ダンジョン釣り部   作:サンデン

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パラダイス・カルビ・サーモン

「——どうも皆さん、こんばんは!『ダンジョン釣り部』のイツキです!」

 

画面に映し出されたのは、美しい星空とエメラルドグリーンの超巨大なプライベートビーチが広がる最高級リゾートダンジョン「常夏の楽園・黄金海岸」。

 

同接数は開始数秒で過去最高の180万人をあっさりと突破していた。

 

『祝勝会BBQ配信きたあああああ!!』

 

『手取り復活おめでとううううう!!』

 

『全員めちゃくちゃ浮かれてて草』

 

『また嫌な予感しかしないんだが??ww』

 

「本日の配信ですが……前回、見事に『手取り奪還・初勝利』を飾った冒険者ギルド本部の皆さんをお招きして、全額ギルド奢りの手取り復活・大祝勝会バーベキューを開催します!」

 

カメラがビーチへパンすると、そこにはアロハシャツを着て浮き輪を持ったギルド長、高級サングラスをかけたカレン課長、トロピカルドリンクを飲むミルカちゃん、そしてハンモックでくつろぐ副ギルド長バリスの姿があった。

 

「フハハハ! 見よイツキ君、この晴れやかな顔を! 手取りが全額戻り、給料日に食べる肉の美味いことよ!」

 

副ギルド長バリスがグラスを掲げて高らかに笑う。

 

「前回の勝利により、我々の『絶対なる自制心』は証明された! 今日はもう仕事ではない! 完全にプライベートな祝勝会だ! 心ゆくまでイツキ君の料理を堪能しようではないか!」

 

『副ギルド長完全に気を抜いてて草』

 

『「自制心」フラグ立ちすぎてて怖いwww』

 

『カレン課長もうすでに肉焼き始めてない??』

 

「はい! ということで本日のBBQメイン食材を釣ります! 楽園の浅瀬に生息する伝説の超極上肉魚『パラダイス・カルビ・サーモン』です!」

 

イツキが提示したのは、サーモンの姿をしながら全身に最高級A5ランク和牛のような美しすぎるサシ(脂)が入った伝説の魚の図面だ。

 

「このサーモン、身をさっと炙るだけで極上のカルビのような肉汁と、サーモンの甘い脂がジュワッと溢れ出す『海と陸の奇跡のカルビ』と呼ばれています!」

 

「ふはは! 競りの必要もない! 今日は自分たちのための食事だからな! ガルド殿、サクッと引き揚げたまえ!」

 

手取りを取り戻し、警戒心が「ゼロ」どころか「マイナス」になった幹部たち。

 

イツキが仕掛けを投げ入れると、わずか数十秒で体長20メートルの「パラダイス・カルビ・サーモン」がド派手に釣り上げられた!

 

「よし! 捌いて即焼きまーす!」

 

イツキの『太古の鉄塊剣』が一瞬で身を切り分け、炭火の網の上へ並べられる。

 

(ジュワァァァァァァァァ……ッ!!!!)

 

網に載せた瞬間、肉汁とサーモンの脂が弾け飛ぶ激しい音とともに、ビーチ全体に暴力的とも言える香ばしい煙が立ち込めた!

 

特製ニンニク焦がし醤油ダレが肉に染み込み、焦げる至高の香り。

 

「さあ皆さん! 手取り復活おめでとうございます! 出来立ての炙りカルビサーモン丼です! どうぞー!」

 

「ガハハハ! いただくぞーッ!」

 

先陣を切ってギルド長と副ギルド長バリスが、大盛りのドンブリへかぶりついた!

 

(ジュワッ……トロォォォォっ!!)

 

「「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!!???」」

 

一口食べた瞬間、二人の着ていたアロハシャツのボタンが弾け飛び、メガネが二人揃って粉々に砕け散った!

 

「な……なんじゃこの美味さはぁぁぁぁぁぁッ!? 噛んだ瞬間に肉汁の爆風が口内で弾け、サーモンのトロける脂が旨味の津波となって脳を丸飲みにしてくるぞぉぉぉぉッ!!」

 

「美味い……美味すぎる……! 前回の耐え忍んだ反動で……美味さが……美味さが1000倍になって押し寄せてくるぅぅぅぅっ!!」

 

『二人のメガネ同時に割れたアアアアアアwwwwww』

 

『反動が凄まじすぎて草wwwwww』

 

『「耐え忍んだ反動」ワロタwwwwww』

 

「な……なんですって!? 私にも……私にもよ越しなさいッ!(パクッ)」

 

カレン課長も耐えきれずに丼へ飛びつき、一口で目を見開いた。

 

「う……うああああああん! 美味しい……! 欲望を解放して食べる肉がこんなに美味しいなんて……ッ! もう計算なんてどうでもいいです……全部……全部食べちゃいますッ!!」

 

「カレン課長!? ダメです……私まで……(パクッ)……〜〜〜〜っ!! 美味いいいいいいいっ! バランスシートなんて知るかぁぁぁぁっ!!」

 

ミルカちゃんまでもが叫びながら丼をかきこみ始めた!

 

『ミルカちゃん「知るかぁぁぁ」は草wwww』

 

『防波堤完全に決壊しててワロタwwww』

 

『全員で大爆食い大会始まってるwww』

 

「おかわりだ! イツキ君、追いカルビサーモンだぁぁぁッ!」

 

「ワシが先だ! ハラミの部分も焼いてくれぇぇぇッ!」

 

「私にも……私にも脂の乗ったハラスをぉぉぉっ!」

 

前回の「我慢」による禁断症状が一気に爆発。

 

気を抜いたギルド幹部たちは野獣と化し、20メートルの巨大サーモンを骨と頭以外(全体の99%)、ものの30分で跡形もなく平らげてしまったのだった。

 

「ふぅ……食った食った……人生で一番美味かったぞい……」

 

「ええ……至福の時間でしたね……」

 

砂浜で腹を膨らませ、満足感に浸りながら仰向けに転がる幹部たち。

 

しかし、そこへ——

 

「……あの、カレン課長」

 

タナカ課長が、震える手で1枚の「請求書」を提出した。

 

「今回のプライベートビーチ使用料、特選炭火機材費、およびイツキ様へのプライベート出張料理人費用……合計1億5千万円。……全額ギルド奢りの予定でしたが、『公金の私的流用および宴会による全量消費』として監査が入りました」

 

「「「「……え?」」」」

 

幹部たちの顔から一瞬で血の気が引いた。

 

[¥1,000,000 スパチャ:【冒険者ギルド監査室】本日の配信を拝見しました。手取り復活直後の気の緩みによる大規模な公有食材の全量私的完食、および過度な宴会費につき、全員『再度の減俸12割(手取りマイナス&永久労働奉仕モード)』に処します]

 

「「「「手取りマイナスに戻ったぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?????」」」」

 

砂浜に響き渡る、幹部全員の絶望の叫び。

 

一度は掴みかけた勝利と手取り。

 

しかし、油断から生まれた「欲望の爆発」により、彼らは再び(そして永遠に)手取りマイナスのループへと叩き落とされたのだった。

 

「あはは! 皆さん、来週も手取りを取り戻すために一緒にダンジョン行きましょうね〜!」

 

満面の笑みで手を振るイツキ。

 

横で絶望の涙を流しながら「もう嫌だぁぁぁ!」と砂浜を叩くギルド幹部たち。

 

同接200万人という前代未聞の記録を打ち立て、ギルド本部とイツキの胃袋を巡るドタバタ劇は、最高の惨劇と大爆笑のうちに「完結」となったのだった。

 

(【完】——そして彼らの労働奉仕は永遠に続く)

 

 

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