのでわからないが、ここに彼が到着する前に、兵藤は小猫と木場の助力もあって彼を撃退することに成功しているのだ

 

「わわ。ちょっと戻ってきたら上司大ピンチじゃないですかやだー」

「助けなさい! 私を助ければいくらでも―-―」

「褒美? それってエロいやつでもいいてことかな? ん?」

「ふ、ふざけないで! 早く助けなさい!」

 

怒る夕麻

きっと内心焦っているのだろう

〝ただの人間が堕天使を見捨てるなどありえない〟とでも思っているのか

 

「まあめんどいんで助けませんけどね。状況は圧倒的に不利ですしねぇ」

「な!? あなたは神父でしょう!? 私は誇り高き堕天使―――」

「何が誇り高きだバァカ。〝埃かぶった〟の間違いだろうが。お前は美人なだけで、いろいろゴミだ。特に頭な。せいぜい〝オカズ〟が限度だよ。消えてくんちゃい」

 

最後までふざけた様子でそう言うと、彼は興味なさげにレイナーレから視線を外す

彼女の顔は、絶望に染まりきっていた

哀れと思ったが、自業自得だ

同情の余地などない

 

「あ〜…イッセー、だっけ。俺の次のターゲットはお前で決まり。いつか必ずぶち殺してあっゲルン」

 

その言葉に兵藤がゾクリとする

もしかして、わざわざそれを言いに来たのだろうか

 

「そんじゃまた。あばよっ!」

 

手を振った後、彼は素早くその場から姿を消す

本当にあれだけ言いに来たのか

 

「…哀れねぇ、部下にも見捨てられて」

 

淡々と呟くリアス

それに対してただ震えるだけのレイナーレ

ふと兵藤を見てみると、少しだけ、彼女を見る目が違っていた

それもその筈、いっときとは言え、元カノだったのだ

羽ももいだし、もう彼女は何もできないだろうから、惨めに生きててもらってもいいかな…なんて思っていたときだ

 

「イッセーくん! 私を助けて!!」

 

―――今何とほざいたのか

 

「この悪魔たちが、私を殺そうとしているの! 私は貴方が大好きよ! 一緒に、一緒にこの悪魔を倒しましょう!!」

 

―――

一気に感情が冷めていくのがよくわかる

同時に、目の前のクソ女に殺意が沸いてきてきた

ふと気がついたときには、歩き出していた

 

「…コウタロウ?」

 

真っ直ぐレイナーレの元へと歩いていき―――彼女を無言で蹴り飛ばした

この仮面に下には、きっと自分でも想像できない顔をしていることだろう

 

「あぐっ!?」

「…どこまで都合がよく回ると思ってやがる…!!」

「…ひっ!?」

 

ギリリ、と拳を握る

突然のBLACKの行動に、周りが唖然としている

 

「アイツはお前のことを、心から大事にしようとしていたのに…!! 初デートの日をどれだけ待っていたかも知らないで…! なのに、それを…!」

 

その日程が近づくに連れて、髪型はこれでいいか、服は何がいいかだとか、嬉しそうに相談しに来ていた日々が思い出される

今思うと、あの時がそこそこに幸せだったのかもしれない

ゆっくりと歩み寄るBLACK

恐怖に恐れ、後ずさるレイナーレ

しかし、背後は壁、逃げ場などなかった

 

「拒絶したのはお前だろうがァァァァァっ!!」

 

怒りのままに、彼は手刀を振るい、レイナーレは真っ二つに両断される

最後までレイナーレの表情は絶望に染まったままだった

 

 

いつのまにか、BLACKが手にしていたのは淡い緑色の光

アーシアの神器(セイクリッドギア)

 

「…お疲れ様、コウタロウ。あなた、結構熱いのね」

「いいえ、自分でも反省してます。悪かった、兵藤」

「い、いや、いいって。…少しスカっとしたよ。俺の方もありがとうな」

「そう言ってくれると助かるな。…リアスさん」

 

BLACKからその光を受け取る

リアスはこほん、と軽く咳払いをし

 

「さて、これをアーシアさんに返しましょう」

「ぶ、部長。け、けどアーシアは…!」

「イッセー、これ、なんだと思う?」

 

そう言いながら彼女が赤いチェスの駒を取り出した

その赤さは、彼女の髪に匹敵するほどのものだ

 

「…駒、ですね?」

「えぇ、駒よ。これは〝僧侶〟の駒」

 

兵藤の頭に疑問符が浮かぶ

当然、浩太郎の頭の上にも疑問符だ

 

「説明が遅れたけど、爵位持ちの悪魔が手に出来る駒の数は、〝兵士〟八つ、〝女王〟以外の三つが二つずつの計六つの、合計十五体。実在のチェスと同じよ。既にひとつ使ってしまったけど、もう一つ、私には〝僧侶〟があるの」

 

彼女はその駒を持って行きアーシアへと足を向ける

そのまま眠るように息を引き取っているアーシアの胸に、その駒を置く

 

「〝僧侶〟の役割はほかの眷属のサポート。彼女の回復能力は僧侶向きよ。…前代未聞な上に、少し気が引けるけど、彼女を、悪魔に転生させてみる」

 

彼女は己の体に赤い魔力を纏わせた

 

「リアス・グレモリーの名において命ず。汝アーシア・アルジェントよ、今一度我の下僕となるために、この地に魂を帰還させ、悪魔と成れ。我が〝僧侶〟として、新たな生に歓喜せよ!」

 

駒が光輝き、彼女の中に沈んでいく

それと同時に、彼女の神器(セイクリッドギア)もそれを追いかけるように彼女の中に戻っていった

それらが完全に彼女の中に入っていくのを見ると、リアスは魔力の波動をやめる

一息付いたように、彼女は息を吐いた

 

「…ふぅ」

 

少しして、ゆっくりと彼女のまぶたが開き始めた

 

「あ、れ?」

 

それは、初めて聞いた彼女の声だった

無機質な、機械の声なんかではない、その声音

リアスが優しい笑みを浮かべる

 

「悪魔すらも回復させるその力、このまま死なせてしまうのは惜しいわ。イッセー、コウタロウ。あとは、二人が守ってあげてね。一応、先輩なんだから」

「リアスさん。俺は人間ですが?」

「言葉のあやよ。ふふっ」

 

アーシアが上半身を起こす

不思議そうに、キョロキョロとあたりを見回した後、浩太郎と兵藤、二人の姿を視認する

 

「…イッセーさん…あ、っと…」

 

彼女は徐に携帯を探し出す

しかしそれを持っているのは、浩太郎だ

それ以前に―――

 

「大丈夫だよ、アーシア」

 

彼の言葉を聞いたとき、アーシアはえっと言葉を漏らす

 

「帰ろう、みんなで」

 

気づいたときには、彼女に手を差し出していた

 

 

朝である

なんでも今日は朝早くに集まりがあるらしく、少しだけ早めに布団から抜け出した

既に両親には通達済みなので、今日は珍しくこちらが送られる側になった

 

「いってきまーす」

 

そう両親に挨拶をし、靴を履き外に出る

玄関を出た先に、見知った髪の女の子がいた

小猫だ

 

「浩太郎さん、おはようございます」

「小猫…。あぁ、おはよう」

 

短く彼女に返答する

そうしてどちらともなく、小猫は浩太郎の隣に並び、歩き始めた

 

「今日は珍しいな、普段は夜からとか、放課後なのに」

「そこの説明は、みんなが部室についてから部長がするそうです。今はとりあえず行きましょう」

 

てくてくと歩いていく二人

ふと、浩太郎は小猫に聞いた

 

「…昨日はありがとう。俺たちのワガママに付き合ってくれて。怪我とかないか?」

「ご心配なく。…問題はありませんよ」

 

そう呟く小猫は僅かながら笑みを浮かべている…ように見えた

 

「浩太郎さんは友達思いなんですね」

「? 何さ突然」

「昨日の堕天使に向かって、あそこまで激昂した浩太郎さんを見たのは初めてでしたので」

「あぁ…まぁね」

 

少し苦笑いを浮かべながら、彼は頬をポリポリと指先でかく

そもそも、友人知人を馬鹿にされたら怒らない人間はいないと思うのだが

普段はどう見えているのだろうか

 

「小猫、君は普段、どんな目で俺を見てる?」

「優しい先輩、というのが第一印象でした。そこから話すようになっていって…面白い先輩っていう印象も持ちました」

「…自分で振った話だけど、そう言われると少し照れるな」

「…浩太郎さんは?」

「え?」

「浩太郎さんは、私をどう見てました?」

 

そう問われ、浩太郎は少し考える

少し考えた後、彼は答えた

 

「ちっちゃい子、だったかな―――痛い!?」

 

そんな返答をしたら思い切り足を踏まれた

手加減してくれているのだろうが、それでも痛いものは痛い

 

「…浩太郎さん、私のどこを見て小さいといったのですか」

「背丈だよ! 純粋にちっこくて、可愛らしいなって思ったのが第一印象で…」

 

そう答えると小猫は足をどけてくれる

〝戦車〟の力で踏まれたらきっとえげつないことになっていたに違いない

 

「そういうことなら…許してあげます」

「…え? 何が?」

「さ、早く向かいましょう。浩太郎さん」

 

彼女は浩太郎の手を握って、少しばかり速度を上げる

結局彼女が何に起こっているかはわからないまま、浩太郎は小猫の速度に合わせそれを追いかけた

 

 

部室に到着すると、そこには既に兵藤とリアス…そして駒王の制服に身を包んだアーシアがいた

 

「あっ…! おはようございます浩太郎さんっ!」

 

アーシアは浩太郎を見つけるととても嬉しそうな笑顔を浮かべた後、彼の近くへと小走りで駆け寄ってくる

 

「おはよう、アーシア。…元気だね」

「はいっ! だって…ようやくあなたのお声を聞くことができたんです! リアスさんには、本当に感謝してもしきれません!」

「そこまで言っていただけると、私も少し照れちゃうわね」

 

あはは、と彼女は頭をかく

軽くリアス咳払いをして

 

「イッセーには言ったけど、見ての通り、彼女もこの駒王に通うことになったわ。二年生で、クラスも浩太郎たちと同じ。転校初日っていうことになっているから、サポートよろしくね」

 

そうリアスから言われると、アーシアがぺこりとお辞儀をする

相変わらず健気だ

 

「どうかよろしくお願いします、イッセーさん、浩太郎さん」

 

それを見て、兵藤の顔が緩む

きっと彼女を紹介して、それを見て悔しがる悪友二人の顔を想像しているのだろう

というか、その光景しか想像できない

 

「任せろアーシア! あとで俺たちの悪友も紹介するからな」

「はいっ!」

「ちょっと待て、なんでしれっと俺も入ってんだ」

「? 違うのか?」

「友達ではあるが、悪友なのはお前だろうが」

 

そんなやりとりを交わしていると部室へと残りのメンバーが入室してくる

 

「おはようございます、イッセー君、部長、アーシアさん、塔城さん、浩太郎くん」

「ごきげんよう、イッセーくん、部長、アーシアちゃん、小猫ちゃん、浩太郎くん」

 

そう挨拶してくれる

いつの間にか兵藤の事をイッセーと呼んでいる

おそらく自分がいない時、彼自身そう呼んでくれと頼んだのだろうか

…よし、意地でも自分は兵藤と呼び続けていこう

みんなアーシアも仲間と認めてくれているし、嬉しい限りだ

 

「さて、みんなが揃ったところで、ささやかながらパーティでもしましょうか」

 

言いながら彼女がパチンと指を鳴らした

するとテーブルの上にケーキがポンと出てくる

リアスは少し顔を赤くしながら

 

「その…たまにはみんなで集まって、こういうのもいいでしょう? し、新入部員も入ってきてくれた事だし、ケーキを作ってみたの。一緒に食べましょう」

 

照れくさそうに彼女は言う

というと、そのケーキは手作りのようだ

そんな部長の心遣いに感謝をしながら、なんとなく浩太郎は窓から空の光景を見た

見える雲の形は変わらなかったが、それらはゆっくりと動き、確かな時間を刻んでいた

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