ニチアサヒロインのような世界で頑張る異世界帰りの賢者くん~破滅回避のために異世界に戻りたい~   作:岳鳥翁

39 / 39
第38話:賢者と地下の秘密の部屋

 白神邸で有益な情報を手に入れた俺は、その日一日をかけて白神のコレクションの説明を聞く羽目になった。

 あの空ノ森の話のように、他にも有益なものがあるかと思って期待していたのだが、流石にそう簡単にはいかないらしく、結局はあの一冊のみであった。まあ、他の話も面白かったため息抜きにはなったが。

 

 しかし、その一冊が今後の俺の行動に大きな意味をもたらすことを考えれば、今回の件は本当に幸運だった。

 

 いや、今回だけではない。

 

 何せ街の図書館でも見つけられなかった話を、たまたま稀有な経緯で同好会に入った後輩が知っていたのだ。もし仮に白神が何の特殊な力も持たない普通の少女であれば、あの日白神は同好会に来ることもなく、俺はこの話を知ることもなかっただろう。

 

「とにかく、明日にはもう一度あの大樹を調査に行かないとだな……」

 

 帰る際に車で送ることを白神に提案されたのだが、それは少しばかり都合が悪いため断らせてもらった。

 むっとした様子の白神の膨れっ面を見るのも面白かったが、こればかりはしょうがない。

 今度は一緒にどこか行きましょう! と次の約束までされそうになったが、特に肯定することもせずに帰りに着いたのだ。

 

pikon♪

 

「ん?」

 

 スマホにメッセージが送られてきたため確認してみれば、それは先程別れたばかりの白神から。

 内容は『絶対に! どこか! 行きましょう!』とのこと。

 

「……ここまで押しが強かったかねぇあの娘」

 

 出会った当初はここまでじゃなかったようにも思うんだが……あれか? 戦うようになって我が強くなった感じか?

 確かに、戦闘を経験して性格が攻撃的になった、なんて話は聞いたことがある。というか、『俺』がそうだと言ってもいいだろう。自覚できるくらいには、向こうに行く前と後での差があるからだ。

 

「それでも、俺の変化に比べれば、まだ可愛いもんだよ。さて、その性格改変の元になった元凶としての意見を聞かせてもらいたいが……喋れないからそれも無理だな」

 

「……ッ!! ……!!!」

 

 振り向いたその視線の先。

 そこに設置されているのは見覚えのある金髪に浅黒い肌をしたエルフのような耳長の男。

 血走った目で何かを叫ぼうにも『無音陣』によって何を言ってるのかさっぱりわからない。暴れようともがいたところで『弱化陣』による弱体化と『拘束陣』による拘束で動くことは叶わない。

 

 孔雀館学園旧館地下一階(・・・・)。

 白神邸からの帰宅後、俺はこの場所に赴く必要があったため白神の善意を拒否したのだった。流石に学校に向かうのは怪しまれる。

 

 そも、この地下空間はもともとあったものではなく、このエルフ耳を捕獲した際に作ったものだ。何せ、宝石類とは違って置き場所に困る代物だからな。

 そのため、『空間置換陣』で地上の空間と地下の空間を入れ替えることで地下に部屋を作成し、こうしてこのエルフ耳の魔力収集部屋としたのだった。むろん、周りの土壁には『固定陣』で補強しているため地盤に穴ができたことによる崩落の心配もない。

 

「さてさて、今回の成果はっと……うん、いいな! やっぱり討伐させずに確保する選択は間違っていなかったよ」

 

 設置された宝石を一つ手に取ってみるが、その宝石に魔力が充填されていることがよくわかる。そんな宝石が山となっているのだ。数日の成果で少なくとも100以上。街からの収集ができていない今、この結果には喜ぶべきだろう。

 

「流石に負のエネルギーを魔力に変換する魔力変換陣の作成には時間がかかったが……かけただけの価値はあったというもの。数日でこの成果なら、この夏休みの期間だけでも十二分に魔力がたまりそうだ」

 

 魔力が充填された宝石をすべて保管庫に回収する。

 この調子で貯められるのであれば、実験分の魔力についても心配する必要はなさそうだ。めちゃくちゃうまくいって夏休み中に向こうの世界へ行く算段さえ立てば、実行可能なところまで貯められるだろう。

 

 まあまだその魔法については初期段階であるため、実行そのものが不可能なのだが。

 

 

「……っと、忘れるところだった」

 

 ほい、とエルフ耳にかけていた『無音陣』を解除してやる。

 すると自身の変化に気付いたのか、エルフ耳は声が出るようになったことを確認すると、キッと睨みつけてきた。

 

「てめぇ……!! いったいどこの誰だか知らねぇが、俺様にこんなことをしてただで済むと思うなよ……!!」

 

「お手本のような台詞をどうも。もちろん、ただで済むと思っているからこんなことをしているんだ。現に、今何もできずに拘束されているだけなのがいい証拠だろう?」

 

「っ……!! クソッ……!! こんなもん……!!」

 

 力任せに拘束を外そうとするエルフ耳。

 しかし、そんな彼の抵抗に対して、陣から伸びた鎖による拘束はびくともしない。それでも諦めずに抗い続けるのは、彼のプライド故なのだろうか。

 だがしかし、前にも言ったが今度こそあのドラゴンガールを逃がさないようにと強度を増した拘束陣だ。あれよりも弱いであろうエルフ耳が力づくで破壊できるようなものではない。

 

「無駄無駄。それができないことくらい、頭も力も弱いんだからわかるだろうに。……まあそれはいい、本題に入ろう。少しばかりお前に聞きたいことがある」

 

「ハッ……! この状態の相手に聞き出せると思ってんなら、随分と頭がお花畑なんだな……!」

 

「その状態で煽れる胆力はいいけど、時と状態を考えような」

 

「グゥッ……!? チ、力が……!?」

 

 魔力収集陣と魔力変換陣を強制起動させ、無理やりにでも魔力を絞り出す。

 どうやらこの負のエネルギーはこいつらにとっての力の根源であるようで、残存エネルギーが減れば減るほど力が落ちるらしい。

 

 あまりに収集しすぎると、カスも残らずに消滅しそうになったため、収集時はある程度収集したところで毎回止めている。ある程度回復させて長期的に収集を行う方が結果的に量は多くなるからな。

 

「搾りかすの状態から更に収集されるのは辛いだろう? それが嫌なら、俺の質問に答えてくれ。なに、それが済めばすぐにやめる」

 

「だっ……だ、ぇが……!! あん、まり……このプリッツ様を舐めてんじゃねぇぞ……!!」

 

「あ、そう。そういうのはいいんだ。聞きたいのはお前が言ってた妖精郷(フェアリーガーデン)について。それはどんなところで、どこにある?」

 

「だから、俺様がいうと……っ!?!?! グゥッ……!?!?」

 

「追加で質問だ。お前が戦っていた少女達。その子らと一緒にいた妖精についてだ。あれはいったい、どうやってこの世界に来た?」

 

「だから……!! この俺様が口を割るとでも……ッ!?!? ガアァァアァァ!?!?」

 

 あんまり抵抗するのであれば続けるしかないのだが、思っていた以上に話してくれないようだ。

 

「はぁ……素直に話してくれた方が楽なんだがな。お互いに」

 

 これ以上やると今後の魔力収集にも影響が出そうなので、今日のところはここでやめておくことにしよう。

 しかし、どうやって話してもらおうか……忘却でもかなり難易度の高い魔法なのだが、記憶を読む魔法なんてのはないし、作るにしても相当な難易度の魔法になる。だが異世界への転移よりは簡単だろうし……もういっそ作った方が楽かもしれん。

 

 それに、記憶を見れるようになれば今のような面倒なやり取りもせず一方的に情報を得ることも可能になるだろう。

 ……よし、作るか。

 

「まあその前に、明日の大樹の調査がさきだろう。早いうちに、もう一度調べておかないとだ」

 

 ダメージで満足に動くこともできないエルフ耳に再度『無音陣』を施し、地下室から出る。

 念には念をと隠蔽まで使用して寮まで帰宅した俺は、忘れていた白神からのメッセージに『気が向いたらな』とだけ返してその日を終えるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

どうやら凌辱系エロゲの世界に転生したようですが、俺は今日も平和に生きたい。~なのでBADエンド回避のために殺します。理由はもちろんお分かりですね?~(作者:岳鳥翁)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

「えぇ……ここ、凌辱系エロゲの世界かよぉ……」▼嘘だどんどこどーん、の邂逅まであとゼロ秒である。


総合評価:13743/評価:8.42/連載:21話/更新日時:2026年10月21日(水) 18:05 小説情報

【2章完結】女性だけが戦う世界で、脳内の特撮オタクが俺に「ヒーロー」を押し付けてくる(作者:maki@)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

▼【 ――いいから黙って変身しろ! 俺の考えた最高のヒーローを見せてやる! ―― 】▼若い女性だけがその生命を燃やして戦う世界。▼『魔障対策局』の雑用係・神代蓮は、戦う力を持たない無力な男として、非日常を虚構に貶める日陰の仕事を淡々とこなしていた。▼だが、彼には誰にも言えない秘密があった。▼その脳内に人類の敵、【魔障】を飼っているということ。▼『戦う力』が欲…


総合評価:5427/評価:8.88/連載:25話/更新日時:2026年09月24日(木) 20:00 小説情報

幻想交じりの現代社会をTRPGの能力で生き抜いていく(作者:一般通過きなこ餅)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

第二次世界大戦直後、そんなただでさえ世界中混乱していた時に発生した『異世界流入現象』。▼それによって各地で幻想でしかなかった異種族、そしてダンジョンが出現し……。▼また、様々な特殊能力であり後に『才能』と呼称される力が人々に発現した。▼そんなえらいこっちゃの大混乱から大きく時は流れ、時代は2020年代を迎えた日本のとある地方都市。▼そこで生きる一人の少年は才…


総合評価:4189/評価:8.48/連載:28話/更新日時:2026年11月08日(日) 07:00 小説情報

魔法少女の敵役、命欲しさにドノツラフレンズになる。(作者:ドノツラフレンズ)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

魔法少女の敵役俺「(死にたくねぇなあ……せや!何食わぬ顔で味方面してやろ)ハッハッハ!!しょうがないから仲間になってやる!」▼魔法少女「えっ!?貴方って最初から味方じゃなかったんですか!?」▼俺「えっ?」▼魔法少女「えっ?」▼だいたいこんな感じのお話。


総合評価:6086/評価:8.33/連載:6話/更新日時:2026年08月15日(土) 21:41 小説情報

精霊が切り札の世界で、俺だけ孤独に成り上がる(作者:モナカパウマン)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

カードゲーム最高!▼全てがアニメみたいにカードゲームで回ればいいのに……そんな風に思って、日々を過ごし、気がついたらカードアニメみたいな世界に転生していた。だが問題があった。この世界においてSSRカードの証左である精霊たちが一切懐いてくれないのである。▼しかし構わない。▼俺は一人で成り上がってみせる。▼元よりカードゲームに精霊なんて、無粋なのだ。▼※他サイト…


総合評価:7312/評価:8/連載:27話/更新日時:2026年11月04日(水) 21:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>