Case.1『始まる』
「……私のミスでした」
「私の選択、そしてそれによって招かれた全ての状況」
「結局、この結果に辿り着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて」
「……いまさら図々しいですが、お願いします、先生」
「きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません」
「何も思い出せなくても、恐らくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから」
「ですから……大事なのは経験ではなく、選択」
「あなたにしか出来ない選択の数々」
「だから先生、どうか――」
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「そしてどうか、先生の手助けをしてくれませんか」
「この世界には今、先生の”選択”を奪おうとする者がいます」
「貴方がいればもしかしたら、先生の”選択肢”も増えるかもしれません」
「どうかお願いします」
「コードNo.7…いえ、
エージェント.ゼッツ」
…チク…タク
時計の音だけが聞こえる部屋で”私”は机に置かれた書類の山と格闘する。
「…よし。今日の仕事も終わり!」
壁に掛けられた時計は、23時を示している。
ギヴォトスに来て数週間が経過し、ここでの生活も慣れてきた頃、私は連邦生徒会の手に負えない問題を次々とこなしていた。
『今日もお疲れ様です!』
「ありがとう、アロナ」
机のタブレット端末から、いつものように元気な声が聞こえてくる。
彼女は”アロナ”と言い、タブレット端末…及び”シッテムの箱”のメインOS、並びに私の秘書らしい。
『今日はいつもより早く終わりましたね。先生もココでの生活に慣れてきたということですね!』
「それもあるんだろうけど…最近、シャーレに来る書類の数が少ないんだよね」
ここに来て最初の頃は机に山ほど置かれていた書類も、今じゃ少し減っている。
「いったいどうして…
コンコン
うん?」
その時、シャーレの扉からノックが聞こえてくる。
「入っていいよ」
「失礼します」
入ってきたのは、目の下に隠しきれないほどの隈が出来た七神リンだった。
「申し訳ないのですが、やって欲しい書類が出来てしまいまして…いいですか?」
「それは勿論いいんだけど…大丈夫?」
目の下にある隈を見た先生は、心配そうに聞く。
「はい…大、丈夫…です。」
「でもさっきから体フラフラしてるよ?本当に?」
「…は、い。大丈夫…です。ご心配おかけして本当に…
そう言いながらも、前方に倒れそうになるリンを間一髪支え、ソファに移動させる。
「最近寝てる?仕事が忙しいのは分かるけどこのままじゃいつか本当に倒れちゃうよ」
「私が出来る事ならなんでもするから。先生を頼って?」
「…先、生……実は…」
リンは先生に前から合ったある”問題”を口にする。
「最近…悪夢を見るんです」
「悪夢?」
「はい…夢の中で突然怪物が現れては目の前で学園を破壊してくるんです」
「いつも戦おうとはするんですが…私の力じゃ太刀打ち出来ず…いつも目の前で学園が壊されていくんです」
「寝たらまたそんな夢を見ると思うと中々寝付けなく…最近は眠気を誤魔化すように仕事をしていたんですが…」
「…そっか」
リンの言ってくれた悩みを聞き、私はある仮説が出てくる。
私の考えでは、リンは連邦生徒会長の失踪や、それによる犯罪の活発化などでリン自身も気付けないほどのストレスを抱えているのかもしれない。
それならば…
「ならさ、ココで寝ない?」
「…はい?」
「ココなら私もいるしさ。何より、リンちゃんがうなされてたら私が起こすことも出来るし」
「でも…先生はいいんですか?」
「大丈夫。まだ書類は残ってるから、数時間は起きてるよ」
そう言い、リンが持って来た書類を机に整理する。
「だから安心して寝ていいよ」
リンは悩みながらも先生の好意を無下に扱えず、
「…分かりました。でも…一つだけお願いがあるんです」
「なに?」
「その…一緒に寝てくれませんか?」
頬を赤らめ、恥ずかしながらも言う。
「…分かったよ」
「っ…ありがとうございます」
そう言い、シャーレの寝室のベットに横になる。リンはやはりか、ベットに横になるとすぐさま眠ってしまう。
「おやすみ。リン」
そう言い、私もベットに横になる。
「…ここは」
私が目を覚ますと、シャーレの部室の椅子に座っていた。
「私は確かベットで寝たはずなのに…」
夢遊病か?とも思ったが、これまでにそんな事一度も無かった為、私はこれを”夢の中”だと認識する。
窓から見える月もどこか欠けており、何より赤くなっている。
「っ!そういえばリンは!」
急いで寝室へと向かうが、そこにリンの姿は無い。
すぐさま探しに行こうとするが、遠くから悲鳴や爆発音が聞こえてくる。
「爆発音…まさか!」
爆発音の鳴った所にリンがいるかもしれないと思い、急いで向かう。
向かう途中で、学校らしき建物が崩落していたりと中々ヤバい状況の中、リンと会話した時の言葉を思い出す。
「はい…夢の中で突然怪物が現れては目の前で学園を破壊していくんです」
「いつも戦おうとはするんですが…私の力じゃ太刀打ち出来ず…いつも目の前で学園が壊されていくんです」
(…まさか!)
普段ならこんな荒唐無稽な事など浮かばないが、”夢の中”ならと思い、さらに急いで向かう。
(…いた!)
向かった先には呆然と目の前で起きている惨状を見ているリンがいた。
「大丈夫⁈」
「っ!先生⁈」
突然の邂逅にも驚きながらも、その目はどこか暗かった。
「とりあえずこの場から離れて…
「っ…でも!」
目の前の惨状に驚きながらも、私は冷静さを失わないように、落ち着いて行動しようとする。
「目の前の状況よりも、取り敢えずこの場から離れた方がいい」
「リンちゃんが話してくれた夢の内容だと…
『お前…誰だ?』
まさかっと思い、すぐさまその声の主を見る。そこにいたのは…
「ば、バケモノ…」
生物なのかすら怪しい異形の存在…怪物がいた。
『バケモノとは侵害だなぁ。俺はお前の深層心理が作り出した”ナイトメア”だってのに』
「ナイト…メア」
目の前の怪物…ナイトメアと言った怪物は笑いながら、自分の目的を言い放つ。
『俺達ナイトメアは宿主の心の奥底にある深層心理を利用して生まれてくる。代わりに俺たちは夢の中で宿主の深層心理を叶える』
「ならどうしてリンの願いがこんな事になっているんだ!」
リンちゃんはこんな事望んで…、そう言いそうになるが、考えてしまう。
(私はリンの何を知っているのだろう…)
『それが宿主の深層心理だがらだ』
「嘘だ…そんな訳…」
リンは否定しようとするが、心のどこかで望んでいるのかもしれないと思ってしまう。
『受け入れろ宿主。これがお前が望んだ世界なんだよ』
そう言い、ナイトメアの身体が半分に割れる。
それと同時にリンがナイトメアに吸い寄せられていく。
「リンちゃん!駄目だ!そっちは!」
しかし先生の言葉は届かず、リンはナイトメアに近づいていってしまう。
「リンちゃん!」
しかしその瞬間、私の耳にエンジン音が聞こえた。
それと同時にナイトメアがバイクによって跳ね飛ばされ、地面に転がる。
「そいつの言うことには耳を貸したら駄目だ」
青年はバイクから降り、ヘルメットを脱ぐ。
「君は…
『お前は…まさか!
青年はどこからかベルトを取り出すと腰…ではなく胸に着ける。
『インパクト!』
『メツァメロ!メツァメロ!』
「I'm on it」
「変身!」
『グッドモーニング!ライダー!』
『ゼッツ・ゼッツ・ゼッツ!』
『インパクト!』
「ゼッツ。それが俺の名だ」
拳を構える
「ミッションを遂行する。」