ドブカス悪役令嬢を演じてたつもりだけど、周囲の解釈が何か大きな事情を抱えている高潔な精神を持った貴族令嬢なんだけど   作:つむつむ

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ドブカス令嬢、報復を決意する

「なるほどなるほど。つまり整理すると、貴女は貴族に雇われてあたし達を騙した。けれど、誰に雇われたのか詳しく分からない。そう言うわけね?」

 

「は、はいっ! その通りですシャルロッテお嬢様! 幸福です!!」

 

 暗くて狭い部屋に、ジゼル先生を閉じ込めてから数時間後。あたしは大方の事情を聞き出していた。

 

 ジゼル先生曰く、貴族同士による蹴落とし合いが起きているらしい。ジゼル先生も貴族に多額の報酬金をもらい雇われたのだと言う。

 

 特に魔術の名門と呼ばれている家への依頼は、多額の報酬金が支払われるらしい。ジゼル先生も間違った魔術の知識を教え続けるという簡単な依頼で、多額の報酬金を貰っていたとのこと。

 

「それで? 依頼者の狙いは聖女や賢者を覚醒させないため。そういうことよね?」

 

「はい! すごくすごくすごく! しゃ、しゃしゃしゃ、シャルロッテお嬢様は聡明です! 私は幸福です!」

 

 どうやらこの世界には、聖女以外にも特別な魔力を持つ存在がいるらしい。

 

 聖女、賢者、勇者などなど。数十年に一度産まれて、特別な魔力を宿している。どうやら随分と前からあたし達の世代で現れることは予言されていたらしい。

 

 それをありがたく思う人がいれば、当然面白くないと思う人もいる。産まれてくることを警戒し、忌避する人が現れるのは当然のことだ。

 

 このヴァニリウス家の令嬢であるあたし達が狙われるのはある意味じゃ必然だった。お姉様は全く頭角を現さなかったけど、あたしは周囲から天才と呼ばれていたらしい。

 

 魔力量も多く、魔術の覚えも早い。お母様の自慢と本人の傲慢さが合わさり、瞬く間に噂は広がった。それを聞いて、もしかしたらと思った貴族がジゼル先生を差し向けたそう。

 

「ジゼル先生は闇魔術師とは関わりないのは本当よね?」

「はいっ! とってもそうです! わ、私は連絡人を名乗る人物しか関わっておりません! 他にヴァニリウス家へ害をなすために雇われた人を知りません! とっても幸福でででで」

 

 うーむ。それにしても言葉にするくらいおぞましいドブカスをやりすぎてしまっただろうか。壊れたラジオみたいになるんだよな。

 

 ジゼル先生がやり取りしていた人物は、連絡人を名乗る人物だけだ。直接会ったことはなく、いつも使い魔である鳥を介して連絡を行っていた。

 

 連絡人にはお母様に取り入る方法を教えてもらったり、そのための準備もしてもらっていたらしい。お母様は馬鹿だからまんまと引っかかり、こうして偽の講師を多額のお金で雇ったとのことだ。

 

 ちなみにジゼル先生には魔術の講師をできるほどの才能はない。学生時代はパッとした成績ではなく、その後魔術の研究職に就くが、大した成果を上げられず、冷遇にも近い扱いを受けていた。

 

 年々、手元に残る金が少なくなっていき、研究資金も底をついた時だ。連絡人から、「ある貴族に専属魔術師として紹介する」「何も知らない子供達を相手に間違った魔術の知識をつけさせる簡単な仕事」「一回の講座につき、多額の報酬金」それら三つが揃った依頼を紹介され、何も疑うことなく、ジゼル先生はその依頼を受けてしまった。

 

 そして今に至ると。

 

「これ、お母様が知ったらめちゃめちゃキレそ~~」

 

 お母様はジゼル先生のことを、王都で活躍したとても優秀な魔術師だと思い込んでいる。その肩書きを信じて、多額のお金をつぎ込んでいる。具体的に言うと、メイド達の給金二か月分とかを一日で支払っている。

 

 真実を知ればお母様は正気ではいられないだろう。それはそれで面白いけど、残念ながらあたしとお姉様がターゲットにされている以上、笑っている場合ではない。

 

 ジゼル先生の処遇もどうしようか悩んでいる。口にするほどおぞましいドブカスの数々をこの数時間で与えたせいで、ジゼル先生の精神が壊れてしまった。人間の精神って脆いんだね。まだ一割もやっていないんだけど。

 

 この状態で帰すと色々怪しまれる。連絡人が誰か突き止めてほしいが、こいつにそんな能力はない。連絡人も下手に手を出してこないだろう。

 

 ならば揺さぶりをかけるとしたら、連絡人の背後にいる、ある貴族の方だ。この貴族とやらが実在するか定かではないけど、多額の報酬金を支払っていたことは事実。まあいると仮定してもいいだろう。

 

 だから、きーめた!

 

「クレール! いるわよね?」

「は、はい! シャルロッテお嬢様! なんの御用でしょうか!?」

 

 あたしが廊下に顔を出すと、部屋の前で控えていたクレールが反応してくれる。知らんうちにクレールがついてきてくれることが多くなった。ちょっと前まではお局メイドを始めとする叔母さんメイドズだったのに。

 

「あたし、ジゼル先生のお話をもっと聞きたいの! だから、ジゼル先生をここに泊めてあげて!」

「え? で、でもお嬢様。ジゼル先生は王都でも有名な魔術師ですよね……? いくらなんでも急にしてしまうのは」

 

「やだやだやだ! あたしはジゼル先生とお話がしたいの! いい? 何があってもジゼル先生を帰したら駄目だから!」

 

 ジゼル先生を返さない。ということで息を吸って吐くかのようにドブカスをしていく。今日のドブカスは我儘でジゼル先生を拘束しよう作戦だ!

 

 ここはジゼル先生を監禁、拘束することで連絡人と依頼者を揺さぶる。これで何か動きがあれば良し。なければその時また考える。

 

「後、これはお母様にもお姉様にも内緒だから! いい!? クレールはあたしの言うことを聞いてくれるわよね!?」

 

 あ~~息を吸って吐くかのように、自然とドブカス流の脅しが言えるようになってしまった。あたしのドブカス力が上がり続けてしまっている!

 

「分かりましたっ! シャルロッテお嬢様には何かお考えがあるんですよね? 私、このことについては秘密にします!」

 

 ず、随分と聞き分けがいいな。どうかしたのか? なんか想定ならもうひと悶着くらいあることを想定していたのに。

 

 まあいいや。取り合えず、それと。

 

「後、ジゼル先生にはクレールのお菓子でも与えたらいいわ。クレール先生は学者肌の魔術師。高級料理を食べることも慣れていないでしょうし、あれくらいでちょうどいいわ」

 

「な、なんと……!」

 

 これには流石に反対意見を出すのか……? さあ来い! あたしのドブカスで無理矢理説得してやるぞ!

 

「シャルロッテお嬢様はジゼル先生のことを考えてそう言っているのですね!? 私、感激しました! 最近、新しい味を試作していたところなんですよ! ジゼル先生にはそれを味わってもらいましょう!!」

 

 と言ってクレールがもうダッシュで消えていく。え……? ええ? な、なんかあたしの思ってたのと違う。

 

「まあいいわ。今は重要じゃないもの。それよりもこの手が上手く行くといいのだけど」

 

 手がかりが少ない以上、これに関しては苦し紛れの一手だ。

 

「あたし以外にお姉様に手を出そうなんて言語道断よ。あたしに噛みつこうとした報いを受けさせてやるわ!」

 

 連絡人だか、ある貴族だか知ったことではない。あたしに噛みついた以上、あたしはそいつらの骨すら残さねえ。特に貴族なら奪えるものは根こそぎ奪ってやる。これぞドブカスの精神。あたしを敵にしたことを後悔するんだな!

 

「そういえば、ちょっと後に」

 

 もう少しすると貴族達が集まるパーティーが王都で開催される。何か有益な情報を得られるチャンスかもしれない。最近、あたしはそういった場に顔を出していないから、心配というか、ちょっと怪しまれているかもしれない。

 

 何故ならシャルロッテはそういったパーティーには欠かさず出席していた。パーティーに出てはメインをそっちのけで、シャルロッテは思う存分ドブカスを振るっていた。

 

 最近は闇魔術師の件もあり、顔を出せずにいたのだ。そろそろ行かないとあたしに変な疑いをかけられてしまうだろう。それは可能なら避けたいところだ。

 

「ふふっ。ついにドブカスをこの実家の外にも出す時が来たようね!」

 

 当然ながら、外に出る以上、一層気合を入れてドブカスをしなくてはならない。意外と関わりの薄い人が、些細な変化に気付くのだ。禁忌に手を染めた。そんな風に思われないようにしないといけない。

 

 まあでも今のあたしなら余裕だろう。余裕。なにせ全身から溢れ出るドブカスオーラが違う。なんならよりドブカスに磨きがかかって、一目見ただけであたしがあたしであると思い知らせてしまうかもしれない。

 

「ふふふふっ。それで見つけてやるわ。あたしに噛みつこうとしたお馬鹿さんを」

 

 あたしは来るパーティーの日を楽しみにするのであった。

 

 

 

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