「——はい、どうも皆さんこんばんは!『ダンジョン釣り部』のイツキです!」
画面には、昨日とは一転して清潔感(?)のある調理場兼スタジオが映し出されている。
そしてその中央の頑丈な調理台には、昨日「奈落の翡翠洞」で釣り上げた体長3メートル超の巨魚——『クリスタル・ガー』が、ドカリと鎮座していた。
七色の光を放つ美しさは健在だが、その体表を覆う鱗はまるでダイヤモンドのように硬く、鈍い光を跳ね返している。
コメント欄は早くも大揺れだった。
『ホントに持ち帰ってて草』
『きれいだけど完全に鉱物なんよ』
『どうやって捌くの? 出刃包丁通る?』
『包丁(物理)の予感』
「皆さん気になっているようですが、このクリスタル・ガーの鱗、硬度7以上あります。普通の出刃包丁を使ったら一瞬で刃こぼれしますね」
そう言うと、俺は調理台の下から巨大なグラインダー(電動研削工具)と、昨日も使った『太古の鉄塊剣』を取り出した。
『調理器具の絵面じゃないwww』
『解体工事が始まる??』
『刃物じゃなくて工具出てきたぞ』
「まずはこのグラインダーで腹側の鱗の隙間に筋を入れて、そこから鉄塊剣を滑り込ませて一気に割ります! 騒音に注意してくださいね!」
チュイーン!という凄まじい金属摩擦音と共に火花が散る。コメント欄が「wwwww」で埋まる中、俺は慣れた手つきで硬い外皮を切り開いていった。
バリバリッ、メリメリ……!
「よし、皮が剥けました! 見てください皆さん、この身を!」
硬固な鎧のような鱗の下から現れたのは、まるで半透明の水晶のように澄み切った、白桃色の美しい白身だった。ほのかに甘い、潮風とダンジョンの魔力が混ざったような神秘的な香りが漂う。
『うわっ、身はめちゃくちゃ綺麗!』
『美味しそう……かも?』
『サシが入った最高級の鯛みたいだ』
『毒とか大丈夫なん?』
「ギルドの鑑定結果によると毒性はゼロ! むしろ豊富な魔力が含まれていて、滋養強壮にめちゃくちゃ効くらしいです。では、一口サイズに薄切りにして……特製の『アラクネの糸唐辛子醤油』でいただきます!」
透明感のある刺身を箸でつまみ、カメラに掲げてから、口へと運ぶ。
もぐもぐ……。
一瞬の静寂。
『どうなんだ……!?』
『食感は? 味は??』
『硬くて噛めない説』
「……う、うまい……!!!」
俺は思わず目を見開いた。
「なにこれ!? 食感はコリッコリでフグのてっさ以上! 噛んだ瞬間に、口の中で脂と濃厚な旨味が爆発します! しかも後味がめちゃくちゃ爽やか……まるで極上のエンガワとヒラメを足して10倍濃縮したような味です!!」
『マ????』
『イツキニキがガチ目開いてるw』
『食レポが美味そうすぎて腹減ってきた』
『てっさ以上のコリコリ感はヤバい』
「ちょっとこれ、ご飯が止まらなくなるやつだ……! ちなみに骨は出汁を取って、明日の『クリスタル・ガーの激旨アラ汁配信』に使おうと思います!」
『アラ汁までやるんかい!』
『明日も絶対見るわww』
『釣りから調理まで完璧な男』
[¥5,000 スパチャ:食レポごちそうさま!今度俺も釣りに行ってみるわ(死にたくはないけど)]
「スパチャありがとうございます! ただし皆さんは真似しないでくださいね、Aランク相当の怪力がないと返り討ちに遭いますから! それでは本日の配信はここまで! 次回もお楽しみに〜!」
画面に「ご視聴ありがとうございました」のテロップが流れ、今日の爆笑&飯テロ配信も大盛況のうちに終了したのだった。