暁美姉妹の日常 作:現在匿名
のんびり、ゆっくり書いていきますが、読んでくださることがとても嬉しいです。
「お金無いのにレンタルビデオショップでDVD借りて人の家で映画見て人のお金でピザ頼むって本当に何やっているの!? しかも人の家に泊めてですって!?」
「私たち姉妹の家です!!」
「姉妹であることを捏造するな!?」
もう叫んだの何回目だ?
おかしい、なんか劇場版でやりそうなシリアスでダークで物語がついさっきまで起こっていたというのに、これじゃまるでギャグじゃない。
まどかと私の物語は何処に行った?
彼方? エンディング?
「良い曲でした」
「だから心の中読まないで」
ーーあと曲って何?
「姉妹なんです、心が通じ合うのも当然でしょうッ!? 何度も何度も同じ時間で出会ったのを忘れたのですかッ!? お姉ちゃん許しませんよ!!」
「絶妙に真実は言ってるから困る」
とりあえずマミさんには連絡を入れておいた。
前に無理矢理SNSの連絡先交換されていたことがこんなことに役立つなんて。
助けに・・・・来てくれるといいのだけれど・・・・。
そう思っているとSNSに返信が。
ーー皆から?
何気に私SNSってあまり使ったことがないのよね。いつも念話で事足りていたし。
ーーこれが初めてのSNS
書いてあったメッセージは・・・・。
《暁美さん、頑張って!! 何が起こっているか全然わからないけど明日話は聞くわ!!》
《ほむら、何が起こっているか分からないが・・・・まあ頑張れ》
《次会う時はチーズケーキを持ってくるといいのです!!》
ーーアレ全員来てくれる気配がない!?
ーーま、待ってまださやかが・・・・
そう思っているとさやかから返信が!!
《【訳が分からないよ】》
なんかキュゥべえっぽいことを言っているスタンプが送られてきた。
「どうしたのです、ほむら? そんなに項垂れて」
「いえ、なんでも、ないわ・・・・」
ーーただ自分の信頼のなさを改めて痛感しただけよ
ーーだからこれは汗よ・・・・目から出ているだけで!!
ーーほむぅ・・・・
切り替えなさい暁美ほむら。
兎にも角にも、まずはこの姉を名乗る不審者を・・・・。
「ほら、お風呂入りますよ妹」
「居間で服を脱がないでッ!! それと妹じゃないって言ってるでしょッ!!」
腕を掴もうとしたが、顔にストッキングを投げられて視界を封じられる。
「その隙に失礼」
「ちょ、きゃッ」
「あなた本当に細すぎません? 貴女の体を盗んだ私が言うのもなんですが、細すぎて心配になります。あばら若干浮いてますし」
「放しな・・・さい」
ダメだ、さっき食べたピザのせいでお腹が重い。
そして疲れもたまっていて力が入らない・・・・。
「ピザ数切れで動けなくなるとか普段どれだけ食べていないのですか? 今度から姉として私が食事を作りますから、しっかり食べるように」
「こんなに食事に困らなくなった時代になんで・・・・」とブツブツいうワス。
テキパキと服を脱がされ、いつの間にか張っていた湯船に放り込まれる。
久々に入った湯船の熱さに体がびっくりしてしまう。
「・・・・貴女、普段お風呂は?」
「基本・・・・シャワーよ」
「こんなにも便利な時代になったというのに、態々不幸な生活を送ろうとしないでください。私が生きた時代とほぼ同じですよ、貴女の生活スタイル」
「・・・・お風呂に入る前には軽くでいいから体を流しなさい」
「あら失礼」
風呂桶にお湯を入れ、軽く体を流すワス。
何故かしら、同じ体のはずなのにこんなにも敗北感があるのは。
そこそこ広い湯船のスペースに二人で向かい合って浸かる。
最低限のマナーなので急いで髪をゴムでまとめる。
「? 何をしているのです?」
「湯船に髪をつけちゃダメなの。ほら、貴女も」
「そういう文化ができる程お湯を自由に使えるようになったのですね・・・・」
髪を器用に結ぶワス。私の結び方をまねたのだろう、同じように頭の上でまとめ落ちないようにタオルで覆う。
というか文化できる程? なんとなく感じていたがやはり。
「貴女、かなり昔の魔法少女だったの?」
「ああ、そういえば言っていませんでしたね」
ワルプルギスの夜は昔から存在する魔女だと聞いてはいるが、今までの発言を考えるとかなり昔の魔法少女が元となっていると推察できた。
「授業で言っていた、ヨーロッパの中世?という時代に当てはまるのでしょうか。それから魔法少女として活動していました。そして」
「最初の魔女になりました」とワスは言う。
「最初の・・・・魔女」
「そうです。魔女という存在は私が作ったのです。穢れが溜まった魔法少女に別の名を与えることで彼女たちの存在を残し続ける・・・・名塚底根もそのためにあります」
「だったらそこへ帰ったらどう?」
「先ほど言った通り何故か入れなくなってしまったのです」
「・・・・だからって何で私の家に」
「姉妹ですから・・・・というのは冗談」
クスクスと笑うワス。お湯で少しだけ上気した顔が、とても色っぽく見えてしまう。
・・・・本当に私の顔なのよね?
ーー何なのかしら、この違いは?
「心配でしたから、貴女のことが」
「冗談は良いわ」
私がそういうとワスは少しだけ悲しそうな顔をした。
ーー何か言ったかしら? いや、変なことは言っていないはず?
その時にふと思い出す。そういえばアレがあった。
「? その白い粉は何です?」
「入浴剤よ、前にセールで買ってそのままだったから」
「セール? それは一体・・・・お風呂の色が!? ほむら、これは一体!?」
「肌にいい成分。お風呂に入れて香りを楽しみながら体を癒すの」
「・・・・素晴らしきかな現代。これほどの贅沢を日常的に楽しめるとは」
湯船からお湯を出し、うっとりとお湯をかき混ぜるワス。
魔女の始祖、入浴剤に感動する。
ーー・・・・少し毒気が抜かれるわね
というかこういった知識はないのかしら?
「貴女仮にも名塚底根を通して全ての魔女の記録を知っているのでしょう? 現代文明の知識はないの?」
「知っている・・・・というのは正しくありませんね」
「どういったものかしら」と唇に手を当て足を組んでくる。
ちょっとキザッたらしい仕草なのにどうして、こう、様になっているのかしら。
「一気に全部知ったわけではないのです・・・・時間をかけてじっくり・・・・重要事項から知っていけると言いますか」
必要なものだけ優先的に参照して、あとは必要な時に思い出せるということかしら。
「貴女・・・・いや貴方達、この世界に来てから普段は何していたの?」
「まあ貴女の知っている通りですよ」
貴方の行動を監視したり。
魔獣を倒したり。
見滝原中学に入って演劇部と放送部と被服研究会を兼任したり。
クラスメイトの相談に乗ったり。
クラスメイトと食事を「私を倒しに来たのよね!? まどかを取り戻しに来たのよね!?」
完全に遊んでないか!?
というか来て数えるくらいしかたっていないのにこの行動力と人望は一体・・・・。
「ええ、そうです。貴女の事を知るために現代文明に溶け込む必要があったので」
「ああもしかして」とニヘラァと笑う。
「自身の人望とコミュ力のなさを再確認して、お辛いのです?」
「黙りなさい」
「はい、私の勝ち」
ケラケラと笑顔で笑う。その姿もなぜか優美だ、悔しいほどに。
ーー私にはまどかがいる
ーーそれにトカゲさん電話(タ〇ミー式魔法少女システム)で陰ながら見滝原中学の生徒の力にもなってきた
ーーだから悔しくなんて・・・・
ーーぐすん・・・・
話題を切り替えよう。もうこの話題にはあまり触れたくない。
「・・・・それで私のことを知れたの?」
「ええ、貴女がコミュ障の不思議ちゃんで意外とモテているということが」
「ホントに知れたのよね!?」
ガセの情報に踊らされているような気がするのだが。
どこの誰からどんな情報を仕入れたんだこの女。
いや、本当に・・・・コミュ障・・・・不思議ちゃん・・・・。
ーーモテていること以外はちょっと当たっているような気がする・・・・
「・・・・学校どうするの?」
「書類は通しました」
「いつの間に・・・・キュゥべえと一緒に学校関係の情報は洗い直したのよ」
「最初からですが? ついでにセルマと丁香の分も」
「何度も探したのだけれど」
「それを見越して書類自体に改変を仕掛けておきました」
「詰めが甘いですよ、妹」と笑うワス。
ムカつくわね。
というか先ほどから私が負けっぱなしのような気がする。
決して・・・・決して羨ましいと思っていない。
私と同じ顔してるくせに、私の体を盗んだくせに、勝手に人の家に入ってコーヒー飲んでいたくせに。
短期間でキ〇ラみたいな青春送っているなんて決して羨ましいなんて・・・・。
ーーこの違いは何!?
疲れかけの脳をフル回転させ、私とワスの決定的な違いを探す。
この原初の魔女のニヤケ面・・・・今なんか鼻歌歌って私の顔の真ん前で足を組みなおしてる余裕ぶった顔を歪ませる方法は!?
ーー原初・・・・最初・・・・魔女・・・・
あ。
「流石ね原初の魔女というだけあるわ」
「あらほむら、私のコミュ障で不器用な愛おしい妹。ようやく姉の凄さが実感できましたか? お姉ちゃんはうれしいです」
「年季の違いかしらね。数世紀分の」
「ほむら? 歳の事を言いましたか、今?」
「負けたわ、積み重ねてきた時間に」
「婉曲にディスってますよね? 正直に言いなさい、ほむら」
「流石魔女。私のような少女の浅知恵ではかなわないわ」
「喧嘩売っていると考えてよろしくて?」
何かお湯をぶっかけてきた。
やられっぱなしは性に合わない。
「根比べなら、負けない」
魔女・・・・原初の魔女にはない文明の利器、即ち手でポンプを作りお湯を顔に放つ。
「ちょ、何なんですソレは!? ヘブッ」
目を潰し、口に流し込み、最後に鼻を狙う。
鼻に上手く水が入ったのか咽たような咳をするワス。
ーーざまァみなさい
「・・・・やる気、ですわね・・・・ほむら」
「そうね、戦争をしましょうワス」
ーーこの礼儀知らずの姉なる者に反撃をしないと
栃木の戦場ヶ原のように静まり返った湯船で私たちは向かい合う。
武器や文具(?)はないが、お湯はある。
天井から水滴が垂れ、湯船に落ちる。
それが、戦闘開始の合図。
「「くたばッブオ!!」」
原初の魔女と元悪魔の馬鹿な戦いが始まった(※まるで中学生みたい)。