乾いた風が砂丘を駆け抜け、擦り切れた金属板の屋根をけたたましく鳴らす。
ジャンドランド荒野の冷徹な気配が迫るその渓谷は、かつて見上げた記憶よりもずっと狭く、そして寂れて見えた。
イラーはスピーダーのエンジンを切る。
残響が消えると同時に耳を打つのは砂嵐のうねりと自分の荒い息遣いだけになった、ゴーグルを額へと押し上げ使い古されくたびれた革手で強い陽光を遮る。
目の前に佇むのは、鉄屑と砂岩を継ぎ接ぎして作られた、かつての「家」だった。
壁面は容赦ない砂塵に削られ入り口を塞ぐハッチは錆びついて半ば傾いでいる、どこからか風が吹き抜けるたびボロ布のように頼りなく建物全体が揺らめいた。
(……帰ってきた、のか)
あの冷たい管理社会から放り出された男にとって、この吹きっさらしの廃墟のほうが、不思議と現実味を帯びて感じられた。
足元で乾いた砂がスピーダーの熱を吸ってわずかにきしむ、埃をかぶった戸口へと歩みを進めるイラーの背中に容赦ない熱を浴びせかけていた。
錆びついた蝶番が悲鳴を上げ、重い闇の向こう側へと視界が開けていく。
差し込んだ双子の太陽の光の筋、その無数の光芒のなかで気が遠くなるほどの年月を堆積させた微粒子が、まるで生きているかのようにゆっくりと舞い上がっていた。
床に散らばった何かを避けようとして、残骸は崩れて解ける
足の折れたまま打ち捨てられたテーブルがかつてここに確かな「生活」があったことを無言で物語っていた、誰もいなくなった空間でその不均衡な影だけが妙に生々しい。
記憶の中の老人の背中に導かれるように、イラーは薄暗い部屋の奥へと歩を進める。
幾重にも張り巡らされた防塵幕の前に立ち、無意識のうちに、染みついた習慣で自分の衣服についた砂を払おうとした。
だが、目の前に広がる剥き出しの荒涼を見つめ、ふと手が止まる。
――空っぽだった。
かつて爺さんがガラクタを溶接し、奇妙な機械の鼓動を響かせていた作業台の上には、一片の金属片すらなかった。
思い出すのは、物言わぬ機械と引き換えに、怪しげなガラクタを押し付けては去っていったジャワたちの姿だ。あの茶色のローブを着た小さな商売人たちは、この寂れた場所を何度も訪れ、爺さんと手振り身振りの奇妙な交易を交わしていた。
おそらくは爺さんが亡くなった後、あるいは去り際、残された機材のすべてを彼らに譲渡したのだろう。綺麗に持ち去られた空間は、かえってそこに誰かがいたことの痕跡を際立たせていた。
ふと、鼻腔をかすかなオイルの匂いがかすめた。
クワットの無機質な工場で嗅いだ精製された油とは違う、もっと泥臭く、錆と熱にまみれた懐かしい臭い。胸の奥が熱を帯び、締め付けられるような感覚に襲われる。
イラーは乱暴に袖口で鼻を拭うと、乾いた肺腑に熱い空気を大きく吸い込み、ゆっくりと息をついた。