ダンジョン釣り部   作:サンデン

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ガーのあら汁

「——どうも、皆さんこんばんは!『ダンジョン釣り部』のイツキです!」

 

画面には、昨日グラインダーの火花が散っていた調理スタジオが映し出されている。

 

まな板の上には、昨日捌いたクリスタル・ガーの「頭部」と「巨大な背骨」が整然と並んでいた。結晶化した骨が、スタジオの照明を受けてキラキラと七色に輝いている。

 

コメント欄は放送開始直後から、もの凄い勢いで加速した。

 

『待ってましたアラ汁配信!』

 

『骨が完全に鉱物なんよwww』

 

『今日の調理器具(工具)は何ですか?』

 

『てかその横にある禍々しい鍋は何???』

 

「ふふふ、皆さん良いところに目をつけましたね。そう、今日の主役はこの『火竜(ファイヤードラゴン)の角を削り出して作った耐熱魔導鍋』です!」

 

イツキがドヤ顔で叩いたのは、深紅の鱗模様が刻まれた、禍々しくもどこか神秘的な超巨大鍋だった。ほのかに赤い熱気を孕んで揺らめいている。

 

『火竜の角wwww』

 

『鍋の素材がSランクモンスターなんだが?』

 

『国宝級の鍋でアラ汁作る男』

 

『普通の鍋じゃダメなん?』

 

「ダメなんですよ! クリスタル・ガーの骨は硬度7の魔力結晶です。普通のアルミ鍋やステンレス鍋じゃ、出汁が出る前に鍋の底が抜けるか、熱が伝わらずにただの石煮込みになっちゃいますからね」

 

イツキは手際よく、昨日使った『太古の鉄塊剣』を振り下ろし、巨大な頭部を*バコンッ!*と豪快に二つに叩き割った。

 

「まずは、この火竜鍋にダンジョンの『湧き出づる聖水』を張ります。そして、鍋自体に魔力を注ぎ込んで……発熱スタート!」

 

イツキが鍋の取っ手に手をかざすと、鍋全体がポッと赤く発光し、一瞬で湯気が立ち上った。

 

グツグツグツ……!

 

「さあ、アラを投入します! 臭み消しには、上層で摘んできた『サンダーバジルの葉』と『魔界生姜』を使いますよ!」

 

『魔界生姜ww』

 

『パワーパワーパワーワードの渋滞』

 

『出汁取るだけで大魔法発動してそう』

 

アラを入れた瞬間、火竜鍋から*ジュワァァァ……!*という豪快な音が響き渡り、黄金色の泡が湧き立った。

 

結晶の骨から、超高濃度の魔力と旨味がスープへと溶け出していく。スタジオ中に、香ばしくも深みのある、濃厚な魚出汁の香りが一満ちした。

 

「うおっ……香りがすごい! 骨の隙間の極上プルプルコラーゲンが溶け出して、スープがどんどん黄金色になっていきます!」

 

『画面越しに香りがしてきそう……』

 

『黄金のスープやばい』

 

『美味そうすぎるだろこれ』

 

『料亭の大将が泣いて喜ぶ出汁』

 

「仕上げに、老舗の『ダンジョン合わせ味噌』を溶いて……よし! 『クリスタル・ガーの極上火竜アラ汁』、完成です!」

 

お椀に注がれたスープは、透き通った黄金色の中に味噌が溶け込み、湯気とともに七色の魔力の光粒子がほわほわと舞い上がっている。身のついた頭部の肉は、トロトロのぷるぷるに煮込まれていた。

 

イツキはフーフーと息を吹きかけ、お椀を手に取った。

 

「いただきます……!」

 

ずずず……。

 

一瞬、イツキの動きが止まった。

 

『どうだ……!?』

 

『美味いのか!?』

 

『感想頼む!!』

 

「……あ、あたたかい……そして……旨味の暴力!!」

 

イツキが感極まったように叫んだ。

 

「一口飲んだ瞬間、頭の先から足の爪先まで全身の細胞が歓喜してます! 濃厚な魚の脂とコラーゲンが口いっぱいに広がって、後から生姜の爽やかさが抜けていく……! ほっぺたが落ちるってレベルじゃありません、体中の魔力が一気に全回復しました!!」

 

さらに、骨の周りの頬肉をハシで削ぎ落とし、口に放り込む。

 

「んんっ!! 肉がトロットロ! 昨日の刺身のコリコリ感も最高でしたけど、加熱した煮込み肉の濃厚さは別格です! これ、白飯10杯いけますよ!!」

 

コメント欄は羨望と爆笑の渦に巻き込まれた。

 

『旨味の暴力www』

 

『全回復草』

 

『高級エリクサーより効果高そうでワロタ』

 

『飯テロやめろおおおお!!』

 

[¥50,000 スパチャ:【暁の旅団・ガルド】一杯10万円で売ってくれ。今からクランハウスを出る]

 

「おや、ガルドさん!? スパチャありがとうございます! でもすみません、これ全部俺の今夜の夕飯なんで売りません!」

 

『Sランク冒険者を即答で断るなwww』

 

『ガルドニキかわいそうww』

 

『イツキニキの食い意地が凄すぎる』

 

「ふぅ……いやあ、最高のアラ汁でした! 命を懸けて釣り上げた甲斐がありましたね。ダンジョンの恵みに感謝です!」

 

イツキは綺麗に完食したお椀を置き、満足気にカメラへ笑顔を向けた。

 

「さて、次回ですが……なんとリスナーさんから『火山階層のマグマ湖に巨大なエビがいる』という情報をいただきました! というわけで次回は『マグマダイブで耐熱耐火エビ釣り!』でお送りします! お楽しみに!」

 

『マグマダイブ???』

 

『エビ釣り(物理&決死隊)』

 

『また命がけの配信が始まるww』

 

『次回も絶対見る!!』

 

狂気の次回予告とともに、今夜の飯テロ配信も大盛況のうちに幕を閉じたのだった。

 

 

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