プロローグ
暁美ほむらは果てしない階段を駆け上がっていた。息があがり立ち止まる。
「はぁ…はぁ…」
ほむらは膝に手をつき息を整える。そして再び顔を上げる。
「はあ…」
階段の上にはEXITとしるされた非常扉。三つ編みを揺らしつつゆっくりと登る。扉に手を掛け、力をいれて押す。
「んんっ…!」
重々しい音をたてて扉が開かれる。そしてほむらは目に飛び込んできた光景に目を見開いた。
破壊され尽くした町。曇天に不気味に浮かび上がるビルの残骸、そして形容しがたい姿をした異形。
「あっ…」
一人の少女がビルの上に立っていた。二つに結んだ桃色の髪をなびかせて、手には弓を持っている。少女は飛び込み、弓を引き絞る。それに宙を浮かぶビルが少女に向け突進した。
「っ!」
ビルは少女を巻き込みながら、崩れ掛けた建物に突き刺さるように激突する。その攻撃を逃れたのか少女は煙から飛び出す。
しかし続いて異形から矢のような鋭い炎が突っ込んでいく。
「ひ、酷い…!こんなのおかしいです!」
ほむらはそう叫ぶ。こんなことはあまりにも理不尽だった。
「仕方ないよ。彼女一人では荷が重すぎた」
「!?」
ふと横を見ると見慣れない生き物が立っていた。白い体に赤い瞳を持っている、犬とも猫ともなんとも例えられない姿形をしている。
「でも彼女も覚悟の上だ」
「そ、そんな…あんまりですよ!こんなことって…」
炎の直撃を受けた少女はそのまま吹き飛ばされ、瓦礫に叩きつけられる。
「ああ…」
ほむらは目を見開く。その姿が少女の目には写っていた。
「~~!!」
何かを全力で叫んだ。だがその声は轟音に掻き消され、ほむらの耳には届かなかった。
「諦めたらそれまでだ。でも、君なら運命を変えられる」
「え…?」
ほむらが白い生き物に振り返る。生き物は尻尾を揺らすと淡々と答える。
「避けようのない滅びも、嘆きも、全て君が覆せば良い。そのための力が君には備わっているのだから」
ほむらは拳を握りしめる。
「…本当なの?こんな私なんかでも、本当に何かできるの?こんな結末を変えることができるの?」
生き物はほむらに向き直り、尻尾を揺らす。
「勿論さ。だから僕と契約して…」
少女がビルから逆さまに落ちていく。その手は必死にほむらへと向けられていた。
「魔法少女になってよ!」
「は…!?」
ほむらが目を開ける。半身を起き上がらせると、そこは病院のベッドだった。カレンダーには今日が退院日としるされ、机には見滝原中学校はの転校案内のパンフレットが開かれていた。
「ん~…。夢オチ…?」