昨日は金曜日、月一の粗大ゴミの日だった。
意気揚々と深夜に離れたゴミ捨て場まで行った俺は、クソったれと言いながら日本刀をゴミ捨て場にシュート!超エキサイティング!したのだった。
『捨てるな』
「ですよねぇ」
翌朝、人が寝て起きたらベッドの横に刀があった。
クソである、戻ってくるなよ。
「良くないなぁ、とか分かってるんですけどね!別の人の所に行って貰えませんかね!」
『俺の担い手として、最も強くなれる。何を怖がる』
「国家権力だよ」
『……斬れば?』
今、ちょっと間があったよね。
自分でもどうかと思ったんだよね。
胸というか峰に手を当てて、手とかねぇわコイツ!
よく考えろって言えねぇや。
「俺は死にたくなんかないの、第一持ち歩けないし」
『分かった。呼べば行こう』
「えっ」
『お前が我が名を呼ぶ時、駆けつけよう』
「いや、どういうこと」
『案ずるな、俺達は魂で繋がってる』
「喧しいわ」
何なの、斬月なの。
お前は浅打ですらねぇよ、斬魄刀面するのやめてくれる。
いや、家に置いててもいいなら、まぁ、アレ、俺ってばチョロい扱い受けてない。
っていうか、もー、なんか刀欲してる奴の所に行けよ、具体的に後輩とかさ。
『それに、お前は争いから逃げれない』
「はぁ?どういうことだよ」
その時、俺のスマホが振動する。
スマホの画面にはAIの絵なのか、可愛らしい女の子の絵がアイコンとして表示されている。
そして、電話を掛けてきた人の名前にはメリーさんと書いてある。
「メリーさんって、えっ、あのメリーさん?いや、いるとは思ったけど」
『クククッ、俺の目に狂いはなかった』
黙れ、お前に目なんかねぇよ。
っていうか妖刀とか言う時点で狂ってんだろ。
「も、もしもし」
『私メリーさん、今から貴方の所に行くわ』
「あの」
ピロン、と通話終了の音がする。
切りやがった、マジかよ。
取り敢えず、電話切るなよと返信しておく。
おい、やめろよ、怖いだろ。
「あっ、来た」
『もしもし、私メリーさん』
「ねぇ、どうやって俺のLINE知ったの!」
『えっ、あの』
ピロン、と切りやがった。
おい、まだ話してるだろうが、今度はこっちから掛ける。
掛けてるのに電話に出ない。
「はぁ?」
なんで出ねぇんだよ。
困んだけど。
「ちょっとコンビニ行ってくる」
「んー」
実家に来られたら困るので、俺は家から出ることにした。
怪異のことは良く分からないが、多分居場所くらい把握してるんだろう。
「あっ、もしもし!電話切らないで欲しいんだけど」
『私メリーさん、今』
「実家来ないでくれるかな!っていうか、普通にキモいよ!」
『……お前を殺す』
ピロン、と通話終了。
何言ってんだ、最初からそのつもりだろうが。
こちとら、全力で海に向かって移動中である。
海なら広いし、最悪戦っても周りに人はいない。
俺はスマホと刀を片手に走っていた。
っていうか、刀って意外と重いな!
「あっ、そうだ、電話しとかねぇと後で煩いか」
『辞めろ』
うるせぇ、俺に指図するんじゃねぇ。
後で苦情を言われないために後輩の金剛に今度はメリーさんが出たとラインしとく。
ついでに海に行くことを書いといた。
よし、後で文句を言われないことだろう。
土曜日の昼間だからか散歩してる人がチラホラいる砂浜に来た。
よし、来るなら来いブッた斬ってやる。
「あっ、いたー!」
「うん?おぉ、金剛じゃん」
「先輩、メリーさんって、あのメリーさん?」
砂浜で警戒していたら、LINEを見たのか後輩がやってきた。
急いてきたのだろう、息を切らしている。
仕方ない、飲み物でも奢ってやるか。
「聞いてくれよ、ほら友達登録勝手にされてるの」
そう言って、俺は画面を後輩に見せる。
金剛は覗き込むようにしてそれを見て、うわぁと声に出した。
「なんかメッチャ文字化けしてるアカウントに折り返し電話とスタンプ爆撃してる」
「いや、アイツ砂浜来てから電話して来ねぇから」
「すげぇ、先輩には正常に見えてるんだ」
「お前には文字化けして見えてるのか。怪異だし、そういうこともあるだろ」
もう何でもありだろ、そういうもんだ。
そう言えば、コイツすぐに来たけど暇だったのか。
「お前、今日暇だったの?」
「ちょっと人と会ってたけど、つまんなかったしこっち来た」
「えっ、それデート?ヤバくね」
「デート?あっ、男の人だけど、いやデートかな?」
いやデートだろ。
俺刺されない?大丈夫?
最近、そういう刃物関連多いんだけど。
「なんか、他にもいたし、聞いてたんと違った」
「えー、すげーじゃん。友達とかもいたのか」
「私はタイマンだと思ってたのに、サシじゃなくて仲間連れてきてんのよ」
「あー、二人きりがよかったのか。まぁ、緊張とかしてたんじゃね」
言い方がヤンキー過ぎるが、コイツも黙ってれば可愛い部類の女だからな。
頭おかしいことと暴力的なの除けば、可愛いもんだ。
てか、メリーさん来ないから後輩と恋バナしてんじゃん。
「てか、先輩メリーさんは?」
「連絡来ない」
「あー、アレかな?私いるから二人きりじゃねぇじゃん、みたいな」
そんな女みてぇな……いや、メリーさんは女か。
でも人形だしな、まぁ一人の方が襲いやすいか。
「夜まで出ないかもなぁ……帰るか」
「えぇ、帰るのかよ」
「会えないなら詰まんないし」
それはそうだが……いや、まぁ、引き止めたら何か俺が気になってるみたいになるか。
余裕だ、男は余裕を見せなきゃな。
じゃあなと見送ったら、すぐに電話が掛かってきた。
周りには、人がいない……うわぁ、夕日綺麗だな。
やべっ、電話切れた。
「あっ、掛かってきた」
『後ろだ!』
声と共に俺は何かの気配を感じて前転する。
クソ、背中が砂まみれじゃねぇか!
『私、メリーさん!』
「不意打ちとかざけんな!」
反転しながら俺の身体は自然と抜刀する。
カキン、と何かとぶつかる音。
いた、メリーさんだ。
何か、ナイフを持ったフランス人形がいた。
大きさは子供くらい、俺の半分、結構でかい、ナイフを振り回してきた。
『今、貴方の後ろに』
「消え……そこか!」
『いるのぉぉぉ!』
メリーさんの姿が一瞬で消え、俺は勘で背後に刀を振り抜く。
ギギギっと不協和音と硬い感触。
空中でナイフを両手に持ったメリーさんを、俺の刀がナイフ越しに弾け飛ばしていた。
まるでバッティングのようだ。
メリーさんは、フワッと少し離れたところに着地する。
『ナイフ使いか』
「瞬間移動した!」
『何だお前……』
サイドステップを踏むフランス人形。
半身になり、体の側面を此方に向ける。
まるで、フェンシングだ。
最も、ぶっといナイフだけど。
『なんで刀持ってんの、ヤクザ?』
「怪異の癖に正論ぶつけてくんな!」
『やはり、俺がいないと』
「お前も面倒くさい彼女みたいなこと言うなや!」
いや、助かってるけどね。
多分、普通には俺も戦えないけど代わりに一回死んでるからね。
クソ、暗くなってくるとやり辛いぞ。
『私、メリーさん。今、貴方の後ろに』
「後ろに来るんだろ!」
多分、条件は特定のキーワードを言う事なんだろ。
なら、それに合わせて動けばいいだけだ。
『待て!』
「フェイントだろ!」
『いない、ぐぁぁぁぁ!?』
と、思ったか馬鹿め!
案の定、メリーさんの姿は消えず、俺の目の前から突っ込んできた。
瞬間移動出来るみたいだがな、やったりやらなかったりすると思ってたぜ!
お前ならそうするって信じてたぜ!
『おのれ!』
「うおっ、投げるな!」
『と見せかけて、いる!』
メリーさんを斬り裂いた。
その反撃か、メリーさんがナイフを投げてきた。
首を傾げて間一髪、避けることに成功する。
「消え……ッ!?がぁぁぁ!」
『クケケケ、えっ?』
「痛ってえぇぇぇだろうが!」
肩に、激痛が走った。
俺はもう無我夢中で背後に手を伸ばして近くにあったものを掴んだ。
掴んで、叩きつけたら、それはメリーさんの髪であった。
肩にナイフが刺さったまま、俺はメリーさんの髪を掴んでいたのだ。
「クソ痛てぇ!お前ぇぇぇ」
ぶっ倒れたメリーさんの上に乗り、刀を真横に向ける。
髪を持ってた左手を峰に、右手でしっかり握って足で固定した胴体と逃げようと動かしてる頭部の間。
その首に両手で刀を押し込んだ。
『や、やめ……』
「救急車呼ぶハメになるだろうが!」
メリーさんの首が飛ぶ。
生首の完成である。
そして髪を掴んでグルグル回して、海にシュート!
ポチャンと海に着弾、不完全燃焼だ。
ムカつく。
「痛い、痛すぎる……救急車」
『良くやった、担い手よ。おい、何で砂掛ける』
「持ってたら通報されるからだよ、埋まってろ。どうせ戻ってくんだろ」
『……解せぬ』
俺は必死に砂を掛けたあと、近くのコンビニまでダッシュして警察と救急車を呼んでもらった。
通り魔に刺されたと言ったので、色々と大事になったけど、何とかなった。