オルステッドに貰った籠手を外し、ベッドに横になる。いつまでもビビってられない。殴ることはできない相手だが、文句ぐらい言ってやる。
「まってろよ」
強くなったのは腕っふしだけじゃないと見せてやる。
◆◆◆◆◆
(白いモヤ、そしてこのまるで鍛えてないデブの体、久しぶりだな)
「ようこそ、そしてはじめまして」
(来やがったな。何がはじめまし・・・いや!!お前誰!!)
「え?」
(え??)
「あの、ヒトガミっぽいものになってしまった元日本人です」
(ああ、うん、日本人っぽいけど)
「えっ?そうなの?そういやここ鏡なんてないからわからなかった。俺はあの白いモザイクじゃないの」
(少なくとも俺には白くもなければモザイクもかかってないように見えるぞ)
「えええ?鏡、何か鏡になるもの・・・あった!!」
(え?俺?ビシッて感じで俺を指さすのはなぜ?)
「そのメガネ、ちょっと貸してくれ!!」
(なるほど、まあ、いいけど)
「ありがとう。いや、キッツ!!間近で見るとおっさんニートの顔面キッツ!!」
(うるせえ、そんなもん声に出さなくても伝わってんだよ)
「ご、ごめん。口に出すつもりはなかったんだけど」
(ダメ押しかよ)
「じゃあ失礼して。このレンズなら角度次第で・・・おっ、確かに」
◆◆◆◆◆◆
驚いた。確かにそこには『ザ・平均的日本人』という顔が、見慣れた俺の顔があった。
「そうか、六面世界の外から来た魂は、ここでは元いた世界の姿になるんだ。あの、これで俺がヒトガミじゃないって信じてもらえるか?」
(いや、無理だろ。アイツなら変身くらいできてもおかしくないし。認識阻害みたいな能力オフにしただけかもしれないだろ)
ガクッと来たけど、確かにそれもそのとおり。
「ごもっともです」
(うん、その、疑ってばかりだと話が進まないからさ、とりあえずこの場は、お前はヒトガミじゃないって前提で会話してもよいぞ)
「ありがとう。そうしてくれるとたすかる」
(で、お前は転生してきた元日本人ってことでOK?)
「はい、そうです。元ブラック企業勤務の元社畜です」
(それが、なんで俺の家族にかまう?)
「貴方たちのファンだからです」
(ファン?)
「はい、ファンです。ハッピーエンドにしたいんです。勿論私もハッピーエンドを目指してます」
(うさんくせー)
「本当のことなので他に言いようがありません。ゼニスさんに確認をとってください」
(そ れ だ よ !!)
「うお!!なんですその剣幕・・・こわ」
(お前見たのか!!)
「主語をください。何を見たか聞きたいのです?」
(お前は!!ゼニスや!!ロキシーの!!裸を見たのか!!)
ああ、それか。確かに気にはなるだろうけど、そこまでかよ。
「いえ、見てません。どうやらやろうと思えばこの世界でも服を来たままの姿で交信できるようです」
(え───じゃあ、お前はまさか───ファンってそういう)
やめろ、やめてくれ。ヴィーナス誕生みたいな胸と股間を隠すポーズのオッサンはゲロゲロを誘発する。
「そんなわけねぇだろ!!ああわかった、じゃあお前にも服着せてやるよ」
お前がどんな服着てたか忘れたか?そーら、ビビデバビデブー。
(うおっ、なんだこのボロボロの上に汚れが重ね塗りされたクソ臭えカピカピの服は?)
「お前が普段来てた服だよ」
(ごめんさない俺が間違ってました。裸のほうがマシです戻してください)
「わかればよろしい」
十二時になったわけではないけど、魔法は解けました。解けたほうがよい魔法でした。
(それで、お前のこれからの行動方針は?目的は何だ?)
「貴方のキャリアのアシストと、他にはオルステッドに見逃して貰うために色々します。呪いを解くとか、ホンモノのヒトガミが生き残ってるなら討伐を手伝います」
(といっても、お前にできるのは夢に出てお告げをするだけだろ?)
「出来ればお告げ以外にも雑談とかしたいです。特にヲタトークとかに飢えてます。そうしてくれないと情報提供する気がなくなるかもしれません」
(かまってちゃんかよ)
「そうだよぉぉぉぉ!!」
(泣くなよみっともない)
「見ろよここぉぉ!!なんにもねえよ!!誰もいねえよ!!寂しいんだよぉぉぉ!!」
(まあ、確かにこんなところに引きこもっていたら病んじゃうよな)
「出ようとも思ったよおおお!!オルステッド怖いけどおおお!!でも出方がわからないんだよおおぉぉ!!」
(どうしよう、コイツ煽るの楽しくなってきた♥)
「お前がヒトガミ化すんじゃねえよ主人公!!」
(そもそも雑談っていってもな、話題ある?)
そうか、こっちはコイツのこと知ってるけどコイツは俺を知らない。
「ドラゴンボールの話でもするか?亀仙人が大活躍するシーンなんてオールドファン号泣だぞ」
原作でもエリスをベジータに例えてたし、ドラゴンボールはわかるだろう。
(パワーのインフレにおいてかれたのに!!あー、でも異世界モノの話とかもいいな。転生だと気づいたばかりの頃はもっとイージーモードかと思ってた)
「オーバーロードみたいに?」
オバロにも主人公より強いキャラはいるんだよな。けどそれがみんな味方陣営だから敵対勢力からしたら悪夢だし、主人公陣営に感情移入すればノンストレスの無双ゲー状態になれる。
(そう、オーバーロード!!あれ俺が死んだあとどうなったかな?)
凄いぞ。
書籍化、コミック化、アニメ化、そして映画化してる。これは語り甲斐がある。
「俺が死んだのはお前が死んだ10年以上先だから色々答えられるぞ」
(そうか、じゃあ完結した?いや、10年以上となるとむちむち先生の新作出たか?)
「???あ、そうかArcadiaの方ね」
無職転生の投稿された時期からするとそうなるよな。
オーバーロードはArcadia版は無職転生より先に投稿されてますけど、なろうでは後発なんですよね。