ロキシーの次はシルフィの部屋に行った。こちらでもやはりベッドにふたりで並んで座りながらの会話になる。
「それでそのモドキさんとは敵対することになったの?」
「そういうことになる」
「まあ、ボクはそのモドキさんと面識もないし、別に何とも思わないかな」
そりゃそうか、むしろ俺の方がショック受けてる。
「いいヤツかと思ったんだけどなぁ・・・」
「それなら籠手を外して外泊する?」
もう一度会って腹を割って話せばあるいは・・・いや、ダメだろう。
「やってはみようと思うけど、アイツの手紙の内容を信じるなら、俺とアイツはもう会えない。使徒から外されてるからな」
「そうだったね。ロキシーとはまだ繋がってるんだっけ」
「ああ、だけど身重のロキシーにそんなことはさせられない。負担をかけてしまってロキシーやお腹の子に何かあったら俺は後悔してもしきれない」
「それもそうだね。まあ、お産がすんで体力が戻ってから頼むのも有りじゃないかな」
そうだな。良いアイデアを出してもらえるのはありがたい。
「ありがとうシルフィ。建設的な助言をもらえると前向けになれるよ。滅入ってた気持ちが少し持ち直した」
本当に良いお嫁さんだ。
「エヘヘ、ルディが喜んでくれるならボクも嬉しい」
子供の頃は、「俺の言うことは何でも聞くイエスウーマンにしてやるぜ。げへへへへ」なんて思ってたけど、しっかり自立して意見を出してくれる大人の女性になってくれた。
意見してくれる相手がシルフィなら痛いとこをつかれても不快にはならない。あるいは、俺が聞く耳を持てるようになったのだろうか?心の余裕ができたからかもしれない。
「ゔぁああ、うえっぷ」
「ああ、ルーシーどうしたの?」
ルーシーぐずりだしてしまった。よしパパもあやしてあげよう。ずいぶんかまってあげられなかった分、今こそ父娘のスキンシップを・・・あれ?
「やー、やー」
なんか俺のこと追い払おうとしてないか?
「ルディに嫉妬してるみたい」
そりゃないよルーシーたん。
◆◆◆◆◆
「ゔぁああ、うえっぷ!!やーやー、ぶえええん!!」
「ルーシーに追い出されたからって泣くんじゃないわよ」
俺はエリスに膝枕してもらいながら、天を仰いで泣いている。
「うっく、ひっく、すいません。それで、本題なんだけど・・・」
「そのモドキと使徒を斬ればいいのね!!」
「あ、ハイ」
相変わらずエリスは脳筋だが、話が早いのは良いことだ。
「エリス、聞いておきたいことがあるんだけど?」
「なに?」
「どうして俺のこと好きになってくれたんだ?」
シルフィはイジメっ子から助けたから、ロキシーは洞窟で魔物から助けた時に一目惚れ。わかりやすいきっかけがあった。けどエリスはそうでもなさそうなんだよな。
人攫いから助けた時は、好感度は上がってそうだったけど、まだそこまでではなかった。気がついたら事あるごとに「ルーデウスは凄いのよ」というルーデウス全肯定ウーマンになってた。
「完璧な男だと思ったから」
「へ?」
「だから、ルーデウスは完璧な男だと思ったのよ」
「俺が???」
声が裏返ってしまった。出来ることはやってきた、けどポンコツなところもかなり見せてしまったはずなんだが。
「人攫いから助けてくれただけじゃない。私はルーデウスのおかげで踊れるようになった。恥ずかしい礼もしなくてよくなった」
ああ、あの即席ツインテールでにゃんにゃん言うやつね。凄え殺気だったもの。
「休みももらえるようになって、街も見て回った。魔大陸に転移した時は、私が起きた時にはもうルイジェルドと話ができてた。ルーデウスより完璧な男なんていないわ」
「そうだったな。懐かしい」
エリスから見たらそれはそれは頼もしい男だったんだな、俺は。
「でも、完璧な男でも傷つくことはあるってわかった。オルステッドに殺されそうにもなった。ルーデウスを失うんじゃないかと怖かった」
パウロに無茶な叱責されたうえ、ノルンに嫌われたのは応えたな。
「そしてフィットア領に着いたら、お爺さまもお父さまもお母さまも失ってた」
「そうだな。惜しい人たちだった」
「その後、はじめて結ばれた。そしてルーデウスの体を見て思ったの。小さいなって」
「小さっ!!」
やめて!!そんな事言わないで!!もう一度EDになっちゃうから!!
「いや、その、当時はまだ子供だったし、その、同年代の平均よりは大きい方じゃないか?そう、それに今はだいぶ大きいし太いだろ?エリスだってよく知ってて──ぶへっ!!」
肘打ちくらった。膝と肘のサンドウィッチ!!
「そっちじゃないわよ!!腕が細いとか胸板が薄いとか肩幅が狭いとか、そういうことに!!」
「ああ、なるほど」
成長しきった今はともかく、当時はエリスに比べて俺はかなり華奢だったな。
「自分より小さい子に守られてるのが恥ずかしくなったの」
「それで、俺とエリスじゃ『釣り合いがとれない』か・・・」
「ごめんなさい。私も・・・ルーデウスを傷つけた」
EDになったけど、それは言わないでおこう。反省してるエリスに追い打ちは厳禁。死人に鞭打つのはダメだ。特に美女相手には。
エリスの頬にそっと手を添える。
「傷ついたけど、それはエリスが好きだったからだよ。急にいなくなって寂しかった。俺がエリスを怒らせるようなことをしてしまったかと思った。けどそうじゃなかった」
平気だと言うと嘘になるし、それはそれでエリスを何とも思ってないみたいで良くない。愛してたからこそショックだったと伝える。実際そうだったし。
「ルーデウスは何も悪くないわ」
エリスの頬に添えた俺の手に、エリスの手が重なる。
「もういいんだ、戻ってきてくれたから」
今日は『エリスの日』だ。このまま朝まで・・・・
「きゃぁーーーーーーー」
俺の馬鹿野郎。エリスの体力と性欲を忘れてた。