初期の頃は書いてたバディファイトの小説は1000文字書くのがやっとだったのになぁと感じてしまいますね。
数日後。
明導家のリビング。
ユウはソファに座り、ヒカリと一緒にテレビを見ていた。
その向かいでは、アキナがスマートフォンを確認している。
「ユウくん、これ面白いよ。」
「本当?」
「うん。」
「じゃあ、もう少し見てみようかな。」
そんな穏やかな時間。
そこへ――
玄関の扉が開く。
「あ、父さん。」
明導テルミツが帰ってきた。
「ただいま。」
「お父さん、おかえり。」
「……!」
ユウも立ち上がる。
「お、おかえりなさい、明導さん。」
「……君がユウ君か。」
「はい。」
テルミツはユウをじっと見る。
そして――
「……なるほど。」
「父さん?」
「いや、実際に会うのは初めてだからな。」
「……」
テルミツは柔らかく笑う。
「私は明導テルミツ。アキナとヒカリの父親だ。」
「よろしくお願いします、明導さん。」
「こちらこそ。」
「父さん、調べてくれたんだよな?」
「ああ。」
その一言で、ユウの表情が少し緊張する。
「ユウ君の身元について、いくつか確認してみた。」
「……」
「だが――」
少し間を置いて。
「結論から言うと、『ユウ』という名前の君に該当する記録そのものが見つからなかった。」
「……え?」
「何も?」
「ああ」
「同じ名前の人物はいくらでもいる。しかし、君の年齢、特徴、外見などを照らし合わせても、該当する人物が存在しない。」
「つまり……」
「少なくとも、こちら側の社会で登録されている人物ではない可能性が高い。」
「…………」
ユウは俯く。
「……僕、本当に……どこにもいないんだ。」
「ユウくん……」
「違う。」
「……え?」
「『記録がない』ってだけだろ。」
「……」
「ユウがここにいることまで、なくなるわけじゃない。」
「うん。」
ヒカリも笑う。
「今ここにいるもん。」
「……」
ユウの表情が少しだけ和らぐ。
「……ありがとう」
テルミツも頷く。
「アキナの言う通りだ。」
「身元が分からないことと、君自身の存在が否定されることは別の話だ。」
「……はい。」
「明導さん……?」
しばらくして。
テルミツが席を外した後。
アキナとヒカリ、ユウの三人になった。
「……明導さん。」
「ん?」
「アキナさんとヒカリさんには、いろいろ迷惑をかけてるよね。」
「迷惑?」
「僕のことを調べてもらったり、泊めてもらったり……」
「そんなこと気にしなくていいよ。」
「でも……」
「それにさ」
「?」
「俺のこと、アキナさんって呼ばなくていいよ。」
「……え?」
「アキナでいい。」
「でも……」
「俺たち、もう何日も一緒にいるだろ?」
「そんなにかしこまらなくていいって。」
「私も、ヒカリでいいよ。」
「……ヒカリ……」
「うん。」
「アキナ……」
「ああ。」
「……分かった。」
少し照れながら。
「これからは……アキナ、ヒカリって呼ぶね」
「うん!」
「それでいい」
そして――
その日の午後。
ユウが立ち上がった時だった。
「あ。」
「どうしたの?」
「……尻尾。」
「……?」
ユウが振り向く。
白い尻尾が、ゆらり。
ヒカリは改めて見る。
「……やっぱり、すごいね。」
「そう?」
「うん。」
アキナも横から見る。
「……」
「アキナ?」
「いや。」
アキナはユウの頭を見る。
白いケモ耳。
そして尻尾。
「改めて見ると……」
「?」
「本当に耳があるんだな。」
「……うん。」
「触っていい?」
「え?」
「いや、嫌ならいいけど。」
「……少しなら。」
アキナがそっと手を伸ばす。
――ぴくっ。
ユウの耳が動く。
「…………」
「…………」
「…………」
「動いた。」
「動いたね。」
「……そりゃ耳だから。」
「いや、分かってるけど……」
もう一度。
耳がぴくっ。
「……すごいな。」
「かわいい……」
「……二人とも、そんなに見る?」
「だって珍しいから。」
「俺も初めて見るし。」
「……そっか。」
ユウは少し恥ずかしそうに耳を伏せる。
「……あ。」
「?」
「今、耳が寝た。」
「本当だ。」
「……もう、見ないでよ。」
「ごめんごめん。」
「悪い。」
そう言いながらも、二人とも興味津々だった。
その時。
部屋の隅から声がする。
「……何をしている。」
「!」
ぬいぐるみ姿のタイムルーラーが、いつの間にかそこにいた。
「お前、いつからいた?」
「最初からだ。」
「……」
「ふふっ」
「それよりも。」
タイムルーラーはユウを見る。
「その耳と尾は、やはり興味深いな。」
「君まで……」
「余は時の神である。未知なるものには興味がある。」
「そういうことにしておくか。」
「……」
少しだけ笑うユウ。
まだ、自分の身元は分からない。
この世界に、自分の記録はない。
それでも――
「ユウ」と呼んでくれる人がいる。
そしていつの間にか、
アキナ。
ヒカリ。
そう呼べる相手ができていた。
「……悪くないかも。」
「何が?」
「……なんでもない。」
白い尻尾が、嬉しそうに小さく揺れた。
・家族になるということ
夕方。
明導家のリビング。
ユウはヒカリと一緒にテレビを見ていた。
アキナはキッチンで飲み物を用意している。
そこへ、テルミツがリビングへ入ってきた。
「アキナ、ヒカリ。少し話がある。」
「ん?」
「どうしたの、お父さん?」
テルミツは二人の向かいに座る。
そして、少しだけ真剣な表情になった。
「ユウ君のことだ。」
「……!」
ユウも顔を上げる。
「この前、話した通り、ユウ君について調べても身元を確認できる記録はなかった。」
「ああ。」
「だからこそ、これからのことを考えなければならない。」
「これから……」
「そうだ。」
テルミツは穏やかにユウを見る。
「ユウ君。君はこれから、どうしたい?」
「……僕?」
「ここにいることについてだ。」
ユウはしばらく黙る。
「……正直、分からない。」
「帰る場所がどこなのかも分からないし……僕がどこから来たのかも分からない。」
「だから……」
ユウは小さく俯く。
「迷惑じゃないなら、しばらくここにいさせてもらえたらって……」
「ユウくん。」
「……?」
「『しばらく』じゃなくてもいいんじゃないかな。」
「え?」
ヒカリはアキナを見る。
アキナも頷いた。
「俺もそう思ってた。」
「アキナ……」
「ユウが帰る場所を見つけるまで、ここにいていい。」
「それだけじゃなくてさ。」
アキナは少し照れくさそうに笑う。
「……もう、ここを帰る場所にしてもいいんじゃないか?」
「…………」
言葉が出ない。
「私も、ユウくんがいてくれたら嬉しいよ。」
「ヒカリ……」
「私も同じ考えだ。」
「……え?」
「もちろん、君が望むなら、という条件はある。」
「だが、私は君をこの家の一員として迎えたいと思っている。」
「…………」
「アキナ。ヒカリ。」
「うん」
「二人はどう思う?」
「俺は賛成。」
「私も。」
「そうか。」
そしてテルミツはユウに向き直る。
「ユウ君。、」
「はい。」
「私たちは君を、家族として迎えたい。」
「君がそれを望むのなら。」
「…………」
ユウの耳が小さく震える。
そして――
「……僕なんかで、いいの?」
「『僕なんか』って言うなよ。」
「……」
「ユウだからいいんだ。」
「うん。」
「私、ユウくんと一緒にいるの好きだよ。」
「…………」
目元が少し潤む。
「……僕も。」
「……ここにいたい。」
「それなら、決まりだな。」
「うん。」
「よかった……!」
ヒカリが嬉しそうに笑う。
ユウも、ゆっくり笑った。
「名字。」
「ただ、一つ考えなければならないことがある。」
「?」
「君には名字がない。」
「うん。」
「家族として迎えるなら、生活上の手続きも必要になる。」
「……じゃあ。」
アキナがユウを見る。
「ユウも、俺たちと同じ名字にする?」
「……明導?」
「ああ。」
ユウはその言葉を何度か口の中で確かめる。
「……明導ユウ。」
「うん。」
「……なんだか、不思議な感じ。」
「そのうち慣れるって。」
「私たちの家族なんだから。」
「…………」
ユウは嬉しそうに笑う。
「……うん。」
手続きの日
数日後。
テルミツは必要な手続きを進めるため、ユウを連れて役所へ向かった。
アキナとヒカリも同行する。
「……緊張する。」
「大丈夫だって。」
「私たちも一緒だから。」
「うん。」
窓口で必要な事情を説明する。
ユウについては、通常の身元確認ができない特殊な状況だった。
そのため、テルミツが保護した経緯や現在の生活状況などを説明し、必要な確認を一つずつ進めていく。
「……確認します。」
「お願いします。」
ユウは少し離れた場所で待っている。
「ユウ。」
「?」
「大丈夫。」
「……うん。」
「怖くないよ。」
「分かってる。」
やがて、必要な確認と手続きが進む。
そして――
「これで、今後の手続きについて進められます。」
「ありがとうございます。」
「…………」
「終わったな。」
「うん。」
ユウは手続きを終えた書類を見る。
そこにある名前。
明導ユウ。
「…………」
「どうした?」
「……本当に、僕の名前になったんだ。」
「うん。」
「明導ユウ……」
もう一度、呟く。
「……なんだか、変な感じ。」
「嫌か?」
「ううん。」
ユウは首を横に振る。
「……嬉しい。」
「そっか。」
「よかった。」
その夜
明導家。
ユウは自分の部屋で、今日受け取った書類を眺めていた。
そこへ――
小さな影がやってくる。
「……何を見ている。」
「これ。」
「……」
「僕の名前。」
「ほう。」
「今日から、僕は……明導ユウなんだって。」
タイムルーラーはしばらく黙っていた。
「……新たな名を得たか。」
「うん。」
「ならば、それもまた一つの『時』であろう。」
「……時?」
「過去のお前がどこから来たのか。それはまだ分からぬ。」
「だが、今のお前には――」
タイムルーラーは部屋の外を見る。
そこにはアキナとヒカリがいる。
「帰る場所がある。」
「……うん。」
「それは、過去にはなかった『今』なのだろう。」
「……そうだね。」
ユウは笑う。
そして、小さく呟いた。
「……ただいま。」
その声を聞いて、廊下にいたヒカリが微笑む。
「……おかえり、ユウくん。」
「おかえり。」
「……!」
振り向く。
アキナとヒカリが立っている。
「……うん。」
「ただいま。」
その瞬間。
ユウにとって初めての「帰る場所」が、本当の意味で始まった。
次回はいつになるかは分かりませんが、作者の気が乗ったらまた投稿すると思います。