俺はオルステッドの配下になった。本当にオルステッドを信じてよいのかわからない。けどそうしなかったら確実に死んでいた。俺だけじゃない。シルフィもロキシーもエリスもギレーヌも・・・選択の余地はなかった、選択するしかなかった。ヒトガミに忠義立てして死ぬなんて真っ平ごめんだ。
情けない。
「我ながら行き当たりばったりだよな。ヒトガミに脅されてオルステッドと戦って、オルステッドに敵わないなら降参してヒトガミと戦う。はたから見たらフラフラしたはた迷惑なやつだよ」
「・・・ルディはよくやってるよ」
「ありがとうな、シルフィ」
ロキシーも頷いてるし、エリスもギレーヌも俺を責めたりしない。本当に強いし優しいな。俺だったらこんなふうに振り回されたらブチ切れた上で絶交する。
遠くから見てる英雄譚ならともかく、自分がついてく目の前の大将がこんな立ち回りだったら、「もうついていけねえ!!」となるだろう。
「もうすぐ我が家ですよ、ルディ。あと少し頑張ってください」
「そうですね」
帰ってきたんだ。とにかく生きて帰ってきたことを喜ぼう。ゼニスもアイシャもノルンも俺たちの帰りを喜んでくれるだろう。
門の前にまで来ると、掃除をしていたリーリャとアイシャがいた。
「おかえりなさいませ」
リーリャは頭を下げ。家の中へ俺の帰宅を報告しに行く。
「お兄ちゃん!!」
アイシャは飛びついて俺の生還をよろこんでくれた。
「おかえ、おかえりなさい」
家から出てきたノルンは涙ぐみながら歓迎してくれた。
「あ・・うぉ・・・」
広間で待っていたゼニスは、発音こそできてないけどきっとおかえりと言ってくれてるよな。
ルーシーはすやすや眠ってる。
しばらくは心身の疲労を抜くとともに魔力回復に費やした。リフレッシュだ。家族団らんだ。
ロキシーには身重だと言うのに無理をさせてしまったことを改めて詫びた。体調に不安はないようで安心した。無事に元気な赤ちゃんを産んでほしい。
シルフィ、ごめん。帰ってきて早々に負担をかけてしまった。俺はダメな夫だ。こんなときでも性欲が抑えられないんだ。
エリス、なんちゅうエロさだ。ボンキュッボン。でも怖い。すごく険しい視線で見てくる。けどエロい。俺のこと好きなんだよな。それなら大丈夫かな、おっぱいを触ってみた。殴られた。
ギレーヌのアドバイスもあって仲直りできた。そうかエリスは俺に拒絶されるのが怖くて話しかけられなかったのか、生前は俺が拒絶されることはよくあったけど、拒絶する側に回ることはなかったから想定外だった。
待たせてごめんよ、その分これから二人で過ごす時間を大切にしよう。
我、エリス山脈登頂ニ性交・・・成功セリ。
ボーイッシュスレンダーボクっ娘、ジト目ロリッ娘(実年齢年上の姉さん女房)に続き、キレイカッコいいイケメン娘を制覇。
俺は男としての偉業を成し遂げた!!
手紙に「愛してる」とでも書いておけばもっと早かったかもしれない。けどできなかった。
再会するまでは愛してなかった。むしろ恨んですらいた。けどカッコよくて美人になったエリスを見たら惚れ直した。
我ながら本当にコロコロ気が変わる男だ。
事前に根回ししてたのでシルフィもロキシーも、エリスを新しい家族新しい妻として認めてくれている。
そしてそのことを夕食の場で発表した。
「エリスを3人目の妻にします」
ノルンはやはり渋い顔だ。リーリャとアイシャは「わかってます、わかってますとも」という顔だけど。
ゼニスが立ち上がって俺の方に近づいてくる。これはビンタかな?一夫一妻をあるべき姿とするミリス教の教えに従うゼニスにすれば、妻が3人なんて許せないのだろう。
いや、様子がおかしい。
「アレ?母さん何持ってるの」
ノルンが問いかけたので、俺も気づいた。ゼニスは手紙を持っている。両手でその手紙を俺に差し出してくる。
喜ぶべきなんだろう。喜ばしいことのはずだ。文字で意思疎通できることがわかったんだから。それなのにみんな困惑してる。
「ロキシーさん、あの文字わかる?」
「いえ、見たことがありません」
「知らないわ、でもルーデウスならわかるんじゃない?」
まて、なんだその文字は?人間語でも魔神語でもない。この世界では見ない。けど見慣れたその書体は?
『ルディへ』
ゼニスの手紙にはそう『日本語』で書いてある。
誰がゼニスに日本語を教えられる?俺は教えてない。ナナホシは来てない。ヒトガミだ。ヒトガミがゼニスを使徒にした。俺の家族を。
「早速かよ、よりにもよって母さんを狙ってきやがった。ヒトガミのクソ野郎!!」
めでたい雰囲気が一瞬で台無しだ。俺は膝から崩れ落ちて拳を床に叩きつけた。
「落ち着いてください、ルディ。ゼニスさんが私たちを裏切るなんてありえませんし、ゼニスさんが誰かを陥れるとも思えません」
状況を察したロキシーが俺を気にかけてくれる。ごめんよ、本当に情けない夫だよな。
◆◆◆◆◆◆
なかなか寝付けません。妊婦なので寝酒というわけにもいきませんし。早く休みたいところなのに難儀なものです。
激しく動揺したルディをなだめるのに疲れたというのに、私まで動揺してしまったのかもしれません。
あの手紙にはなんと書かれていたのでしょうか。気になりますがルディは私たちには見せてくれませんでした。もっと私たちを頼ってくれてよいのに。
いや、こんなこと考えてたら夜更かしになりそうです。美容と安産の天敵ですね。
眠気よ早く来い、早く来い、早く・・・・
(おや、ここはどこでしょう。どこまでも白いモヤが広がってますね。これは夢?)
「はじめまして、ロキシーさん」
(なるほど、次は私ということですか)
ちなみにルーデウスが前世を生前と言うのは原作準拠です。