焼き鳥編はおそらく次回が最後になるかな(希望的観測
もし誤字脱字等見かけましたら報告を
ではどうぞ
翌日
ジリリ、となった目覚ましを止めて浩太郎は布団から這い出る
正直に言えばいつ出かけるのか、というのか聞かされてはいないのだが、と考えたところでピンポーンと家のインターホンがなった
誰だろう、と思いながら浩太郎がドアを開けるとそこには小猫がいた
彼女の後ろには既にリアスら他のオカルト研究部のメンバーも控えていた
「おはようございます浩太郎さん。いきなりですけど準備の方はできていますか?」
その言葉でだいたい察した
「あぁ、待っててくれ、着替えてくるから」
小猫にそう断って、一度浩太郎は部屋に戻って動きやすい格好に着替え、そのあとでアーシアのところへと歩を進めた
彼女は既に起きて神に祈りを捧げている最中(ちなみに悪魔なので頭痛に苛まれながら頑張ってた)だった
少しだけ見てて微笑ましいと思ってしまったのは内緒である
◇
そして現在
「ひー…ひー…ひー」
浩太郎の横ではそんなことを言いながら結構な荷物を抱えた兵藤が歩いていた
ふと誰かが「やっほー」と叫んだのか、そんな声がやまびこで聞こえてきた
空は快晴、周りは豊かな自然に包まれて小鳥がチュンチュンと鳴く
この光景は正しく登山日和と言っていいだろう
今現在、一行は修行をするために山に来ている
それで、拠点(と言っていいのだろうか)へと向かう道中
なんでも目的地につくまでもまた修業の一環のようで、兵藤はとても大きいリュックに、肩にもかけた荷物、と重装備だ
「あ、あの、私も―――」
「大丈夫よアーシア。これくらいこなさないとイッセーは強くならないわ」
相変わらず鬼だ
わからないでもないけど、ここで疲弊してしまったらまともにトレーニングもできないのでは、とも思ったが悪魔だから大丈夫なんだろう
「部長、山菜を摘んできました。今晩の食材にしましょう」
そんなことを言いながら木場が通り過ぎていく
同じくらいに荷物を背負っているのに疲弊した様子も見せていない
特に苦もなくスイスイと登っている姿に兵藤は言葉を失っている
ちなみに浩太郎も自分の荷物とアーシアの荷物をいっぺんに持ってはいるが、兵藤や木場ほど大きくないのでそんなに浩太郎は疲労してない
「お先に」
さらに隣を兵藤以上の荷物を持った小猫が通り過ぎていく
さすが戦車、力を司るだけはある
そんな彼女を見て触発されたのか、兵藤が奮起した
「うおりゃあぁぁぁぁぁっ!!」
兵藤は全身に力を入れ、一気に山道を駆け上がっていく
そんなこんなでようやく別荘にたどり着いた
◇
その別荘は木造作りのものだった
なんでもこれもグレモリーの所有物らしくて、普段は魔力で景色に溶け込み一般人には見えないらしいが、今回はトレーニングに使うらしくその姿を表している
別荘内に入ると木造特有の独特な香りが鼻腔をくすぐった
一度リビングに荷物を置き、浩太郎は大きく背伸びをした
兵藤は水を一杯飲んだ後、ばったりと倒れてしまった
ちなみに女性陣は着替えるために二階に上がっている
「俺も着替えるかな」
といっても上と下を履き替えるだけなのだが
「僕も着替えてくるね」
木場も着替えるべくジャージをもって一回の浴槽へと歩いていく
「覗かないでね?」
「ぶん殴るぞこの野郎」
ぶっ倒れて余裕のない兵藤に代わり浩太郎が呟く
アイツにしては目がマジだったと後に兵藤は語っている
ただでさえわけのわからない薄い本のネタになっているのだからそういう質の悪い冗談はやめていただきたい
いや、割と本気で
さくっと着替えを終えて一階で待っているとジャージに着替えた女性陣が降りてきた
しばらくして体力の戻った兵藤も着替え終えて、彼を視界に捉えるとリアスが口を開いた
「さぁ、早速外で修行を始めるわ」
◇
すぐ近くで兵藤が木場と剣術のトレーニングをしている傍ら、小猫と浩太郎は組手を組んでいた
本来浩太郎は女性に手を上げるのは男性として恥ずべきことだと思っている(例外はある)
しかし今回は組手なのでそんなことを言ってたら組手にならないのでしっかりと取り組むことにする
そしてこの塔城小猫という女の子、可愛い見た目の割に繰り出してくる技が結構エグい
立った状態での徒手空拳に蹴りの技、それに加えて
しかしホールドされても強引に抜け出してしまう自分にも驚きが隠せない
女の子といえど彼女は戦車、オカルト研究部の中では一番力が強いのだが
「…浩太郎さん、本当に人間ですか?」
「割と傷つくからやめてくれ、そんなこと言うの」
一番疑いたいのはほかでもない自分自身なのだ
この合宿に来る途中に、試しに手頃な小石があったからそれを思いっきり握ったら粉々に砕けたのはいい思い出である
…思い出したくもないけど
改めて自分の中に宿っている力は凄まじいものだということを理解する
「ちょっと自信なくします。結構本気で打ち込んだヤツも簡単に受け止められるし、関節を決めようとしても強引に抜け出されちゃうし」
「ははは…なんか、ごめんね」
「…もう一回行きましょう。今度は一撃を決めてみせます」
「あぁ、行こうぜ、小猫」
そんな短い会話の後、もう一度組手を再開した
◇
ある程度時間が経ち、今度は相手を交換し、浩太郎は木場との剣のトレーニングを開始する
付近では小猫に吹き飛ばされている兵藤の姿が目に入ったが気にしたら負けだと判断し、浩太郎はスルーした
とはいえ正直剣なんて握るのは初めてであり、喧嘩でも棒術なんかしたことはない
この特訓では木場から一本取るのではなく、なんとか木場についていくことを目標としている
幸いにも身に宿っている力のおかげか、木場の剣の動きはなんとか追えている
しかし一転、攻撃に転じようとすると容易く剣を封じられ喉元につきつけられる、というようなことを何回か繰り返していた
「―――木場、少し休憩を入れよう」
「奇遇だね。僕も提案しようとしてたよ」
既にお互い肩で息をしている
ここまで十本近くノンストップで稽古をつけてもらっていたので、お互いに疲労が溜まってしまったのだろう
木場は木刀を地面に置きながらふぅ、と息を一つ吐いた
「なぁ、木場」
「? なんだい?」
水を飲んでいる最中
浩太郎は木刀を地面に突き刺し、小猫に吹き飛ばされている兵藤を見ながら木場に質問する
「兵藤はどうだ?」
質問の内容は、無論兵藤一誠のことだ
浩太郎は参加できないが、このレーティングゲーム最大の切り札は彼自身だ
おそらくではあるが、口ではああ言ってはいるが、ライザーは己の勝利に絶対の自信を持っているだろう
侮っているといってもいい、そいつの虚をつけるのは、兵藤しかいないのだ
「〝今〟は弱いね、間違いない。だけど」
「だけど?」
「強くなるよ。僕もあんまりイッセーくんのことは知らないから、何とも言えないけど、強くなる。部長の言葉を借りるなら、将来性に期待ってやつかな?」
「違いない。見てみろよ木場」
そう言われ浩太郎は指をさす
その方向には小猫と組手を繰り広げている兵藤の姿があった
相変わらず一蹴されてはいるが、吹き飛ばされてからもう一度吹き飛ばされるまでの時間が長くなっているような気がする
そればかりか少しづつではあるが小猫の攻撃を回避している姿もあった
といっても数発程度ではあるが、十分な進歩といえよう
「確かに、コイツは将来性に期待かもな」
「はは。だね」
一通り水を飲み休憩を終えた浩太郎は地面に突き刺さっている木刀を引き抜いた
それに合わせて木場も地面に置いてある木刀を手に取る
「俺たちもやろうか、木場。俺は一緒に戦えないけど、気持ちだけは戦いたいからな」
「もちろんだよ、君も、オカルト研究部の仲間だからね」
「そう言ってくれると嬉しいね」
お互いに微笑み合い、再び木刀を打ち付け合う
その場には木がぶつかり合う音と、人が木に衝突するような独特な音が響いていた
◇◇◇
「…美味しい」
「あぁ、マジで美味い! うお、美味ぇぇぇっ!」
その日の晩
その日の修行を終えた一行はテーブルで夕食を頂いていた
肉に魚と選り取りみどりだ
肉はリアスが仕留めたらしい猪の肉、なんでもボタン肉って言うらしいがよくわからない、が美味しいのでよしとする
次は魚、これもリアスが川で釣ってきたようで、シンプルな塩焼き、ご飯と合う
他にも色々な料理があった、しかも全部朱乃の手作りらしい
料理も出来るとは思わなんだ
「こ、浩太郎さん」
「うん?」
「そ、その、こちらのスープはいかがでしょう?」
テーブルに添えられるように置かれているオニオンスープ
こちらはアーシアのお手製らしい
浩太郎に飲んで欲しいのか、少しだけ頬が赤い
とりあえず一口飲む
「…うん、美味しい。美味しいよアーシア」
「ほ、本当ですか!? はぅ、よかったです…」
浩太郎がアーシアにそんな感想を言うとくいくい、と浩太郎の服の裾が引っ張られた
それは自分の隣に座っている小猫だ
「小猫?」
「…そ、その。こっちのサラダはどうですか」
普段の彼女からは想像できない表情
その表情の真意を読み取れない浩太郎は小猫が推したサラダへと視線を移す
オニオンスープと同じようにこれもまた添えられるように置かれているポテトサラダ
こちらは小猫が作ったらしい
朱乃が言うには、包丁を使う手つきが少し危なっかしい、とのことだったが
サラダの横に置かれたスプーンを使い、自分の皿にそのサラダを持っていく
そして一口
「あぁ、問題ない。旨いよ小猫」
「…ありがと、です」
若干顔を赤くしながら彼女は言った
見えないところでぐっ、と拳を握っているのに、気づくものはいなかった
そんな空気を読み取り、タイミングを見計らってリアスが言葉を発した
「イッセー、今日一日修行してみて、どうだった?」
その言葉を聞いた兵藤は、箸をおいてうつむき加減に正直に答えた
「…俺が、一番弱かったです」
「そうね。それは今は確実ね」
リアスはそう告げる
彼女は朱乃から注いでもらったお茶を飲みながら言葉を続けた
「コウタロウはともかく、イッセーとアーシアは実戦経験が皆無だわ。それでも、アーシアの回復、イッセーのブーステッドギアは相手も無視できない。最低限相手から逃げ切れるくらいの力は欲しいわ」
「逃げるって…そんなに難しいんですか?」
その言葉にリアスは頷く
「逃げる、っていうのも戦術の一つ。けど、一度相手に背を向けて逃げるということは倒してくださいって言っているようなものなのよ。実力が拮抗しているならともかく、力の差がはっきりしてるなら尚更ね。そういう相手から逃げ切れる、というのもまた実力の一つなの。イッセーとアーシアは逃げ時も教えないといけないわね。面と向かって戦う術も教えるから覚悟しなさい」
「了解っす!」
「はいっ」
イッセーとアーシアがそれぞれ返事をする
…間接的にではあるが、彼女を巻き込んでしまったのは自分たちでもあるのだ
今回のゲームとは別に、自分自身もまた鍛えていかないといけないな、と浩太郎はひっそりと思う
「―――さて。真面目な話はおしまい。ご飯を食べたらお風呂に入りましょう。ここは温泉だから素敵なのよ」
リアスのその一言で兵藤の目つきが変わる
そして察する―――ああ、これはエロいことを考えてる目つきだ
「先に言っとくが俺は覗かないぞ」
「僕も浩太郎くんに同意、だよ?」
「ば! バッカ! お前らな!」
「あらイッセー。私たちの入浴を覗きたいの?」
リアスの言葉に全ての部員の視線が兵藤に集中する
しかしこれ以上掻き回すと面倒なので釘を刺しておくことにする
「リアスさん」
「ふふ、冗談よ。というわけで、覗きはダメよ? イッセー」
くすくすといたずらっぽい笑みを浮かべるリアス
…いいや、なんか普通に男性に裸身を晒すことがおかしいと思うのだけど
普通は抵抗あると思うのだが
そんなこんなで、修行の日々は過ぎていく―――
◇◇◇
ある日の別荘での夜のことだ
浩太郎はなんとなく寝付けずに、景色を見るために外へと足を運んでいた
そこで彼は夜に瞬く星を眺めていた
眺めていることに特に理由はない
一応、寝ているであろう兵藤と木場には起こさないように注意を払ったはずだから起きてはいないはずだ
…もし起こしてしまったら、後ほど謝ろう
そんなことを心に決めながらのんびりと星を眺めていた
着実に近づいていくレーティングゲーム当日
しかし自分に出来ることは応援だけだ
修行の最中、兵藤は時たま、自分の左腕と会話をしていたような姿が見受けられた
何をしているのだろうか、とも思ったが話しかけられる雰囲気でもなかったので、その時は何も言葉をかけることはなかった
「浩太郎さん」
不意に、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた
そこにいたのは可愛らしい寝巻きを来た塔城小猫だった
彼女はてくてくと歩いていくとちょこんと浩太郎の隣に腰掛ける
「ごめん、起こしちゃったのか?」
「いえ。ちょっと喉が乾いたから、水を飲もうと一階に降りようとした時に、浩太郎さんの姿が見えたもので」
そう言って浩太郎を真似るように同じように空を見上げた
そんな小猫のの言葉に浩太郎は「そっか」と短く返答する
少しの静寂
浩太郎が話をしようか迷っているとき、先に小猫が口を開いた
「今回のレーティングゲームの相手、フェニックスなんですけど」
「あ、あぁ。ライザー、だっけ」
小猫はこくんと頷く
「浩太郎さんは人間界のフェニックスの伝説は知ってますよね」
「あぁ、大雑把に言うと、その血を飲めば不老不死になれるっていう…」
フェニックス
命を司るその聖獣の涙はあらゆる傷を治し、体に流れる血液を飲めば、不老不死になれると崇められ、いろいろな国々に伝説を残している
創作の案にもなっていたりするほどだ
しかし、聖獣と呼ばれるフェニックスとは別に、悪魔側にもフェニックスがいる
それが公爵の地位を持ち、〝七十二柱〟にも数えられる悪魔側のフェニックス―――通称〝フェネクス〟だ
「知ってのとおり、聖獣のフェニックスと悪魔のフェニックスは名称が違うだけで能力的にはほぼ同等。…つまりは、不死身ということです」
「―――」
正直それについてはあまり驚きはしなかった
仮にもフェニックスの名を冠しているのだ、不死身、という能力は容易に想像できた
ふと彼女を見ると、どことなくだが少し震えているような気がした
「これは部長から聞いたのですけど、あのライザー・フェニックスの戦績は八勝二敗。そして二回は懇意にしてる家系への配慮でわざと負けただけで実質の全勝らしいです。なんでも、公式タイトルを奪取する候補にもなっているとか」
そこまで聞いて、なんとなくこの政略結婚の全貌が見えてきた
リアスが否応なしに結婚に応じる様に、絶対に勝てるはずのない相手を仕込んだのだ
いくら強いグレモリーの娘でも、不死身の不死鳥に勝てるはずなどないと踏んでこのゲームを仕組んだのだ
…胸糞悪い話だ
己の娘をなんだと思っているのだろうか
「…私は、部長に勝利を挙げたいんです」
星を見上げながら呟く彼女の横顔は、いつにもまして凛々しく見えた
しかし、その体はどことなく震えているようにも見えた
「けど同時に、このゲームに勝てるか…怖いんです」
それはわずかに見せた彼女の弱さでもあった
「確かにイッセー先輩は確実に強くなっています。…それでも、大事な時に私がミスをしてしまったらって考えると…」
きゅ、と彼女は拳を握る
小刻みに震える彼女の手に、浩太郎はその手を重ねた
その行動に、びくりと小猫が反応する
普段は白い彼女の頬がほんのわずかに朱色に染まる
「大丈夫」
何気ない言葉だった
「俺はゲームに参加できないから、小猫の気持ちはわからない。…だけど、大丈夫」
それは浩太郎なりにひねり出した言葉なのかもしれない
もしかしたら、そこに他意はないのかもしれない
彼は、いつもの調子でその言葉を紡いだのかもしれない
「君なら、出来る。根拠はないけど、そう信じてる」
そう笑顔で彼は言葉を発した
真顔で、かつ真面目にそんな言葉を吐く姿を見るのはこれが初めてだった
そんな些細な言葉が、僅かにあった恐怖心を和らげてくれた
小猫はそっと握られた手を握り返し
「…ありがとうございます。私、オカルト研究部のみんなで、勝利を掴んでみせます」
「おぉ、そのためにも、またトレーニングを頑張らないとな」
「はいっ」
少しではあるが、彼女に元気が戻ってきたような気がした
彼女の微笑みを見届けた浩太郎は徐に立ち上がり、思いっきり背伸びしながら、首を回す
コキリ、という音が聞こえた後僅かに体が軽くなるような感覚を覚えた
「さて、今日はもう寝よう。明日も早いからさ」
「はい。お休みなさい、浩太郎さん」
そう短く挨拶し、戻っていく
とてとてと走っていく彼女の背中をひとしきり見守った後、自分も就寝するべく、部屋へと戻った
ふと、触れ合った手を見てみる
その手はまだ、暖かった
◇◇◇
その翌日のことである
「イッセー、ブーステッドギアを使って。模擬戦を開始する前に
「は、はいっ」
リアスに促され、兵藤が
実はこの修行を始めた初日、兵藤はリアスから
その封印を、今回初めてリアスは解いた
「ブースト!」
<ブースト!>
兵藤の言葉に反応して
これで彼の力は倍になっているはずだ
その十秒後、<ブースト!>と再度音声がなる
これで更に兵藤の力は倍になった
能力の増大には特に制限はないと思われていたが、実際そうでもない
試しに浩太郎が見守る中どこまで倍になるか試してみたら数分経ったら兵藤が倒れてしまった
リアスが言うには
―――貴方がトラックだとして、想定されてる積載量以上の荷を載せたらどうなると思う?
つまりはそういうことだ
倍になるのは力という荷物、つまりその倍になっていく力に、トラックである兵藤が耐えられないと動けなくなってしまうのだ
そんなわけで倍加十二回位繰り返す
リアスがストップ、という指示を飛ばし、兵藤がそれに答える
「いくぞ、ブーステッドギア!」
<エクスプロージョン!>
その音声は倍加を停止させる意味も含まれているようで、早い話がストッパーだ
一度止まると、一定時間そのパワーアップ状態で戦えるようになるのだ
使用できる時間は、その強化状態での行動次第
動いた分だけ減り、疲れていればその分時間も少なくなってくる
「その状態で、祐斗と手合わせしてみてちょうだい」
「はい、部長」
祐斗は武器である木刀を兵藤に向けて構える
必要ないとは思うが、念のため聞いてみる
「兵藤、剣か素手か、どっちだ?」
浩太郎は木刀を用意しつつ、聞いてみる
兵藤は少し考えて
「大丈夫だ、素手で行く!」
「オッケー了解」
案の定、兵藤は素手を選んだ
そして彼は自分なりの構えを作り、木場に視線を見据える
その瞬間、木場の姿が消えた
騎士の特性は素早さだ、目を離せばそこから鬼のような連撃が飛んでくる
しかしここまでトレーニングしていた兵藤も負けてはいない
すかさずに繰り出された木刀の一撃を両腕をクロスさせて防御する
一瞬驚きで止まった木場へと拳を放ったが、やはり木場のほうが素早く、躱されてしまった
その後空中へと逃げた木場が兵藤に一撃を見舞う、が兵藤もその痛みを無視し、木場に向かって蹴りを放った
しかしやはりよけられる
「イッセー、魔力の一撃を撃ってみなさい。自分が一番イメージしやすい形で魔力の塊を撃つの!」
リアスからの指示
兵藤は一瞬戸惑うが、やがて彼女の指示に従い、手のひらに小さな魔力の塊を作り出した
ソレを木場に向かって投げた瞬間、変化は起こる
つい先程まで米粒クラスの魔力の弾が大きい岩のように大きくなったのだ
これが
しかし木場は速さを司る騎士、浩太郎から見ても速度はそこそこだが、言ってしまえばそこそこ程度だ
しかし、威力は抜群だった
なぜか
兵藤が放った弾丸は目標を失い、木場の後ろにあった山へと飛んでいく
その刹那、凄まじい爆音と一緒に、当たった山が吹き飛んだのだ
正しく文字通り、風景を変えた
<リセット>
彼の篭手からそんな音声が発せられる
どうやら魔力切れのようだ
「そこまでよ」
リアスがストップをかける
その言葉に合わせ、木場も木刀を下ろし、兵藤は地面に座り込んでしまった
まぁ確かに自分が撃った攻撃が山一つ消し飛ばしてしまったら驚くか
「どうだった? 祐斗」
「正直驚きました。本当は最初の一撃で決めようと思っていたのですが」
木場は持っていた木刀を見せるように動かす
「しかし彼の防御を崩すことができず、二擊目、上空からの連撃でダウンを取ろうと思いましたが、これもダメでした」
説明しながら木刀のをとある部分を指差した
よくよく見るとその木刀は折れかけていた
「木刀を魔力で覆っていたのですが、それでも彼の体が硬すぎて大したダメージも与えられていないって感じです。あのまま続けていたら、僕は獲物が壊れて逃げ回るしかなかったです」
「ありがとう祐斗。…そういうことらしいわ、イッセー」
そう言われ、キョトンとする兵藤
一瞬何かを考える素振りを見せるあたり、もしかして昨晩、自分が外に出ている間にリアスと何かあったのだろうか
「イッセー。貴方は私に、自分は一番弱く、才能もない、って言ったわね」
「は、はい」
「それは半分正解。ブーステッドギアを発動していないあなたは弱いわ。けど、篭手の力を使うあなたは変わるの」
リアスは吹き飛んだ山へと視線を移した
「あれは上級悪魔のそれと同じクラスよ。あれが当たれば、大体の相手は消し飛ぶわ」
「ま、マジっすか!?」
「基礎を鍛えたあなたの体は莫大に倍加していく
リアスは兵藤のもとへ行き、その肩を軽くたたく
未だに自分を疑う彼自身を励ますかのように、自信満々に彼女は言った
「貴方はゲームの要。イッセー一人で戦うのなら、倍加中は隙だらけだけど、レーティングゲームはチーム戦。貴方を助けてくれる味方がいるの。信じなさい、そうすれば、みんな強くなれる。ライザーに勝てるわ」
「つ、よくなる。俺が?」
リアスは頷いた
そして部員のみんなを鼓舞するかのように、彼女は言葉を続けた
「相手がフェニックスだろうと関係ない。私とその眷属がどれだけ強いのか、思い知らせてやりましょう!」
『はいっ!』
力強く、オカルト研究部員みんなが返事をした
その光景を、浩太郎は笑顔を浮かべながら見守っていた
決意を新たにしたオカルト研究部は、修行の日々を順調に終えて、山篭りの日々も終を告げる
そして、決戦当日へと日は進んだ
◇
しかし
自宅で勝利の報を待っていた浩太郎に届けられたのは、リアス・グレモリーが敗北した、という無慈悲な報せだった