予想はしてたけど、アスラ王国編は拍子抜けするほどイージーモードになってる。もし原作でこんな展開だったらブーイングしてただろう。
ルークは使徒になってない、ダリウスも少なくとも最近はお告げを受けてない。水神レイダも介入しない。これなら苦戦もそうそうないだろう。北帝オーベールは厄介だっただけど。
トリスティーナという生き証人ともすんなり合流できてる。
それにしてもダリウスも不用心だよな。パープルホースの当主に、娘のトリスティーナの死体を確認した書類にサインさせたって言うけどさ、その肝心の書類を相手に持たせたままって油断しすぎだろ。
そういう大事な書類は二通作って双方で一通ずつ保管するもんだろうよ。社会人一年目みたいなミスだよな。
俯瞰で見てるからそう思うのかな?いかんヒトガミ化してしまう。
さて、原作の流れはわかってるけど、ここらへんで俺も未知の領域に挑戦しないとな。
そうなるとしばらくはルーデウスとはお別れだ。
あっ、勝った。ダリウスを討ってピレモンは助命。原作どおりだな。いや、でもピレモンも小心者のわりに用心がなさすぎだよな。「もしアリエル王女が勝ったら、お前は私の助命を嘆願しろ。もしアリエル王女が負けたら私がお前の助命を嘆願する」とでも言っておけば格好がついたのに。真田丸見てねえのかよ。
しかしコイツ生かしておいて本当に大丈夫なんだろうか?腹に据わった悪人よりこういう優柔不断な軟弱者のほうが、ちょっとしたきっかけで再び裏切りそうでこわいな。
「いや、他人のことより自分のすべきことをやろう」
ここはターニングポイントの1つだ。使徒の切り替えができる貴重なチャンスを活かそう。
◆◆◆◆◆◆
「予期せぬ事態だ」
大成功のはずなのに社長の顔が暗い。
「うまくやれたと思ったのですが」
「それはわかっている」
ならせめて愛想笑いくらい・・・いやかえって怖いからいいや。
「水神レイダが介入してこない。ダリウスも第一王子も使徒だったかわからぬ、まるでヒトガミの動向が掴めていない」
嵐の前の静けさというものだろうか?
確かに、確実に妨害してくるはずの奴が動いてないのは不気味だ。まるでそんな事しなくても勝利を確信してるかのように思える。
単にミスって動けなかっただけということも・・・いや、これは楽観的すぎるな。あるとすれば────
「やはり憑依では?もうヒトガミはかつてのヒトガミでなくなって無害なのでは?」
「ありえん。百歩譲ってそうだったとしても、奴がいつ心変わりするか分からん以上、警戒は必要だ」
そんな奴には見えなかったけどな、と思うけど口には出さない。取り込まれたと思われて俺まで信用を失うだけだからな。それに、確かにその心配ももっともだ。
「たとえマトモな奴でも、安全圏から他人の人生を操れるようになったら歪むことは大いにありえますね」
ありえるかもしれないことだ。ネット弁慶や後出し孔明の強化版みたいなもの。俺と違ってキチンと社会的地位をもった人間すらそれを裏アカでやって、露見してネットで袋叩きなんてことはザラにあった。
しかも、あんなチート能力持ってたら調子に乗らないほうが難しいだろう。
「そもそも前にも言ったように、奴に憑依できるものなどいるとは思えん」
信じる信じないで押し問答しても得るものはなさそうだ。話題を変えよう。
「今後の方針はどうなりますか?」
「しばらくはアリエルの周囲に気をつけろ。即位さえできれば安心、という油断に乗じてアリエルを暗殺するなり傀儡にするなりしてくるおそれがある」
「それは確かにありえますが、それはもう騎士団の仕事では?」
そんなこと言い出したら、俺はいつまでもアリエルのそばに張り付いていなけれならない。
「むう・・・」
「出来れば家族のところに居たいのですが、ヒトガミの動向がわからないならなおのこと、家族が狙われないか心配なので」
「わかった、別命あるまで好きにするがよい」
◆◆◆◆◆◆◆
アスラ王国の政変も無事にアリエルの勝利に終わり、ルディが家に帰ってきてくれました。私の出産前なのは本当にありがたいです。
家族ひとりひとりと再会を喜びあう様子は本当に微笑ましいです。
しかし、ひとつ不安な要素がありまして。いったん私の部屋まで来てもらいました。
「実は、モドキさんの使徒とおぼしき人から手紙が届いてます」
ルディは意外そうな顔をしますが、それはそうでしょう。
「おそらくヒトガミ対策はモドキさんに対しても有効なのでしょう。あれ以来モドキさんと会えてません」
「あー、なるほど。でもそれだとその手紙がモドキからとはわからないのでは?ヒトガミの方だったら大変だ」
「かもしれませんけど、まず内容を見て判断すべきでは?本文は私には読めない文字が所々使われています。ルディならわかるようですけど」
「わかった。なになに〜」
『前略ルーデウス様へ
単刀直入に申し上げますと、今回の切り替えで貴方様とゼニス様への使徒の繋がりを解消させて頂きます。私にはどうしても見過ごせない事態を防ぐためです。このままでは大勢の罪のない人々が、犠牲になる事態が発生します。私はそれを未然に防ぎたいのです。しかし、それはオルステッドにとって望ましくない未来の到来を意味します。彼の配下である貴方にそれを理解して欲しいとは申しません。それでもいつか再び手を取り合える日が来ると信じております。お互いにやるべきことを精一杯やり遂げましょう。もし私に連絡を取りたいときはロキシー様に外泊して頂ければと思います。
モドキより 草々』
「なんだよ草って、ふざけてんのかよ」