私が超お姉ちゃんだ! 作:超かぐや姫!に脳を焼かれし者の左足
今回はほとんど原作通りなんで斜め読みで十分です
「へへへ……三連休がついにやってまいりやした。超久しぶりに一日六時間は寝られる…」
私、酒寄彩葉はいつもなら早足で帰っている道を小さい歩幅でとぼとぼ歩いている。
眺めていたSNSをスライドさせ、音楽アプリに移動。
そのまま流れるように再生ボタンを押して、ヤチヨのデビュー曲『Remember』を聴き始める。
─大切なメロディは
─流れてるよ
─あなたのハートに
ヤチヨはいつも私を支えてくれている。配信を見れば笑えるし、音楽を聴けば落ち着く。元気がなくても、ヤチヨを見るだけで何とかなるって自信もわいてくる。
大丈夫。ヤチヨがいるからこれからも私は頑張れる。……頑張れるはず。
不意に涙が込み上げてきた。疲れがでちゃったかな…。涙が溢れてこぼれないよう、上を向いて月を見る。
夜空に浮かんだ月の輪郭がぼやけて、歪んで…
「──っ!?」
光る何かが月のそばを通り過ぎた。
「流れ星!」
「帝様の願いがかないますように!」
見知らぬ人が願い事をしているのを聞きながら、私も手を合わせて祈る。
「願い事………。か、金…」
私、言うに事欠いてこんな女子高生らしくない願いを…。
「ぐっ…。ハァ……」
ため息をついてまたとぼとぼと足を動かす。
・・・・
ようやくアパートに着いたと思ったら、アパートの横の電柱が七色に光っていた。
ゲーミング電柱。行きしなはこんな不思議オブジェじゃなかったはず。
まぶたを触ってスマコンを装着してないことを確認して…。うん、つけてない。だとすると…
「ハッ、何だ幻覚か…」
幻覚なら何も問題ない。きっと疲れてるんだ。早く帰ろう。
そう納得して立ち去ろうとすると、電柱がスモークを吹き出した。
「うわっ!」
もう一度電柱の方を見ると、電柱の光っていた部分に竹の取っ手が付いている。
─ハ〜 ハ〜 ハ〜
なんと電柱が開き始めた。咄嗟に取っ手をつかんで閉め、数秒待つ。ゆっくり手を離し、開かないことを確認して…立ち去る。
─キィ
「はっ!」
また開き始めたのでもう一度閉じる。今度は抑えているのに開こうとしてくるので、両手で面を押すかたちで抑える。すると、すごい力で無理やり開き始めた。
力ずくかい…。
私は諦めて手を離した。電柱の扉が完全に開くと、中にはミラーボールつきメリーゴーランドに照らされた赤ちゃんが見えた。
………二人。赤ちゃんとはいえ二人も電柱の中に入るのは狭いようで、窮屈そうにしている。
いやいや、こういうのって普通1人でしょ…。
心中でそんなズレたツッコミをしていると赤ちゃんの1人が
「ん…ふぇ ふぇ〜 あ…くしゅっ」
くしゃみをした。とんできた唾液が頬につく。隣人がくしゃみしたり笑ったりしているというのに、もう1人は意にも介さずぐっすり眠っている。
「んん???????」
ようやくとんでもない現実に脳が追いついてきたようで、目の前で起きた数々の出来事にようやく疑問が浮かび始める。
どうして電柱が七色に光ってるの?どうしてスモーク出るの?どうして赤ちゃんが入ってるの?どうしてうちの近くの電柱なの?
浮かび上がる疑問を振り払って、声を絞り出す。
「すまん!しかしわたくし、手一杯ですので!」
そうだ。私は1人で生活するのにも手一杯なのに、赤ちゃんの面倒を見る余裕はないのだ。二人なんてもっと無理。
申し訳ないけど、置いて立ち去ることにしよう。
「ふぇぇ…」
泣きそうな声を聞いて、振り返る。私が振り向いたのを見て嬉しかったのか、
「ヘヘェ」
と安心したように笑う。そんな顔をされても私に余裕ができるわけじゃない。
「うぅ、くっ…失礼いたします!」
そう言って今度こそ立ち去ろうとすると
─あ〜もうどうなってもいいんだ〜 だぁ!
─ワオーン!ワンワンワン!
─カァ〜 カァ〜
「さ…さすがにここは危ないかも…いや、警察に届けるか?」
周りから聞こえる酔っ払いや野生動物たちの声が、赤ちゃんをここに置いておけば無事ではすまないだろうと教えているように感じる。
「どう持つんだ?これ。そもそも、二人同時に持てるのか…?」
恐る恐る電柱から赤ちゃんを持ち上げる。まさか初めて赤ちゃんを抱くのがこんなシチュエーションになるとは思ってなかった。
初めて抱く赤ちゃんは思ったよりも軽くて、柔らかかった。何とか両腕に1人ずつ抱えて立ち上がると、「任せましたよ」と言わんばかりに電柱の扉が閉まっていく。
「え、ちょっと!お忘れ物ですよ!」
そういいながら電柱を蹴るが、固いだけで反応は無い。やられた。深夜の路上で両手に赤ちゃんを抱えたまま立ちつくす。
「この状況じゃ、私が攫ったみたいでは?」
いやいや、私は攫っていません。一旦預かるだけです。犯罪ではありません。
とりあえず、このまま外に置くわけにもいかないから部屋に入ろう。アパートの自分の部屋へ行こうと歩き出した時、
「ふえええええええええ!」
片手で抱かれるのが不快だったのか、泣き始めてしまった。やばい!このままだと近所迷惑になっちゃう。
急いで部屋に入ってドアを足で閉める。
無事に帰ってこれたはいいけど、全然泣きやまない。一旦ずっと眠ってる方を布団に寝かせて、泣いてる方を何とかしないと……。どうしようどうしようどうしよう…。
─ドンッ
か、壁ドン…初めてされた。いや、ショックを受けてる場合じゃない。スマホで赤ちゃんを泣き止ませる方法を検索して…。見つけたのは『子守唄』〜?記憶にございませんな。
ふと、視界に入ったのはヤチヨのアクリルスタンド。そうだ。
「大切なメロディは──流れてるよ──あなたのハートに──」
一曲を歌いきる前にすやすやと寝息が聞こえてきた。わ、もう寝ちゃった。ヤチヨパワーすげー。
眠らせることに成功したので、起こさないように慎重に布団の先客の横に並べる。
よかったぁ。一段落して余裕ができたから次は…。
「あの〜ですね、七色に光る電柱があったんですけど、赤ちゃんが二人入ってて…すみません。何言ってるか分からないですよね〜。……あ、大丈夫です!今大丈夫になりました!失礼します!すみませ〜ん!」
はあ。疲れた。今日はもう寝よう。
・・・・
──ホーホ ホッホー
鳩の声と郵便バイクのエンジン音で目が覚める。
昨日のあれは幻覚、じゃないよね。横を見ると赤ちゃん2人がすやすやと眠っている。
あれ?なんか…片方だけでかくなってない?遠近法のせいかな?
近くでよく見るために布団に手をついて近づこうとする。
「あ!濡れてる!マジかぁ」
まぁ赤ちゃんだしおねしょくらいはするか。しょうがない。
二人を見比べてみると、どうやら昨日泣いていたほうが大きくなっているらしい。寝る子は育つって言うのに、ずっと寝てた子は育たないんかい。
朝から家を出て、前と後ろに赤ちゃんを抱いてたどり着いたのは子育ての味方、西竹屋。必要なものをかごに入れていく…。無理無理無理無理無理!
「オムツ高!」
どこが子育ての味方だよ!…オムツは1パックでいいか?でもちょっと身長違うし…。二種類買うしかないか…。
「合計で二万二千四百十円になります。」
「ふじゅ〜Payで…」
─ふじゅ〜!
「なぜ私はこんなことを?」
帰り道に我に返りそうになったが、前に抱えた方がぐずり始めたのであやしながら自分を押し殺して坂を登る。
うちに帰り、二人の面倒を見て過ごしていると秒で三連休最後の夜が訪れた。勉強には一切手を付けずに。
小さい方はあまり手がかからなかったが、成長した方は布団から落ちそうになったり、ハイハイして動き回ったりと大変だった。明日、警察に届けてお別れしよう。
・・・・
深夜、声が聞こえて目を覚ました。またぐずってるのかな。
「ねーねーお腹すいた〜」
「承知ですぅ」
「ミルク〜」
「少々お待ちくださいませぇ」
水を温めようと立ち上がったところでふと気づく。
「うわぁっ!」
「うおぉっ!…ビビったぁ」
少女がこちらを見上げているのだ。何がビビったぁだ。ビビったのはこっちだよ。
年は十歳程だろうか。暗闇でも分かるくらいには顔が整っており、髪もきれいだ。美少女というやつだろう。それより、いくらなんでもこんな速度で育つのはおかしい。つまりは人間じゃない。そうと決まれば
「お引き取りください」
素早くベビー用品を全て段ボールと袋に詰め、謎の少女に差し出す。
「てか何ですぐデカくなってんの?こわ!そこのもう一人連れてさっさと出てって!」
「おぉ?ちゃんとお姉ちゃんもいっしょに面倒見てくれたんだ〜!ってあれ?お姉ちゃん成長遅くない?私よりちっちゃいじゃん」
「えぇ?お姉ちゃん…?どう見たってあんたのほうが年上じゃん。っていうかそんなことはどうでもいいの!ちょっと、動いてよ!」
少女は引っ張っても動こうとしない。引っ張るうちに痛がったので思わず手を離すとゴロゴロ転がって窓にぶち当たった。
「頭痛〜い〜。助けて〜」
「ちょっと、やめてよ深夜なんだから。壁ドンされちゃうでしょ」
─ぐぅ〜
目の前の少女のお腹から音が聞こえた。そういえばお腹が空いたって起こされたっけ。ちなみに私も夜ご飯を食べ損ねている。
─ぐぅ〜
私のお腹からも空腹を告げる音がなった。私と少女の間に気まずい沈黙が流れ、
「助けて〜?」
媚びたように首を傾げてきた。
・・・・
「五百九十四円、五食分。てか二時だぞ二時」
深夜にパジャマでコンビニへ行き、買ってきたのはオムライス。それを皿に移し、少女へ渡す。私はバイト先のまかないのタコライス。それと、いつの間にか起きていたハイハイして近づいてくる幼女にあげるためのミルクを机に置く。私がミルクをあげる片手間に食べ始めたのを見て、少女も食べ始めた。
「すご!何コレ!」
「何って…オムライス、かな」
「オムライス!大好き!」
オムライスが気に入ったらしく、すごい速度で食べ進めていく。幼女の方はミルクに満足したようなのでゲップをさせる。
「あなた達、どこから来たの?」
「ん〜?」
「月?」
「かなぁ」
満月を指さしたので月かと聞いたのだが、要領を得ない。
「で?宇宙人は何しに来たの?侵略?」
「うーん、よく覚えてないんだけど、とにかく毎日が超つまんなくて、楽しいところに逃げたーい!って思った気がする。あと、お姉ちゃんは引っ張って連れてきた」
「逃げんな〜。逃げたとしても他人を巻き込むな〜」
「え〜、なんで〜?お姉ちゃんは口では嫌がってたけど、体は正直だったよ?」
「言い方ぁ!」
「だって本当だもーん。一緒には行かないって言ってたのに目線はずっとチラチラ地球の方を見てて、ずっと気にしてたんだ〜」
もういいや。話題変えてやろ。
「ところで、あんたはこれに心当たりある?」
「なにこれ?」
「竹取物語。竹の中に女の子がいて、それを翁が拾って育てて、結婚迫られたりする話。あんた達は電柱から出てきたけどね」
「けこん?」
駄目か…。心当たりはなさそう。
「おいしそう…」
おい、ちょっとは考えるふりでもしたらどうなの。そんで、私のタコライスを欲しそうにするな。引っ張るな。まだ食う気か?
「うう……」
引っ張りあいをしていると泣きそうな顔をするものだから、あきらめて譲ることにした。はぁ…。
「で、なんだっけ?」
「だからぁ!」
「あはは〜。じゃあつまり、彩葉はこのお爺さんなわけ?」
「八十年後の姿でも見えちゃってるのかなぁ?違うよ?ってか何で私の名前!?」
「それで、お話の続きはどうなるの?」
「えーっと、お迎えが来て、翁たちは引き渡すまいと奮闘するもむなしく姫は羽衣を着せられて月に帰る。で、地球のことは忘れる」
「おー。」
「………」
「その続きは?」
「ない。終わり。めでたし」
「月に帰って終わり?何それ超バッドエンド!かぐや姫絶対不幸じゃん!しかも何かいい話風になってるのが余計許せないよ!」
「ぬははー」
「バッドエンドや〜だ〜!ハッピーなのがい〜い〜!らーららららーらー らー」
「どうしようもないじゃん。暴れたって駄々こねたって決まってることが変わるわけじゃないし」
「受け入れて覚悟するしか、ない」
寝転がってぐだぐだ言ってる宇宙人にそう言いきった。
突然その宇宙人が寝ている幼女を抱き上げて立ち上がった。…せっかく寝たところなのに起きちゃうよ。あ、ほら起きた。
「よし決めた!自分でハッピーエンドにする!そんで、ハッピーエンドに彩葉も連れてく!一緒に!」
私にそう言いながらポーズを決める宇宙人。こころなしか、抱いている幼女もキメ顔してる気がする。それでも私は
「ハッピーエンドいらない。普通のエンドで結構です」
「うそうそうそ、んなわけないでしょ?お姉ちゃんも手伝ってくれるって言ってるよ?」
「うわっ気持ち悪!てかもう寝かせてー!」
結局あまり寝られなかった。
今回、オリ主がほぼ空気だったので続きません