あと相変わらずな出来です
ではどうぞ
今回から戦闘校舎のフェニックスです
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ジリリリリ
目覚ましが鳴り響くテンプレな音に、梓馬浩太郎は覚醒した
布団の中から手を出して、目覚ましの位置を手探りで探しながら見つけ出し、ボタンを押す
音が止まった
同時に浩太郎も上半身を起き上がらせ、軽く背を伸ばす
現在時刻は四時…普通なら軽く二度寝するような時間帯ではあるが
「…よっこいせ」
少々重い体を動かして布団から這い出る
コキリ、と首を回しながら寝巻きを脱いで動きやすいジャージに身を包む
なぜこんな早い時間に起きたかというと、兵藤の特訓に付き合うという理由があるのだ
早い話が朝練である
浩太郎はまだ寝てるであろう両親に気を使いながら家を出た
兵藤の家まで行くとそこには既に赤いジャージを着込んだリアスが立っていた
彼女は浩太郎に気が付くと笑みを浮かべた
「おはよう、コウタロウ」
「どうもです、リアスさん」
互いに交わす短い挨拶のやり取り
彼女の近くには自転車が置いてあり、おそらくそれに乗りながら兵藤の特訓に付き合うのだろう
付近に兵藤がいない所を見ると、まだ起きていないか、もしくは準備しているかのどちらかだ
とりあえずこれから運動するので軽く準備運動をしておく
ラジオ体操を考えた人は偉大だと個人的に思いたい
やがて家の玄関から急いだ様子で兵藤が飛び出てきた
「わ、悪い浩太郎、遅れた」
「気にしてない。さ、始めようぜリアスさん」
「えぇ、そうね」
浩太郎の言葉に頷きながら、リアスが持参してきたであろう自転車に跨る
準備運動を終えた兵藤とともに、今日もランニングをスタートさせた
◇
今現在、浩太郎は兵藤の前を走っている
少なくとも昔の自分ならランニングなんて三十分もすればしんどくなっていただろう
しかしどうしてかはわからないが、BLACKへと覚醒した現在、妙にタフになっている気がするのだ
バッタ男だった時の比じゃない位だ
今なら屋根から屋根へと飛び移れる気がしてならない
「は、ハーレム王に、俺はなる…! ぜー、はー」
自分の後ろにいる兵藤がそんな己の夢を口にする
夢としては最悪、というか最低な願望かも知れないがアイツが確固たる夢を持ったことは素直に喜んでもいいかもしれない
兵藤はまだ悪魔としては弱い部類に入り、かつその他の能力も軒並み高いとは言えない
故に彼のトレーニングにリアスが付き合っているわけだが
「私の下僕が弱いなんてことは許されないわ」
そんなわけで、リアスはたかだか朝練といえども妥協はない
始めた当初は少しきつかったが、数日もすれば浩太郎の体は慣れてきて、割と普通にこなせるようになってきた
慣れって、怖いね、という話である
ふと視線の先に目的地である例の公園が見えてきた
一足先に付いた浩太郎はその場で屈伸をしながら兵藤を待った
少ししてリアスの乗った自転車に追っかけられて兵藤が走ってきた
すぐ近くで彼は止まり、大きく肩で息をする
「はい、お疲れ様。次ダッシュ行くわよ」
「おいーす」
疲れ果てる兵藤をスルーし、次のメニューへと移行する
現実は非常である
◇
一通りの走りのトレーニングを終えた浩太郎は、兵藤のトレーニングを見守る形となる
今現在、彼は自分の背にリアスを乗せながら腕立て伏せを実践している
駒王の男子たちから見れば発狂ものだろうその絵ヅラはまさしく美女と野獣だ
…腰の動きが変になった気がする
アイツは何かエロい事を考えていると直ぐに顔に出る
それを察したのか、べしっと彼の尻を叩かれた
「邪念が入ってるわ。腰の動きがいやらしいわよ」
「そ、そんな…。ぶ、部長が、背中に乗ってるって、だけで…!」
「あら、喋る余裕が有るなんて成長したわねイッセー。もう百回追加しましょうか?」
鬼だ
そんなやりとりを見ていると、不意に後ろの方から女の子の声が聞こえてきた
「すみませーん」
可愛らしい声
浩太郎はその声の方向へと視線を向ける
そこには金髪碧眼の女の子―――アーシア・アルジェントがとてとてと走ってきていた
「はぅんっ」
そして転んだ
◇
「どうぞ、浩太郎さん」
「ありがとう、アーシア」
差し出されたお茶を受け取り、浩太郎は一息ついた
彼女は浩太郎に差し出したあと、今度は兵藤へと歩いて行き、彼にも自分が持参したであろう水筒からお茶をカップに注ぎ込み彼に手渡す
ちなみに腕立てのあと背筋と腹筋をこなして兵藤はもうガッタガタだ
「と、ところで、アーシアがどうしてここに?」
茶を飲みながら兵藤が問いかける
「その、毎朝浩太郎さんとイッセーさんがここでトレーニングしていると聞きまして…。その、私も微弱ながらお手伝したいなー、って。…今日はお茶くらいしかご用意できませんでしたけど」
「はは、ありがとうアーシア。助かったよ」
ぽむ、と浩太郎はアーシアの頭を軽く撫でた
アーシア・アルジェント
長い金髪と透き通った翠色の双眸をした元シスターだ
どうして元、というのがつくのかと言うと、この子は以前にとある事件に関与してしまい、結果命を落としてしまう
彼女はリアスの力で悪魔として蘇り、現在ここにいる、というわけだ
ふと、茶を飲みながら何かを考えているリアスの表情が目に入った
「…どうしたんすか? 部長」
「ッ。い、いえ、なんでもないわ。それより、ちょうどいいわ。今日にしようと思ってたから。コウタロウの家に行きましょう」
「…? 俺の家? なんでです?」
「もう荷物が届いてると思うから」
この言葉の意味を数分後に、浩太郎は理解する
◇
「…何ですかこれは」
我が家の玄関前に積まれたそのダンボールの山を見て、浩太郎は呟いた
送り主は誰なのだろうか
「さ、コウタロウ。この荷物を部屋に運んであげて」
「え? 俺の家に? なんでです」
「これはアーシアの荷物だもの。運んであげるのが紳士的だとは思わない?」
「あ、アーシアの?」
リアスの追い打ち攻撃
「今日からアーシアは、コウタロウの家に住むんだから」
◇
許可は一発で降りた
以前まだ彼女が存命なとき、浩太郎は彼女を連れて自宅に逃げ帰った時があった
そのとき一応説明をしていたのだが、意外にもそれが生きたのか、割と二つ返事でオッケーが出た
それには若干リアスもたじろいでいた
念の為に聞いておいてみる
「…なんで俺の家なんですか?」
「あら、イッセーの家でもよかったの?」
「いえ、そうではなくて」
それを言ってしまえば確かに我が家の方が安全…かどうかはわからないが
「普通に女性の家でも良かったんじゃないですか? 小猫とか」
「私も最初はそう言ったんだけど…あなたの家がいいって、アーシアが、ね」
「アーシアが?」
そんな会話をしつつ、ちらりと彼女を見やった
件のアーシアは浩太郎の両親と兵藤を交えて楽しく談笑していた
自分で言うのもなんだが、うちの両親はとても気さくな人達だ
本日は珍しく午後出勤なので今の時間帯はゆっくりしている
浩太郎の視線に気がついたのか、ふと兵藤がこちらの視線に気がついた
今話しをしている三人に断りをいれ、こっちに早歩きで近づいて来る
「話終わったのか?」
「あ、あぁ。大丈夫だ、問題ない」
「ほら、あれよ。彼女の花嫁修業だと思えば」
「…彼女には俺なんかよりふさわしい人、いると思いますが」
そう浩太郎は若干ジト目になりながらリアスを見た
そんな彼女は見事に目をそらしながらアーシアに視線を合わせていたのを浩太郎は見逃さなかった…が、はぁ、とため息を吐く
そんな時だ
「…花嫁、か」
小さく呟いた彼女の横顔が、兵藤の目にはとても寂しげに見えてしまった
◇
そんなわけで彼女が浩太郎宅に住まうようになって早数日
慣れ、というのは恐ろしいもので、数日もしてしまうとすっかり生活の一部になってしまった
今や一緒に朝食に用いた食器を洗うのも完全に日課と化した
ただ、以前と違う点は、互いに言葉が通じる、ということである
「浩太郎さん、この食器は…?」
「あぁ、そっちの棚にお願い」
「はい、わかりましたぁ」
前は聞こえなかった言葉がはっきりと耳に聞こえてくる、というのはやっぱり感慨深いものがある
やっぱり、言葉とは偉大なものだな、と改めて実感したほどだ
と、そんな作業に没頭していると、ピンポーン、と玄関からチャイムを鳴らす音が聞こえた
浩太郎はアーシアに作業を任せて、軽く手を拭いて玄関へと小走りで駆け寄っていく
「おはようございます、浩太郎さん」
チャイムの鳴らし手は塔城小猫だった
基本的に彼女は玄関前で待機して、時間が迫るとチャイムを鳴らしてくれる、ということをしてくれている
「ごめん小猫、もう少しで終わる。待っててくれ」
「いつものことですから。ただ、急いでくださいね?」
小猫にもう一度「悪い」と返しながら、台所に戻って再度作業を進ませる
今日は少しのんびりしすぎてしまっただろうか
◇
それからアーシアのチラシを配るの手伝ったり、時たま兵藤とバカをやったり、などといういつも通りの日常をすごしていた
そんなある日、通学路を歩く兵藤と浩太郎、そしてアーシア
今日小猫は先に行ってます、と先にメールで連絡をもらったので今はいない
また、妙にしんどそうにしている兵藤が浩太郎とアーシアの目についた
「…どうした、お前」
「お体の具合でも悪いんですか?」
純粋な心配の声
昨晩何かあったことは明らかだ
しかし彼は「だ、大丈夫!」と変に笑顔を作り頑なに話そうとしなかった
まぁ無理に聞こうとも思わなかったが
余談だが今日の朝練は中止になっている
朝早くに連絡が来て、リアス自身から〝今日は中止にさせて〟と連絡が来たのだ
なんでだろう、と今も疑問に思っている
そんなこんなで教室への道を歩くと、彼の悪友である元浜がイッセーに向かって憤怒の表情で駆けてきていた
「イッセーェェェェッ!」
反対側から松田も来ていた
「死ーねェェェ!」
なんか知らないが二人共怒っているようだ
とりあえずこちらも被害を被るには嫌なので、アーシアを連れ少しだけ離れることにする
そんなことをしていたら、松田と元浜のダブルラリアットが兵藤に直撃した
つうこんのいちげき
首を抑えつつ咳き込む兵藤に、松田が叫んだ
「ふ、ふざけんなァァァ!」
「お前って奴はァァァ!」
元浜が彼の首元を掴み、兵藤を睨む
「なんだよ、一体」
こいつ確実に原因を知っているな
そう感じさせる発言だ
「…アーシア」
「? なんですか浩太郎さん」
「我々は先に教室に入っていましょうね」
なんだかこの先の会話を純真なアーシアに聞かせるのはいけないことだと感じた浩太郎は、彼女を連れて先に教室に入っておくことにした
◇
「部長のお悩み、か。多分、やっぱりグレモリー家に関わることじゃないなかな」
旧校舎のオカルト研究部部室に、兵藤とアーシアと一緒に向かう途中、木場はそう言った
確かにここ最近妙にリアスのテンションが下がっているのは目に入っていた
どうやら木場も知らないみたいだ
しかしきっとそれは彼女自身の悩みでもあるので、それを聞くというのも気が引ける
部室の扉前についたとき、不意に木場が目を細めた
「…ここまできて初めて気配に気づくなんて」
顔を強ばらせる木場
? とも思ったが特に気にするでもなく浩太郎は扉に手をかけ、その部室へと足を踏み入れた
室内には既にリアス、朱乃、小猫…そして銀髪のメイドさんみたいなのがいた
誰だこの人
明らかに不機嫌なリアス、相変わらずニコニコな朱乃
小猫は部屋の隅っこに座っていて、なんだかここらの人たちと関わりたくないって感じだ
…なんでしょうかこの空気
銀髪メイドが口を開く
「―――なぜ、この場に人間がいるのでしょうか」
いてはいけないのか
ゾワッとするような気配がしたが、気圧されてはおしまいだ
同様にこちらもそのメイドの瞳を真っ直ぐに見据える
「グレイフィア。…彼がコウタロウよ」
「彼が? …なるほど、その眼光も頷けます」
なんか知らんが認められた
戸惑う浩太郎にメイドが軽く一礼し
「はじめまして。私はグレイフィア。グレモリー家に仕えるものです。以降、お見知りおきを」
「あ、あぁ。梓馬浩太郎です。よろしくお願いします」
礼をされたので、礼をして返す
よく見るとこのお方、どこぞの某十六夜さんに似ている気がする
懐中時計とナイフ持たせたら完璧なのではなかろうか
「…全員揃ったわね。部活をする前に少し話があるの」
「お嬢様。私が―――」
グレイフィアの言葉を彼女は手を向けて制止させる
必要ないという意思表示だろう
「実は―――」
そう彼女が何かを喋ろうとした瞬間だ
床に書かれた魔法陣が輝き出す
転移魔法か? しかし眷属の人たちはみんなここにいるし、彼女の親戚かなにかかとも思ったがそれも違う
何故かというとその魔法陣の形がグレモリーとはまた違う紋様に変わったからだ
「…フェニックス」
付近に居る木場がそう漏らす
フェニックス? そうするとやはりこれは別の悪魔なのか
室内をまばゆい光が覆い、そこから人影が姿を現す
その瞬間、ゴォ!と炎が巻き起こり室内を熱気で包み込む
面倒くさい演出を入れやがるな、と浩太郎は若干イラついた
やがて炎の中で佇む男がブン、と己の腕を横に薙ぐとその炎が振り払われる
「…人間界は久しぶりだ」
そこにいたのはぱっと見チャラい格好をした男
赤いスーツを来て、胸元を着崩しているチャラ男だ
チャラ男は部室を見渡してリアスを見つけると口元をニヤリとさせる
「会いに来たぜ、愛しのリアス」
何を言ってるのこの人
知り合いらしいが、リアスは半目でチャラ男を見つめているだけだ
「さって、リアス。早速だが式場を見に行こう、日取りも決まってる、早いほうがいいだろう」
チャラ男はリアスの腕を掴む
「―――離してちょうだいライザー」
彼女にしては珍しく、低い声音
完全にキレている
ライザーと呼ばれたチャラ男は特に気にする様子もなく苦笑いするだけだ
「おい、あんた部長に対して失礼だぞ。女の子に、その態度はどうよ」
気づいたとき、兵藤が口を開いていた
しかしチャラ男は兵藤を軽く一瞥すると
「…お前誰?」
そう言ってきた
明らかに不機嫌な口調だ、おまけに絶対見下している
それに答えるように、兵藤が言った
「俺はリアス・グレモリー様の〝兵士〟! 兵藤一誠だ!」
「あっそ」
まさかのスルー
全く興味のなさそうな顔だ
「…すんませんが、誰ですか?」
その言葉に今度は驚いたようなリアクションをする男
その後で浩太郎を見て怪訝な顔をする
「…なんでこんなところに人間が紛れ込んでるんだ?」
またそれか
「というかリアス、俺のこと話してないのか?」
「話す必要がなかったからね」
「あらら。相変わらず手厳しいねぇ」
男は目元を引きつらせながら苦笑いをしていた
イマイチ状況を理解していない兵藤と浩太郎にグレイフィアが介入する
「兵藤一誠様」
「は、はい」
「梓馬幸太郎様」
「はぁ」
「この方はライザー・フェニックスさま。純潔の上級悪魔であり、古い家柄を持つフェニックス家のご三男であらせられます」
上級悪魔でフェニックス
なるほど、爵位持ちということか
おまけにフェニックス‥不死鳥とかと呼ばれる伝説上の生き物だ
「そして、グレモリー家次期当主の、婿殿にあらせられます」
「…婿?」
浩太郎の言葉にグレイフィアが頷く
そしてさらにもう一言
「リアスお嬢様とご婚約されているのです」
「…え?」
その呟きは兵藤のものだ
少しして、もう一つ
「ええええええええええええええええええええ!?」
あまりのことに、兵藤は絶叫した
目の前のチャラ男は、リアスの婚約相手だったのだ
―――拝啓、ご両親
まためんどくさいことが起こりそうです