遊園地に片道2時間掛けてやってきた。
一万って言ったじゃん、交通費に二千円掛かってるよ!
「ここが言ってた場所だな、寺田」
「あぁ、だが電車の時間を考えると18時ぐらいには帰らないといけない」
「なんてことだ……俺達には、補導がある!」
でも、朝と昼があるからいい感じになるには時間がたっぷりある。
さて、待ち合わせしている女子はどこだ。
「来たぞ、あそこにいるのが中学で一緒だった田中さんだ。因みに優待券をくれたのも田中さんだ」
「えっ?」
それって、俺が来ていいものなのか?
ダメな気がするんですけど。
うわぁ、他校の制服着た可愛い女の子がいる。
「あっ、寺田くーん!……チッ」
舌打ちしたよ。
いやぁ、メッチャ睨んでる、睨んでるよあの子。
今から帰ってもいいかな、俺だって空気読むよ。
「田中さん久しぶり、無理聞いてくれてありがとうね」
「あ、うん。ううん、気にしないで、いきなり二人きりは緊張しちゃうもんね」
「あっ、こいつ松永って言って高校の友達な」
「……どうも」
お、温度差ぁ〜!
明らかに塩対応だよ、寺田お前すげぇなぁ。
気づいた上でスルー出来んのか?
「うん?どうした?」
いやぁ、気付いてない。
コイツさては、馬鹿だな。
なんで分かんないの、明らかにテンション違うよ。
「先輩、遊園地はまだですか!」
「えっと……」
「あっ、寺田くん。この子は私の後輩の金剛さん、美術部で一緒だったんだ」
「はじめまして金剛です!ゾンビが見れると聞いて来ました!」
田中さんの後ろから、また違う制服の女の子が現れる。
先輩と美術部で一緒だったということは中学生だろ。
あれ、コイツ……なんか、あれ。
「何処かで会ったことあるか?」
「誰ですかこの人、初対面でナンパみたいなこと初めて言われました。気持ち悪いです」
「あっ、うん、ごめんね」
そうだよね。
初対面なのに俺が可笑しかったわ。
何か見覚えあったんだよな。
「それよりゾンビはどこですか」
「ゾンビは夜のパレードかな」
「あぁ、ゾンビってそういう」
なんか、こう、ホラーが好きな所に既視感があるな。
そうそう後輩の金剛……金剛?
あれ、金剛って関西でも珍しいって前に聞いたけど。
「何ですか、何でそんな凝視するんですか、怖いですこの人」
「いや、金剛さんって苗字珍しいなって。あと格闘技やってそう」
「フフン、良い着眼点ですね。金剛と名字は関西でも珍しい選ばれし苗字なのです。そして、総合格闘技をやってます」
俺よりも明らかに小さい子が胸を張って踏ん反り返っていた。
流石に見覚えがあって、同じ苗字で、趣味まで同じ。
間違いない、俺の前世の後輩だコイツ!
「お前、やけに気にしてんじゃん。好きなの?」
「好きじゃねぇよ」
「フッ、モテる女は辛いですね。照れなくてもいいですよ」
「なんだコイツら、バカなのか?」
イエーイじゃねぇんだよ、おい後ろ見ろ!
お前の先輩と、お前の元同級生の田中さんがスゴイ目で見てるよ。
なんでお前ら気付かないの?バカだからなの、お前ら?
「因みに、ここのお化け屋敷は本物の幽霊が出るって有名なんだぜ。まぁ、霊感あるから見つけちゃうかもな」
「初めて聞いたよ、何その設定」
「えっ、幽霊ですか。どうしよう、どうやったら倒せるのか」
「なんで倒そうと思ってんだ、お前」
「私怖い、寺田くん私を守ってね」
「そこまで徹底してる田中さんが怖いよ」
俺知ってる、肉食系女子って奴だ。
当ててんのよって初めて見た。
なんで寺田は気にしてないの、お前すごくね?
「じゃ行こうか」
「えっ、その状……」
「金剛、何かあるの?」
「あっ、なんでもないです」
怖い怖い。
えぇ、腕組んだまま行くの?
あと、メッチャ金剛さんビビってるやん。
明らかに目逸らしたよ。
「あっ……」
「行きますか……えっと、爆死する人」
「それ、女子の間で流行ってんの?松永な」
なんだかんだ、遊園地は楽しかった。
すごい、最近の遊園地ってお金の力で並ばなくていいんだ。
それにしても、よく見ると幼いが面影は……面影で良いのかわからんが、あるにはあるな。
「なんですか、やりますか?負けませんよ」
「お前って筋肉モリモリに変身とかしたりする?」
「それは……変化系、いや、強化系なんでしょうか」
「HUNTER×HUNTERの話じゃねぇよ、あっアイス食おうぜ」
この感じ、多分何も知らんのやろな。
俺が死んだのが18だったので、少なくとも2年後までコイツに殺されることはない。
いや、本当になんだったんだろ、夢かな?もう現実味とかだいぶないしな。
「すいませーん、バニラ2つ」
「えっ」
「なんだよ、チョコ嫌いだったろ」
「あっ、はい、あれ言いましたっけ……」
何言ってんだコイツ……あっ、いや、そうか。
初対面だったな、忘れてた。
20年くらいぶりにあっても意外と覚えてるもんなんだな、好みとか。
「あの、お金……」
「寺田達が次はお化け屋敷だってよ……何してんの」
「えっ、いやだって」
「早く行くぞ、やべアイスってどこで捨てれんだろ」
先にお化け屋敷についてた二人と合流して、列に並ぶ。
おー、結構デカイな。
これが噂の本物が出るって奴か。
「本当に出そうだな、怖そうだ」
「嫌な予感がします、これは怖そうです」
「こわーい」
やってきたお化け屋敷は歩いて入り口から出口までぐるっと出ていくタイプらしい。
キャストさんがゾンビの仮装で追いかけてくるとかだろうか。
「先輩達は先に行ったので、私達も行きますよ。索敵は任せましたよ、ゾンビは任せてください」
「何も任せらんないよ?殴っちゃダメだから、構えるのやめようね」
「何言ってるんですか、タイプ相性的に無効化されないはずです」
「そういう話をしてんじゃねぇよ」
やめろよ、キャストさんは脅かす仕事してんだから殴るなよ。
幽霊より、お前のほうが怖いよ。
「来てます!たぶん、こっちです!」
俺達の番になった。
順路とか会ってんのとか思うのだが、後輩の金剛は迷いなく進んでいく。
あれ、でも、全然ゾンビとか出てこないな。
「ひぃ!?で、出ました見てください」
「ついに第一ゾンビか?」
金剛の指差す先には、何やら子供が立っている。
えっ、なんだ、迷子じゃん。
「ビビらせるなよ、ただの子供じゃん」
「何言ってるんですか、どう見ても大人ですよ」
「えっ?いやいや、どう見ても……」
俺達と子供の距離は、凡そ100mくらいはあるだろうか。
見間違える距離ではないのに、どうして金剛が大人と間違えたか分かった。
デカいのだ、異常な程に、というか現在進行系で大きくなっている。
「ば、化け物だ!」
「私、幽霊って初めて見ました!クマよりデカい!」
「そ、そうなの!?」
クマとか見たことないけど、それよりデカいんだ。
待ってくれ、アメコミみたいな世界観じゃなくて、ホラー的な奴なのか!
「あ、そうだ逃げれば、うわぁ!?」
振り返って逃げようとしたら、どこからか椅子や机が飛んできて、後ろに続く道に簡易的なバリケードみたいなのが出来上がる。
ゆ、幽霊パワーか、すげー!
「こ、コイツ……」
「どうした金剛!」
「ゴースト・エスパータイプ!」
「何言ってんだ、ポケモンじゃねぇんだぞ」
おうおう、頭が天井にまで達してやがるぞ。
えっ、風船みたいに膨れてるけど大丈夫なんか、身体の方とか押しつぶしそうだけど。
「ヤバい、どんどんデカくなってるって!」
「大丈夫です、私にいい考えがあります!」
「フラグじゃないよな、それ!」
「ガキが舐めてんじゃねぇぞ!口くせぇんだよ!」
金剛、まさかの物理で対抗である。
もう目の前まで巨大化していた子供の幽霊の頭部めがけてグーパンを繰り出したのだ。
あっ、ちゃんと凹んでるし効いてそう。
『グェェェェ!?』
「おっ、あっ、効いてる!」
「マジかよ」
「……ハッ!?暴力は悪、つまり悪タイプだから」
「もうそれでいいよ」
最初から嘘だったかのように、子供の姿はなくなっていた。
誤解してたけど、この世界ってオバケとか出るのか。
「何やってんだ君達!ここに入っちゃ、なんじゃこりゃ!?」
「えっ、違うんです。幽霊の仕業です!」
そんなことは信じてくれず、大人に滅茶苦茶怒られた。