暁美姉妹の日常 作:現在匿名
「で」
「で?」
「何で貴女がここにいるの。円環の理・・・・まどかのところに戻ったんじゃないの? ワルプルギスの夜」
マルゲリータを口に入れながら、私は目の前の魔女に質問する。
久々の固形物。正直この一切れだけで十分だと思うのだけれど、なぜか目の前のワルプルギスの夜からさらに料理を押し付けられる。
「しっかりと食べるのです暁美ほむら。食とは生物にとって必要不可欠のもの。貴女はもっと食べるべきです」
「食べているでしょう」
「貴女それだけで満足してしまうのですか? だから色々と慎ましいのですよ、胃も体も」
「今どこ見ていった?」
私からの言葉も笑って受け流し、お上品にシュリンプを食べながらコーラを飲む。
そしてついでにガ〇ダムを見ている。
『シン!!』
『ルナ!!』
画面では登場人物達が抱きしめあっている。
これから最終決戦らしい。
「映画もいいけれど、質問に答えて」
「今良いところなのですけれど? ほらこのルナ〇リアってキャラ、私に声が似ていませんか? クラスメイトに言われたのです」
こいつ学生生活を満喫してやがる。
「ピザの代金は私が払ったのだけれど?」
「・・・・それを言われると辛いですね」
「仕方がありません」とワルプルギスの夜はリモコンのボタンを押しDVDの再生を止め、私の目を真っすぐに見てくる。
ヘンなところで律儀ね、この魔女。
「還りましたよ。私の核・・・・マルグリートは」
「核?」
「ああ、貴女は知らないのでしたね」
クスクスと笑うワルプルギスの夜。
マルゲリータを食べてるけど。
「ご存知の通り私という存在は数多の魔女の集合体、しかし集合体が存在するためには最初の『一』・・・・私のオリジナルが必要なのです」
「・・・・貴女とは別?」
「そうです。私はいわば外側の入れ物。愛する女神の中へ戻ったのは中身だけで、私という入れ物はこの現世へ残ってしまったのです」
「力もほとんど残っていませんよ」とプラプラと振る。
「故に私はワルプルギスの夜であってワルプルギスの夜ではありません・・・・しいて言うなら『ワス』と呼んでください」
「・・・・それでどうして私の家へ?」
「何言っているのですか妹よ?」
「突然どうした」
いやマジで何言っている?
「同じ人を愛し、同じ顔を持ち、同じ敵に立ち向かい、同じ食事をとった・・・・もうこれ姉妹以外に表現できることありますか?」
「不法侵入者」
「同じ学校に通って、同じ苗字を持って、同じ母から生まれたじゃありませんか!?」
「前半偽造で後半二つ捏造」
「なんですか、この捏造だらけの悪魔!? お姉ちゃん・・・・暁美 ワスは嘘を許しませんよ!?」
「虚像の姉が何を言っているの」
あと姉って何? 苗字を勝手に使うな。
「あの・・・・そのぉ」
今までにないくらい焦って追い詰められた顔をするワルプルギスの夜・・・・いや、ワス。
手をもじもじさせながらこっちを上目遣いに見てくる。
コイツ本当にあのワルプルギスの夜なの? 何度何度も殺されかけて、つい数日前は殺しあったあのワルプルギスの夜なの?
何、何を言われるの? こっちはもう余裕がないのだけれど。
「苗字を使わせて・・・・といいますか・・・・」
「何・・・・かしら?」
「今・・・・その・・・・家がなくて・・・・名塚底根入れなくて・・・・帰るところも、ないと言いますか」
「おほん」とワスは意を決した顔つきになる。
まって、まさか。
「同じ顔のよしみで・・・・家、泊めて♡」
ぎこちない笑顔でウィンクしながらとんでもないことほざいてきた。
■
「あら、暁美さんから連絡が」
「マミ、いつの間に連絡先交換してたんだよ」
「アイツ・・・・もう今日は一杯一杯なんで、これ以上の厄介ごとは無理ですよ」
「なになに」
『たすてけ。ワルプルギスの夜が存在しない姉を名乗って家泊めてとほざいてきてる』
・・・・。
「・・・・メンタル逝ったかアイツ?」
「さやか、頭を抱えてどうしたんです」
「ごめんもうお腹いっぱい」
「これジョークと考えた方が良いのかしら?」
「いや『助けて』が『たすてけ』になってるから相当焦っている感じあるぞ」
「なぎさはチーズが食べたいのです!!」
一同全員顔を見合わす。
そして思い出される先ほどまでの戦闘と・・・・今までの
ーーこう、悪い子ではない事は確かなんだけど・・・・
ーー記憶もさっき空一面に展開されて、すげえ頑張ってたんだなって思うけど・・・・
ーーチーズタルトもいいのです
ーーまどかへの愛情は本物で、色々と抱えてたんだなって知れたけど・・・・
それはそれとして。
《あのドヤ顔困らせてみたいから明日にしよう》
一名除いて全員の心は一つになった。