私が超お姉ちゃんだ! 作:超かぐや姫!に脳を焼かれし者の左足
-Sideみこと-
ライブ当日。皆と一緒に控えの部屋でライブ前最後の雑談をしていた。
「だらららら、蟹!だらららら、うさぎ!」
「はいはい。可愛い可愛い」
かぐやが謎の物真似ルーレットをしてらっしゃる。私もやりたいな。いくぞ、ルーレットスタート!
「だらららら……だらららら、……らら」
「何も思いついてないなら乗っかるのやめなさいよ。ドラムロール下手くそだし」
物真似ルーレットはノリでなんとかなるものじゃなかったらしい。なんか悔しいからもうちょっと頑張りたい。
「だらららら、ら〜………海老!」
「かぐやの蟹とほとんど一緒じゃん」
駄目だった。またいつかリベンジしよう。
「ねーねー彩葉。練習しすぎてお腹すいた〜。終わったらパンケーキ食べよ?」
「私も食べたいな〜」
「あんたらよく食べれるね…。私は緊張でご飯食べれんかったよ」
まぁ!ご飯食べられなかったの?最近はお腹にお肉が少しずつついてきてるとはいえ、彩葉はまだまだ痩せてるんだからしっかり食べないと。
今度かぐやに料理の仕方教えてもらおうかな。私が作った料理を食べてもらって、美味しいって言ってもらいたいなぁ。なんて考えていると、
「だらららら、どじょう!」
下手くそなドラムロールと共に、どこからともなくヤチヨがやってきた。
「あ、ヤチヨだ」
「パンケーキいいなー。ヤチヨも食べたいなー」
ヤチヨがふわふわと浮いたままくるくる回る。
「一緒食べる?」
「よよよ〜。ヤチヨは電子の歌姫なので食べられないのです」
「えぇ!?それなんて拷問?かぐやには絶対無理!」
そうだった。
そう思うと無性に悲しくなってきて、気づけばヤチヨを抱きしめていた。前の輪廻の私はどうしてヤチヨの隣にいないのかな。
妹が八千年も辛い思いをすることが分かっているのに、理由はどうあれ一緒にいてあげられないことが確定している。それが悔しくて、溢れ出した涙が止まらなかった。
「ごめんねぇ、ヤチヨぉ。いつかきっと食べられるようになるって信じてるから…」
「うわぁ…ガチ泣きじゃん」
しょうがないじゃないか。お姉ちゃんとしての責務を果たせず、妹が苦痛を感じているのに助けてあげられない。不甲斐ない自分に腹が立つ。
偉い人もお姉ちゃんか先に生まれるのは、後から生まれてくる妹を守るためだって言ってた。
「ちょっと苦しいよ〜、みこと〜」
「あっごめん。つい…」
「鼻水まで出しちゃって。はい、鼻ちんしようね〜」
「なんか、お姉ちゃんよりヤチヨの方がお姉ちゃんみたい」
VR世界なのに鼻水?って思ったけど気にしないことにする。そうやってわちゃわちゃしていると、いよいよライブの時間が来た。
四人揃って昇降台に乗り、息を整える。
「いざ、ゆこうか」
ヤチヨの一言とともに、上昇していく。ステージに到着して辺りを見回すと、暗くてよく見えないけど人がいっぱいだっていうのは分かる。
「毎度ヒリヒリなんだよね〜。この雰囲気」
「ねぇ、ヤチヨ?」
「なんだいなんだい?」
「ヤチヨのデビュー曲ってもう歌わないの?」
隣で彩葉とヤチヨが『Remember』の話をしてる。彩葉、それはヤチヨがあなたのために歌った歌なんだよ?もっと人に好かれてる自覚を持ってほしいな。
私も正直、彩葉のことが…。いやいや、今はそんな場面じゃないよね。今はかぐやに彩葉、もちろんヤチヨにも楽しいって思ってもらえるライブにできるように頑張らなくちゃ。
「ほら、時間だよ!」
『ヤオヨロー!みんな生きるのどうですか?良いことあった?それとも、泣いちゃいそう?よしよし、全部大丈夫。どんなに孤独な道のりでも、楽しかったなーって記憶が足元を照らすよ。この時間を忘れられない思い出にしたいから…どうか、一緒に踊ってくれる?』
─世界で一番おひめさま
─そういう扱い心得てよね
一曲目の『ワールドイズマイン CPK!Remix』が始まった。私が歌う部分は少ないけど、ダンスはメインとして任されてるからみんなの目を奪うようなパフォーマンスを見せてあげる!
─別にわがままなんて言ってないんだから
─キミに心から思ってほしいの
─かわいいって
「私の〜!返して〜!」
もちろん練習通りにはいかず、かぐやが彩葉の取り合いの末、床に転んで彩葉を取られたと泣いてしまう。私は自然な動きでかぐやの横に転がり、ヤチヨのアドリブに合わせる。
『ねえねえ!世界一好きになっちゃってもいいよ〜!』
─世界で一番おひめさま
─気が付いてねえねえ
─待たせるなんて論外よ
ヤチヨの兎耳ダンスを見届けた後、かぐやと一緒にサングラスを取り出してくねくねする。
─いますぐによ?
いつの間にかサングラスをつけていたヤチヨを含めた三人で並んでウインク。
─ヘイベイビー
ここの彩葉の控えめなヘイベイビーがすっごく好きで、生で聞けたのが嬉しい。今はライブ用の衣装で耳も尻尾もないけど、もし生えてたらすごい勢いで振っちゃってたと思う。
『お次は新曲!いっくよー!』
─今は昔 誰もが知る物語
─かの有名なかぐや姫はこう言った
─そんな結末ちっとも望んでないし
─運命だからってキミそれで頷くの?
順調にミスもなく進んで、ステージが暗くなるタイミングでヤチヨが涙を流していた。
─きっと永遠だった
─逢いたいと願うまで
─そうよ 私
─そんなおとぎ話
最後は皆で中央に集まってフィニッシュ。歓声が湧き上がり、会場が揺れる。ステージで歌って踊っていた私たちは肩で息をするくらい体力を消耗していたけど、そんなのが気にならないくらい興奮したし、楽しかった。
興奮冷めぬまま、目を開けると一緒の部屋にいた彩葉とかぐやも同様に開けていた。目に装着されたスマコンが淡く丸い光を発している。
「めーーーーっちゃ、楽しかった!」
正直、ほんとに私がライブに参加しても良いのか不安だった。でも、歓声が上がるってことは私もいて良かったって思ってもいいのかな?
「彩葉、好き」
「えぇ?私?」
「私も彩葉がす…んんっ」
かぐやが彩葉に好意を伝えたから、私も真面目な表情で伝えようとしたけど、やっぱりやめた。誤魔化せたかな?
私も彩葉が好き。元々は推しとして好きだったけど、今は一人の人として好きになった。だって、私が自己嫌悪して沈んでる時にさ?励ましの言葉だけじゃなくて、私の行動が無駄じゃ無かったって言ってくれたり、抱きしめてくれたりしてくれたわけじゃん。
そんなの何とも思わないほうがおかしいよ。好きになっちゃう。でも、かぐやは彩葉のことが好きで、彩葉も多分既にかぐやのことが好きになってる。私がそこに割って入るわけにはいかない。
「もう彩葉と結婚しよっかな〜」
「生活費折半してくれるなら、一緒に住むくらいはいいけどさ…」
「お姉ちゃんも一緒ね!」
「私もいいの?」
「これでみことだけ仲間はずれは変でしょ。かぐやの面倒見るの手伝ってよね」
「一緒…一緒かぁ。そうなれたら嬉しいな」
「…?」
二人から一緒に暮らすことを認められて嬉しさが爆発したところで、モニターが満月に切り替わった。
「…来ちゃったか」
一人の月人がステージに入ってきて、かぐやの腕を掴む。すぐにかぐやの体勢が崩れ、座り込んでしまった。そんなかぐやの姿を見て、彩葉が武器を取り出して月人に斬りかかる。
私は月人の腕と彩葉の武器を持った手を横から掴んで止める。月人達のは乱暴なやり方に見えるけど、こっちを傷つける意思は無い。それに、こんな見た目でも私の部下だ。腕をとられたら困っちゃう。
「心配ないよ。私は仕事のこと、覚えてるから。かぐやはちゃんと連れて帰る。だから、もう少しだけ時間を頂戴?」
彩葉に聞こえないように、小声で話す。いつの間にか増え、私たちの周りを囲んでいた何人もの月人たちが半歩下がった。そこへ、
「おいたは、だめだよー」
ヤチヨが冷たい声でそう言いながら、指を指揮棒のようにして月人たちを吹っ飛ばしていく。ああ、もうちょっと優しく…。
「モウシワケアリマセン」
と言い残して月人達は、ぼふんと音を立てて消えていった。ヤチヨは観客が混乱しないよう、演出っぽく仕立てて騒ぎを収める。その時に、ヤチヨに目配せされた。彩葉には秘密にしてねってことかな?
『今のは一体!?何が起こってしまうんだ〜?続報を待て!』
「かぐや、大丈夫なの?」
彩葉が座り込んだまま動かないかぐやを心配している。かぐやからの返事がないことで、彩葉の顔にどんどん焦りの表情が浮かんでくる。
『みんな!今日は本当にありがとー☆』
ヤチヨがステージに幕を下ろし、ライブはお開きとなる。
「ヤチヨ、今のは?」
「うーん、バグじゃなさそうだし…。やんちゃっ子のいたずらかにゃ〜?調べとくよ」
あっ、彩葉がヤチヨの嘘に気づいたっぽい。これは〜…私が最初から月にいた時の記憶を持ったままだったこともそのうちバレちゃうかな?
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-Side彩葉-
ライブも終わり、リビングのソファでかぐやの頭をドライヤーで乾かしている時。
「ねえ、かぐや…」
話しかけたは良いけど、続く言葉が出てこない。意識をなくしたかのように反応しなくなったかぐやを連れてツクヨミから帰ってきた後、お風呂に入って汗を流した。
それでも、今に至るまでかぐやはぼんやりとして自ら言葉を発することはなかった。みこともお風呂から上がった後、ベランダに出て戻ってこない。
「…コラボライブ、終わっちゃったね」
無理やり言葉を絞り出して話を続ける。
「うん。でも、まだまだやりたいことだらけなんだ。明日もまた食材届くし」
「欲深怪獣かぐや」
「がお〜っ」
一応返事は返ってきたけど、どこかふわふわとした返事だった。いつもの元気がないのは明らかで、
「まだ、具合悪い?」
そう尋ねると、
「ん〜、ちょっと疲れたかな?寝まーす」
と言って二階へ上がっていった。ドライヤーのスイッチが切れて静かになったリビングに、みことがベランダに出るために開けた窓から風が入ってくる。
「みこと?いつまでも外にいると湯冷めしちゃうよ?」
「うん、もうちょっとだけ。先に寝てても良いよ?」
かぐやの様子も変だったけど、ツクヨミから帰ってきてからのみことの様子も変だ。私に顔を合わせないように逃げているような気さえする。
お風呂も別々で入りたがってたし、お風呂が終わってすぐにベランダに出ていった。何か隠していることは間違いない。
「みこと。もどってきて」
「もうちょっとだけだって〜」
「早く。私の言うことは何でも聞いてくれるんでしょ?」
「それは…その〜。お姉ちゃんとしてのメンタルがやられてた時のうわ言といいますか…」
「ふーん。そのお姉ちゃんは自分で言ったことの責任も取らないんだ?」
「すみません。ただいま戻りました」
自分で言ったことの責任はちゃんと自覚しないと。いそいそとベランダから戻ってきたみことに目を合わせて聞く。
「あんた、かぐやの様子があんな感じになった原因分かってるんじゃない?教えて」
「……私は知らないよ?」
「へえ…?」
少しにらむと観念したのか、私の横に座りに来た。そして、ぽつぽつと話し始めた。
「詳しくは言えないんだけど、実は私、月にいた頃の記憶が残ってるんだ。内緒だよ?…かぐやに連れられて地球に来る時、結構な量の仕事を残して来ちゃったんだよね」
「だから、今回のはそろそろ帰ってきて〜っていう確認の電話的な?かぐやのあの様子も、一気に記憶を取り戻させられて処理しきれないだけだと思う。すぐに良くなるはずだよ」
「なに…それ…」
みことに告げられた事をうまく飲み込ない。それじゃあ、かぐやとみことはこのまま帰っちゃうの?かぐやは、本当にかぐや姫だったの?
「ほら、彩葉も疲れてるでしょ?今日は一旦寝て、また明日考えよ?」
みことに手を引かれて自室に入る。理解できないことだらけで、みことに聞きたいことはいっぱいあるけどライブで疲れた身体は正直なようで、みことに布団に寝かされるとすぐに睡魔が襲ってきた。
「…ごめんね。彩葉」
お姉ちゃんは謝ってばかりです