24階層まで辿り着き大量発生状態を目撃した一行だったが───
「私に行かせて」
ランクアップしたてで、「慣らし」をしたくて立候補したアイズが名乗り出るが…
「ちょい待ち、ちょい待ち私達も実戦ここんとこしてなかったからさ、半分くらいは譲ってよ、アイズ」
もう普通に二つ名でなく名前で呼び合っている程度には気心が知れている仲だ。その実力もよく知っている。問題ないと判断し、
「どうぞ───お2人で半分だけですよ?」
「ありがと、じゃ行ってきまーす♪」
アイズの返答を聞いた瞬間に、モンスターの群れに降り立ち得物を引き抜く2人。そこから始まる2人による殺戮劇。アリーゼの剣で豪快に真っ二つになり、輝夜の刀が煌めいて一閃されれば、次々とモンスター達の首がとんでいく。
「つ、強ェ…」
「レベル7相当…ハッタリではないですね、やはり…つくづく恐ろしい集団です」
「さすが…じゃあ私も行ってきます」
アイズが降り立つと2人とは逆側から剣技だけで掃討していくのであった。
24階層の肉のような緑の壁の内部に入り込んだ一行───
「2人だけだったら焼き払っちゃっても良かったかもね、気持ち悪っ多分『敵』はアイズ狙いっぽいから必ず1人は付こう、輝夜はヘルメス・ファミリア守ってあげて」
「あやつらもそこそこやるであろうに」
「いざとなれば出し惜しみせずに【使徒】として戦うから、輝夜も油断しないでね」
「ああ、主様もそう言っておったしな」
そんな会話をしている内に襲い来る食人花によってアイズとアリーゼは輝夜とヘルメス・ファミリアと分断されてしまった。
アイズ狙いで
それに割って入ったアリーゼがレヴィスの攻撃を剣で受け止め、衝撃を逃がすように飛ばされる。途中で剣を地面に突き刺して、くるくる回って着地する。
「ほう?アリアの余計なオマケだと思っていたが───少しはやるらしい」
「ねえアナタ、
アリーゼ
「ダメ…アリーゼさんあの、人?私狙いみたいだから」
「いんや、なんか奇妙な因縁感じるの私に任せてよ」
そこから剣同士の斬り合いが始まる。レヴィスの今の
訓練らしい訓練をしていない、「人型の怪物」でしかないレヴィスが
「んー警戒しすぎたかな…傷治るんだねへえ、その様子じゃ手足でも時間かければ再生出来そうだ」
(本気出せば倒せそう、でも「妙に嫌な予感」がする。道連れ系かな?
それにしてもモンスターと人間の融合体、か…フィルヴィス・シャリアがそれに該当するらしいけど…)
「格下のステイタスは全て閲覧可能」とかご主人様達の魔法は無法が過ぎるだろう。「服がメチャクチャ隠蔽に気遣ったような仕様になってて却って怪しすぎた」とも言っていたが。
まずそこに気付けるのも居ないだろう。ご主人様は戦闘特化に見えて、きっちりその手の知識も溜め込んでいる。「技能レベル」だのこの世界の冒険者では一生気付けないであろう才能まで見破れるのは有用過ぎる、とも思ったが。
ルリがリリルカを見出したのは片っ端からそこらの人間に使いまくっていたかららしい。
(どーするかなー
ご主人様やルリ、アルフィアなら全然問題ない、という感覚もするし、まいっか適当にボコって逃げてもらお。そう結論付けて再び斬りかかる。
一方輝夜はヘルメス・ファミリアと共に目的地の
「
濃密な殺気が周囲を支配して輝夜の眼が紅く光る。
「ヒ!?」
「うお!?」
「え!?」
全員の視線が輝夜に集中するがお構いなしに輝夜がアスフィに言い放つ。
「【
「侵入者に死をっ…ア”ッ」
超神速の抜刀術で3人もの首がとぶ。
「先ほどよりも…速くっ…」
影だけが敵の真っ只中を駆け抜けその度に複数の首が落ちる。火炎石の爆発も掠りすらしない。
「
不気味な被り物をしたその男が叫ぶと食人化のモンスターが複数現れるが───一閃。一太刀で複数刈り取られる。だがまだまだ数が多い。どうしようかと一瞬思案した直後に…
「なんだてめぇらは!?」
闖入者が現れた。
フィルヴィスが万一動き出したらいよいよ不味い。妙な気配がしていたから様子見していたが、この場の頭っぽいあの男を…いや被り物の下を拝んでから
即座に兜の男の前に縮地で現れ、兜ごと上段から身体も斬りつける。兜がパキンと割れて落ちる。普通の人間なら深手だが…
「ぐぉ…」
「【
アスフィがそう叫ぶが…
「そういうそちらは【大和竜胆】ゴジョウノ・輝夜だったか?クク…死者同士の邂逅とは奇縁だな…!」
「一緒にするな塵芥が」
「何で死人がここにいるんですか!!?」
「私は二つ目の命を授かったのだ!他ならない『彼女』に!!」
調子に乗って色々とベラベラ喋るオリヴァス。
(「こう」なっていた可能性が有ったのか我らも…)
自分達はかなり運が良かったらしい。今の主への思慕が深まる。もうキュンキュンだ。
そのうち「オラリオを滅ぼす」とか宣うその男を冷ややかに観察する輝夜。
「もう知っていることはなさそうだな…下っ端かやはりお前程度では、な…」
はぁと溜め息を吐く。
「舐めるなァァァ!やれェェェヴィスクムゥウウウウウ!」
「【ゴコウ】」
詠唱無しに抜刀術が放たれ五つの閃光が走り切断され、巨大な花のモンスターがバラバラに崩れ落ちる。その1つはオリヴァスの胸元の魔石に当てその生命ごと断った。
「さらばだ塵芥の頭もやはり塵芥であったな」
「ばか…な…」
灰になっていくオリヴァス。その直後にパントリーにレヴィスがふっ飛ばされてくる。姿を現すアリーゼとアイズ。
「まあ、よい。一番邪魔なのが消えたし、あの気持ち悪い胎児を回収するとしよう」
すたすた、騒ぎの中心に有ったと思われる緑色の宝玉に近づくと、突然黒いローブで仮面で全身を隠した人物が降り立ち、それを回収する。
「ここで手を出すか【エインセル】、我らの主に見逃されていることも気付かない、間抜けな
フィルヴィス・シャリアから動揺の気配がする。やはりこの黒ローブが「例の魔法」か。
「完全ではないが充分に育った!エニュオに持って行け!」
「ワカッタ」
アリーゼが無理に止めようとしないということは致命的なことには繋がらなそう、と判断して見逃す。
「
レヴィスがそう号令をかけると周囲から食人花のモンスターが数百体も生えてくる。軽く溜め息を吐くアリーゼ。
「ふぅ…起きて相棒。出番だよ…
アリーゼの呼びかけに呼応するかのように剣から炎が吹き出る。
「
アリーゼの剣を中心に炎の渦が起こる。
「【業火炎破】ァ!」
その振り下ろしと同時に巨大な火炎が発生し、大量のモンスターが灰になり崩れ落ちていく。
最後に「59階層に行けアリア」と意味深に言って立ち去るレヴィス。
周囲が大歓声に包まれる。
「「ぃいやったああああああああああああ!」」
「最後のやっべえのなになに?」
とルルネが聞いてくるが輝夜が表情を消してきろりと睨むと黙り込む。
「お前が仕留め損なうほどの相手だったか…?」
輝夜がアリーゼに質問する。
「んーん。殺るだけならいつでもイケたよ、そっちこそ私の意図汲んで最後見逃したんでしょ?」
「まあ、な」
「やっぱりぃさっすが私の相棒ぉっ」
というかこちらを
「貴女達のお陰で誰1人欠けずに乗り切れました。ありがとうございました。」
アスフィの礼にアリーゼがニコッと応える。
「どういたしまして。
「貴女達への興味は強まりましたが今は遠慮しておきます」
「なんて嘘だよ、ウソウソ。『胡散臭い集団』なんてよく言われているけど、冒険者としては普通にかなり良いファミリアだったもんね、思わず昔思い出しちゃったよ、だから副団長さん睨まないでよっ」
「そうだな。今の仲間達は昔の仲間達と同等以上に気に入っているが、やはり『冒険者』というよりは一騎当千の戦士の集団だからな、ああいうチームワークは良いものだ」
そうして一行は地上に帰還し一件にひとまず幕を閉じたのであった。