俺は少しだけ賢かった。
だから生まれ変わるなら何が出来るようになりたいという問いかけに、前世を引き継げる能力を求めた。
もっと賢かったら、使い勝手のいい能力でも授けてもらったんだろうが、その時点で想定なんか出来ない。
でも俺は馬鹿でもあった。
やりたい事ができるようになっても、記憶が引き継がれないなら何の意味もないじゃん。
そういうこと説明しないなんて、悪辣な存在だな。なんて、軽く上位存在を考えていたからだ。
まず、そんな事できる相手を舐めるなよと思うのだが、馬鹿なので分かってなかった。
「えぇ……この世界、アメコミだったのかよ」
「やだ……違う、違うの……こんなの……」
あと、転生はそんなに良いものでもなかった。
前世の知能があっても頭が良くなる訳でもモテる訳でもなかった。
何なら歴史もちょっと違うし、うろ覚えだから記憶があっても株で大儲けもできない。
ちょっとだけオトナの余裕と経験からコミュ力が上がるだけだった。
なお、他にもそういう能力とか持ってる超人みたいな奴がいると想定できない知能とする。
それと、死ぬ間際に後輩がそういうのだって知らんかったこと。
なんかトラック並みにデカい筋肉モリモリマッチョマンの腹の部分に顔だけ出てるけど、その肉の塊が君の能力?みたいな。
あと、人って握られて下半身が潰れると熱いと思った瞬間に気持ち悪くなって意識無くすんだなと。
もっと、マシな最後の言葉にすればよかった。
赤と黒、薄い袋のような中にいる。
身体がミチミチと周りから押されて、一気に喉が痛くなる。
思わず噎せて、目の前がチカチカして、記憶が飛び飛びながら、意識がハッキリしてくる。
まるで、二日酔いで起きた朝のようだ。
昨日の記憶が朧げな状態に近い、今までの記憶は穴だらけだ。
ハッキリとした意識が芽生えた頃は、周りの音も視界もマシになるくらいにはなっていた。
やべっ、なんかこの感じ俺は知っている。
2回目、あるいは3回目だもん。
少しだけ成長した感覚器官が捉えたのは俺の母親の顔であった。
俺は同じ世界に2回目か3回目の転生をしていた。
やはり俺は天才だ!と思ったのは3回目の転生をしてだった。
知らん世界じゃなくて、知ってる世界でコンティニュー出来るのだ。
そりゃ、俺ツエエエエが出来る。
幼稚園も小学校も中学校も余裕だぜ。
お陰で人間関係も良好だし、成績も前より良い。
親に株をやらせて少し小金持ちになってる。
前世との違いといえば、俺が漫画とか良く読むオタクになってるくらいである。
いや、聞いてほしい。
漫画を馬鹿にしてはいけないよ、例えばハリー・ポッターの世界にハリー・ポッターの小説があるか?
ヒロアカの世界でヒロアカの漫画はあるか?
答えはノーだ!漫画にあることはフィクションでしかないのである。
つまり、漫画をチェックすることでどんな世界か分かるのである。
微妙に知らん漫画とかあるし、ジャンプにこんなのあったかな?
「いや、普通にマーベルあるんだが、あれはヴェノムとかそういうのじゃないのか?」
俺が死んだ時の記憶は、薄れてはきているが覚えている。
死んだ時の記憶なんてどこに保存してるのか、海馬じゃなくて魂って奴か?
俺の最期は、肉体が急に膨れ上がった化物の後輩が泣きながら握り潰して来たものであった。
ハルクとかヴェノムみたいなもんだと思った、巨大化してたけど顔が明らか腹部にあったので、多分寄生とかそんな感じだ。
巨大な顔のない化け物の肉体に、ワンポイトで泣いてる人間の顔を腹部にある、うーん彼岸島のほうが近いだろうか。
まぁ、分かっていることは同じ高校に行かないことである。
運命力とかそんなものは推薦の前にある訳ないぜ。
「本当になかったぜ」
何やかんやあって元の学校となるかと思いきや、普通に手続きが進んで別の高校に進学できた。
いや、まだ油断するな、おな中の奴らがいる。
中学の時みたいに遊ぼうぜ、こいつ俺の後輩とか、そういう紹介される場合もあるかもしれない。
いや、後輩可愛かったし、死ぬ間際の俺に泣いてたから俺のこと好きかもしれないから残念だが、ここは断腸の思いで忘れるんだ、実際に断腸してたしな。
「何がなかったの?初めまして、浅井です」
「えっ、あっ、どうも松永です」
そんなことどうでもいいや、隣の席の女の子が話し掛けてきた。
しかも可愛いぞ、もしかして俺のこと好きなのかもしれない。
「……松永?」
「えっ、あぁ、うん、DJみたいだよね」
「爆死する弾正じゃなくて」
「だん……えっ、何?あぁ、戦国武将的な!浅井さん、歴女って奴?」
「あっ、先生来るかも」
来ないよ。
まだホームルームまで時間掛かるよ。
なんか怒らせたのか分かんないけどスマホ弄り始めちゃったよ。
多感な時期の女子高生とか難しいよ。
初日はバッドコミュニケーションだったが、子供なんてすぐに忘れる物である。
何だかんだ3ヶ月くらいで友達も出来たし、仲良しグループも出来たしら恋愛してる奴らも出てるくらいだ。
俺は株とかゲームばっかやってるけどね。
大学は適当なとこ入って、それなりの企業に入るんだ。
その頃には株で働かなくてもいいかってなってたりしてな、うぉぉぉぉ!?大暴落してるけど原因って何!
「どうしたよ松永、好きな子からLINEでも来ない的な?」
「違う、俺のお年玉10万円が9万になってるんや……こんな筈ではなかったんや」
「あー株か、意識高い系だよなお前」
そんなことはない。
もっと資産があればとか思うけど、知ってるとこが10万で買えたんだぞ。
俺はこれが大人になる頃には3倍になるを知ってるから、いつかは勝てるゲームなんだ。
とはいえ、暫くは忘れて塩漬けするしかない。
信用取引じゃなくて良かった、高校生で出来るか知らんけど。
「それより、そろそろ夏休みじゃん。女子とか誘ってさ、遊ばねぇか」
「マジかよ、俺、そんな経験初めてだよ」
机で昼休みに唸っていた俺に話し掛けてきたのは、何かと俺を気に掛けてくる寺田くんである。
寺生まれの寺田、あだ名はTさんである。
なお、本人は俺は実家なんか継がねぇとか言ってるけど……坊主は嫌らしい。
「顔だけはいい寺田さんは、檀家さんから優待券なるものを貰ってだな。遊園地に行けるんだ」
「マジかよ、タダで行けるってか」
「いや、二枚だけだから男子である俺らは自腹で一万くらい使う」
「マジかよ……うん?それ、お前と誰かでいけばタダなのでは?」
「無理だろ、2人きりとかデートじゃん。断られるよ」
そ、そうか。
多分、そのつもりで2枚くれたと思うけどグループで行きたいのか。
いいぜ、俺は別に誰が好きとかないから女なら誰でもいいぜ。
お前の気になる女と、その知り合い誘おうぜ。
「浅井ちゃん、浅井ちゃん」
「はいはい、何ですか松永さん。聞こえてましたが、夏休みは全部予定が埋まってます」
「1日も空いてないはずないのに……マジかよ」
「これ、遠回しに誘うなって奴だよな」
取り敢えず、近くにいた隣の席の女子を誘ったのだが敢え無く撃沈した。
コソコソと寺田ァ!と状況分析してみるが、たぶんお前らとは行かねぇよって奴である。
こういう子はちょっと悪そうな先輩とかと付き合うんだ。
黒髪ロングで清楚そうな見た目してる奴はヤンキーと付き合ってるイメージ。
「浅井さん、マッチングアプリやってるって噂だぜ」
「マジかよ……エッチじゃん」
「なんですか、二人してコソコソ……そういう男の子同士のノリってキモいと思う」
「ごめんって、浅井さん誘えなくて残念だなって……」
「……本当に予定があるので、行きたくない訳じゃ……」
ここで難聴系主人公なら、なんてと返すんだろうか。
やっぱり、この子って俺のことが好きなのかもしれない。
「そんなことないぞ」
「寺田、俺はまだ何も言ってない」
「よし次は俺が見つけてくるぜ」
「待て、まだ話は終わってないぞ」
そして寺田は、後日女子2人ゲットしたぞと連絡してきた。
やったー!ダブルデートだ、楽しみ!