私が超お姉ちゃんだ! 作:超かぐや姫!に脳を焼かれし者の左足
-Sideみこと-
KASSEN選手権が終わって、最近はどんどん彩葉のアパートに変な置物が増えてきた。かぐやが配信に使うって言ってるやつもあるんだけど、どう見たって使わないようなのもある。彩葉の生活スペース確保のために頑張って片付けてるんだけど、そろそろ家そのものの容量的にも限界が。
かぐやさん、赤ベコとか木彫りのトーテムとかいつ使うんですか?
かぐやが注文して届いた物を片っ端から押し入れのなかにいい感じに片付けていると、洗濯の終わりを告げる音が洗濯機から聞こえた。
「お洗濯かんりょ〜。かぐや、干すの手伝って」
「え〜、めんどくさ〜い。あっ、配信の時間だ!ってことでお姉ちゃん一人でよろしくね」
「ちょっとはお姉ちゃんを労る気を見せたらどうなのよ」
「彩葉だってやってないじゃん!」
「私は勉強とバイトがあるから。あと、私があんたたちを家においてあげてるってこと忘れないでよね」
基本的にかぐやが散らかしたものの片付け、洗濯、食器洗いは私が担当している。この後彩葉は無理な生活が祟ったために熱中症?風邪?で倒れちゃうからね。ちょっとでもこういうところで恩返ししておかないと。
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-Sideかぐや-
お姉ちゃんと彩葉を連れてツクヨミのライブハウスでライブをしたとき、すっごく楽しかった。かぐやと彩葉の仲良しのやつも、照れくさそうにはしてたけどやってくれた!お姉ちゃんは後方腕組み彼氏面で何度も頷いてた。
ところ変わって夜も深まり、一人で映画を見ていた時のこと。
「えっ、ええ?うわぁ死んだの〜?死んだ〜!ヤバっ、これ作作ったやつ人の心ないの〜?」
ハッピーエンドだと確信した瞬間にヒロインが死んでしまい、ショックを受けていたら後ろで寝ていた彩葉に怒られちゃった。
「かぐや!うるせぇ早く寝ろ!みことも抱きつくな暑苦しい!」
「え?何?」
ヘッドホンをつけていたから何を言ってたのかはっきりと聞こえなかったけど、何やら怒っていることはわかった。
お姉ちゃんが無理やり引き剥がされた勢いのまま、こっちに転がってきた。それでも起きないってすごいね…。うわ、よだれ垂れてる。
・・・・
ライブの日から数日経ち、かぐやたちのチャンネルのランキングが跳ね上がってテンションが上がったかぐやは、お姉ちゃんと彩葉を外に連れ出した。
「彩葉、お姉ちゃん。買い物付き合って?」
彩葉とお姉ちゃんに挟まれた状態で二人と手を繋ぎ、町中を歩き回ってたどり着いたは不動産屋。
そろそろお姉ちゃんの片付けパワーにも限界が来てるから、もっとおっきい家に引っ越せば解決じゃん!ってことで不動産屋前の看板に良さげなものを見つけて指をさす。
〈極上空間を味わうデザイナーズタワマン 3LDK 家賃三十五万円〉
「ねえ、こことかは?」
「…こんなとこ住んでたら人間おかしくなるって」
「今のかぐやの稼ぎなら安定して住めるでしょ。それにほら、かぐやも彩葉も有名になってきたからさ。彩葉は顔出しはしてないとはいえ、声とかでバレるかもじゃん?セキュリティしっかりしてるところのほうが良いと思わない?」
お姉ちゃんなんか早口だね。そんなに今のアパート嫌なのかな?ま、いっか。彩葉先行っちゃったし、ずっと看板見てないで早く行くよ?
浮かんだ疑問をすぐにポイして歩き出した彩葉についていく。すると彩葉が道の真ん中でしゃがんだ。何か気になるもの見つけたのかな?
「彩葉?何か見つけたの?」
返事がない。
「彩葉?」
「大丈夫」
「彩葉…えっ!体あつあつだよ!」
彩葉は額に汗をにじませ、目をつむって苦しそうにしてる。こんなの絶対大丈夫じゃない。急いでお姉ちゃんを呼ぶ。
「お姉ちゃん!彩葉が!」
「どうしたの?」
「体あつあつになってて苦しそうにしてるの!どうしよう、彩葉死んじゃう!」
「落ち着いて、かぐや。とりあえず、タクシー呼んで家帰ろ?熱中症かもしれないから、タクシーが来るまで影に移動しよ」
スマホでタクシーを手配して、ここに到着するのを待つ。彩葉を影に移動させて、お姉ちゃんから彩葉を任される。少し待って、冷たい飲み物を買ってきてくれた。それで彩葉の体を冷やしているうちにタクシーが来たから、家の住所を伝えて送ってもらった。
家に戻って、急いで布団を敷いて彩葉を寝かせる。周りにふかふかのぬいぐるみを並べて、寝苦しくないように。
彩葉がしゃがんで辛そうにしてた時は冷静に対処していたお姉ちゃんだったけど、タクシーに乗ったあたりから顔がどんどん曇っていって、彩葉を布団に寝かせた頃にはぽろぽろ涙を流してた。
そうだ、彩葉のバイト先にもお休みの連絡しなきゃ。
彩葉のスマホを開いて、バイトの連絡グループをタップ。文字なんて入力する余裕は無かったから、ビデオ通話を開始した。
焦って何度も言葉に詰まりそうだったけど、彩葉のためにって頑張って、なんとか伝えられた。バイトの偉い人もお大事にしてくださいって言って、お休みをOKしてくれた。
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-Sideみこと-
かぐやが私たちを連れて買い物に行きたいって言い出したから、ついにタワマンを見に行くときが来たかって思った。
かぐやに連れられて町中をうろうろして不動産屋に着いた時、看板を見てこれがこれから住むことになる部屋かぁなんて気楽なことを考えながら、横目で近くの自販機を探す。
彩葉がしんどくなった時にすぐに冷えたスポドリを買えるように、自販機の位置を確認できた。ふと気づいた時にはいつの間にか二人は少し先に行ってた。
追いつこうと歩き出した途端、彩葉がしゃがみ込む。それをかぐやが話しかけてるけど、彩葉の反応は薄い。
「お姉ちゃん!彩葉が!」
焦ったよう言うかぐやに、努めて冷静にどうしたのって聞き返す。彩葉が死んじゃうなんて言うものだから相当焦ってるんだななんて考えながら
「落ち着いて、かぐや。とりあえず、タクシー呼んで家帰ろ?熱中症かもしれないから、タクシーが来るまで影に移動しよ」
かぐやがタクシーを呼んでいるうちに、彩葉を建物の影に移動させる。手配し終わったかぐやに彩葉を一度預け、位置を確認しておいた自販機で冷たい飲み物を買った。
原作知識でこの先の展開を知っているとはいえ、我ながらなかなか冷静に対処できてる。タクシーが来るまでは手のひらとか脇を冷やしてあげよう。
タクシーが近くに止まり、かぐやと協力しながら彩葉を運ぶ。後部座席に三人、しかも一人は意識がない状態なのは少し窮屈かなと思ったけど意外と余裕があった。
後は家に帰って彩葉を寝かせるだけ…なんて思ってた。でも…、辛そうに浅い呼吸を繰り返す彩葉、それを心配そうに、泣きそうになりながら見つめるかぐやを前にして、私は胸がきゅうっと締め付けられるような苦しさを覚えた。
…私は、私はなんて愚か者なんだろう。先の展開を知っているからって楽観的に考えて、この後彩葉は助かることが確定しているからなんて思って。
彩葉のことも、かぐやのことも原作に登場するキャラとしてしか見ていなくて。原作には私はいないはずで、二人分の面倒を見るなら当然原作よりも彩葉は大変なはずで。
私が存在したせいで彩葉が重症になってて、助からなかったらどうしようとか、彩葉が体調を崩すのを知っていたならもっと日傘とかの対策ができたんじゃないのとか、どんどん不安が大きくなってきて。
皆、物語のキャラクターなんかじゃなくて、今を生きる一人一人の人間なんだってことを理解していなかった自分への怒り、恥ずかしさ、そして皆への罪悪感。それらが私の中でどんどん大きくなって、頭が真っ白になった。
気づいた時にはアパートの前に到着していて、運転手さんの到着と料金を告げる声で我に返った。お金を払って礼を言い、彩葉を部屋まで運ぶ。
かぐやが急いで布団を敷き、ふかふかのぬいぐるみを並べたところに彩葉を寝かせる。エアコンもつけて、部屋が涼しくなったところで緊張の糸が切れ、押さえていた涙が出てきてしまった。
ごめん。ごめんね、彩葉、かぐや。私が悪いんだ。迷惑をかけてるって自覚がありながら体調を気遣ったりしなかった私が。
謝ったところで彩葉が目を覚ますわけもない。ただ謝って楽になろうとしている自分が嫌になる。何がお姉ちゃんだよ。ただの穀潰しじゃないか。
隣ではかぐやがバイト先にお休みの連絡を入れ終えたところだった。
「お姉ちゃん、彩葉はきっと大丈夫だよ。だって、外で彩葉がつらそうだったとき、かぐやは何もできなかったけどお姉ちゃんは冷静に対処できてたじゃん?」
「…………そう、かな」
「絶対そうだよ!体あつあつになっちゃってた彩葉を日陰に連れて行ったり、冷たいペットボトル買ってきて彩葉を冷やしたりしてたじゃん!」
「……ごめんね。もっといい方法があったはずなのに」
「も〜!いつもの元気でポンコツなお姉ちゃんはどこ言っちゃったの。お姉ちゃんはあの時出来ることをちゃんとやってたでしょ?…彩葉が起きた時のために料理作ってくるから、彩葉のことよろしくね」
「…うん」
かぐやは台所で卵おじやを作り始めた。…そうだね。いつまでもうじうじしてるわけにはいかないね。ちょっとでも罪滅ぼしができるように頑張らないと。
・・・・
「……ん」
「目、覚めた?体調はどう?しんどくない?」
かぐやに彩葉のことを任されたから、滲んでくる汗を拭いてあげたり、うなされてたら手を握ってあげたりしていたら、彩葉の目が開いた。彩葉は上体を起こしてすぐにスマホを確認すると
「ヤバっ…バイト」
と言い、立ち上がろうとする。でも、熱は下がってないはずなのですぐに体勢を崩してしまう。熱も出てるし、おとなしくしてないと。
「彩葉、バイトのお休みの連絡はかぐやが入れておいてくれたから。今日はもう休んで?」
「ふかふかもいっぱい置いといたから、いっぱいふかふかしてね」
「あ……ありがと」
「あ。そうだ、病院!彩葉病院行こ!」
「え…病院、はお金かかるからやだ」
「そんなもん、かぐやに任しとき!」
かぐやがお玉を握った左手に力を入れ、力こぶを作る。
「やっぱり、無理だよ……。全部ギリギリで予定組んでるから…何日も休んだら、もう追いつけないよ…。そしたら奨学金ももう…出ないかも…」
「どうして彩葉はそんなに一人で頑張らないといけないの?」
そうだ。彩葉は一人で頑張ってきたのに、超無理限界ギリだったのに、そこに無理やり二人で入り込んで…。あ…駄目だ、罪滅ぼしをするって決めたところなのに涙が…。
「ごめ゛んなざい゛、彩葉ぁ…っ。一人で頑張ってきていっぱいいっぱいだった筈なのに…。死なないでぇ!」
「うっ、うっ…かぐやのせい?かぐやもめっちゃ無理言っちゃったし…。彩葉ぁ…死んじゃやだぁ!」
隣ではかぐやも泣いていた。そんな私たちを彩葉が慰める。病人が看病してる二人の背をさする変な状況になっていた。
「そんな大げさな…死にゃしないよ」
「だって映画とかって人間すぐ死ぬじゃん!」
しばらくして私とかぐやが泣き止んできたころ、かぐやがもう一度彩葉に問うた。
「何で彩葉はそんなに一人で頑張らないといけないの?」
彩葉はうーん、と唸ってぽつぽつと話し始めた。母との確執、一人暮らしすることになった経緯。
「簡単に言ってるけど、皆そんなことしてなくない?」
「私も譲らなかったし、最初にここで目を覚ました時、今日から自分の力で生きていくんだって考えたらめっちゃ力湧いてきた。ラッキー!みたいな感じで」
「いやいや、ラッキーじゃないっつーの!宇宙人のかぐやから見てもそのお母さん激ヤバおかしいって!」
改めて自分がどんな状態の彩葉に迷惑をかけていたのかを突きつけられた気がして、意識せずとも口が勝手に謝っていた。
「本当に…、ごめんなさい。彩葉」
「謝ることなんてないよ。私がみこと達を拾うって決めたんだし。それに、かぐやが料理してくれたり、みことが洗濯とか掃除をやってくれてたから、一人で生きてた時よりずっと楽で、助かってたんだよ」
「ほんとに…?」
「こんな時に嘘つくわけないでしょ。はぁ…二人には……、…なんでこんな話してんだ」
彩葉が…、助かってたって?私は邪魔なだけじゃなかったの?
かぐやが火にかけていた卵おじやの鍋が吹きこぼれる音がした。私が一番鍋に近い方に座っていたので急いで火を止めに行き、器によそう。
「今日のメニューはネギ味噌生姜と卵おじや。まずかつお節と細かく切ったネギを……」
「長いよ」
「えへへ。卵は二個入ってるよ。あつあつだからフーフーして食べてね」
「ふーふー。はい、彩葉。あーん」
器とスプーンを持っているのは私なので、卵おじやを息で冷まして彩葉にあーんする。
「いや、一人で食べれるって。全く動けないほどしんどいわけじゃないし」
「あっごめん彩葉…。迷惑だった…?」
「うぐっ…、あぁもう分かったから。あー…んむっ。……超うまい」
「どやぁぁ」
料理を褒められたかぐやが満面のドヤ顔を浮かべる。
「彩葉、してほしいことあったら言ってね。私、何でもするから」
「女の子が何でもするとか軽々しく言わないの!」
「大丈夫、彩葉にしか言わないから」
「はぁ…」
彩葉はちょっとだけ嬉しそうだった。
思ったよりお姉ちゃんが曇っちゃったので続きはありません。