「さて、んじゃ今日早速ソーマ・ファミリア潰すから。以前からのロイマンの提案受ける形で」
リリルカが【再誕】した朝、朝食を食べながらルリがそんなことを言う。
「『
だからガネーシャ・ファミリアと同じで私達も『都市の憲兵』に組み込まれることになる。常に
まあロキやフレイヤが問題を起こした時の鎮圧だね、私らに期待されているのは。どうしても私達は少数だから基本的には大半をガネーシャ・ファミリアに任せることになるだろうし。
連絡体制は整えたから、何か有れば出撃する形でいいよ、基本的には。勿論したいのなら
「ルリッ…それってもしかして、私達のため?」
「んーまあ当然、貴女達のことも考慮した上で、よ。それにパパとも話はついているからね、あとあんまり私達が『正義の味方』みたいなことは吹聴しないでね、あくまで、貴女達個人での、よ。私ら本来どっちかっつーと『悪』だし。」
「はあ、お前たちが『悪』なら大半の一般人が悪党になってしまうよ」
「魔人が本来人類の敵対種」みたいな話は聞いた。ホーネット派も別に人類のために戦っているわけでない。だがその面々の人となりを聞く限りは自分達と大差ない「普通の女性」に思えるのだ。
何よりこの5年でこの魔人達にはとても良くしてもらったし。基本的には大半の一般人に優しいし。今更「悪」と思えるわけがない。
「元々ダンジョンの成果物持ち帰った上で税金免除されていたの特例中の特例だったからね。
だからそのへんも請け負うことで税金は他のファミリアのようには掛けられないまま免除されたままになるの。丁度いいでしょう?」
「取り敢えず、今日は最初に私がギルドに出向いて、話をつけて、ウチに捜査権や逮捕権貰ってくるわ。その後はリリがあのファミリアの内情を証言なさい。
更にその後は直接乗り込んで解体ね。ザニスとかいうバカの犯罪の証拠はもうある程度集まっているけど、直接更に押さえてやった方が効果的だし。」
そうして出掛けるルリとリリルカ。既にいつもの幼女形態に戻っているがそれでも注目度はヤバい。「魔人」とはこの世界でもそれほど重い存在なりつつある。
「向こうの世界」の実情をある程度知った今となっては自分の主がどれだけヤバい存在なのかも理解しているが。
魔人とは本来は人類の絶対的な敵対種で文字通り大半の人間には抗えない「天災」なのだ。しかも彼女はその中で2番目に強い…あのケイブリスやホーネット以上の実力者だ。
破壊光線系の魔法やそれ以外の広域魔法でも一発でオラリオを滅ぼせるだろう。なんせ冒険者レベルに換算すると13とか14とかの冗談みたいな数字だ。
それらを少しの
しかも美人で優しく頭も良くて、経済力や地位も兼ね揃えている。彼女の父親を除けばこれ以上無い当たりだろう。自分の主は。ギルドに辿り着いてからのやり取りはスムーズだった。
ギルド長もすぐに会いたがっていたようだし。そのあたりの権力者は彼女が見た目通りの幼女でなく理知的な女性であることも既知らしい。
トントン拍子でガネーシャ・ファミリアと同等の権限が付与された。この7年間彼らは魔人としてはいっそ異常なほどに理性的に振る舞っていた。
ホーネット派の他の魔人でも、ホーネット以外なら問題を起こしていただろう。いやシルキィあたりも非武装なら問題ないか、元々人間の英雄だったらしいし。メガラスはそもそも異形。
ハウゼルは姉のサイゼルが居ると色々と駄目だ。サイゼルも同じく。サテラは一番問題起こしそう。アレは普通に人間を見下しているようだが若いだけあって普通に情緒がお子様なのだろう。
ルリも妹のように扱っていたし。もう少しホーネットだけでなくあちらも教育した方が良かったろうに、とは思う。と、未だ会っても居ない連中のことを考えすぎたな。
この街の魔人達は無茶苦茶に強いのに、その力を滅多に直接には振るわず、ギリギリまで対話と交渉でなんとかする、理知的な人間の集団の見本だった。
というか大手ファミリアは全員彼らの振る舞いをお手本にしたほうがいいくらいだろう。ロキ・ファミリアも幹部の一部と末端は怪しいし、フレイヤは論外。
ガネーシャ・ファミリアは警邏に従事しているだけあって奇抜な仮面以外は問題ないか。(あと主神がうるさい)イシュタルとかはもう色々と駄目でそのうち潰されるだろう。
稀に勘違いした輩が出た時は容赦なく潰されているが。使徒達に粉をかけたりとか。新入りのように見えた自分も注目された。自分は一応この後ヘスティア・ファミリアに入団予定なのだが。
ギルド長に直接ザニスの犯罪の証拠をつきつけ、
そうしてレベル3くらいのガネーシャ・ファミリアの団員がソーマ・ファミリアのホームの周囲を囲い逃げ場を無くし、ルリとリリルカは2人で突入した。
リリルカが持っていたのは殺傷力のない唯の棒だったが今はもうこれで充分だ。かつて自分を虐げてきた酔っぱらいと犯罪者のザニスをあっさり制圧し、ザニスだけは逮捕して引き渡され、ソーマの部屋にまで辿り着いた。
「こんちゃー魔人と聖女、入りま~す」
ドアノブに触れることもせずにいきなり蹴りでバキッと砕いた。ふっ飛ばさずに、その場で砕く無駄の無い破壊力…恐ろしいな。
「…なんだお前らは」
「一応筋としてね『お宅の所のリリルカ・アーデちゃん貰いに来た』って伝えにきたの。パパもガイ様に『筋』通したからね、そのへんの礼儀は人間なら大事よねえ」
「『引き篭もり』ってのは本当か。主神として失格だね。
「待て…そいつはリリルカ・アーデなのか?
「私の血で上書きしたの、アンタのチンケな
「ハ?お前は神ではないだろ?一体なんなんだ?」
「だから【魔人】って言ってんだろ?子供をゴミカスみたいな環境に置いたアンタにはムカついてんだ、地上でのチンケな
ルリが隠していた気配を晒す。物理的な圧力が室内を飲み込む。ギシッと部屋が軋む音がする。幼女状態でも普通に上位魔人級の実力は保たれている。ケイブリスのようなドス黒さは無いが、単純な圧力はそれ以上だ。
しかもこの室内だけに留める緻密な操作。少し前までのリリルカならその異常さを正確に理解出来なかっただろうが、今なら理解出来る。怪物以上の
魔剣や聖刀が有っても断じて人間が勝てる存在じゃない。
「ぐ…お…」
「そういうことですので、ソーマ様、私はこの方に忠誠を誓いましたので。機会があれば千年後くらいにまた会いましょう」
最後にソーマはリリルカに手を伸ばしていたがそれを無視して、2人はソーマ・ファミリアを後にした。