もしも“O”の聖文字が厨二全開うすほそロリ滅却師のものだったら 作:BanBan Bou
それどころか、星十字騎士団の幹部──
なのに。
だと言うのに。
「なんで……なんでテメーみてぇな舐めたガキが聖章騎士に選ばれて、このおれが選ばれねぇんだよッ!!
見上げるほどの体躯を持つ大男──ドリスコール・ベルチは、その丸太のように太い脚で地面を踏み砕きながら吠えた。
血走った男の視線は、彼の半分ほどしかない背丈の少女に向けられている。
怒りに染まる熱視線を受ける少女は、しかしまるでそれを気にする様子もなく、退屈そうな表情を浮かべるばかりで、口を開くどころか視線すら合わせようとしない。
「おい、無視すんじゃ」
「──戯れもそこまでにしろ、ドリスコール・ベルチ。陛下はその者をお待ちだ」
「……ッ、ハッシュヴァルトかよ……クソッ!」
少女の行く末を塞ぐドリスコールを退かせたのは、星十字騎士団の
氷のように冷たい、ドリスコールを見据える彼の眼光には、恐れ知らずの大男すらも逆らえない。
「行くぞ。着いてこい」
「…………」
無言のまま、少女はハッシュヴァルトの後ろを着いて歩いた。やがて玉座の置かれた広間──すなわち、ユーハバッハの元へと辿り着く。
「ここから先は、お前一人だ」
言いながら、ハッシュヴァルトは入口の横へと直立した。
促された少女は静かに歩き出し、ユーハバッハの眼前までやってくると、不遜にも膝を付くことなく、玉座の王と対峙する。
僅かにハッシュヴァルトの眉が動くも、ユーハバッハは少女の不敬を気にせず口を開いた。
「盃を取れ、グリム・スミェール。お前に力を授けよう」
「…………」
小さな掌に乗った盃へ、滴り落ちる鮮血が溜まっていく。
少女は溜まりきった血を一瞥すると、躊躇を見せることなくそれを飲み干した。
「お前には“O”の文字を与える。我らが滅却師の未来のためにその力を活かせ」
☆☆☆
「──おい、クソガキィ……ッ」
聖章騎士へと着任した少女の前に、再び大男が現れる。
ドリスコール・ベルチ。本来、聖文字を受け取るはず
つい一ヶ月ほど前、突如入団した少女によりその座を奪われて、彼は単なる
「テメェが陛下から授かった力は、本来おれのモンだ。おれが受け取るはずだったモンだッ!」
「……だから? だから、どうしたんですか?」
少女が初めて口を開く。
しかしその第一声は、ドリスコールを嘲笑うかのようなもので。
「どうした……どうした、だと? あぁ、そうか、分かんねェのか。だったら教えてやるよ──その身体になァッ!」
青筋を立てたドリスコールが、その巨大な拳を叩き付ける。轟、と。
風を引き裂く、致命的な破壊力の籠った一撃が少女に迫る──
「ならぼくも、あなたにひとつ
──よりも速く、ドリスコールの身体が揺らいだ。
「あ? んだよ、これっ?」
拳を空振らせ、大男は勢いそのままに少女の横へと倒れ込む。硬い石の床へと顔から突っ込んだにも関わらず、痛がる様子も、起き上がろうとする仕草もない。
ドリスコールの顔に浮かぶのは、絶対の無理解のみで。
「あ、あぁ? なんで身体が動かねェ?」
「それはたった今、あなたの身体がぼくの
倒れ伏すドリスコールの右脚を、
それそのものは、単なる子供の踏み付け程度に過ぎないからだ。
しかし。
「なに、言って……ぁがっ! あぁぁぁあああアアアアアッ!?」
少女が踏んだ場所を起点に、ドリスコールの脚が
遂にはドリスコールの身体から完全に分離し、赤黒い小さな肉塊へと姿を変えてしまった。
「ぼくのモノは、ぼくの意志によって如何様にも扱える。当然のことです。さて、身をもって教えてあげたわけですが……理解はできましたか?」
「ゆるッ、ゆるざねェ……ッ! てめぇだけは絶対に、殺じてや」
「左脚」
「あぎゃッ!?」
「右腕」
「ぎッ!? も、もうやめ」
「左腕」
「~~~ッ!」
四肢を破壊され、もがくことしか出来なくなったドリスコール。グリムはもはや、ろくに反抗の言葉すら吐かなくなった男に興味をなくした様子で、
「頭」
「あっ、あぁっ、待っ、待でっ、待っでぐれッ! いたっ、痛い、痛いッ! 痛──あっ」
ぷちり。
トマトの潰れるような音と共に、本来あるべき地位を奪われた男は、その命すらも奪われてしまった。
少女の去った後、痙攣するドリスコールの死体は偶然発見した聖兵たちによって速やかに片付けられたという。