「はぁ、はぁ…っ!なんだよそれ…なんなんだよお前らはッ!お前らだけじゃない。あの不気味な女達といい…なんで僕ばっかりこんな目にあわなきゃいけないんだッ!!」
赤く染まっていた校舎の空気がセイバーの一撃によって一瞬で霧散する。
慎二は惨めに地べたを這いずりながら、取り乱した声を張り上げていた。
「慎二、もうやめろ。学校の結界は消えた
これ以上、人を巻き込むのはやめるんだ」
衛宮士郎が、遠坂凛と共に慎二を見下ろしている。
慎二は悔しげに歯を食いしばり、血走った目で二人を睨みつけた。
「黙れッ!衛宮の癖に上から物を見るな!
僕にはなぁ、ライダーだけじゃなくて…あの新都に居た女どもだって潰す算段があったんだよッ!ろくに魔術も使えないくせに、変な目で僕を見下しやがって…ッ!」
「新都の……?」
士郎の表情が真剣なものに変わる。
「慎二、あんた…あの8人目のイレギュラーとも接触してたの?」
凛が問い詰めると、慎二は吐き捨てるように叫んだ。
「ハッ!ライダーの奇襲をわけのわからない能力で弾きやがって!どいつもこいつも、僕をバカにしやがって…ッ!!」
慎二は散々悪態をつくと、なりふり構わずに逃げ出していった。
静まり返った廊下で凛は深く溜息をついた。
「まったく…どこまで自滅すれば気が済むのよ、あいつは。...ねえ衛宮くん、さっき言ってた『新都の』って?」
「……柳洞寺の夜だ」
士郎は新都の方角を見つめながら、静かに語り始めた。
「キャスターの結界が破れたあと暗闇の中から出てきたんだ。黄色い光を背負ったあの不気味で綺麗なサーヴァントと…ボロボロになりながら、それでも必死に隣のサーヴァントを庇って歩いてた…あの女の子」
「やっぱり、あなたあの夜目撃してたのね。
情報通り魔術回路すら持たない普通の女子高生がマスターよ。
あんな不気味なクラスのサーヴァントを引き連れてキャスターを退けるなんて、正体不明にも程があるわ」
「…ああ。でも……」
柳洞寺で傷だらけになりながら立ち向かっていた姿を思い出していた。
「あの子。ただ無意味に戦おうとしてるんじゃない。誰かを傷つけるためじゃなく…自分の大切な居場所や誇りを守るために、必死で戦ってるんだと思う」
「…甘いわね、相変わらず。
どれだけ事情があろうと聖杯戦争に足を踏み入れた以上は敵よ。…でも、キャスターを追い散らして慎二の急襲も退けたとなると、放っておくわけにもいかないわね」
凛は腕を組み、決意を固めた目つきで空を見上げた。
「一度、ちゃんと会話をして真意を確かめる必要がありそうね。衛宮くん」
「ああ。
俺も、あの子たちとちゃんと話がしたい」