ドブカス悪役令嬢を演じてたつもりだけど、周囲の解釈が何か大きな事情を抱えている高潔な精神を持った貴族令嬢なんだけど   作:つむつむ

17 / 17
ドブカス令嬢、家を抜け出す

「困ったなあ。しかし……。今は危険だし」

 

 と困った表情を見せるお父様。これは押せば落ちそうだな。あたしのドブカスとしての勘がそう告げている。

 

「だってお父様の言う危険な状態ってのもいつまで続くか分からないんでしょ!? いーじゃん! いーじゃん! あたしだってみんなみたいにお出かけがしたいよ!!」

 

「でもなあ。うーむ。困ったぞ」

 

「だったら、商会の人を呼ぼうよ! ほら、ファビウスのおじさまに会いたい!」

「ファビウス……?」

 

 わがままにわがままを重ねていく。これがドブカス流という奴だ。商会の主をそう簡単に呼び出すことはできないだろう。

 

 いくらうちがお得意様とはいえ、急に呼び出してきてくれるほど、ファビウスのおじさまも暇ではないだろう。断るもドブカス、受けるもドブカス。これが一流のドブカスによる、ドブカス行為だ。

 

「ファビウス商会。そういえば数年前から取引を始めたと聞く。アマンディーヌ、その商会は信頼できるのか?」

 

「え……ええ! ファビウス商会は信頼に足る誠実な商会ですわ! 港町を拠点にしておりまして、海外からの輸入製品にも手早く対応してくださるの!」

 

「なるほど。となると大きな船も自前持ちか?」

「ええ! とても大きな船で取引していると言ってましたわ! 独自の道を開拓していまして、とっても役に立ちますの!」

 

 商会が持つ船はその商会の規模と信頼を表す一つの指針だ。大きな船による輸入、輸出は国や領地からの信頼を無くしては成立しない。

 

 船というのは何かと悪用できてしまう。特に大きい船であればあるほどだ。大きい船を国内で保有するには、自分の身は潔白ですよという信頼が必要になる。

 

 どうやらお父様はそれで判断しようとしているらしい。お母様に比べるとちゃんと冷静なんだな。

 

「分かった。可愛いシャルロッテの頼みだ。ファビウス殿を家に招待するとしよう。それでいいかな? シャルロッテ?」

 

「わーい! ありがとう!! お父様大好き!!」

 

 ここで甘えておくことで、自分の正体を悟らせない高度なドブカスプレイをしておく。

 

 

***

 

「シャルロッテ様! アマンディーヌ夫人! 今回も我々を指名してくださりありがとうございます!」

 

 数日後。本当にファビウス商会がやってきた。ファビウスのおじさまも随分と気合が入っている。

 

「お嬢様に満足していただけるような物を用意しました! あのヴァニリウス卿から直々の依頼なので! 一層気合を入れていますよ!」

 

「ふうん。お父様に言われたから気合入れるんだ。なんだかいつも、ちょっと手を抜いているみたいな言い方ね」

 

 おっと。息を吐くようにドブカスワードを口にしてしまう。半分くらい本音だけど。

 

 今回はお父様からの指名だ。いつもはお母様が窓口になっている。ファビウス商会はお父様からの指名でちょっと舞い上がっているのだろう。

 

「いやはや。いつも我々の全力を出しておりますよ。今日は、とっておきを提案できますとも」

 

「ふうん。あたしを退屈させたらどうなるか分かるでしょうね? さ、色々と見てほしいわ。ファビウスのおじさま!」

「では早速!」

 

 と言ってファビウスのおじさまから色々と商品を提案される。新作のドレス、アクセサリー、化粧品などなど。

 

 まああたしにはあんまり興味が湧かない。つーか、提案してくるものが昔のシャルロッテを参照してるから、微妙に趣味じゃないんだよな。

 

 あたしはファビウスのおじさまや商会の人達の話を聞きながら、渡されたカタログに目を通しておく。せっかくだし無理難題を吹っ掛けてやろう。

 

「ねえ、この太陽の恵みっていうアクセサリーが気になるんだけど、今日はないの?」

「太陽の恵みですか……。シャルロッテお嬢様、申し訳ございません。そちらは非常に貴重な品となっておりまして、今日は持ってきていないのです」

 

 なんかやたらと豪華で、やたらと値段も他に比べると一段階高い。なんとなく吹っ掛けてみたけど、案の定持ってきていないようだ。

 

「ええ~~!? あたし、このアクセサリーが気になるんだけどないの!?」

「はい。こちらのものはどうでしょうか? お嬢様にピッタリの逸品となっていますよ」

 

 ハハーン! なんとしてでもあたしの興味を、このアクセサリーから遠ざけたいという狙い、いや欲を感じるなあ!!!

 

 馬鹿め!! 隙を見せたが最後よ! あたしのドブカスの餌食となるがいいわ!!!

 

「やだやだやだ!! あたしはこれが欲しいの! なんとかしてくださらないの? ファビウスおじさま!」

 

「そう言われましても。今、本社の人間と連絡を取ってきます」

「いい返事を期待しているから。いい? 期待にそぐわないような結果ならただじゃおかないんだからね!!」

 

 と念押しにドブカス行為をしておく。何を連絡するか分からないが、十中八九別日を指定してくることだろう。

 

 まあそこまですればかき乱したと言えるから、テキトーに別日にズラして、またひっかき乱してやろう。これぞドブカス行為だ。

 

「お嬢様! いい報告です。今ならファビウス領にある支社で本物が見られると。ここから遠くないですし、お嬢様には足を運んでもらうことになりますが、今日にでも実物を目にすることができますよ!」

 

 という予想外の返答が返ってきた。へーほー、ふうん。そこまで気合を入れるか。よかろう。それではあたしもそれ相応の気合を見せてやらなくては。

 

「わーい! でもね、ファビウスのおじさま。あたし、今、お父様から家を出ちゃ駄目って言われているの。何とかして抜け出せない?」

「抜け出す……ですか。ですが、お嬢様を勝手に連れ出したと知られたら」

 

「みんなには内緒にするわ! もしバレたとしてもあたしが謝るから変な心配はしなくてもいいよ!」

 

 まあバレたその日には罪を擦り付けるのだが。ドブカスとしては当然の礼儀だ。

 

「ううむ……お、お嬢様がそう仰るのであれば。分かりました。我々が協力しましょう」

 

 言いくるめに成功したので、あたしは抜け出すための準備を始める。もっとも、ローブで身を隠して、荷物に紛れて抜け出すという簡単な作戦なんだけど。

 

 あたしのうすほそボディが役に立った。余計なものがないから、ローブで身をくるめばそれっぽい荷物を装える。

 

「あら、ファビウス様。もうお帰りなのですか? シャルちゃんは満足していました?」

「アマンディーヌ夫人。ええ、シャルロッテ様からはご好評をいただきました。それでは今日のところはこれで」

 

 抜け出す際にお母様に話しかけられたけど、お母様の目は節穴だ。何も怪しまれることなく、あたしは荷物と共に馬車の中に入る。

 

「シャルロッテお嬢様。すぐに席にご案内しましょう。さあ、ローブを脱いでこちらに」

「あたし、ここでいいわ。その代わり、眠くなっちゃったから昼寝でもするわ。いい? あたしの昼寝を損なうような運転をしたら許さないんだから! じゃあおやすみ」

 

 ここでも無理難題を突き付けていく。人の車の中で惰眠を貪る。なんて我儘なドブカス行為だろうか。一度やってみたかったんだよなあ。

 

 ということであたしはローブにくるまったまま目を閉じる。意外と寝心地がいい。あたしの意識は一瞬にして暗闇の中に落ちていくのであった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ニチアサ魔法少女モノに転生したら性癖終わってる奴らしかいない件(作者:レイ)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

▼TSよわよわ魔法少女が歪んだ性癖持ちの味方魔法少女達から劣情を向けられまくるお話です。


総合評価:1276/評価:8.71/連載:7話/更新日時:2026年10月19日(月) 10:01 小説情報

理想のラスボス系うすほそになったので、完璧を求めて暗躍していたら悪が蹂躙されていた(作者:ほそラス)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

ラスボス系ヒロインが好きなオタクが、ある時理想のラスボス系うすほそになった。▼ただ見た目は理想でも、中身はまだまだ完璧じゃないし、本人はアホだ。▼結果、ラスボスっぽい力を求めて彼女は暗躍することとなった。▼しかしその過程で、助けた少女に心酔されたり、裏側に潜む闇を無自覚に暴くから世界はさぁ大変。▼そして等の本人は、周囲を気にせず仲間にはポンコツを晒しながら、…


総合評価:3010/評価:8.78/連載:4話/更新日時:2026年10月10日(土) 00:05 小説情報

儚い系うすほそエルフになったので自由を謳歌する(作者:うすほそ~(挨拶))(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

人生に疲れていた社畜は、気がつけば異世界で儚い系うすほそエルフとなっていた。▼当然チートも持っている。▼ちょっと儚すぎること以外、何一つ不満のない状況を手に入れたのだ。▼これからは自由に生きていい、そんな幸福感に満ちながらうすほそエルフ”リリア”の新たな人生は始まった。▼しかし儚すぎる見た目のせいで、生き急いでいるようにしか見えないうすほそは、周囲に多大な心…


総合評価:1547/評価:8.5/連載:5話/更新日時:2026年08月30日(日) 12:35 小説情報

意味深に助言を送る見た目だけミステリアス女、弟子が大成して大汗をかく(作者:ミスジョ)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

ミルシアは見た目だけミステリアスなうすほそ銀髪TS転生者である。▼如何にも神秘的な見た目から繰り出されるのは、酒とギャンブルが大好きなだらしない姿。▼しかも、初めて出会った若人を勝手に弟子と呼び、意味深な助言を送るのが趣味だった。▼周囲からは見た目だけ残念女と呼ばれ、本人もそれを自認していたが――ある時、彼女の弟子が世界を救って英雄になってしまう。▼そして堂…


総合評価:1400/評価:8.12/連載:5話/更新日時:2026年09月10日(木) 17:03 小説情報

悪役令嬢の影武者ですが、主人が姿を消してから五年が経ちました(作者:パンデュ郞)(オリジナル:ファンタジー/ノンジャンル)

「このままでは破滅しますわ~」と叫んで失踪したお嬢様、唯一の手掛かりは彼女が残した悪役令嬢必携ノート▼マルチ投稿しています


総合評価:2536/評価:8.74/連載:11話/更新日時:2026年10月19日(月) 20:03 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>