その身に宿すはキングストーン   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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今回少々無理矢理感があるかもしれません
あと相変わらず誤字脱字もあるかもしれないです
もし見かけたら報告をば

ではどうぞ




ごくり、と朱乃が差し出したお茶をチャラ男が飲んだ

そしていやー、などと笑みを作り

 

「リアスの〝女王〟が入れてくれた茶は美味しいものだな」

「痛み入ります」

 

笑ってるけど、笑ってない

普段言っている「あらあらうふふ」がない時点でなんとなく浩太郎は察した

現在リアスはソファに座っており、その隣にライザー…だったか、が座っている

既に婚約者気分なのか馴れ馴れしく彼はリアスの肩に手を置く―――そしてそれをリアスが振り払う

が、ライザー怯まない

構うことなく髪やら肩やらに手に触れている

…さすがにあそこまでやられると少々気持ち悪い

よっぽど自分に自信があるのだろうか

ついでになんとなく兵藤を見てみると、なんか知らんが気持ち悪い笑顔を浮かべていた

 

「…お前なんか昨日楽しいことでもあったのか」

「え? あ! いいや、大丈夫!」

「…卑猥な妄想禁止です」

 

小猫がボソリとぶった斬りつつ、浩太郎の付近へと避難するように歩いていく

…よくよく見れば兵藤は唾液まで流してるじゃないか

友達やめようかな

 

「イッセーくん。とりあえず、ヨダレ拭いたほうがいいよ」

 

爽やかな笑みをとともに木場は彼にハンカチを差し出した

 

「よ! 余計なお世話だよ!」

 

そう反論しながら兵藤は己の袖口で自分の口元を拭う

それを見たアーシアは屈託ない笑みを浮かべ

 

「きっとこのあとお茶の時間ですから、そのことを考えて涎が出ちゃったんですね」

 

天使過ぎるだろう君

いいんだよ? 罵っても

 

「…寛大な彼女に感謝しろ」

「あぁ! …ありがとう、アーシア」

 

浩太郎の言葉に頷きつつ、彼はアーシアへと謝罪と感謝のこもった言葉を贈る

そんな時だ

 

「いい加減にして!」

 

やや大きめなリアスの声が部室内に響き渡る

声の方へと向いてみれば立ち上がったリアスがライザーを睨んでいた

しかしそれに対するライザーはニヤリ顔のままだ

 

「前にも言ったはずよ! 私は貴方とは結婚しないと!」

「あぁ、聞いたさ。だがそういうわけにもいかないだろう? 君のところのお家事情も。結構切羽詰っているのでは?」

「余計なお世話よ! 私も次期当主である以上、相手は自分で決めたいの。父も兄も一族も皆性急過ぎる! 当初では、私が人間の大学を出るまでは自由にさせてくれると!」

「あぁその通りだ。君は基本的に自由だ。大学に行っても構わないし、下僕も好きにするといい。だが君の父親もサーゼクス様も心配なんだよ。家が途絶えるのが怖いんだ。先の戦争で大勢の純潔悪魔が亡くなったし、堕天使、神のとの両陣営とも拮抗状態。純潔の悪魔同士がくっつくのは、これからのことを考えてなんだ。純潔悪魔、その新生児が貴重なことを君だって理解してないわけじゃないだろう」

 

話の内容はまったくもって理解できない

要は悪魔のこれからについてのお話のようだ

ライザーはカップに口をさらに話を続けている

 

…正直全然頭に入ってこなかった

要点を聞きかじった程度で軽く纏めてみると早い話が家の家系を途絶えさせないための縁談、ということでいいのだろうか

なんでもかつて七十二柱と呼ばれた悪魔はもう半数も残っていないらしい

おまけにリアスの家は兄が既に家を出ており、残っているのはリアスだけで、必然的に家を継ぐのはリアスだけ、という状況らしい

わかり易く、一言で表すならこれは政略結婚だ

純潔ゆえにしきたり、みたいなものだろうか

 

「私は家を潰さない。婿養子だって迎え入れるわ」

「なら話は早い。早速俺と―――」

「けどそれを決めるのは私よ! 私は私が良いと思った者と結婚する。古い家柄の悪魔にも、相手を選ぶ権利はあるわ」

 

その言葉を耳にして一層ライザーの表情が不機嫌になる

おまけにわかり易く舌まで打った

 

「…俺もな、フェニックス家の看板を背負ってるんだ。この名前に泥をかけるわけにもいかないんだ。こんな狭くて汚い人間界の建物になんて来たくなかったしな。…この世界の炎と風は汚い、炎と風を司る悪魔としては、耐え難いんだ!」

 

ボウ! とライザーの周囲に炎が巻き起こる

周辺をチリリ、と火の粉が舞った

 

「―――俺は君の下僕全てを燃やし尽くしても、君を冥界に連れて帰るぞ」

 

殺意と敵意が部室全体に広がった

ライザーから放たれた敵意が、部員全員を包み込む

その言葉に、ピクリと浩太郎が反応する

怖くなったのか、ふとアーシアが浩太郎の腕に抱きついてきた

浩太郎は優しくその手を握り返して上げながら、―――ライザーを睨んだ

彼と同じように、思い切り殺意を敵意を込めながら

 

「そんなことやってみろ」

 

ゾワリ、と部室にいた者全員が浩太郎の変化に気づく

驚くもの、驚愕するもの、それぞれだ

浩太郎は続ける

 

「―――俺はお前をブッ殺す」

 

彼の口から告げられた、普段の浩太郎なら言うはずもない言葉

それを聞いて、ほぉ、とライザーは口元をニヤリとさせた

 

「…人間ごときが面白い冗談を言うじゃないか。この俺を殺す、だと? 初めてだぞ? この俺にそんな口を聞いた馬鹿は」

「…」

 

それに浩太郎は答えない

ただ静かに睨んでいるだけだ

その眼光に苛立ちを覚えたのか、ライザーが顔を歪める

 

「気に入らないな、クソガキ」

「奇遇だな。俺もお前が気に食わないよ」

 

ボォ! とライザーの体が炎が包み、それに合わせて浩太郎が握り拳を作る

互いに張り詰めた空気の中、冷静に介入する人物が一人

グレイフィア、というメイドだ

 

「浩太郎様、ライザー様。落ち着いてください。…これ以上やるのでしたら、私も黙っているわけに参りませんが」

 

静かだが、迫力のある声色だった

その声を聞いたライザーはわずかに表情を強ばらせる

一方の浩太郎はライザーが構えを解いたのを見て、自分も戦闘の態勢を崩した

 

「…最強の〝女王〟と呼ばれる貴女にそんなこと言われたら、さすがに俺も怖いよ。化物揃いと評判のサーゼクス様の眷属とは絶対相対したくない」

 

ライザーのその言葉を見るに、どうやら部長の兄の影響は相当高いものらしい

自分が無知なのもあるせいか、グレイフィアというメイドからは殺気も何も感じることは出来なかった

いつしか、部員のみんなも臨戦態勢を解いており、部室が落ち着きを取り戻している

 

「…こうなることは重々承知でした。正直に言いますと、これが最後の話し合いの場だったのです。…この結果を予測されていた旦那様たちは、最終手段を用いることにしました」

「最終手段?」

「お嬢様、意見を押し通すのなら、ライザー様と〝レーティングゲーム〟で決着をつけるのはいかがでしょうか」

「―――!?」

 

彼女の言葉に心底驚いてあるリアス

レーティングゲーム

爵位持ちの悪魔が行うゲームのことだ

最近そんな話題もなかったのでそういえばそんなのもあったな、と思い出した

しかしそれには成人した悪魔でなければできないという制限があったはずだ

 

「公式なゲームは成熟した悪魔でしかできません、が、非公式な純潔悪魔同士のゲームなら、半人前の悪魔同士でも参加が可能となります。この場合、多くが」

「身内同士か、お家のいがみ合い、ね」

 

どうやら知人同士でやるのなら多少そこらは緩和されるようだ

ため息混じりにリアスが続ける

 

「…つまり、お父様たちは私が拒否した場合を考えて、最終的にゲームで娘の人生を決めようというの。…まったく、どこまで私の生き方を弄れば気が済むのかしら」

 

完全にリアスは怒っている

それもそうだ、自分の人生がこんなくだらないワンゲームで左右されてしまうのだから、本人としてはたまったものではないだろう

 

「では、お嬢様はこのゲームを拒否すると?」

「まさか。絶好の機会よ。いいわ、ゲームでケリをつけましょう」

 

挑戦的な彼女の口調

しかし対するライザーは口元に笑みを浮かべながら

 

「受けるのか。構わないが俺は既に成熟しているし、公式なゲームもいくつかこなしている。今のところは勝ち星の方が多い。…それでもやるのか?」

「やるわ。貴方を消し飛ばしてあげる」

「いいさ。そっちが勝てば好きにすればいい。しかし俺が勝てば、リアスは俺と即結婚してもらうぞ」

 

にらみ合うリアスとライザー

互いに睨みをきかせ、見えないところでガンを飛ばしあっている

 

「承知しました。お二人のご意志、このグレイフィアが確認させていただきます。両家の立会人として、私が指揮を取らせていただきますが、構いませんね?」

「えぇ」

「あぁ」

 

グレイフィアの言葉に二人が同意する

 

「承知しました。両家には、私からお伝えします」

 

そう言って彼女はぺこりと頭を下げる

なんだか本当にすごいことになってしまった

おまけに純潔悪魔同士らしいこの戦い、人間である浩太郎は参加資格がない

…応援とかは許されるだろうか

 

「ところでリアス。…そっちの人間は別として、そいつ以外のメンツが君の下僕なのか?」

 

その一言にリアスは片眉を吊り上げた

 

「だったらなんなの?」

「話にならないぜ? 君の女王くらいしか、俺の可愛い下僕たちに対抗できそうにないな」

 

そう言ってライザーはパチンと指を鳴らした

すると部室の魔法陣が光り出し、フェニックスの魔法陣が映し出される

そこから出てきたのはライザーの眷属であろうモノたちだ

おおよそ十五名、フルメンバーだ

 

「これが俺の可愛い下僕たちだ」

 

…いや、それはいい、特に問題ではない

問題は別にある

それは、その眷属が皆、女の子、ということだ

同時に浩太郎は絶句する

 

(…まさか兵藤以外にもハーレムを夢見てる奴がいたとは思わなんだ)

 

しかもコイツは実現させている

それを見て感激したのかわからないが、兵藤が涙を流し始めた

 

「…おい、リアス。どうしたんだコイツは」

「あー、すんません。コイツの夢はハーレムなんです。…ぶっちゃけ羨ましいんじゃないかと」

 

額を抑えて困っているリアスに代わり、浩太郎が返答する

 

「きもいー」

「ライザー様ー、この人気味悪いですー」

 

口々にライザーの眷属が正論みたいなことを言ってきた

もっと言ってやってくれ

 

「そう言うな。上流階級のものに羨望の眼差しを向けてくるのは、下賎な輩の常だ。俺たちがアツアツな所を見せつけてやろう」

 

そう言うとライザーは眷属の一人と実に濃厚なくちづけを交わし始めた

おまけにくちゅり、くちゅりと舌を絡ませている

…上級悪魔ってこんな奴ばっかりなのか

 

「…あ、あの、浩太郎さん?」

「なんだい? アーシア」

「その、どうして私の目を隠すのでしょうか…?」

「教育に悪い映像が流れてるからね、ごめんよアーシア」

 

純真な彼女にこんな映像は危険すぎる

彼女を汚すべきではないと判断した浩太郎は両手で彼女の目を隠していた

 

「お前じゃあこんなことできまい、下級悪魔くん」

「俺が思ってることそのまま言うんじゃねぇ! ちくしょう、ブーステッドギア!」

 

思っとったんかいお前

嫉妬心出しまくりで兵藤は己の左手に赤い篭手を顕現させる

〝赤龍帝の篭手〟だ

 

「お前みたいな女ったらし、部長には不釣り合いだ!」

「その女たらしにお前は憧れてんだろうが」

「うおい! 浩太郎、お前どっちの味方だよ!?」

 

痛いところを突かれたのか兵藤が若干照れを隠すように言葉をあげる

 

「英雄色を好む、というからな。人間界のことわざだが、いい言葉だ。コイツは俺なりのスキンシップ、お前だってリアスに可愛がってもらってるだろう」

 

英雄はなろうと思ってなるものではないと思うのだが

 

「何が英雄だ! お前なんて焼き鳥で十分だ!」

「な! 焼き鳥だとぉ!? 調子こきやがって! リアス、下僕の教育はどうなってやがる!?」

 

沸点低いなあの焼き鳥

上流階級なら笑って流す位の器があってもいいと思うのだが

ちなみにリアスは知らんと言わんばかりにそっぽを向いている

 

「ゲームなんか必要ない! ここで全員倒してやる!」

<ブースト!>

 

篭手の宝玉が輝き出す

やけに気合の入った言葉に、ライザーは嘆息するだけだ

 

「ミラ、やれ」

「はい、ライザーさま」

 

相手は小猫位の女の子で、武器は棍だ

しかし相手は見た目だけで判断してはいけない、というのが戦いの常だ

相手を侮ったのか、案の定兵藤はあっさりといなされて地面を舐めることとなった

 

「イッセーさん!」

 

彼は腹を抑える

どうやら一撃を入れられたようだ

アーシアは駆け寄って彼の腹部に手を当てる

それを見たライザーはたった一言

 

「弱いなお前」

 

はっきりとその事実を告げる

 

「ミラは俺の〝兵士〟。下僕の中では一番弱いが実戦経験も悪魔の質も上だ。ブーステッドギア? ハッ」

 

ライザーはわざわざ兵藤の近くへ歩いてきて、その神器(セイクリッドギア)を軽く足で小突いた

 

「確かにコイツは凶悪無比、無敵の神器(セイクリッドギア)だ。使い方じゃあ神も悪魔も倒せるさ。過去にも使い手はいたが、未だに神も魔王も退治されてない。なぜか」

 

ライザーは嘲笑う

明らかに、彼は兵藤を見下していた

 

「この神器(セイクリッドギア)が不完全だからだよ。使い手も弱者ばかりだったてことだ、お前も例外じゃない。人間界の言葉で例えるなら豚に真珠、宝の持ち腐れ。そうだ、お前だよリアスの兵士くん?」

 

その言葉に歯噛みする兵藤

言い返したいのだろう、しかし残念だが、ライザーの言っている言葉は申し訳ないが事実なのだ

そこで、ふとライザーの視線が浩太郎へ向かう

 

「…ところで、お前は一体何なんだ、人間のガキ」

「リアスさんの協力者、ですけど?」

「バカ言え、俺の殺気を受けて眉一つ動かさない人間がただの人間な訳無いだろう」

 

意外に観察されていた

…案外このライザーという男、結構慧眼なのかもしれない

 

「お好きにご想像ください。俺はこのゲームに参加する資格はありませんので」

 

最も、ライザーが実力行使に出たらこちらも反撃させてもらうが

 

「ほぅ? なんなら特別、ということで人間の参加を認めてやってもいいぞ? どうせ非公式なんだからな」

「ライザー!」

 

ライザーの言葉を遮るようにリアスが言葉を発する

 

「彼はこのゲームに関係ないわ! 家の問題は、私と私の眷属で片をつけましょう」

「―――なら構わないが、このままでは俺の圧勝は間違いない。リアス、このゲームは十日後でどうだ?」

「!? …私にハンデをくれるというの?」

「感情だけで勝てるほどレーティンゲームは甘くないぞ。下僕の力を引き出してやらねば敗北は確実だ。才能があってもなくても、初戦で実力を出せず負けた奴らを俺は何人も見てきた」

 

なるほど、一理ある

いくら才能があっても、己の鍛錬を怠ったら勝てる戦いも勝てなくなるのだ

 

「十日もあれば君なら下僕をなんとかできるだろう」

 

ライザーの視線がそのまま、兵藤に映る

 

「彼女に恥をかかせるなよ。お前の一撃はそのまま、彼女の一撃になるんだ」

 

意外にもかっこいいことを言っている

その言葉が、確実にライザーの実力が見た目だけではないということを表していた

それは、彼なりにリアスを想っての言葉なのだろう

 

「じゃあな。次はゲームで会おう」

 

ライザーはそう言い残し、眷属の女の子達と魔法陣の中へと消えていく

部室には、オカルト研究部のみんなが残された

 

 

「今日はごめんなさい。自分のことに、無関係な貴方を巻き込んでしまって」

 

あのあと、部活は中止となり、解散

浩太郎はリアスに呼び止められ、朱乃と一緒に部室に残っていた

 

「大丈夫ですよ、気にしてないです」

 

そう浩太郎はリアスを気遣うように言葉を発する

一緒に戦えないのは残念ではあるが、彼女らオカルト研究部ならきっと勝利することができるだろう

 

「もしこの後、特訓とかするなら、俺も誘ってもらえますか?」

「? 構わないけど、どうして?」

「ワガママです。気持ちは一緒に戦いたいので」

 

そう言って浩太郎は小さい笑みを浮かべる

それを見たリアスもまた、小さい微笑みで返してくれた

 

「わかったわ。浩太郎、今日中に荷を作っておいて」

「…荷を? どこか行くんですか?」

「明日から修行をしに行くから、荷物をまとめておいて、っていうことよ」

「あぁ、なるほど。了解です、アーシアにも伝えておきます。ついでに兵藤にも」

「お願いするわね。…それと、ありがとう」

 

リアスからの言葉を背に、そして朱乃にも別れの挨拶をして浩太郎は部室を後にした

 

 

アーシアに口頭でそのことを伝えた後、今度は携帯で兵藤に明日のことを伝える

その作業の傍ら、時間を聞いてなかったのを思い出した

そういえば一体何時に出発するのだろうか

 

「とりあえず早めに寝といたほうがいいのは確かだな」

<あぁ、わかった。ありがとう浩太郎>

 

電話の向こうにいる兵藤の声にはいつもの覇気がない

無理もない

ああも力の差を見せつけられては浩太郎だって落ち込んでしまう

 

<なぁ、浩太郎>

「うん? なんだ兵藤」

 

その声には元気がなかった

浩太郎は兵藤の次の言葉を待つ

 

<俺、強くなれるかな?>

「それはわからないな。お前次第…ってしか言えないよ」

<そう、だよな。はは>

 

兵藤が笑う

しかしその笑いには何も込められておらず、正しく乾いた笑いといったようなものだ

 

<…部長は、あのライザーってのと結婚したくないんだよな>

「みたいだな。まぁ、確かにいけ好かない奴だしな」

<…俺、部長には返しきれない恩があるんだ。部長のために戦いたいんだ…!>

 

少しづつ、彼の声に力が入ってくる

その声色に、浩太郎は少しだけ安心した

いつも必要以上に元気なのが彼なのだ、やっぱり落ち込んでいる姿なんて似合わない

 

<見ててくれ浩太郎。俺、絶対強くなってみせる! お前の隣に立てるくらいに!>

「あぁ、なれるよお前なら」

 

それは心からの言葉

付き合いは高校に入ってからだが、浩太郎は知っている

兵藤は、やればできる奴なのだ

 

「とりあえずまた明日な」

<おう、またな>

 

そんな会話を終えて、浩太郎は通話を切った

なんだかんだで兵藤にも少し元気が戻って良かったと前向きに考えるべきだろう

しかし、相手は曲がりなりにも不死鳥、という別名で知られるフェニックスだ

とは言っても、今の自分には先のことなどはわからないのだが

そんな考えをしていると、こんこん、と扉がノックされた

 

「浩太郎さん、お風呂あがりましたー」

 

ガチャリ、と扉を開けて顔をのぞかせるアーシア

浩太郎は腰掛けていたベッドから体を浮かせ、携帯を机の上に置き扉の方へ歩いていく

 

「あぁ、わかった。アーシア、今日はとりあえず早めに寝て、明日に備えよう」

「はい。お休みなさい、浩太郎さん」

 

そう言って彼女は笑顔を作る

そんな彼女に対して浩太郎は彼女の頭を軽く撫でながら自分もお風呂場へと向かった

 

レーティングゲームまで、後十日―――

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