ダンジョン釣り部   作:サンデン

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インフェルノ・マグママグロ

「——どうも、皆さんこんばんは!『ダンジョン釣り部』のイツキです!」

 

画面に映し出されたのは、超高難易度EXランクダンジョン「マグマ地獄・煉獄の火口」。背景では巨大な溶岩の滝がグツグツと音を立てて煮え滾っている。

 

配信開始と同時に、コメント欄は凄まじい勢いで流れ始めた。

 

『今日火口で釣りかよwww』

 

『熱気で画面揺れてて草』

 

『またタナカ課長いる??』

 

『横のゴツいおじいちゃん誰???』

 

「本日の案件配信ですが……なんと豪華なゲストがお二人いらっしゃっています! 前回もお世話になったギルド本部のタナカ課長! そして……冒険者ギルド最高責任者、ギルド長ご本人です!」

 

画面には、すっかり腹を括って耐熱プロテクター(※自費購入)を完璧に装着したタナカ課長。そしてその隣には、高級な装飾が施されたド派手な耐熱鎧を纏い、ギラギラとした目で溶岩を見つめる巨大な髭のおじいちゃん——ギルド長(レベル99)が仁王立ちしていた。

 

「ワハハハハ! 視聴者の諸君、初めまして! 冒険者ギルド長のバルバロッサだ! 今日の目的はただ一つ……『現地で一番美味い部位を直接食う』! それだけだ!!」

 

『ギルド長直々に殴り込みで草wwww』

 

『前回のゴッドサーモンの根に持っててワロタ』

 

『タナカ課長装備レベル上がってて草』

 

『もう公私混同の極みだろww』

 

タナカ課長が胃を押さえながら、カサカサの声で補足する。

 

「えー……本日のターゲットは、この溶岩の底に潜む伝説の幻獣『インフェルノ・マグママグロ』です……。ギルド本部の新設記念パーティー用(※建前)として捕獲を行います……」

 

「よし! ガルドさん、ギルド長、お二人は足場をお願いします!」

 

「おうよ! ギルド長が来ようが俺の役割は変わらん! 『金剛十重陣・超重量固定』ッ!!」

 

「ガハハハ! ワシの筋力を見せてやるわい! 『覇王固定陣』ッ!!」

 

ガルドとギルド長という、人類最高峰の脳筋二人がイツキの腰をガッチリとホールド。二人合わせて推定50トンの人間アンカーが完成した。

 

『重り役にギルド長参加すなwwww』

 

『人類最強タッグの無駄遣い』

 

『タナカ課長の表情がすべてを物語ってる』

 

「仕掛けはこれ! 火竜の肉を特製激辛醤油に漬け込んだルアーです! 行きますよ……キャストッ!!」

 

シュタァァァン……!

 

耐熱1万度のマグマ用ワイヤーが溶岩へと投げ込まれた。

 

そして——わずか数秒後。

 

ドバァァァァァァンッ!!!!!

 

溶岩が爆発し、体長15メートルを超える真っ赤な全身を炎で包んだ「インフェルノ・マグママグロ」が姿を現した! その熱気でカメラのレンズが一瞬歪む!

 

「喰ったぁぁぁ! フィーーーーッシュ!!」

 

ギギギギギギギギッ!!!

 

溶岩の粘性とマグロの超パワーが重なり、衝撃波が火口全体を揺らす!

 

「ぬおおおおおッ! 重い! 重いぞイツキ君! これだ、この臨場感を味わいたかったのだ!!」

 

「ギルド長、遊んでねぇで足踏ん張れぇぇぇッ!」

 

「うわあああああ熱い熱い熱い! 溶岩が飛んできてますよぉぉぉぉっ!!」

 

耐熱装備を固めたタナカ課長が、二人の足元で必死にバケツで冷却魔法薬を振りまく!

 

『タナカ課長がサポート役に昇格してるww』

 

『冷却役に命かけてて草』

 

『カオスすぎるだろこの配信www』

 

アリスの重力減衰魔法、ルナの突風バリア、そして人類最強ダブルアンカーの粘りにより、ついに——!

 

「100万人突破記念・ギルド長接待釣り!! ぬんがあぁぁぁぁぁッ!!!」

 

ズドドドーーンッ!!

 

マグマから引き抜かれた15メートルのマグロが、火口の岩場へドッサリと打ち上げられた!

 

その瞬間、イツキはすでに『太古の鉄塊剣』と『火竜のバーナー』を構えていた。

 

「よし! 鮮度が命です! ギルド長、大トロ行きますよ!」

 

「おおおッ! 待っていたぞッ!!」

 

イツキが慣れた手つきでマグロの腹から、表面がうっすら炙られて脂が溶け出す至高の大トロをザックリと切り出し、特製ワサビ醤油を塗ってギルド長の口へ放り込んだ!

 

(ジュワァァァァァ……ッ)

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!!!???」

 

ギルド長が両目をカッと見開き、膝から崩れ落ちた。

 

「うまああああああああいッ!! 極楽! ここは極楽じゃああああ!! 表面は香ばしく、中はトロリと溶けて甘みと辛味が脳を揺さぶる!! タナカ! お前も食え! 食うのだ!!」

 

「えっ、あ、はいっ! いただきます——んぐッ!!」

 

タナカ課長も大トロを口に放り込まれ、一瞬で顔を破顔させた。

 

「ふはぁぁぁぁ美味いぃぃぃ! 胃痛が吹き飛ぶ美味さですぅぅぅ!!」

 

『ギルド長昇天してて草www』

 

『タナカ課長の胃痛が治ったwww』

 

『現地で食う大トロ(溶岩炙り)は反則』

 

『後ろでガルドニキたちが白飯持って並んでるww』

 

「ガルドさんたちもどうぞ! さあ、どんどん炙りますよ〜!」

 

「ガハハハ! 最高だイツキ君! 今日の納品は尻尾の先だけで十分だ! 残りは全部ここで食い尽くすぞ!!」

 

「ギルド長!? 本部のパーティーの分がなくなりますよ!?」

 

「うるさいタナカ! ワシがギルド長だ! 文句があるならワシを釣ってみろ!!」

 

『職権乱用がすぎるwwww』

 

『ギルド長、ただの大食いおじいちゃん化』

 

『またパーティーの食材が減っていくwww』

 

[¥200,000 スパチャ:【冒険者ギルド本部・会計課】ギルド長の給料から引いておきます。イツキさんいつもありがとうございます]

 

「会計課様、20万スパチャありがとうございます! ギルド長の給料から引かれるそうです!」

 

「なにぃぃぃっ!?」と焦るギルド長を余所に、イツキたちは炙り大トロとマグロ丼を心ゆくまで堪能。大混乱と大爆笑に包まれた第2回公式案件配信は、同接50万人を記録して大盛況のうちに幕を閉じたのだった。

 

 

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