夏休みの思い出は遊園地に行ったことだった。
そして、イベントはそれだけでもうすぐ夏休みは終わる。
イベントが他にはないのかって?人生二週目だぞ、クーラー効いた部屋でゲーム三昧だ。
寺田も夏は夏で、仕事の手伝いとかあったらしい。
髪があっても坊さんだからな。
連絡先を交換した後輩は、何故かちょくちょく連絡をくれる。
やはり、俺のことが好きなのかもしれない。
「やーねー、最近行方不明が多いんですって。拉致とかされてるのかしら」
「拉致問題再発かとか煽るのどうかと思う」
お昼時、母親とテレビを見ていたら行方不明事件特集が組まれていた。
しかも、今年になってから件数が増えたらしく、関東で俺がいる県も数千人が行方不明らしい。
日本じゃ、数万人が毎年行方不明になってるらしく去年よりペースが早いとか。
もう去年より今時点で行方不明が増えてるってマジかよ。
「まさか、この世界は呪術廻戦の世界なのか?」
漫画とかあったけど、呪霊とか怪異とかいて、そういうのが行方不明の原因なのかもしれない。
実際にお化けとかいたしな。
「うん?おいおい、フラグだったのか……」
俺が長い長い考察に入ろうとしたタイミングで、後輩からの連絡が来た。
一緒に悪霊退治しませんかと。
行くわけねぇだろ。
やって来たのは、後輩の家だった。
うわ、人生で初めて女の子の家に来た。
なお、何度か前世では来たことあるよ。
「来ましたね、松永先輩」
「金剛後輩、リンゴを握り潰す動画を送ってくるのはやめろ、ちなみにアレはお前なのか?」
「来ないと握り潰すって書いたじゃないですか!私の手ですよ!」
書いたじゃないですかじゃねぇよ、ガチで凄いと思うけど世間では脅迫と言うんだぞ。
なんなの、フィジカルギフテッドなの?
ヘソ出しファションしてくれよ、腹筋確認するからよ。
「今日は私の友達の塾が一緒の子のお兄さんの友達の彼女のことなんですが」
「待て待て、まとめるとつまりアレか。他人ってことだろ?」
「なんて薄情な、友達の友達は友達ですよ。つまり、最終的には友達じゃないですか」
少なくとも、その理論が適用すると全人類が友達なんだけどな。
まぁいい、前世でもオカルト関連に首を突っ込んでた奴だ。
俺が知らない昔から、そういう噂を聞きつけては突撃してたんだろ。
「それで、その友達とやらが悪霊に悩まされてるって?」
「そうなんです。どうやらその彼女さん、付き纏われてるらしくって、これは追い払うしかないと思った私は言ってやりましたよ。彼女さん、どしたの?話聞こうか?ってね」
「おー、それはなんかお前のほうが悪い虫的な感じだな」
追い払うべきはお前の存在な気がするよ。
まぁ、それで聞き出したところ付き纏っているのは犬らしい。
いつも、ふとしたタイミングで赤い目の黒い犬がいるらしい。
「たまたまじゃないのか?」
「1日1回は見るんですよ、おかしいです」
「いや、近所で飼ってるんだろ」
「それが飼い主はいないんです!」
「放し飼いは良くないよな」
「ちーがーいーまーすー!」
いや、黒い犬って……魔法使いが変身してるんじゃないか?もしくは魔法使いの使い魔とか。
俺はハリー・ポッターも魔法使いの嫁も読んでるから詳しいんだ。
「私調べによると、どうやらヘルドッグ、またはヘルハウンドと呼ぼれる妖怪らしいです。妖怪の仕業ですね」
「何でもかんでも妖怪にする風潮、まだ残ってたか……悪霊じゃなくね?」
「それが彼氏さんが音信不通になったらしくて、彼女が犬のせいだって言い張るんですよ」
それはそれで聞くと、普通に別れたのでは?
別れ方としては酷いと思うが、近所の犬のせいにしてる感は拭えない。
まぁ、とは言えだ。
この間のこともあるし、本当に悪霊?妖怪?なのかもしれない。
「それでお前、どうやって退治するんだよ。その犬とやらを」
「Twitterで調べたら神聖属性魔法や聖水、銀の武器に弱いらしいです」
「ゲームの話か?」
「なので、寺田先輩の所から聖水を用意しました。あと、引き出しにあったメリケンサック」
聖水って、普通教会じゃねぇのかよ。
それ、しかも寺じゃねぇかよ。
せめて、神社の手洗い場とかの水にしろよ、いやどっちも水道水だけど。
「この寺の井戸水はきっと大地のパワーがあるんです」
「井戸水かよ……それは光属性なのか?」
水道水ではないが、それは大地のパワーなので土属性なのでは?
いや、というかスルーしてたけどなんでメリケンサックがあるんだよ。
えっ、私物?こわー!
「あと、ホテルにおいてあってパクった聖書」
「自殺防止用にあるとは聞いたことあるけど本当なんだ……いや、パクるなよ」
「厚みには不安がありますが、いけるでしょ」
「思ってた使い方と違う!」
もっと映画のエクソシストみたいに聖句でダメージを与えるのかと思ったら、まさかの聖句ではなく物理である。
聖書は読むものであって、殴る武器ではない。
あと、物理攻撃とか効くのか?
後輩の準備した荷物が入ったリュックを持たされた俺は、待ち合わせ場所のカフェに来ていた。
カフェ巡りが趣味って何だよと思ったけど、意外と食べ物がいっぱいあるもんなんだな。
俺はじゃあこの卵サンドを頼むぜ!
「お待たせしました、彼女さんです」
「どうも……えっ、なんで男の人が?」
「やはり戦いは数なので」
シュッシュッと虚空を殴り出す後輩。
やめてね、店員と彼女さんと他のお客さんの視線がすごいからシャドーボクシングやめてね。
というか、何も言わず呼んだのかよ。
「はじめまして、弾正って言います。コイツとは……腐れ縁ですかね」
「先輩とは少し前に悪霊対峙した仲なんですよ」
「えっ、まさか凄腕のエクソシストみたいな」
「いえ、美術部の先輩の元同級生の同クラの友達さんです」
「つまり他人ってこと!?」
それはそう。
他人ってことでいいと思う。
普通に絡みがあるのおかしい関係であった。
前世のせいで違和感なかったけど、おかしな関係だな。
「まぁ、こまけぇことは良いんです。ほら、さっさと悪霊について吐きなさい」
「尋問が始まっちゃったよ」
「えっ、うん……あれは私がお盆の帰省をした頃」
「ホラー番組みたいな滑り出しだな」
「先輩、うるさいですよ」
怒られた。
いやだって、彼女さんノリノリで語りだしちゃったからさ。
墓参りをした際に、彼女は一匹の黒い犬らしき物を見たそうだ。
彼氏の方は、ウェーイと犬を追い掛けていたそうだが、彼女にはその犬が犬のような形をした何かに見えたらしい。
陽炎のように揺らぎ、赤い目が朧気ながら此方を見ていると感じたそうだ。
熱いと空気と冷たい空気の温度差で光の屈折が起きてるだけだべや、などと彼氏は言ってたらしいが彼女さんは納得出来なかったらしい。
俺もアホそうな発言の後に博識さを出されると納得出来ない。
そして、事あるごとに彼女は黒い犬の影を見るらしい。
ちなみに、昨日は家の窓から外を見たらいたそうだ。
「やっぱり近所の犬なんじゃ」
「おま、さっきの俺みたいなこと言って」
「そんなはずない!近所に黒い犬を飼ってる人なんて誰もいないもの」
そんなこと言われても、と思ってたら後輩が指を指す。
指差す先には……いた、黒い犬だ!
アイエエエ!黒い犬ナンデェェェ!
「犬って、アレですか?」
「嘘ッ!イヤァァァ!」
「あっ、待って下さい!」
逃げる彼女さん、カフェからその後を追う後輩。
いかん、俺も行かなくては……そのタイミングで、俺は何者かに捕まれた。
「お客様、お会計がまだですよ」
「あっあっあっ」
何者かは店員さんだった……すいません。
あの、電子マネーって、あっ、現金ですね。
えっ……高い、一万円で……あっ、領収書も貰えると、はい、ありがとうございます。
「……ハッ!?しまった、おいてかれた」
俺は急いで見失った後輩に連絡するのだった。