ベル・クラネルが冒険者デビューしてから数日が経った。義母の恋人である、義父とも言えるクロノが都市外に出ていて会えなかったのは残念だったが、その内戻ってくる、とのこと。
「アレに戦い方を教わるのは構わんがアレに憧れるな、お前が奴のようになるのは無理だ」と散々口を酸っぱく言われているが、ハーレムを現座進行形で成立させている彼に「憧れるな」は無理があるだろう。
お爺ちゃんもメチャクチャ羨ましがってたし…あの義母が正妻でもない立場に甘んじているのが凄く意外だったのだが「普通の人間じゃないからそういうこともあるだろう」とか言っていた。
最初の奥さんだった人はあのルリ姉にそっくりの超美人らしい。何故か普段は幼女の姿で居るが本当の姿はヤバいほどの美人だった。しかもお義母さんやザルドおじさん以上のとんでもない実力者とのこと。
現在進行系での本妻の人もメチャクチャ美人らしい。というか今はそのハーレムメンバーの棲家で寝泊まりしているから若干肩身が狭い。本妻さんは居ないらしいが。
皆親切で邪険にされることはないけど…最初は「まずは自分でファミリアを探せ」と放り出されたが、成果が無かった日々でも普通に寝泊まりさせてくれる場所が有ったのは有難かった。
セレスさんが毎朝弁当を作って持たせてくれたし…結局今の主神であるヘスティア様が主神に立候補してそのまま眷属になったのだが…
従妹である妹分も、ソロで潜っている。実年齢は6歳のはずなのに見た目は既に10歳くらいだ。自分と同じ白髪ということもあって「兄妹にしか見えない」と言われているが従妹である。
実力的には既にレベル6以上らしく中層にも進出しているらしい。レベル6って殆どこの街のトップ層なんだけど、まあ両親がアレならそういうこともあるだろう、と勝手に納得した。
【魔人館】は少し名前が邪悪な感じがして、評判も微妙だが、自分にとっては概ね良い家だった。
そんなある日───魔人館の周辺で超挙動不審に辺りを見回す金髪の覆面エルフが居た。
「おい、ポンコツエルフ何やっているんだ…」
「ハッ!?輝夜ッ丁度良かった、あのバケモノ父娘は遠出していると聞いていますっここから逃げましょうっアリーゼも連れて今すぐにっ」
「「おいバカやめろっ手を握るなっ今の仲間達に知り合いと思われたらどうするっ覆面不審者めっ」
「あははーリオン前にボコられたのにまだ諦めてなかったんだねー」
「アリィゼッ!輝夜を説得してくださいっこっちは話にならないっ」
「というかリオン、貴女も5年前は納得していなかった?私達があの方に命を助けられたのも貴女の視点から見ても間違いない状況だったんだしさ、別に恩を盾に無理矢理言うこと聞かされているわけじゃないよ。
やろうと思えば出来るけど基本的にやりたがらない人だし。私達も凄く自由にさせてもらっているし。それに【アストレア・ファミリア】の意志を、【正義】を捨てたわけじゃないよ。
そりゃ表じゃ死人の私達はまだ堂々と街を歩けないけど、ソレもその内ご主人様がどうにかしてくれるつもりみたいだから。大体貴女自身も恩が有るんじゃなかった?この街を出ていくアストレア様についていかなかった貴女が
鍛え続けられるように、一時的な主神としてデメテル様を紹介してくれたのもご主人様でしょう?それでせっかくレベル5になったらしいのに…それにご主人様は確かにバケモノみたいに強いけど、
アリーゼの眼が鋭くなる。酷薄な「魔性」を感じさせる眼だ。かつては一度もみたことなかったし、間違いなく仲間に向ける目つきではない。
「アリーゼ、この馬鹿は言っても聞かん。それに『
「じゃあさ【裏庭】行こうよ」
魔人館の裏庭は訓練場としての機能があるから広めに取っている、勿論仮に上位魔人同士が本気になればオラリオが更地になるから、基本全力は厳禁だが。それは使徒の上位勢も似たようなものだった。
「セピアー私達も訓練場使うぞー」
「えっ?今アルフィアさんとアリス様が使っていますよ」
「徒手空拳同士の組手だろう、ならこちらが端に寄れば邪魔にはなるまい」
アリスはアルフィアの実子アリスィアのことだ。魔人の実子なので生まれながらの使徒のようなものだ、成長すれば不老になる。
病気はなく
あの【静寂】の周囲を何かが絶え間なく飛び回り【静寂】と絶え間なく激突している。リューは呆然とそれを眺めていたが、
「ハッ!」
殆ど動かずに防御と回避に徹していたアルフィアがその動きを鋭く捉え掌底を入れる。吹き飛ばされてアリスが地面を滑りようやくその姿が顕わになる。
「ウソッ子供っ!?」
「速度はなかなかのモノだが、動体視力以外でも気配を察知出来る達人クラスだと大して撹乱にはならんな、クロくらい極まった速度なら別だが。素手ならルリを見習え。
アイツのようにもっと腰を据えてだな、アイツの経験は1000年以上だからこの地上で武神の次くらいには引き出しが多いぞ」
「ルリ姉はやーパパと同じ無敵結界自慢するんだもん、【
「フ…ならもっと強くなれば、魔人にしてもらえるかもしれんぞ?私は既に誘われているしな」
「…あの容姿、まさかあの娘は───」
「ええ、アルフィアさんとご主人様の娘よ、才能は見ての通り凄まじいけどあの見た目でまだ6歳だからね、私達の中ではまだ下から3番目程度の強さだよ。本領は魔導士だから個人戦はまだそこまでじゃないしね。」
「さあ、私とアリーゼどちらと
かつての未熟な自分を諭すような怒りに見せかけた優しさじゃない、余裕の中にも明確な怒りを見せている。
「セピア、一応向こうとは結界で遮ってくれ万一流れ弾で邪魔したら後が恐い」
セピアが結界でアルフィア達母娘と輝夜達の場所を遮断する。熟練の魔法使いで魔法Lv.2の技能持ちだ。
「世界が違えば常識も違う。私達の世界はもうそれだけ遠いということだ」
輝夜が模擬戦用の木刀を投げ渡す。リューの本来の得物と同じ長さだ。
「さ、どこからでもかかってこい」
「舐めるなァ!」
リューが殆ど様子見せずに少し足で撹乱しようとしてから斬りかかるが、ほぼ不動の輝夜に腕の動きだけで受け止められる。輝夜の腕は全く揺らがずに受け止める。足を止めずに何度も何度も何度も斬りかかっても結果は同じだった。
おかしいっ…輝夜のスタイルは私と大きく差はなかったはずだ───自分達のスタイルは速度を活かした戦法だったはずだ。だがこれは───
「
「!!!?」
動揺したリューはようやくここで距離を取り様子見をする。
「もっと早くに止まるべきだったな…通用しないと分かった時点で無駄に体力をすり減らすだけだ。それに私自身の本来のスタイルは大して変わっとらんよ。勿論引き出しはそれなりに増えたがな。
これは単純な反応速度と膂力の差でもあるが…冒険者も上位になれば、膂力だけでなく感覚も鋭敏になっていくだろう。アルフィアなんて眼を瞑ったままでの素手でもとんでもない強さだしな。
動体視力だけに頼っているウチは、
「どうして…そんなに強く───」
「環境の差だな、かつての仲間達に不満があったわけでもないが、私より明確な格上など居なかったしな。それが今では実力じゃ下っ端だ。時間が有れば格下相手でもとことん相手してくれる気の良い奴らだし。
アストレア様の教導は素晴らしかったが、今の私の師匠の1人はタケミカヅチ様だ。元々身に着けていた技能的にもやはりマッチしてな。それになにより───」
「愛する
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ不潔だ、不埒だ、破廉恥だああああああああああああああああああああああっ!」
走り去っていった。
「ねえねえママ、アレも青春ってやつ?神様が偶に言ってる『アオハル』ってやつ?」
いつの間にか手を止めて見物に徹していたアリスがアルフィアに聞く。
「さぁな、だがアリスお前はあんなバカ娘共みたいになるなよ?」
「アルフィアよ、私までアイツと一括りにするな」
「フン流石にもう正面からは来ないかもしれんが、あの様子じゃアレが諦めるとは思えんな、結局お前のしていたことは偽悪的に振る舞いながら
「アリィ姉、これはママに『鏡見ろ』って言ってやったほうがいいのかな?」
「アハハ、7年前にザルドさんとやろうとしていたことの真意がアレだとすると…何にも言えないかなー」
アルフィアがボッと赤面する。
「あはは、確かにアルフィア君も可愛いところあるねーベル君はどう思う?
屋上からベルと見物していたヘスティアが、そうベルに話を振るが、アルフィアの地獄耳はこれを聞き逃さなかった、
「
これまでのパターンから主神の身が危ないと思い、このか弱い女神をお爺ちゃんの二の舞にさせないと咄嗟に庇うベル。初動が早かったため、なんとか庇うことに成功するが、自身までは避けきれずに吹っ飛んでしまう。
「ベルくん?ベルくぅううううううん!?」
白目で気絶するベル。最強の魔人達が不在でリュー・リオンが訪れたこと以外は【魔人館】は概ね日常取りだった。
紆余曲折あって一応リューちゃんは豊穣の女主人に居着いています
でもお尋ね者じゃないから髪は染めていない感じ