(それで、私に何のようですか?ヒトガミさん)
「はじめに申し上げますと、私は貴女や貴女の夫の敵ではありません。いや、そんなあからさまに胡散臭そうな顔しないで・・・胡散臭く思いながらで良いので聞いてください」
(まあ、いいでしょう)
「まず、私はヒトガミではなくヒトガミに憑依してしまった人間、またはヒトガミと同じ能力を持つ存在です」
(なんで自分の事なのにあいまいなんです?)
「例えば貴女が目を覚ましたとき、オルステッドの姿と能力を持っていたとします。オルステッド会わずにオルステッドに憑依したかオルステッドと同じ能力同じ姿のもう一人になったか判別できますか?」
(なるほど、つまり貴方はヒトガミに会ったことはないのですね)
「そういうことです」
(便宜上ヒトガミと呼んでもよろしいでしょうか?)
「はい、かまいません」
(それで用件はなんでしょう?)
「貴方の夫、ルーデウスに会いたいのです。しかし、彼の着用する籠手の力が邪魔でそれがかないません。なのでそれを外すように・・・」
(お断りします!!)
「まあ、そうなりますよね。想定内です。では次の話に移ります。伝言をお願いしたいのです」
(内容次第ですね。・・・本当は伝える気なんてありませんが、情報を引き出せるかもしれません)
思考がダダ漏れだよロキシーさん。このあたりはルーデウスから知らされてないのか。
「・・・エリスにとってのお前は、お前にとってのロキシーだ。そうお伝えください」
(なんですそれ?)
「貴女には解説します。けどルーデウスには伝えないでください」
(いいでしょう。・・・どうやらヒトガミというのはずいぶんお喋りのようですね。個別の情報などあてにはなりませんが、考え方の傾向だけでもわかれば対策が立てやすくなります)
だから思考ダダ漏れなんだって、ちゃんとコミュニケーションとれよルーデウス。そういうとこだぞ。
「ハッキリ言うと過大評価してるということです。ルーデウスはとっくに魔術では貴女を追い越してる。にも関わらず貴女を崇拝しその言葉に過剰に信頼を寄せている」
(痛いところをつかれましたね。・・・そうやって相手を心理的に疲弊させるのがヒトガミの常套手段でしょうか・・・)
「そしてエリスもルーデウスを過剰評価してる。いえ、貴女や他の家族もルーデウスという男をあまりにも高く見すぎている」
(人の夫に好き放題言ってくれますね)
「すいません。ですが向き合ってほしい事実です。ロキシーさん、貴女の思うルーデウスの最大の武器とは何ですか?」
(ルディ最大の武器?泥沼でしょうか?それとも岩砲弾?いえ、私を助けてくれたときの強力な・・・)
「それは結果というかちょっと具体的すぎますね。もっと根幹というか抽象的なものを問いたいのです」
(膨大な魔力量ですか?)
「方向性としては惜しい。私が思うに彼の最大の武器とは入念な準備。積み重ねた努力です」
(む、わかってますね。そうルディはあれほどの才能に恵まれながら油断せず努力を積み重ねる素晴らしい男性です)
「反面、準備が不発だったり、不測の事態になると脆い。とっさのヒラメキで対処できるわけではありません。ルーデウスは天才ではないのです」
(・・・前言撤回、コイツは何にもわかってません。ルディが天才でないなら誰が天才だというのです)
「具体的な例を出しましょう。迷宮で貴女と再会したとき、ルーデウスは貴女に初対面の対応をされてショックを受けました。幼児のときに会ったきりなら成長した姿なんて知るはずもないのに」
(それは、たまにはそういうこともあるでしょう)
「たまにですか?」
(たまにです。それとルディはヒラメキも凄いのですよ。彼の作った雲と天候操作は見事でした。あれは私が教えたわけではないし、本で読んだものでもないはずです。私が出した課題に即興で編み出してみせた。ルディは天才です)
「ああ、あれですか。いえ、積乱雲の知識は彼のオリジナルではありません。あれも事前に勉強したものです」
(なんですって、まさか自分が教えておいたものだとでも・・・いえ、そんな考えを持ってはいけません。ルディはカンニングなんてしてません。そう思わせて離反を狙っているのでしょう。なんと悪辣な)
あっ、そういうふうに受け取られるか。やはり便利すぎる能力持ってるとなんでも疑われて信用されないな。
「私が教えたわけでもありません。テレビで仕入れた知識です」
(テレビ?)
「ルーデウスに尋ねるとよいですよ。教えてくれなくても反応でハッタリではないと分かるでしょう」
(ルディが教えてくれなくても・・・なんですか、まるでルディが何が後ろ暗いことがあって、それを私たちには隠してるような、いけません術中にはまっては!!ルディを信じるのです!!)
「ルーデウスの愛を信じるのは良いです。けど能力を信じすぎてはなりません。彼は異様に自己評価が低い。だからこそハッタリもかまします。ハッタリの引っ込みがつかなくなることもあります。ルーデウスが言うからといって鵜呑みにしてはなりません。今日はこれくらいにしておきましょう」
(あら?もう終わりなの)
(え?えっ!?ゼニスさん???)
「もう少し早く入ってきてくださいよ」
同時接続できたのはよかった。呼び掛けても効果なかったらどうしようかと思ったけど、ゼニス経由で信用を得られれば大きく事態は動く。
(ごめんなさい。聞き入ってしまったわ。あ、そうそう私は人の心が読めるみたい)
(なんですって?)
(だからわかるの、ヒトガミさんがいってるのはほんとうのこと)
「目が覚めてから確かめてみればわかりますよ。ハイとイイエくらい確認する術はあるでしょう。エリスにとってのお前はお前にとってのロキシーだ。これも忘れないでくださいよ」
◆◆◆◆◆◆
あんなに恐ろしかったのに、今はオルステッドに会いたい。どうすれば良い?俺は配下になったんだ。ヒトガミから守ってくれるよな?そうだよな?
ゼニスはあれ以来なにも変化はないように見える。けどそんなの当てにならない。むかしのように表情豊かなわけではないのだから。
「ルディ」
居間に降りてきたロキシー、不安そうな顔だな、ごめんよ。すぐ安心させるからさ。
「ああ、なんです先生?」
ロキシーの口から聞きたくもない単語がでてきた。
「テレビとはなんですか?」
「ヒトガミに会ったのか!!」
労らないといけない相手だと、妊娠している妻だとわかっていた。けど優しくできなかった。
「痛い、肩が痛いですルディ」
両肩を掴まれて、揺すられたせいで痛がるロキシー。ごめんよ。でも、教えてくれ。ロキシーを守るために必要なことなんだ、答えてくれ。
理不尽な孫の手先生の感想返し見てたら重大な解釈ミスに気づいてしまった。でもボツにするのも勿体ないのでこのままの路線で行きます。