「あぁ~久々にパパと2人きりで過ごせて楽しかったわ。極東結構良い所だったわね、リリア。は山奥行ってたんだっけ。貴女の方はなんか面白いモノ見つかった?」
「いいえ、私の方は特に…でも良かったんですか?マスターをゾーリンゲンに置いていって」
「いいのよ。瞬間移動魔法はあんま気分良いモンじゃないし滅多に使わないけど、昔パパがママと開発した転移魔法使えば、一瞬でオラリオに戻れるからね。魔法Lv.3は伊達じゃないの」
「…いえ、そちらではなく、アストレア様と2人だけにして、あのお2人って『そういう』関係ですよね?」
「なら尚更邪魔しちゃ悪いじゃない。あんな良いお方となら私も邪魔する理由ないし応援したくなるわ」
「あのう、マスターの本妻だというホーネット様とルリ様は…」
「ああ、ホーちゃんとは
これは長命種にならないと分からないことなんだけど、長く生き過ぎていると、魂って淀んで汚れが溜まって汚染されていくの。私達はそれを浄化する独自の方法も持っているけど、やっぱり真っ当な方法で綺麗にしていくのが一番だからね。
最古のケイブリスなんか長年の鬱屈した感情が溜まってすんごいどす黒くなってるし。新しい人々との出会いや、未知との出逢い、冒険。それらを定期的に摂取するのが心の栄養になって魂も綺麗になっていくの。
この世界の神々も似たようなところがあるから退屈を嫌って地上に降りてくるんじゃない?ホーちゃんはそのへんのこと知らなくても、別にパパを独占とか考えていないみたいだしね。あの娘が子供の頃から3人の使徒はずっと居たんだし。
ホーちゃんもかなり強い方だけど、更にそれより強くて子供の頃のホーちゃんも知っているパパにとってはホーちゃんも庇護対象だからどうしても『対等な相手』ってのが居ないからね。皆が最強のあの人を頼る。どこの世界へ行っても。
だからウン億年生きているらしいこの世界の神様とは結構相性良いと思うし。2000年以上生きている私達が若輩扱いされるような方々だからね。ホーちゃんは美人で優しくて癒しになるかもしれないけど、母性はイマイチだし。」
「どうしてそこまで───」
父親のためにするのか、という続く言葉は予想出来る。まあそう思うのも当然だ。2000年以上生きていて、未だ父親離れが出来ないなど普通に有り得ない。或いは父と出会わなかったホーネットはそうなっていた可能性も充分にあるが。
「…パパはね。私の【全て】なの。
人間の世界で生きていくのはもう無理だったし、ママから忘れられた私はパパしか頼れる相手が居なかったから。勿論1人だけでも強くなれるだけの才能は充分にあったんだけど…
未熟だった頃の私じゃ、男の魔人とかに狙われて犯された挙句殺されていた可能性も高かったし…人間の頃から結構強かったパパは物凄い勢いで更に強くなって、すぐに魔王以外に手出し出来ないようになったから。
お陰で私を隠しておける程度の権力はすぐ手に入ったし。1000年以上も私のために生きてくれたパパのお陰で私の男性観はグチャグチャ。長命種になったのも相まって、『こんな人他に居ない』ってなったからね。だからパパには幸せになって欲しいの。
それよりそろそろオラリオに着くよ、すぐ会場入りのはずだったけど…なんか騒ぎになっているみたいだね」
オラリオではフレイヤの仕込みでガネーシャ・ファミリアから逃げ出したモンスター達が騒ぎを起こしていた。その動機は「
「【ガネーシャ】の管理体制は結構しっかりとしている。誰の仕業なんだか…私達も無関係じゃないのに…取り敢えず【炎の矢】✕6」
高高度から撃ち出される魔法。解き放たれたモンスターの生き残りと同数の6発が同時に撃ち出される。本来は基礎魔法のソレだが、展開速度、数、威力、どれもが異常だ。
空から降り注ぐ魔法で次々と焼き払われていくモンスター達だったが、一発だけ妨害に遭い狙撃に失敗する。
「!?一発妨害された…あの猪か、じゃあ黒幕はフレイヤね、ま、いっかカーラやアリスも動いてるみたいだし…ベル君が戦っているのか、え、あの女、ショタコン?
リリア、貴女は会場の円形闘技場に降りて待ってて。私はあの毛色が違う植物の、片付けたら向かうから。」
そう言ってふわりと飛び降りて自由落下してしまう主の娘。
「無事で済むといいわね、フレイヤ・ファミリア。」
バカだよなあ、あんな恐ろしい
あの2人も、主達の存在があるからいざとなったら『
多分遊び相手程度にしか思っていないのだろう。
生存本能としてはロキ・ファミリアの【
丸っきりかつて居たというゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリアのようだ、その存在感は。実際の実力はそれ以上なんだけど。
「良いなあ…」
自分も主達のように人間の強者たちと遊んでみたい。出来れば一方的な「狩り」ではなく、対等に近い条件での闘争を。自分はレベル6程度の
使徒ではないアリス様も数字の上では未だその程度だが、既に向こうの世界の魔法も使いこなすあの方は、私より格上と言っていいだろう。
一応主達は5年位内を目処に自分や
自分は「闘争」の方が好みだが「友愛」も良いものだと思える程度の理性と感情はある。
彼らの言う「同胞」ではないだろうが自分は。使徒化はなんせ、そこいらの動物でも、無機物にすら可能らしいのだ。
自分が特別だったとは思わない。ただ物凄く運が良かっただけだ。
やはり彼女らも主が神に見えたのだろう。その力そのものはより上位の者から与えられた
まだ自分は弱いが、いつかは
街の方の騒ぎで今は見世物どころじゃないが
一方先に降下を始めていたルリは───自身に重力魔法を掛け加速していた。
地下から現れた
「はい、どーん」
「「「ハ?」」」
ロキ・ファミリアのアイズ、ティオナ、ティオネ、レフィーヤの4人の眼前に現れたルリだったが…
「ウィン・フィンフルヴェトル!」
魔法は急には止められない。レフィーヤのその魔法は大きくルリを呑み込んだ。
「わっぷ、きゃっつめたーい、なんちゃって…結構良い魔法使うじゃん、レフィーヤちゃんだっけ、キミ?頑張ればいずれリヴェリアを越えられるかもね、応援しているよん」
「あっありがとうございますっ」
思わず礼を言うが、周囲は凍りついているのに本人は至って無傷なその幼女に呆然とするレフィーヤ。謝ろうと思ったが本当に全く堪えているように見えない。何らかのスキルだろうか。冒険者とは別枠で
「モンスター由来でない別の似たような力の恩恵はある」というのは聞いたことはある。似たような法則があってもおかしくない。
(近くで見るとやばいくらいの美少女だ…)
「女神に匹敵する美貌」と呼ばれるこの街の人間は2人居る。その1人がアイズでもう片割れがこの幼女なのだが。個人的にはこの前のアリスィアやその母親であるアルフィアもそのレベルだとは思うが…
アルフィアはシンプルに恐いし、アリスィアはまだまだ新参だ。この娘も10年前からこの姿のままらしいからまず間違いなく見た目通りの年齢ではないのだろうが…ふわふわ浮いているのはなんかのスキルだろうか。
アリスィアも似たような動きをしていた時があったが。
「アイズッ、ただいまっ」
「おかえり、ルリ…」
ルリがアイズに抱きつく。ティオナに同じことをされても戸惑うだけだったアイズが抱き締め返している。
(眼福ッ…いえ非常に羨ましいッ…でもなくて)
この街の【魔人】と言えば
【魔人】のもう片割れである彼女の方は、奔放にオラリオ中に現れ、神々と
あまり本気で隠す気はなく半ばお遊びなのかもしれない幼女への擬態も。魔法、そうだ、魔法だ。
「あのぅさっきの空からの凄い魔法は、貴女が…?」
「そだね、一発猪野郎に妨害されて仕損じたけど。」
「まさか、【
ここまで様子見をしていたティオネが口を挟む。
「そーそーパパやザルドが結構気に入っているから放置していたけど、連中うっざいからいい加減ぶっ殺しちゃってもいいと思うんだけどねえ」
「ねえねえっ一番強いのはクロノさんって話だけど貴女はどれくらい強いの?」
ティオナも話しかける。交友関係は無かったが興味はあったのだろう。
「言っても構わないけどどうせ信じられないよ?」
「いいからっ」
「んー私とパパは冒険者レベルに換算すると10を大きく越えているよ。」
「「へ?」」
「ハァ!?」
レフィーヤとティオナの声が重なり、ティオネが大きく声を上げる。アイズは知っていた。それが決してハッタリでないことも。
「でもそれってそんなに驚くことかな?過去に9が居たんだし、その1つ上くらい居てもおかしくないでしょ?ザルドやアルフィアは今ちょうどそんくらいの
「あ、私、闘技場行かなくちゃいけないんだった、まったねー」
その得物が溶けてしまっていた。
「熱ッ…ぐ…凄まじい熱量…まさか
そこに現れる使徒の1人のカーラ。魔人一派は怪物祭の協力者だ。当然の流れとして騒ぎを収めるために使徒も動く。
「待てェッ!ここから先には行かせぬぞ!」
刀身の短くなった剣を振るって妨害しようとするが、視線をちらりとだけ向けたカーラは頭を下げて躱して、オッタルの懐に入り腹に掌底を入れて、宙に浮かす。そこから飛び蹴りで追い打ちする空中コンボをキめられて地を滑るオッタル。
「おごっ…ガッ!?」
「じゃま」
元々カーラは素体がバルキリーということもあって「使徒最強」と言われていたような存在だ。その座を譲ってしまったということは少々悔しい気持ちもあるが、同僚が強い分には頼もしいから負の感情は少ない。
オッタルも、フレイヤの傍に居ない時は鍛錬を怠っていないが、基本鍛錬は1人だ。稀にダンジョンに1人遠征とか頭の悪いことをしているが。近しい実力者同士で常に鍛え合っている、魔人一派とは環境が違う。
辿り着いたその場ではベルがシルバーバックと一騎打ちをしていた。それを固唾を呑んで見守る、ヘスティアと先行していたアリスィア。
「ここまできたら邪魔するのは野暮…か」
というかセレスティアと、セピアも隠れているっぽい。ヘディンとヘグニも居る。それでアリスィアも込みで互いに牽制し合っていたのだろう。
あと近くで四兄弟と猫がノびているようだ。あの3人の誰かにやられたのだろう。まだ慎重なところのあるエルフ2人は見逃されたか。
(幹部勢揃い…バカなのか、あの女神は)
今の自分は普通の婦人服を着ていて一般人にしか見えないが、7年前に
「冒険者レベル8相当」と申告しているし、勝てるわけがないのによく挑まれるのだ。闇討ちしようとしたら、問答無用で叩き潰すし、殺すこともあるが、正面から挑んでくる分には普通に受けていたし、命までは取らなかった。
元の世界じゃほぼ皆無の体験だったから最初は新鮮で楽しかったのだが、だんだん相手の面子が固定されていくとそれも飽きる。「勝てればランクアップ出来る獲物」とか思われているのかもしれない。つくづくこちらのシステムは面倒だ。
まあ向こうも人間の場合はレベル神に頼ったりでかなり面倒そうだが、元々がモンスターで使徒の自分には関係ない。眼の前ではベルがシルバーバックを見事倒してみせた。
モンスター騒ぎが収まったのでガネーシャ・ファミリアがモンスターの調教を見世物にしていた円形闘技場ではリリアとルリが会場入りしていた。
「はーいオラリオの皆ただいまー皆のアイドル、ルリちゃんだよー」
「うおおおおおおおおおおおおおルリちゃあああああああああああああああん!!!」
野太い声援がするが、ルリは老若男女神問わず人気がある。なんせ見た目は幼女だ。女性からも可愛がられている。
本来の姿を晒せば、男性人気が爆発的に増す代償に同性からの不要な嫉妬を買うだろう。それも面倒臭いのでずっと幼女姿に擬態している。
この世界に自分達を脅かすような存在は居ないと確信出来た頃には大人に戻っても良かったのだが、なんだかんだ、だらだら続けている。幼女がクソ強いという
「はいはい、本日のメインは私じゃなくて、こっちのリリアだからねー」
「ぐわぉ」と鳴くリリア。今の見た目は普通にドラゴンなのでまさか人語を話せるなどと思わないだろう。
ルリはアイドルの技能レベルを持つ「歌って踊れる魔人」だ。今まではホーネット派の幹部達や親しい神にしか晒していないが、抜群の歌唱力と身体能力で繰り出される圧倒的パフォーマンスはかなりウケが良い。
だが歌まで歌い出すと完全にメインがルリだけになってしまう。それはいつか人型を晒せるようになったリリアやレイあたりと一緒にやればいいだろう。だから、今日は踊りだけ。
結構無理矢理に二足歩行している、リリアの前足を握る。そこからくるっと回ってダンスを始める。1人と1匹が息を合わせたコンビネーション、舞踊を披露し、観客たちの視線を釘付けにしていく。
やがて2人で空に飛び立つ。レッドアイ以上の魔法使いである彼女にとっては空を飛ぶくらい朝飯前だ。空中でも2人のダンスは見事なものだった。
やがてドローンによる空撮カメラが周囲を飛び始める。地上に設置されていたモニタに映し出される2人のダンス姿。神々の特権である【鏡】と同じ事をする技術力。
(アリスの仕込みか…フェルズとの共同制作かな)
あのアルフィアにそっくりの末妹は、紛うことなき天才だ。技術者としても。モノ作りに関しては或いは自分以上の。基本的に素っ気ない態度が多いが、こういう場面での気遣いを見せられると、メチャクチャ可愛く見えるのは当然だ。
ヘルメス・ファミリアの弱味を握っているから、多分開発者はアスフィの名前が使われるのだろう、表に出れないフェルズの代わりに。或いは共同制作者として自分の名前も使われるかもしれない。
やがて2人で地上に降り立ち同時におじぎをする。会場は、というかオラリオはやばいくらい大盛況だった。モンスターをまずあそこまで仕込むのが無理だし揃って空中でダンスなど唯一無二だろう。
ルリの人気に乗っかった上に
だからウラノスもガネーシャも