ドブカス悪役令嬢を演じてたつもりだけど、周囲の解釈が何か大きな事情を抱えている高潔な精神を持った貴族令嬢なんだけど 作:つむつむ
「クフフ……ハーハッハッハッ!!! 笑わせるなあ! シャルロッテお嬢様!!」
大笑いを見せるリシン。もしかして余りの危機っぷりにやけっぱちを起こした?
いいや、あの大笑いの中に隠された人を見下すような笑み。ドブカスのあたしにはわかる。あいつはまだ手札を隠し持っている。
あたしの前で手札を温存してるとは小癪な。全て開示させて、全て破り捨てた上で勝ってやろう。それがドブカスの流儀というやつだ。
「この程度、問題ですらないっ! この結界は、お嬢様を弱体化するだけではないのだよ!」
地面から無数の黒と紫の線が浮かび上がる。それがリシンの足元へ集中していく。
「この結界内にある魔力は全て、私に還元される!」
「魔術が使いたい放題ってこと? 随分とお喋りなのね!!」
大量の飴で作られた槍でリシンを突き刺す。リシンは口から大量の血を吐いて倒れる……と思ったが、両手で槍を砕き立ち上がる。
それどころじゃない。抉られた肉体の一部が再生している。それも高速に。
「お嬢様と同じ再生の魔術ですよぉ!! 大量の魔力があるからこそできる力技!! さて、お嬢様は何度、再生することができますかねえ!?」
あたしの魔術は再生じゃなくてダメージの置換だ。あらかじめ作っておいた自分そっくりの人形にダメージを移し替えているだけ。なのであんまり魔力を消費しない。
しかし、再生するならかなり厄介だ。全身をお菓子に変えても再生するのかな。
「さらにぃ! 大量の魔力があれば、お嬢様と同じくゴリ押しが可能になるということですよ!!」
リシンの杖から風の刃が放たれる。その刃はあたしの右腕を肩から綺麗に切り裂いた。あたしの鎧の上から攻撃を通せるってなると、それなりに強力みたいだ。
まあ、今更四肢欠損程度では動揺しないんだけど。右腕を生やしながら、あたしは飴の鎧を解除する。
「おやおや。せっかくの防御を捨ててしまってよろしいのですか?」
「どうせ防御の上から攻撃通されるなら意味ないでしょ。解説されなきゃ、そんなことも理解できないなんて、貴方の頭には何を詰めているのかしら?」
「相変わらず減らず口ですねえ!」
「それに……!!!」
リシンが風の刃を飛ばしてきたタイミングで、あたしは脚部のみ鎧を展開し、超加速でリシンの背後に回り込む。
「使わないなんてこれっぽちも言った覚えないわよ!」
「おじょ……ガハッ!!」
必殺! ドブカス流前蹴り! 蹴りを喰らわせた後に、内部に飴を仕込んで、内側から炸裂させる魔術だ!
地面に落ちたリシンが立ち上がろうとした瞬間、身体の内側から炸裂した刺々しい飴が全身を貫く! 全身がバラバラになった……。
「ふはは無駄ですよぉ!! いくらバラバラにされたとしてもこの通り! すぐに再生しますから!!」
「すっご。本当に再生してる」
結界によってこれだけの不死性を得たというなら、結界をどうにかすれば不死性は突破できそうだ。
「私は魔力が次から次へと溢れ出てきますが、お嬢様はどうでしょうか? 先ほどの大魔術の連発。取り巻き二人を殺すのに、少々手こずりすぎではありませんか?」
「あたしを煽るなんていい度胸ね。気に入ったわ。玩具を手に入れて調子乗っているか知らないけど、全力で蹂躙してあげるから」
「ハハハ!! 魔術の天才といえど、ご自慢の魔術は後何発使えるかな!?」
概ね、リシンの考えていることは分かる。あたしの魔力切れを狙っているんだ。あたしの魔術がどれだけ強かろうとも、あたしの魔力が尽きたらそこまで。
そしてパワープレイでゴリ押しているから、実際に魔力は減っていく一方だ。牢屋の中ほどではないが、この空間にいる限り、あたしの不利は変わらない。
結界を破壊するのが一番手っ取り早いんだろうけど、流石に結界の発生元が分からないと破壊のしようがない。牢屋の中ではわざわざ分かりやすく、魔法陣が浮かび上がったからあんなことができたんだけど。
「面倒ごとは押し付けるに限るわね」
あたしはそう呟いた後、リシンの懐に飛び込んでその首を蹴りで斬り落とす。首はすぐに再生して、あたしと距離を取ろうとするが、そうはさせない。すぐに追いついて、全身を細切れにする。
「無駄! 無駄! 無駄なんですよお嬢様! いくら殺したところで私は死なない! 私の再生能力は不滅なのです!!」
「あたしが無駄なことをしているように見えるなら、その目を交換することをおススメするわ。あたしの行動には全て意味があるのよ」
まあ意味なんてほとんどないに等しいけど。思わせぶりなことを言って、相手の思考リソースを削ぐのも、ドブカスの戦い方だ。
「さっきから、あたしの魔力切れを狙っているような言いぶりだけど、この程度の策であたしの魔力が尽きると思っているのかしら?」
「……は、な、何を?」
「いいハンデということよ。貴方の結界内にいても、あたしと貴方とでは実力が違うということを教えてあげる!」
あたしは思いっきり足を踏み込む。
刹那、元は洞窟だったものを改造した拠点に、巨大な飴の城が出来上がる。リシンはそのてっぺんに突き刺さるようにして、宙へと投げ出される。
「ガハァ!? ば、馬鹿な! 結界は正常に動いているはず! だというのに、こ、これほど巨大な建造物を一瞬で!!」
「正常に動いているわよ! けど、その上で貴方との格の違いを教えているわけ!!」
あたしは宙に投げ出されたリシンを空高く蹴り飛ばす。空中で血をまき散らしながら、それでも再生するリシンに向かって、あたしは城を足場にして飛び上がる。
「アハハハッッ!!! どうしたのかしら!? その程度なの魔族ゥ!!!!!」
テンション上がりすぎてそんな煽り言葉を口にしてしまう。いくら再生しようとも、いくらバフをもらっていようとも、あたしには絶対に届かない。いいや、届かせない。
「さあ! さっきからあたしに攻撃を与えられていないわよ!! 何かしら抵抗してみせてよ!! あたしを退屈させないで!!」
「ぐ……ぐぎぎぎぎ!! こ、この俺を馬鹿にしやがってぇ!!!」
「一人称は私じゃなかったのかしら!? 余裕がなくなっているわよ!!」
あたしは吹き飛んだリシンの背後に回り込んで、背中に蹴りを喰らわせる。リシンが城を突き破って地面へと落下していく。
「あたしが飽きるまで付き合ってもらうわよ。まだまだ貴方には踊ってもらうんだから。リシン」
あたしは地面で血だらけになって横たわるリシンに向けてそういうのであった。