ドブカス悪役令嬢を演じてたつもりだけど、周囲の解釈が何か大きな事情を抱えている高潔な精神を持った貴族令嬢なんだけど   作:つむつむ

11 / 11
ドブカス令嬢、貴族令息に飲み物をぶっかける

 彼女の剣は正しく神速だ。あたしみたいな細い身体では回避すらできないだろう。剣はあたしに吸い込まれていき……。

 

 ガキン!!! という甲高い音が鳴り響く。彼女は目を大きく見開いた。

 

「飴……? どうやって」

「随分と乱暴なのね。気品に欠けて嫌になっちゃう。こんな野蛮人を令嬢に差し向けるのが王族のやり方かしら?」

 

 と平気そうな顔で言ってみるが、内心は心臓バクバクだ。こ、怖かった~~! お菓子魔術をフルオートで発動するように仕込んでおいてよかった……!

 

 さて、あたしの首を狙ってきた少女が目の前に立つ。長い黒髪は綺麗に整えられているが、本人は鬱陶しそうにくるくると指先でいじっている。ドレスも着飾るというよりかは、動きやすさを重視した作りになっている。

 

 身体はあたしと同じで線が細い。というか、さっきから動きを見ているが、とても王族の関係者には見えない。なんだか立っている姿から、スラム街で育った子供ですみたいなオーラがぷんぷんと伝わる。

 

「お兄様のこと、また馬鹿にした。許さない」

「待つんだクロエ! 普段から簡単に剣を抜くなと言っているだろう! それに彼女と俺はそういう仲だ! 別に気にしてなんかいない!」

 

「はあっ!? あたしとレオン王子に特別な関係性があるみたいな言い方やめてもらえる!? レオン王子とは何を積まれても無理よ!!」

 

 ここは反射的に否定してしまった。全く誤解を招くような発言は謹んでもらいたい。あたしとレオンは水と油。決して混ざり合うことなんてないのだから。

 

「むう、お兄様がそういうなら」

 

 クロエと呼ばれた少女はむくれた顔をした後に剣を消滅させる。あの剣、魔術で作られたと思えないくらい精巧な作りだったな。

 

「気持ち悪いものがいる。お兄様を馬鹿にした貴女、変」

 

「人の顔を見るなり変とは、随分な教育ね。レオン王子、貴方みたいなカオが悪い男が、慣れない兄なんてやるから、こんな野蛮人が出来上がるんじゃないかしら」

 

「またお兄様のこと馬鹿にした。斬る」

 

 凄いなこの子。ちょっと煽っただけですぐに物騒な方向に話を進めようとするじゃん。あたしをなんだと思っているのか。

 

 それにしても気持ち悪いものか。やっぱりあたしのドブカスブレインは正しかった! いや~~ドブカスの気配というか、臭いは反射的に分かっちゃうんだよな。さっすがあたし!

 

「やめろと言っているクロエ」

「ぐえ」

 

 首根っこを掴まれて、潰されたカエルみたいな鳴き声をあげる。やっぱり、この子が王族の関係者だとはとても思えない。

 

「それで? どこの馬の骨にお兄様と言わせているのかしら?」

「どこの馬の骨でもない。彼女は正真正銘、俺の妹だ」

 

「……とても王族とは思えないんだけど」

「事実だ。数ヵ月前に彼女が王族の血を引くものと判明した。それに」

 

 クロエとレオンを視線でやり取りを交わす。次の瞬間、クロエの全身から星空のような、黒みを帯びた銀と黄金の魔力が溢れ出す。

 

「え……!? ふぇ!? しゃ、シャルちゃん! わ、私の魔力が……!」

 

 お姉様の魔力も同じく反応して黄金の魔力を出していた。

 

「彼女は勇者だ。今代の」

 

「私、勇者。悪い奴を斬るのが私の役目。貴女は悪い人?」

 

 クロエの鋭い眼光があたしを射貫く。それで脅しているつもりか?

 

「あたしに喧嘩を売るなんて随分な間抜けね。こっちには聖女がいるのよ。お姉様っていう聖女がね!」

 

 虎の威を借りる狐ならぬ、聖女の威を借りる悪役令嬢だ。あたしはお姉様を思う存分利用する。お姉様は名前を呼ばれたせいか、とてとてとこちらの方に駆け寄ってくる。

 

「なんで? 聖女が、悪い奴の味方するの、おかしい」

 

「これだからお子様は困るわね。例え勇者という凄い力を持っていても、あんたみたいに視る眼がないんじゃ意味ないわ。目玉を交換することをおススメするわ」

 

 あたしはここぞと言わんばかりにふんぞり返る。聖女という頼もしい後ろ盾がいる以上、あたしに死角はない!

 

「レオン王子も王子よ。さっきからあたしばかりを見ているけど、他に見るべきものがあるでしょう? あたしは分かっているのよ。ここにこの場にいるべきではない人間がいるということにね」

 

 あたしは適当に片っ端からガンを飛ばしていく。こうなりゃ全方位攻撃じゃ。どっかには命中するだろう。ほら、あたしを見て気まずそうに視線をそらした貴族令息がいた。

 

 傍に置いてあったグラスを手に取って、視線をそらした貴族令息の方に向かう。そして、その白い衣装に飲み物をぶちまけてやる。

 

「ごめんなさい。手が滑ってしまったわ。でも不運だと思えばいいわ、だってあたしに」

 

「バレた以上仕方ない。勇者でも聖女でもなく、こんな小娘にバレるとは癪だがな」

 

 ……へ? え、いやマジ? どんな確率引いたのあたし?

 

 あたしの目の前で彼の肉体からバキッ! メキャッ! ゴキッ! という奇妙な音を立てて、彼が変形していく。数秒もすれば元の人間だった姿は見る影もなくなり、代わりに二メートルくらいの狼男へと変貌していた。

 

「グルルル。今日は手を出すつもりはなかったのだがな。お前みたいな何も知らないガキに見つかるとは。だが!」

 

 狼男は手から鋭い爪を生やして、思いっきり振りかぶる。

 

「この場で皆殺しにしてしまえば何の問題もねえ! 先ずはお前からだ! 自分の不運を呪え!!」

 

 と言いながら振りかぶった爪を振り下ろしてくる。

 

 なーんか、今日、あたしこんなんばっかりじゃない??

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ニチアサ魔法少女モノに転生したら性癖終わってる奴らしかいない件(作者:レイ)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

▼TSよわよわ魔法少女が歪んだ性癖持ちの味方魔法少女達から劣情を向けられまくるお話です。


総合評価:1137/評価:8.58/連載:6話/更新日時:2026年10月12日(月) 11:58 小説情報

理想のラスボス系うすほそになったので、完璧を求めて暗躍していたら悪が蹂躙されていた(作者:ほそラス)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

ラスボス系ヒロインが好きなオタクが、ある時理想のラスボス系うすほそになった。▼ただ見た目は理想でも、中身はまだまだ完璧じゃないし、本人はアホだ。▼結果、ラスボスっぽい力を求めて彼女は暗躍することとなった。▼しかしその過程で、助けた少女に心酔されたり、裏側に潜む闇を無自覚に暴くから世界はさぁ大変。▼そして等の本人は、周囲を気にせず仲間にはポンコツを晒しながら、…


総合評価:2379/評価:8.82/連載:4話/更新日時:2026年10月10日(土) 00:05 小説情報

儚い系うすほそエルフになったので自由を謳歌する(作者:うすほそ~(挨拶))(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

人生に疲れていた社畜は、気がつけば異世界で儚い系うすほそエルフとなっていた。▼当然チートも持っている。▼ちょっと儚すぎること以外、何一つ不満のない状況を手に入れたのだ。▼これからは自由に生きていい、そんな幸福感に満ちながらうすほそエルフ”リリア”の新たな人生は始まった。▼しかし儚すぎる見た目のせいで、生き急いでいるようにしか見えないうすほそは、周囲に多大な心…


総合評価:1527/評価:8.5/連載:5話/更新日時:2026年08月30日(日) 12:35 小説情報

意味深に助言を送る見た目だけミステリアス女、弟子が大成して大汗をかく(作者:ミスジョ)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

ミルシアは見た目だけミステリアスなうすほそ銀髪TS転生者である。▼如何にも神秘的な見た目から繰り出されるのは、酒とギャンブルが大好きなだらしない姿。▼しかも、初めて出会った若人を勝手に弟子と呼び、意味深な助言を送るのが趣味だった。▼周囲からは見た目だけ残念女と呼ばれ、本人もそれを自認していたが――ある時、彼女の弟子が世界を救って英雄になってしまう。▼そして堂…


総合評価:1378/評価:8.12/連載:5話/更新日時:2026年09月10日(木) 17:03 小説情報

転生したら余命僅かな美少女だったので、悪のカリスマの振りして遊んでる。(作者:悪のカリスマをこよなく愛するオタク)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

 悪のカリスマとは、悪を尊ぶ大罪人でありながら、人を惹きつける魅力を有する存在である。▼ ▼ 余命僅かな超絶美少女に転生した主人公は、魔法少女が存在する異世界で「悪のカリスマのごっこ遊び」を開始する。▼ あくまで、悪のカリスマの振りをして遊ぶだけ。▼ 迷える子羊の脳を焼き、チヤホヤされたいだけだったのに。▼ …‥いつの間にか、主人公の周囲には「本物の悪い子」…


総合評価:4309/評価:8.7/連載:2話/更新日時:2026年10月08日(木) 17:22 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>