東方竜狩郷 ~幻想郷の狩人少女達~   作:幻想入りしたガンサー

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第十三話:一針いくら

~博麗神社 狩具小屋~

 

――棚の一段に、朝の光が細く差し込んでいる。

 

 狩具小屋の奥の棚は、上から三段目だけが妙に片付いていた。伏せたお椀が一つ。その周りに、針山と糸巻きと、小指の先ほどの鋏が行儀よく並んでいる。

 そのお椀の上で、針妙丸が胡坐をかいていた。

 膝の上には、霊夢の防具の腰当てが広げてある。薄紅と淡い青の革を継いだ腰当ては、針妙丸の体よりずっと大きい。針妙丸はその縁に跨るようにして、ほつれた縫い目に針を通していた。

 

「……また、ここだ」

 

 針妙丸は、糸を引き絞りながら呟いた。

 ほつれているのは、腰当ての右の端。前に繕った縫い目の、すぐ隣だった。その前も、その前の前も、同じ所がほつれた。

 

「霊夢ー。また右の腰、ほつれてるよ」

 

 小屋の戸口で、霊夢が欠伸をした。

 

「知ってるわよ。裏山で転がったもの」

「転がるのはいいけどさ。毎回同じ所なんだよね。三日前に縫ったばっかりなのに」

「三日前に転がって、昨日も転がったのよ」

「威張って言うことじゃないでしょ」

 

 針妙丸は鋏で糸を切り、指ぬきで縫い目を押さえる。指ぬきは泡狐竜の鱗の欠片を削ったもので、霊夢の腰当てと同じ色をしている。

 霊夢はこめかみを指で掻いた。裏山の岩の破片が掠めた傷は、もう瘡蓋になっている。

 

「それで、お代はいくら?」

「お家賃代わり。無料(タダ)よ」

「ならいいじゃない」

「よくないよ。帳面には付けるからね」

 

 針妙丸は棚の端に立て掛けてあった帳面を、両腕で抱えるようにして引き寄せた。針妙丸の背丈と同じくらいの、薄い和綴じの帳面だ。表紙には、針妙丸の小さな字で『繕い帳』と書いてある。

 針妙丸は帳面を開き、筆の先を舐めてから、一行書き足した。

 

「……霊夢、腰当て右、七針。家賃代わり」

「七針も縫ったの?」

「縫ったよ。数えてるもん」

「ただなら数えなくていいでしょう」

「ただでも数えるの。私の仕事なんだから」

 

 針妙丸は筆を置き、帳面の頁をぱらぱらと捲った。霊夢の名前が、頁ごとにいくつも並んでいる。どの行の終わりにも、同じ文字が書いてあった。

 

――『家賃代わり』

 

 霊夢は帳面から目を逸らした。

 


~博麗神社 参道~

 

――鳥居の下で、あうんが箒を握りしめていた。その表情は強張っている。

 

「れ、霊夢さん!」

 

 あうんの声は、もう半分裏返っている。

 

「華扇さんが、石段を上がってこられます。今、三段目くらいで――」

「居ないって言っておいて」

「む、無理です!私、嘘は――」

「言えるわよ。『居ない』って三文字だけでいいんだから」

 

 霊夢は狩具小屋の戸を閉めかけ――そこで手を止めた。

 鳥居の向こうから、足音が近付いてくる。しっかりとした、迷いのない足取り。それから、柔らかいが良く通る声。

 

「――霊夢。居留守をするなら、小屋の戸くらい音を立てずに閉めなさい」

 

 戸の隙間から、桃色の髪が見えた。シニョンを被せた二つのお団子。白いブラウスに、茨の文様の入った緑の上衣。右腕には包帯を巻いている。――華扇だった。

 華扇の後ろで、あうんが小さく頭を下げている。

 

「すみません、霊夢さん……私、まだ何も言ってないんですけど……」

「言わなくても、顔に書いてあったわ」

 

 華扇は、あうんの肩をポンと叩いた。それから、狩具小屋の戸の前に立ち、腕を組んだ。

 

「おはよう、霊夢」

「……おはよう」

「今日は修行の日よ。山歩きと、座禅と、それから――」

「裏山の後始末で疲れてるのよ。三日も天人に居座られて」

「聞いているわ。テツカブラを追い返したそうね」

 

 華扇は少しだけ表情を和らげた。

 

「牙を一本折って、撃退。怪我人なし。……慧音さんが、会館で小鈴さんに読み上げさせていたわ。衣玖さんの報告書を、三度」

「三度も?」

「短すぎて、皆がもう一度と言ったのよ」

 

 霊夢は溜め息を吐いた。

 華扇は霊夢の脇をすり抜け、狩具小屋の中を覗き込んだ。棚の三段目で、針妙丸が腰当てを畳み終えたところだった。

 

「あら、針妙丸。おはよう」

「お、おはよう……」

 

 針妙丸は、お椀の上で居住まいを正した。華扇を前にすると、なぜか背筋が伸びる。

 そして華扇の目が、針妙丸の膝元に開いたままの帳面に留まった。

 

「それは?」

「繕い帳。……私の、仕事の帳面」

「見せてもらってもいいかしら」

 

 針妙丸は霊夢の顔を見た。霊夢は肩を竦めた。

 華扇は帳面を両手で受け取り、頁を捲り始めた。

 


~博麗神社 母屋 縁側~

 

――縁側に、帳面が三冊並んでいた。

 一冊は、針妙丸の『繕い帳』。一冊は、狩具小屋の在庫を書き留めた『小屋帳』。これも針妙丸の字だ。

 そしてもう一冊が、霊夢の『神社の帳面』だった。表紙の端が折れ、頁のあちこちに茶の染みが付いている。

 華扇は三冊を見比べながら、黙って頁を捲っていた。

 霊夢は縁側の端で、茶を啜っている。針妙丸はあうんの肩に乗せてもらい、華扇の手元を覗き込んでいた。

 華扇の指が、霊夢の帳面のある頁で止まった。

 

「……霊夢」

「何よ」

「この『賽銭』の欄。先月の分は」

「書いてあるでしょう」

「書いてあるわね。――三行」

 

 華扇は帳面を霊夢の方へ向けた。

 

神社の帳面 先月の入り

賽銭 少し

賽銭 少し(ボタン一つ混ざる)

賽銭 なし(雨)

 

「金額が書かれていないのだけれど」

「少しは少しよ。数えるほどもないんだから」

「ボタン一つ、というのは」

「誰かが入れたのよ。ボタンを。……多分、魔理沙辺りだと思うけど」

 

 華扇は額に手を当てた。

 それから針妙丸の『繕い帳』を開き、霊夢の帳面の隣に並べた。

 

繕い帳 先月

魔理沙 帽子の縁、十二針。一針一文

明羅 太刀の柄巻き、巻き直し。三十文

天子 前掛けの鱗、三枚縫い付け。百文(言い値)

オコゲ 防具の肩紐、五針。木の実二つ

萃香 分銅の紐。酒一杯(断る)

霊夢 腰当て右、九針。家賃代わり

霊夢 腰当て右、六針。家賃代わり

霊夢 柄巻き、巻き直し。家賃代わり

 

 華扇は二冊を見比べ、ゆっくりと顔を上げた。

 

「――霊夢。神社の一番の稼ぎ手は、誰かしら」

「……さあ」

「針妙丸です。明らかにね」

 

 華扇の声は、静かだった。静かなまま口調だけが変わった。――お説教が始まる。

 

「神社の主が賽銭の額も数えず、居候の繕い代で暮らしを回している。――それでいいと思っているのですか」

 

 霊夢は湯呑みを置いた。

 

「居候じゃないわよ。針妙丸は神社の――」

「では、なおさらです」

 

 華扇は『繕い帳』の頁を指で叩いた。

 

「ご覧なさい。霊夢の名前の行だけ、終わりに『家賃代わり』と書いてある。お代を取らないなら、書く必要はないはずでしょう。それでも針妙丸は、一針ずつ数えて書いている」

 針妙丸が、あうんの肩の上でとビクリ肩を竦めた。

 

「べ、別に……帳面は全部付けるって決めてるだけだから」

「えぇ。立派な心掛けよ」

 

 華扇は針妙丸に微笑み、それから霊夢に向き直った。既に微笑みは消えている。

 

「霊夢。この帳面の中で、霊夢の名前は先月だけで三行。その前の月は五行。その前は四行。――数えたことはある?」

「……ないわよ」

「でしょうね」

 

 華扇は帳面を閉じた。

 しばらく、誰も何も言わなかった。

 縁側の向こうで、雀が二羽、庭の土を突いている。あうんは困ったように霊夢と華扇を見比べ、針妙丸はあうんの肩の上で、前掛けの裾を握っていた。

 華扇は今度は『繕い帳』ではなく、針妙丸の膝の上の腰当てに目を落とした。

 

「針妙丸。それは霊夢の腰当てよね」

「うん。今朝縫ったとこ」

「右の端ばかり、ほつれているのね」

「そうなの。いつもここ。左は一回も縫ったことない」

 

 華扇は腰当てを手に取り、縫い目を指でなぞった。新しい縫い目の隣に古い縫い目があり、そのまた隣に、もっと古い縫い目がある。縫い目は右の端に固まって、扇のように重なっていた。

 

「霊夢。転がって避けるとき、いつもどちらへ転がるかしら」

「……知らないわよ。勘で転がってるんだから」

「右よ」

 

 華扇は腰当てを霊夢の膝の上に置いた。

 

「右の腰から地面に落ちて、右へ転がっている。だから、いつも右の端が擦れてほつれる。――縫い目のほつれが、霊夢の癖を示しているの」

 

 霊夢は腰当ての縫い目を見下ろした。

 

「相手が利口なら、いずれ覚えるわ。この巫女は、追い詰めると右へ逃げる、と」

「……そんな利口なモンスター、そうそう居ないわよ」

「大自然を侮らないで。未知多き大自然に飛び込み、そうそう居ないものに出会うのが、ハンターというお役目でしょう」

 

 華扇は湯呑みに手を伸ばし、霊夢の茶を一口飲んだ。

 

「針妙丸の帳面は、神社の家計簿であると同時に、霊夢の狩りの記録でもあります。どこを何針縫ったか。どの月に何度ほつれたか。読めば、霊夢がどんな狩りをしてきたか分かる」

 

 針妙丸が目を丸くした。

 

「……そんなつもりで付けてないよ」

「えぇ。だから値打ちがあるのよ」

 

 華扇は帳面を三冊重ね、針妙丸に返した。それから立ち上がる。

 

「さて。説教はここまで」

「やっと終わり?」

「説教は、ね。――ここからは修行です」

 

 霊夢は天井を仰いだ。

 


~博麗神社 狩具小屋~

 

――緊急物資の箱は、半分空だった。

 華扇は箱の蓋を開け、中身を一つずつ確かめていく。[回復薬]の瓶が二本。[解毒薬]が一本。携帯食が三つ。[閃光玉]が一つ。救難符の束は、まだ厚い。

 

 針妙丸が小屋帳を読み上げた。

 

「[回復薬]、残り二つ。先々月から減ってる。補充なし」

「補充しなさいよ」

「霊夢が買ってこないんだもん」

 

 霊夢は聞こえないふりをして顔を背ける。華扇は回復薬の瓶を一本、光に透かした。

 

「人里で買えば、一本いくらかしら」

「……三十文くらい」

「十本で三百文。針妙丸の繕い代の、ひと月分以上ね」

「だから買ってないのよ」

「では、作りましょう」

 

 華扇は瓶を箱に戻し、霊夢の方を振り向いた。

 

「[薬草]と、[アオキノコ*1]。どちらも神社の裏手から原野の縁にかけて、いくらでも生えているわ。採ってきて、ここで調合する。買わずに済めば、それは稼いだのと同じことです」

「……私が採るの?」

「霊夢が採るのよ。私は見ているだけ」

「見てるだけなら、華扇が採ればいいじゃない」

「貴女の修行ですから」

 

 華扇は狩具小屋の壁に掛かっていた採取袋を二つ外し、一つを霊夢に押し付けた。もう一つを、自分の肩に掛ける。

 

「針妙丸。調合の鉢と乳棒、どこにあるか分かるかしら」

「一番下の段の奥。去年から使ってないけど」

「洗っておいてもらえる?帰るまでに」

「……一針いくら、ってわけじゃないけど、いいよ。帳面には付けるからね」

 

 針妙丸はあうんの肩から棚へ飛び移り、一番下の段へ降りていった。

 


~博麗神社 狩具小屋~

 

――一番下の段の奥に、乳鉢が埋もれていた。

 針妙丸は、木箱と木箱の隙間に体を潜り込ませ、乳鉢の縁に手を掛けた。白い陶器の乳鉢は、針妙丸が丸ごと入れるほどの大きさがある。中には、去年の薬草の緑の滓が乾いてこびり付いていた。

 

「……うわ、ひどい」

「針妙丸さん、引っ張りましょうか」

 

 小屋の戸口から、あうんが覗き込んでいた。

 

「お願い。私じゃ持ち上がらないから」

 

 あうんが乳鉢と乳棒を抱え上げ、洗い場まで運ぶ。針妙丸はあうんの肩に飛び乗り、一緒に付いていった。

 洗い場の水は冷たかった。あうんが乳鉢に水を張り、針妙丸は鉢の縁に腰掛けて、小さな束子で内側の滓を擦り落としていく。乾いた滓は、なかなか落ちない。針妙丸は袖をまくり、鉢の底へ半分体を乗り出して擦った。

 

「……ねぇ、針妙丸さん」

 

 あうんが、遠慮がちに言った。

 

「どうして、霊夢さんの分も帳面に付けるんですか?お代は、取らないのに」

 

 針妙丸は、束子を動かす手を止めずに口を開く。

 

「数えないと、分からなくなるでしょ。どれだけ縫ったか」

「分からなくなったら、困るんですか?」

「うん、困るよ」

 

 針妙丸は、鉢の底の一番しつこい滓を、力を込めて擦った。

 

「今の私、この通り小さいからさ。荷物も持てないし、狩りなんて以ての外。霊夢の役に立ってるって、自分で言っても、誰も数えてくれないじゃない。……だから、自分で数えるの」

 

 あうんは、黙って針妙丸を見ていた。

 

「一針ずつ数えて、帳面に付けとけば、ちゃんと残るでしょ。――私がここに居て、仕事してるって」

 

 滓が、ようやく剥がれた。針妙丸は束子を置き、鉢の縁に座り直して、濡れた袖を絞った。

 

「……べ、別に。小人族の誇りの問題だから。大したことじゃないよ」

「大したことだと思います」

 

 あうんが真っ直ぐに言った。針妙丸は顔を背け、乳棒の方の汚れに取り掛かった。

 しばらく擦ってから、針妙丸はポツリと付け加えた。

 

「――帳面に付けない繕いも、一つだけあるけどね」

「え?」

「何でもない。忘れて」

 

 針妙丸は、それきり何も言わなかった。

 洗い場の向こう、母屋の縁側の一番端の、日の当たる板の上。そこには、何も置かれていなかった。

 


~博麗原野 神社の裏手の縁~

 

――神社の裏の林を抜けると、原野の縁に出る。

 朝露はもう乾き始めていた。なだらかな斜面に膝ほどの草が揺れ、ところどころに、崩れた石垣の跡が苔に埋もれている。斜面の下の方には、細い沢が一本、日の光を弾いて流れていた。

 華扇は斜面の途中で足を止め、草の間を指差した。

 

「霊夢。あれは?」

 

 霊夢は華扇の指の先を見た。

 草の陰に、縁がぎざぎざした緑の葉が、何枚も重なって生えている。

 

「[薬草]でしょう」

「どうして分かるの?」

「……見れば分かるわよ」

「見れば、ね。では、その隣のは」

 

 [薬草]のすぐ隣に、よく似た葉が生えていた。形も色も、ほとんど同じ。ただ、葉の裏が少しだけ白っぽい。

 霊夢は、二つの葉を見比べた。

 勘が、何も言わない。

 

「……同じじゃないの?」

「違うわ。そちらはただの雑草。煎じても苦いだけよ」

 

 華扇はしゃがみ込み、二枚の葉を一枚ずつ摘んで、霊夢の掌に載せた。

 

「揉んでごらんなさい」

 

 霊夢は言われた通り、二枚の葉を指で揉んだ。

 一枚はただ青臭いだけだった。だがもう一枚は、揉んだ途端にスッと鼻に抜ける涼しい匂いが立った。

 

「……こっちね」

「そう。それが[薬草]。葉の裏が白いのは、匂いが立たない雑草です」

 

 華扇は立ち上がり、斜面を見渡した。

 

「見るだけでは分からないものは、触って、嗅いで、確かめる。――勘で分からない時の、見立ての仕方です」

 

 霊夢は、しばらく掌の葉を見ていた。

 それから黙って、薬草を摘み始めた。

 一枚ずつ揉んで、匂いを確かめ、袋に入れる。華扇は少し離れた岩に腰を下ろし、その様子を眺めていた。時々、霊夢が雑草を袋に入れかけると、華扇がそれとなく小さく咳払いをする。霊夢は舌打ちをして、葉を捨てる。

――頭の上を、大きな影が一つ横切った。

 見上げると、一羽の大鷲が、原野の上をゆっくりと輪を描いて飛んでいた。華扇の大鷲、久米だ。久米は二人の真上で一度だけ羽ばたき、それから斜面の下の沢の方へ滑っていった。

 

「久米は、何をしてるの?」

「見張りよ。この辺りに大きなものが居ないか。……居たら、戻ってきて鳴くわ」

「便利ね」

「便利のために連れているのではありません。あの子が、空を飛びたがるから連れてきたの」

 

 華扇はそう言って、また霊夢の手元に目を戻した。

 霊夢は[薬草]を揉みながら、ふと訊いた。

 

「……華扇はさ。狩る時、迷わないの?」

「迷うわ。毎回ね」

 

 華扇は、即座に答えた。

 

「見て、導いて、追い払って、捕まえて。それでも駄目なら、討つ。――その順番を、毎回一つずつ確かめる。確かめているうちに、迷いが減っていくの。消えはしないけれど」

「面倒ね」

「えぇ、面倒よ。でも――霊夢の勘は、その面倒を一足飛びにして越えてしまう。それが強みであり、同時に危ういところよ」

 

 霊夢は答えず、[薬草]を袋に入れた。

 華扇も、それ以上は言わなかった。

 袋が半分ほど埋まった頃、霊夢は沢の方へ降りていった。

 沢の縁の、湿った倒木の陰。そこに、青い傘のキノコが群れて生えている。[アオキノコ]だ。

 霊夢はしゃがみ込み、一本目のキノコに手を伸ばした。

 その手が、止まった。

 

――土が掘り返されている。

 

 倒木の周りの土が、あちこちで捲れ上がっていた。黒い土の上に、蹄の跡がいくつも重なっている。千切れたキノコの傘が、泥に混じって散らばっていた。

 霊夢は、蹄の跡の一つに指を当てた。

 縁はまだ崩れていない。土は湿って柔らかい。

 

「華扇」

「えぇ。見えているわ」

 

 華扇はいつの間にか、霊夢の後ろに立っていた。蹄の跡を見下ろし、それから沢の上流の藪へ目を移す。

 

「蹄が二つに割れているわね。大きさは、子供の掌くらい。……ブルファンゴでしょう。一頭か、二頭」

「キノコを掘りに来たのね」

「[アオキノコ]は、あの子たちの好物だもの」

 

 華扇は藪の方へ耳を傾けた。

 藪の奥で、ガサリと葉が鳴った。続けて、鼻を鳴らす音。ブヒ、ブヒ――と短く、苛立ったような鳴き声。

 

「……居るわね」

 

 霊夢が、背の太刀の柄に手を掛ける。

 その手首を、華扇がそっと押さえた。

 

「霊夢。得物を抜く前に、見なさい」

「見てる暇があったら――」

「暇はあるわ。あの子は、まだこちらを見ていないもの」

 

 華扇の声は静かだった。

 藪が割れ、一頭の小型モンスターが鼻先を突き出した。

 茶色の剛毛に覆われた、猪だった。人の腰ほどの高さの体に、口の両脇から反り返った白い牙。鼻を地面に擦り付けながら、沢の縁へ出てくる。二人の方は見ていない。鼻先が向いているのは、倒木の陰に残ったアオキノコの群れだった。

 出て来たブルファンゴは、一頭だけだった。

 

「……一頭ね」

「えぇ、若い雄よ。牙がまだ短い」

 

 華扇は、ブルファンゴの耳を見ていた。

 

「耳が前を向いている。キノコしか見ていないの。苛立っているのは、お腹が空いているから。――怯えてもいないし、怒ってもいない」

「分かるの?」

「長く動物と暮らしていると、ね。言葉が通じなくても、耳や尻尾は嘘を吐かないわ」

 

 華扇は、霊夢の手首から手を離した。

 

「さて、霊夢――どうする?」

 

 霊夢は、ブルファンゴを見た。

 キノコを掘っている。二人には気付いていない。気付けば、突っ込んでくる。ブルファンゴは、目の前の敵に真っ直ぐ突進する小型モンスターだ。

 

「……狩るほどのことじゃないわね」

「では?」

「追い払うわ。キノコは、半分残してやる」

 

 華扇が、ほんの少しだけ口元を緩めた。

 霊夢は太刀を抜かず、足元の小石を一つ拾った。ブルファンゴの鼻先から少し外れた、藪の手前の地面へ投げる。

 小石が草に落ち、カサリと鳴った。

 ブルファンゴの耳が、ピクリと動いた。鼻先を上げ、小石の落ちた藪の方を向く。

 霊夢はもう一つ小石を拾い、今度は藪の奥へ投げた。

――カサリ。

 ブルファンゴは、藪の奥へ一歩踏み出した。また一歩。鼻を鳴らしながら、音のした方へ。

 霊夢は三つ目の小石を、さらに奥へ投げた。

 ブルファンゴは、藪の奥へ消えていった。ガサガサと葉を分ける音が、だんだん遠ざかる。やがて、何も聞こえなくなった。

 霊夢は残った[アオキノコ]の半分を、袋に入れた。

 華扇が岩の上から声を掛けた。

 

「どうして、半分残したの?」

「全部採ったら、明日もここを掘り返しに来るでしょう。キノコが無ければ、次は神社の裏の畑の方まで降りてくるかもしれない」

「……それは、勘?」

「……見てから出た勘よ」

 

 霊夢はそっぽを向いて答えた。

 華扇は、何も言わなかった。ただ、少しだけ満足げに頷いた。

 


~博麗神社 裏の林~

 

――帰り道の林は、木漏れ日がまだらに揺れていた。

 霊夢は膨らんだ採取袋を肩に掛け、華扇の少し前を歩いていた。袋の中で、[薬草]と[アオキノコ]が擦れる音がする。

 

「霊夢」

 

 華扇が、後ろから声を掛けた。

 

「針妙丸の前掛け。あれは、霊夢の防具の端切れよね」

「……そうよ。工房で余ったのを、小傘が取っておいたの」

「霊夢が渡したの?」

「渡したっていうか、置いといただけよ。小屋の棚に。……いつの間にか前掛けになってた」

 

 華扇はしばらく黙って歩いた。

 

「指ぬきも、同じ竜の鱗ね」

「……よく見てるわね、本当」

「見るのが修行ですから」

 

 霊夢は足を止めずに、肩越しに言った。

 

「別に、何かのつもりで置いたわけじゃないわよ。捨てるのが勿体なかっただけ」

「えぇ。分かっているわ」

 

 華扇の声は、柔らかかった。

 

「針妙丸が霊夢の分を『家賃代わり』と書くのも、きっと同じよ。何かのつもりで書いているわけではない。ただ、そういう間柄なのでしょう」

 

 霊夢は答えなかった。

 林の出口に、神社の屋根が見えてきた。狩具小屋の戸が開いていて、中で小さな影が動いている。洗い終えた乳鉢を、あうんが縁側へ運んでいくところだった。

 

「……華扇」

「何かしら」

「今日の修行、いつ終わるの」

「空き瓶の数だけ、回復薬が出来上がったら」

「何本あるのよ」

「さぁ。今頃、針妙丸が数えてくれているわ」

 

 霊夢は空を仰いだ。

 華扇はそんな霊夢の背中を見ながら、小さく笑った。

 


~博麗神社 縁側~

 

――縁側に、乳鉢と乳棒が並んでいる。

 針妙丸が洗っておいた乳鉢は、陶器の白がまだ濡れて光っていた。その隣に、霊夢の採ってきた薬草とアオキノコが、山になって積まれている。

 華扇は縁側に正座する。

 

「では、始めましょう」

 

 華扇は[薬草]を一掴み乳鉢に入れ、乳棒で軽く押し潰した。青い汁が滲み出し、涼しい匂いが縁側に広がる。そこへ[アオキノコ]を千切って加え、また潰す。乳棒が鉢の底を擦る音が、ゴリ、ゴリ、と一定の調子で続く。

 

「力を入れすぎないこと。潰しすぎると、苦みが出るわ」

「華扇がやるなら、私は見てるだけでいいでしょう」

「一鉢目は私。二鉢目からは霊夢よ」

 

 霊夢は溜め息を吐いて、華扇の手元を覗き込んだ。

 華扇の手つきは迷いがなかった。乳棒を回す速さは一定で、時々手を止めて、鉢の中の色を確かめる。青い汁が、少しずつ深い緑に変わっていく。

 華扇は潰した薬草を布に包み、小さな鍋の上で絞った。緑の汁が、細く鍋に落ちる。それを火鉢にかけ、ゆっくりと温める。

 針妙丸が、棚から運んできた空き瓶を縁側に並べた。瓶は針妙丸の背丈よりも大きい。一本ずつ、抱えるようにして転がしてくる。

 

「瓶は十本あったよ。でも、一本は目立つ罅が入ってたから除けといた」

「ありがとう。九本ね」

 

 華扇は鍋の汁を匙で掬い、色と匂いを確かめてから、瓶に注いだ。透き通った緑の液が、瓶の半分ほどまで満ちる。

 

「はい、一本目。――次は霊夢よ」

 

 華扇は二本目の瓶に栓をしながら、乳鉢を覗き込んだ。

 

「回復薬は、[薬草]と[アオキノコ]だけでも作れるわ。でも、ここに少しだけ[蜂蜜]を加えると、効き目が強くなる」

「[蜂蜜]なんて、神社にはないわよ」

「でしょうね。だから今日は作らない。蜂蜜を採りに行くのは、また今度の修行の時にでも」

「……また今度があるの?」

「ありますよ。蜂の巣がある木は、山にいくらでもあるもの」

 

 霊夢は心の底から嫌そうな顔をした。

 華扇は霊夢の顔を見てクスリと笑い、三本目の瓶に汁を注いだ。

 

「霊夢。薬を自分で作ると、一本一本の重さが変わるのよ」

「重さ?」

「買った薬は、いざという時に惜しまずに飲める。でも、自分で葉を揉んで、鉢で潰して、火にかけて作った薬は――飲む前に、少しだけ考えるようになる。本当に今、これを飲むべきか、とね」

「……飲むべき時に考えてたら、死ぬわよ」

「えぇ。だから、飲むべき時が来る前に、考えておくのです。どこまで踏み込むか。どこで退くか」

 

 華扇は瓶を光に透かし、色を確かめる。

 

「――それも、勘に依らない見立ての一つよ」

 

 霊夢は乳棒を受け取った。

 薬草を入れ、押し潰す。華扇がしたのと同じように、乳棒を回す。ゴリ、ゴリ、と音がする。

 

「速いわ」

「……」

「もう少しゆっくり。鉢の縁まで、大きく回すの」

 

 霊夢は黙って、乳棒を回す手を緩めた。

 しばらくすると、華扇がまた口を開いた。

 

「霊夢は、[薬草]を潰すときも右回りね」

「……それが何よ」

「何でもないわ。ただ、癖というのはどこにでも出るものだと思って」

 

 霊夢は乳棒を止め、華扇を睨んだ。華扇は涼しい顔で、針妙丸が運んできた瓶に栓をしていた。

 霊夢は、乳棒を左回りに回し始めた。

 ぎこちない。鉢の縁に乳棒が当たり、カチンと音が鳴る。汁が少し跳ねて、霊夢の袖に緑の染みが付く。

 

「……やりにくいわね」

「慣れていないからよ」

「狩りでも、そうってこと?」

「さぁ、どうかしら」

 

 華扇は答えなかった。

 霊夢は左回りのまま乳棒を回し続けた。

 


~博麗神社 軒先~

 

――昼過ぎ、軒先に小さな影が二つ戻ってきた。

 紫苑と、オトモのアイルーのオコゲだった。紫苑は着古したパーカーの裾を泥で汚し、オコゲは背中に木の実を詰めた小さな袋を背負っている。

 

「……ただいま」

 

 紫苑は軒先の定位置にペタリと座り込んだ。

 

「お帰り。女苑の依頼は?」

「終わったよ。三件。……女苑が、全部の報酬を持ってっちゃった」

「いつものことね」

「うん。いつものこと」

 

 紫苑はそう言って膝を抱え、お腹がくぅと鳴る。紫苑はお腹を押さえ、困ったように笑みをこぼす。

 

「……お腹すいた」

「台所に、昨日の残りのご飯があるわよ」

「いいの?」

「天子が置いてった干物もあるわ。あんたが食べなさい」

 

 紫苑の顔が、パッと明るくなる。

 

「天人様、来てたの?」

「三日も居たわよ。あんたが居ない間に」

「……そっか」

 

 紫苑は少しだけ寂しそうに笑い、それから台所の方を見た。

 それから、縁側に並んだ瓶に目を留めて、目を瞬かせた。

 

「それ、何?」

「[回復薬]よ。作ってるの」

「霊夢が?」

「……私が」

 

 紫苑は、しばらく霊夢の顔を見ていた。それから、ふにゃりと笑った。

 

「珍しいね」

 

 オコゲが、背中の袋を下ろした。袋の口を開け、中から木の実を二つ取り出す。そして、縁側の端の、針妙丸の方へ、そろそろと近付いていった。

 針妙丸は縁側の端で、空き瓶に栓を詰めていた。オコゲが近付いてくると、針妙丸は手を止め、背筋を伸ばす。

 オコゲは、針妙丸から猫の一歩分だけ離れた所で止まった。木の実を二つ、縁側の板の上に並べる。

 

「……この前の、肩紐の分ニャ」

 

 小さな、ボソボソとした声だった。

 

「オコゲ、ちゃんと払うニャ。紫苑さんの分も、ちゃんと」

 

 針妙丸は、木の実を見下ろした。

 それから帳面を引き寄せ、一行に印を付けた。

 

――『オコゲ、肩紐、五針。木の実二つ。代金として受け取り』

 

「受け取り確認、ニャ」

 

 オコゲはホッとしたように耳を寝かせた。それから紫苑の膝の上に戻り、丸くなる。

 華扇がその様子を黙って見ていた。

 

「……あの子は、ちゃんと払うのね」

「オコゲはね、いつも払うよ。払うものは大抵木の実だけど」

 

 針妙丸は木の実を前掛けのポケットに仕舞った。

 

「お金じゃなくても、お仕事の対価を払ってくれるなら、それでいいの」

 

 華扇は霊夢を見た。

 霊夢は聞いているのか聞き流したのか、乳棒を回す手を止めなかった。左回りに、ゴリ、ゴリと音が鳴る。

 


~博麗神社 境内~

 

――夕方、鳥居の下に衣玖が現れた。

 

「――こんにちは、霊夢さん。総領娘様より、お届け物です」

 

 衣玖は懐から布の包みを取り出した。小さいが、ずっしりと重そうな包みだった。

 

「三日分のお食事代と、神社の柵の修理代の残りです。総領娘様が、必ず今日の内に届けるようにと」

「……本当に払いにきたのね」

「天人は借りを作らないそうですので」

 

 霊夢は包みを受け取った。重い。

 包みの結び目に、紙切れが一枚挟まっている。霊夢は紙を広げた。

 天子の字で、一行だけ書いてあった。

 

――『干物の分は引かなくていいわ』

 

 霊夢は紙を畳み、懐に仕舞った。

 

「……ありがとう、って言っといて」

「承知いたしました。総領娘様は、きっとお喜びになりませんが」

「喜ばないの?」

「礼を言われるのは、苦手でいらっしゃいますので」

 

 衣玖はそれだけ言うと、一礼して、来た時と同じように音もなく去っていった。

 縁側で、華扇が包みを見ていた。

 

「霊夢。それは」

「天子の柵代と飯代よ」

「――それは、賽銭ではありませんよ」

「分かってるわよ」

 

 霊夢は包みを縁側に置き、しばらく黙っていた。

 それから、針妙丸の方を向いた。

 

「針妙丸。帳面、貸して」

「……え?」

「繕い帳。今朝の分」

 

 針妙丸は戸惑いながらも、帳面を霊夢の方へ押し出した。

 霊夢は帳面を開き、今朝の行を探した。

 

――『霊夢、腰当て右、七針。家賃代わり』

 

 霊夢は包みを解き、中から銭を七枚取り出した。それを、針妙丸の目の前の板の上に、一枚ずつ並べる。

 

「七針。一針一文でしょう」

 

 針妙丸が、目を丸くした。

 

「え、でも、霊夢のは家賃代わりって――」

「今日の分はいいのよ。天子のお金だし」

 

 霊夢は筆を取り、今朝の行の『家賃代わり』の四文字に、細く一本線を引いた。その横に、霊夢の字で書き添える。

 

――『七文、支払い済み』

 

 霊夢の字は大きく、少し曲がっていた。針妙丸の細かい字の隣で、やけに目立つ。

 

「……べ、別に」

 

 針妙丸は、帳面から目を逸らした。

 

「払ってくれなくても、ちゃんと縫うのに」

「知ってるわよ」

 

 霊夢は帳面を閉じ、針妙丸に返した。

 

「だから払うのよ。――珍しく律儀な天人のお金で、だけど」

 

 針妙丸は帳面を両腕で抱え、しばらく黙っていた。それから、前掛けのポケットに、銭を一枚ずつ仕舞い始めた。七枚。数えながら、ゆっくりと。

 華扇は、湯呑みを両手で包んだまま、その様子を眺めていた。

 だが、何も言わなかった。

 


~博麗神社 鳥居~

 

――日が沈む頃、華扇は帰り支度を始めた。

 縁側には、緑の液を満たした瓶が九本並んでいる。そのうち二本は、少しだけ色が濁っていた。霊夢が左回りで潰した鉢の分だ。

 

「濁ったのは、霊夢が自分で使いなさい」

「効くの?」

「効くわ。少し苦いだけで、[回復薬]そのものの効果は変わらないわ」

 

 霊夢は顔をしかめた。

 

「――待って、華扇」

 

 縁側の端から、針妙丸が帳面を抱えて駆けてきた。あうんの肩に飛び乗り、華扇の目の高さまで運んでもらう。

 

「――乳鉢と乳棒の洗い。付けといたから」

 

 針妙丸は帳面を開き、今日の頁の一番下の行を指差した。

 

――『華扇、乳鉢と乳棒の洗い』

 

 行の終わりは、まだ空いている。

 

「お代、何にする?」

 

 華扇は目を瞬かせ、それから、声を立てて笑った。

 

「そうね。……次に来る時、人里の団子を持ってくるわ。針妙丸の分と、あうんの分と」

「霊夢の分は?」

「霊夢は、修行が済んだら」

 

 針妙丸は、空いていた行の終わりに書き込んだ。

 

――『団子(後払い)』

 

「分かった。忘れたら、承知しないからね」

「えぇ。忘れないわ」

 

 華扇は鳥居の下で振り返り、境内を見渡した。縁側で瓶を箱に詰めている針妙丸と、それを手伝うあうん。軒先で丸くなって眠る紫苑とオコゲ。

 そして、賽銭箱。

 華扇は、懐から銭を一枚取り出し、賽銭箱へ投げ入れた。

 チャリン、と小さな音がした。

 

「……何よ、急に」

「今日の茶菓子代よ」

「茶菓子、出してないけど」

「霊夢のお茶を、三杯飲んだわ」

 

 華扇は微笑み、石段を下りていった。

 霊夢は、賽銭箱の前に立った。

 箱の中を覗き込む。底に、銭が一枚。それから、いつ誰が入れたのか分からないボタンが一つ。

 霊夢は懐から帳面――自分の、茶の染みだらけの『神社の帳面』を取り出した。今日の頁を開き、筆を取る。

 少し考えてから、書いた。

 

――『賽銭 一文』。

 

 それから、その下に、もう一行。

 

――『繕い代 七文(払い)』

 

 霊夢は二行を見比べ、溜め息を吐いた。

 帳面を閉じると、狩具小屋の方から、針妙丸の声が聞こえた。

「霊夢ー!腰当て、乾いたよー!」

「今行くわよ」

 

 霊夢は帳面を懐に仕舞い、狩具小屋へ歩き出した。

 右の腰に手を当てる。そこには、今朝縫ったばかりの、七針の縫い目があった。

 

――次は、左へ転がってみるか。

 

 夕暮れの境内に、霊夢の足音だけが響いていた。

*1:
青い傘のキノコ。薬草と合わせて調合すると回復薬になる。

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