東方竜狩郷 ~幻想郷の狩人少女達~   作:幻想入りしたガンサー

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第一話:泡の舞う渓

~博麗神社 狩具小屋~

 

――狩具小屋の棚の一段に、午後の陽が斜めに射し込んでいる。

 伏せたお椀の作業台の前で小人――針妙丸が膝立ちになっている。目の前に横たえてあるのは、彼女の背丈の何倍もある太刀の柄だ。古い柄巻きを解き終え、新しい糸を一巻き、また一巻きと締めていく。

 泡狐竜の端切れで縫った前掛けが、糸を引くたびに小さく揺れた。

 太刀は、鞘から抜かれて棚の奥に寝かされている。刀身は薄紅と淡い青が溶け合った色で、光の当たる角度によって、泡の膜のような虹の縞がゆっくりと流れた。鍔にも鞘にも、丸い泡の文様が散らしてある。柄の房飾りだけが、使い込まれて少し色が褪せていた。

 針妙丸にとっては、背丈の何倍もある刃だ。柄巻きを解くだけで半日、巻き直すのにもう半日。それでも、この太刀の繕いは誰にも譲らない。

 

「……変なの」

 

 針が止まる。

 縁側から脚を投げ出していた霊夢が、湯呑みを持ったまま振り向いた。

 

「何がよ」

「この柄。巻きはボロボロなのに、下の木が全然汚れてない。泥も血も、染みてないの」

 

 針妙丸は解いた糸の束を持ち上げてみせる。擦り切れて毛羽立ってはいるが、黒ずみが無い。指でしごくと、かすかに花のような匂いがした。

 

「普通は染みるでしょ。萃香の槌の柄なんか、真っ黒なんだから」

「あぁ、それ」

 

 霊夢は茶をすする。

 

「[泡狐竜の滑液]よ。鞘の内側に塗ってあるの。汚れを勝手に落とすんだって、小傘が」

「滑液?」

「ヌルヌルしたやつ。泡の元」

 

 針妙丸はしばらく糸を眺めていた。それから、棚の上から霊夢を見下ろす。霊夢を見下ろせる高さは、この棚の一段しかない。

 

「ねえ。これ、どこで獲ったの」

「どこって」

「泡狐竜。あんた、狩りの話は全然しないでしょ。私、毎日この刀を繕ってるのに、元の竜のこと何も知らないんだけど」

「別に面白い話じゃないわよ」

 

「面白いかどうかは、私が決めるの」

 霊夢は面倒臭そうに溜め息を吐いた。境内の向こうで、あうんが箒を動かす音がする。萃香は昼寝、魅魔は留守。話をそらす相手は、今日は居ない。

 

「……川がね」

 霊夢が湯呑みを置く。

 

「泡だらけになった夏があったのよ」

 


~中央会館~

 

―――その夏、人里の北を流れる川に、白い泡が流れてきた。

 最初に気付いたのは、上流に筌を沈めている漁師達だ。朝に上げた筌はどれも空で、竹の目には透き通った液がべったりと絡みついている。三日目には水車小屋の水路が泡で詰まり、四日目には上流の岩場で漁師が一人足を滑らせて、腕を折った。

 水車小屋の主の話では、朝、水路の取り入れ口に、白い泡が畳一枚ほども溜まっていたという。棒で突くと泡は崩れたが、崩れた泡の下の板がぬるぬると滑り、足を取られて水路に落ちかけた。泡は昼過ぎには消えたが、板のぬめりは何度洗っても取れない。その代わり、苔も汚れも一緒に落ちて、水路は前より綺麗になった。

 

「綺麗になったのはいいが、立っていられねぇんじゃ仕事にならん」

 

 主は、会館の受付でそうぼやいたそうだ。

 ここまでは、会館の帳面にもよくある話だ。里のハンターが二度出て、二度とも竜を上流へ追い返した。

 そして二度とも、竜は三日と経たずに戻ってきた。

 

狩猟依頼:泡狐竜一頭
目標:討伐
地点:人里北の川、玄武の沢より下る渓
備考:追い払い二度。いずれも三日以内に戻る

 

「筌を自分の餌場だと覚えたんだろう。――追うだけでは、もう済まん」

 

――紙に朱の判を押したのは慧音だった。受付の台の向こうで、小鈴が紙を掲示板の一番上に留める。

 その前に立っていたのは霊夢。

 この頃の霊夢の背中にあるのは、工房から借りた鉄の太刀だ。刃は上等だが、竜の素材は一つも入っていない。防具も、巫女服の上から革を何枚か当てただけ。

 

「その依頼、私が請けるわ」

「承ります。――霊夢さん、一人ですか?」

「玄爺を連れていくわ。あっちの沢は、玄爺の庭みたいなものだから」

 

 受注書に名前を書きなぐり、霊夢は会館を出た。その足で、裏手の工房の戸口を覗く。

 炉の前で金槌を振っていた小傘が、霊夢の背の太刀を見て眉を下げる。壁に立て掛けた一つ目の唐傘まで、どこかしょんぼりして見えた。

 

「その太刀、そろそろ返してほしいなぁ。貸してからもう三月だよ」

「じゃあ、代わりを打ってよ」

「素材を持ってきたらね」

 

 小傘は掲示板の方を顔で示した。もう依頼の中身を知っているらしい。

 

「泡狐竜なら、いい太刀になるよ。尻尾の毛はなるべく傷めないでね。それと、滑液を一袋。――あ、これ持っていきなよ」

 

 投げ渡された小瓶が二つ。片方は緑の[回復薬*1]、もう片方は濁った白い液だった。

 

「何これ」

「[消散剤*2]。泡を浴びて立てなくなったら、頭から被って。――竜が居る川で川に飛び込んで洗うより、ずっとマシだから」

 


~玄武の沢 下流~

 

――渓の朝は、水の匂いがした。

 夜明けの霧が、まだ川面に低く残っている。岸の岩の上に、甲羅に革帯を巡らせた大きな亀が一頭、首を伸ばして降り立った。

 人里の北を流れる川は、ここまで遡ると姿を変える。両岸から苔むした岩が迫り出し、水は岩の間を白く砕けながら下ってくる。妖怪の山の麓から流れ出す沢の、一番下の方だ。岸の柳は枝を水面すれすれまで垂らし、その先が流れに引かれて揺れていた。

 夏だというのに、水辺の空気はひやりと冷たい。霊夢は袖をまくり直した。

 博麗神社の古くからの同居人にして協力者、空を飛ぶ老いた亀『玄爺』だ。甲羅の背負い具には、砥石と回復薬、[シビレ罠]、それに小傘の小瓶が括り付けてある。

 

「御主人様。ここから先が、あの竜の通り道ですじゃ」

「その呼び方、やめてって言ってるでしょ」

「うーむ、それは難儀な要望で。昔からこう呼んでおりますのでなぁ」

 

 霊夢は答えず、背負い具から砥石を抜いた。借り物の太刀に二度、三度と当てる。刃の具合を確かめ、鞘に戻す。風は上流から下りてくる。こちらの匂いは竜へ届かない。

 岸の岩に手を突いた所で、霊夢の指が止まった。

 ヌルリとする。苔ではない。指を離すと、透き通った液が糸を引いた。鼻を寄せると、川の匂いに混じって、花のような甘い匂いがする。親指と人差し指で擦り合わせると、細かい泡がプツプツと立った。

――乾いていない。

 

「今朝ね、これ」

「うむ。単なる水ならば、日が当たれば半刻で乾きますからな」

 

 玄爺が首を巡らせ、岩の並びを目で辿る。ぬめりは一つの岩だけではなかった。岸に沿って、水際の岩ばかりが点々と光っている。濡れた岩から濡れた岩へ、何かが滑るように渡っていった跡だ。

 少し上の淀みには、白い泡の塊が浮いていた。

 早瀬で立つ泡なら、すぐに弾けて消える。この泡は消えない。拳ほどの泡が十も二十も寄り集まって、流れに逆らうように岸の陰に溜まっている。朝日が差すと、泡の膜に虹色の縞がゆっくりと回った。

 霊夢が何の気なしに指を伸ばす。

 

「――お止しなさい」

 

 玄爺の声が、珍しく低かった。

 

「あの竜は、自分の撒いた泡が割れる音を頭のヒレで聞いております。割(・)れ(・)た(・)所(・)に(・)何(・)か(・)が(・)居(・)る(・)、とすぐに分かるのです。下流で追い返された時も、皆そうやって先に見つかった」

「……鳴子みたいなものね」

 

 霊夢は指を引っ込めた。泡の塊を避けて、岸の砂地へ下りる。

 砂地には足跡があった。

 指は四本。爪の先が砂を深く抉っている。足の幅に比べて爪が長い。滑る体を、爪で地面に引っ掛けて止めているのだ。歩幅は大きくない。這うように、腹を擦りながら進んだ筋が、足跡の間に一本通っている。その筋の縁には、乾きかけた泡の痕が白く残っていた。

 足跡を目で追うと、妙なことに気付く。

 

――竜は、日の当たる乾いた砂地を真っ直ぐには横切っていない。岸に沿ってわざわざ遠回りをし、柳の影の湿った所、水しぶきの掛かる所ばかりを選んで進んでいる。どうしても乾いた砂を渡らなければならない所では、腹を擦った筋が太く、泡の痕が濃くなる。

 

「水から離れたくないのね」

「体が乾くのを嫌うのですじゃ。あの泡は、体を湿らせておくための物でもありますからな」

「じゃあ、昼の間はどこか日陰の水場に籠もってるってことね」

 

 霊夢は川上を見上げた。両岸が狭まり、木々が覆い被さるように茂っている。その奥から、低い水音が響いてきた。

 川上へ数歩進んだ所で、霊夢はもう一度足を止めた。

 岸から張り出した崖の、人の背丈の三倍ほどの高さ。そこに、爪で引っ掻いたような傷が四本、斜めに走っている。傷の周りの岩肌だけが、ぬめりでうっすらと光っていた。崖の上の松の枝には、紫の毛が一房、引っ掛かって風に揺れている。

 

「……あそこまで跳んだの?」

「跳べますな。あの竜は、海竜の仲間でも一番の跳ね上手。崖を一跳びで上がって、上から降ってくるのじゃ」

 

 霊夢は崖を見上げ、それから足元の砂地を見下ろした。下から追い詰めても、竜は上へ逃げる。上から回り込んでも、竜は跳んで頭の上を越えていく。

 

――袋小路に追い込む、ってやり方は駄目ね。

 

 追い込むのではなく、竜が自分から足を止める所で待つ。泡を立てて、のんびりしている所で。

 足跡の脇に、壊れた筌が転がっていた。

 漁師が沈めていた物だろう。竹の目が内側から押し広げられ、口の所が大きく裂けている。中は空だ。周りの石の上に、魚の鱗が銀色に散らばっている。

 

――骨が無い。

 

 熊や狼なら、頭や骨を食い残す。ここには鱗しか落ちていない。暴れる魚から剥がれた鱗だけだ。

 

「丸呑みね」

「顎が、蛇のように横へ開くそうです。大きな鯉でも一口だとか」

 

 霊夢は筌を拾い上げ、裂け目に絡んだぬめりを見た。こちらも乾いていない。けれど、川上へ向かう足跡の方が新しい。下流で食べ、上流の寝床へ戻った。明日の朝もまた、ここへ来る。

 筌の竹の割れ目に、何かが引っ掛かっていた。

 爪の先ほどの、透き通った鱗だ。表が細かく波打っていて、光にかざすと水晶のように煌めく。その隣に、濃い紫の毛が一筋。指で撫でると、硬い。けれど、指先のぬめりが染みた所から、絹のように柔らかく変わっていく。

 

「[泡狐竜の毛]と鱗ですな。泡を吸うと、手触りが変わるのです」

「知ってる。小傘が欲しがってたやつね」

 

 霊夢は鱗と毛を懐紙に包み、袂に入れた。

 足跡は、木々の暗がりの奥へ続いている。

 

~玄武の沢 滝壺~

 

――上流へ進むほど、川の音が変わっていった。

 早瀬のざわめきが遠のき、代わりに腹へ響くような低い音が近付く。両岸の岩が高くなり、木々の枝が頭の上で重なり合った。日差しが細い筋になって、川面に落ちている。

 鳥の声が無い。

 下流ではうるさいほど鳴いていた河原の鳥が、ここでは一羽も見当たらない。岸の浅瀬に、小さな魚の影も無い。水だけが、変わらずに流れている。

 

「玄爺、上から見て」

「承知しました。儂は尻尾の届かない高さに居りますよ」

 

 玄爺が音も無く浮き上がり、木々の梢の上へ消えた。

 霊夢は岸の岩を渡る。足は水際の濡れた岩に置かない。乾いた岩から乾いた岩へ、ぬめりの無い所だけを選ぶ。届かない所は、爪先を浮かせて飛び越えた。

 岩の上には、ところどころ白い泡の痕が残っていた。乾いて薄い膜になり、踏むとパリパリと割れる。一つ、二つ、三つ。痕は少しずつ新しくなり、やがて乾ききらない泡が岩の窪みに溜まり始める。

 空気の匂いも変わった。水の匂いと苔の匂いの奥に、あの花のような甘い匂いが混じっている。進むほどに濃くなり、喉の奥に甘さがまとわりつく。

 川面に、霧が厚くなっていく。

その時、目の前を何かがフワリと横切った。

 

――泡だ。

 

 一つではない。木々の間の薄暗がりに、大小の泡が無数に浮かんでいる。地面から湧いた泡が風に乗り、ゆっくりと昇っていく。木漏れ日を受けて、どれも虹色に光っていた。泡は少しずつ漂いながら、決まった場所に留まっている。巣の周りに張った、見えない網のようだった。

 霊夢は息を詰め、宙に浮いた。

 泡と泡の隙間を、体を横にしてすり抜ける。袖の先が一つの泡を掠めそうになり、腕を引いた。泡が揺れ、また元の場所へ戻る。幸い割れなずにすり抜ける。

 しばらくして、ようやく木々が切れた。

 

――開けた先は滝壺だった。崖の上から細い滝が幾筋も落ち、白い霧を上げている。滝壺の水は深い青で、その周りを苔むした平たい岩が囲んでいた。

 その岩の一枚の上に――竜が寝そべっていた。

 獣のように四本の脚で腹を浮かせた、すらりとした体。白に近い淡い色の鱗が、霧に濡れて真珠のように光っている。胸と脚、それに体と同じほど長い尻尾を、濃い紫の毛が覆っている。頭と背からは、花弁のような大きなヒレが幾枚も開いている。ヒレの色は淡い桃色。

 

――『泡狐竜:タマミツネ』

 

 竜は、尻尾の手入れをしていた。

 長い尻尾を体の前に巻き付け、前脚で毛を擦る。擦るたびに、毛の間から白い泡がムクムクと湧いた。泡は膨らんで毛から離れ、膨らんで霧の中へフワリと昇っていく。竜は細い目を半ば閉じ、気持ち良さそうに喉を鳴らした。

 やがて、竜は首を滝壺へ伸ばした。

 水面が裂ける。首が水から上がった時、顎の端から大きな魚の尾がはみ出していた。顎が横へ開き、魚が尾ごと喉の奥へ消える。噛む音は一つもしなかった。

 霊夢は岩陰に身を伏せ、竜の体を見た。

 大きい。頭から尻尾の先まで、人の背丈の十倍近い。ヒレは大きく、色の縁取りがくっきりしている。若い竜ではない。右の脇腹に、真新しい浅い傷が二筋。下流のハンター達が付けた物だろう。傷はもう塞がりかけていた。

 

――あの子達、逃がしたんじゃなくて、逃げられたのね。

 

 尻尾が、岩の苔を撫でる。それだけで苔が泡にまみれ、滑らかに光った。竜の周りの岩は、どこもかしこも同じように泡で濡れている。

 滝のしぶきが一滴、竜の頭の近くを漂う泡に当たった。

 泡が弾ける。

 その瞬間、竜の頭のヒレがピクリと立った。花弁のようなヒレが、音のした方へ向きを変える。竜は首を半分だけ擡げ、霧の向こうをじっと見た。しばらくして何も来ないと分かると、ヒレはまたゆっくりと寝て、竜は尻尾に顎を乗せた。

 

――本当に、泡で聞いてるのね。

 

 霊夢は自分の足元を確かめた。岩陰の隙間にも、小さな泡が二つ三つ溜まっている。ここで一つでも割れば、竜はこちらを向く。

 竜はうとうとし始めていた。細い目が閉じかけ、尻尾の先だけが時々ピクリと動く。泡に包まれ、霧に濡れ、満腹で眠る。人の筌から獲った魚で膨らんだ腹が、呼吸に合わせてゆっくりと上下していた。

 綺麗な竜だ――と霊夢は思った。思っただけで、口には出さなかった。

 ここは竜の土俵だ。

 頭の上の梢がかすかに揺れ、玄爺の声が降りてきた。

 

「御主人様。辺りに他の竜は居りません。ただ、あの岩の周りは泡の海ですよ。足を取られたら、尻尾が来ます」

「分かってる。……でも、あの子が一番油断してるのも、あの岩の上でしょ」

 

 霊夢は、竜の足元を見ていた。

 泡を立てている間、竜の前脚の下から、透き通った液がポタポタと滴っている。滑るための液だ。竜はその液の上で、爪を立てて体を支えている。

 

――泡を作ってる時は、足が泡の上に乗ってる。

 

 勘が、そこだと告げていた。滑る液が滴っている時に脚を払えば、あの竜は自分の泡で転ぶ。

 

「泡を立て始めたら、前脚を斬る。転んだ所を叩く。それでいくわ」

「では、私は上で他の竜を見張ります。危なくなったら、引き上げますよ」

「引き上げなくていいわよ」

 

 霊夢は太刀の鯉口を切った。

――パチン。

 霊夢の足元で、泡が一つ弾けた。岩の陰に溜まっていた小さな泡だ。

 竜の頭のヒレが、ピクリと震える。尻尾を撫でていた前脚が止まり、細い目がこちらを向いた。

 

〈キュオォォォォン……!〉

 

――甲高い咆哮が、滝の音を裂いた。

 竜は岩の上で首を高く擡げ、ヒレを大きく広げている。すぐには飛び掛かってこない。尻尾を一振りし、霊夢の足元へ泡を三つ吹き付けただけだ。

 

――出ていけ、ってことね。

 

 下流のハンター達は、ここで退いたのだろう。退けば追わない竜だ。だから二度とも、竜は傷も浅く筌へ戻ってきた。

 霊夢は退かなかった。泡を避けて半歩横へ出る。

 竜の喉の奥で、低い音が鳴った。

 次の瞬間、竜の体が横へ跳んだ。岩から岩へ、獣のような跳躍で霊夢の左へ回り込む。着地と同時に頭を振り抜いた。大きな泡が三つ、霊夢の行く手を塞ぐように飛んでくる。

 霊夢は一つ目の泡を太刀で斬った。

 泡が弾け、ぬめった滴が肩に掛かる。袖がずしりと重くなり、肩口から胸元へ、白い泡がジワジワと広がる。

 

――重い。でも、まだ動ける。

 

 二つ目と三つ目の泡の間を抜けた時、竜は既に跳んでいた。

 斜めに跳躍し、霊夢の右へ着地する。着地した脚が泡の上で滑り、竜の体ごとこちらへ流れてくる。滑りながら、尻尾が後ろから前へ振り下ろされた。

 速い。跳躍と見分けがつかない。

 霊夢は地を蹴って宙へ逃げた。尻尾が足の下を通り過ぎ、岩を叩く。ストン、と軽く堅い音がした。毛の房ではない。中に骨が通っている。

 岩の苔が、尻尾の一撃で根こそぎ剥がれていた。

 

――あれを貰ったら、骨が折れるわね。

 

 宙に浮いたまま、霊夢は竜の動きを目で追った。跳ぶ、回り込む、滑る、振る。どの動きも、最初の跳躍で霊夢の横か後ろを取ろうとしている。正面から来ない。下がれば下がるほど、竜は回り込んでくる。

 竜がまた跳んだ。今度は真正面から、上体を高く起こしてのしかかってくる。

 霊夢は袂から札を二枚抜き、宙へ放った。札が青白く光り、竜の胸の前で薄い壁になる。のしかかる巨体が壁に触れ、ほんの一瞬だけ勢いが鈍った。その一瞬で、霊夢は横へ抜ける。

 竜の体が岩に落ち、そのまま泡の上を滑って霊夢の背後へ流れていった。滑った跡の岩が、ぬめりで鏡のように光る。札の壁は、竜の重さに耐えきれずに砕け散った。

 

――止めるのは無理。逸らすだけ。

 

 息を整える間に、竜は滝壺の縁で向きを変えていた。跳ぶ、回り込む、滑る、のしかかる。少しずつ、霊夢の足場が泡に呑まれていく。乾いた岩が、もう数えるほどしか残っていない。

 なら、前だ。

 霊夢は岩へ降り、竜の懐へ踏み込んだ。

 竜が首を引く。霊夢の太刀が、首の付け根の鱗を浅く削った。硬い。手応えが鱗の表を滑っていく。泡で磨かれた鱗だ。

 竜が身を捩り、尻尾を薙いだ。霊夢は太刀を立てて受け流し、そのまま後ろへ転がる。転がった先の岩が泡に濡れていた。体が止まらない。背中から滝壺の縁まで滑っていく。

 竜の尻尾が、真上から落ちてきた。

 岩が割れる音と、自分の息が詰まる音が重なった。脇腹を掠めた尻尾に弾き飛ばされ、霊夢の体は浅瀬に叩き付けられる。冷たい水が口に入った。

 膝を突いて起き上がる。脇腹が熱い。腰の小瓶を抜き、回復薬を一息に呷った。苦い草の味が喉を焼き、痛みが少しずつ遠のいていく。

 竜は追ってこなかった。岩の上で首を傾げ、こちらを眺めている。

 

――様子見。まだ、本気じゃない。

 

 竜が尻尾を前へ巻き付けた。前脚で毛を擦る。泡がムクムクと湧き始める。

 前脚の下から、透き通った液がポタポタと滴った。

 

――今。

 

 霊夢は浅瀬を蹴った。泡の湧く岩へ一直線に飛び、竜の左の前脚へ太刀を叩き込む。刃が爪の付け根の毛を断ち、脚を払った。

 竜の体が傾いた。滴った液の上で、爪が空を掻く。

 自分の泡で、竜は横倒しに転がった。四本の脚がバタバタと宙を泳ぐ。白い腹が晒された。

 霊夢は斬った。腹、首、頭のヒレ。息の続く限り刃を振るい、竜が起き上がる前に跳び退く。

 竜は滑りながら身を起こした。

 ヒレの色が変わっていく。淡い桃色が、根元から赤く染まり、縁まで燃えるような紅になった。

 

〈キュアァアアアアァァァァンッ!!〉

 

 咆哮と同時に、竜は体を円を描くようにくねらせた。全身から泡が噴き出し、竜自身の体をも包み込む。泡の衣を纏った竜の輪郭が、霧の中で白く揺らいだ。――怒り状態。

 そこからの竜は、もう様子見をしなかった。

 泡の上を、竜が滑ってくる。脚を使っていない。体ごと泡に乗り、さっきの倍の速さで岩の上を走る。

 霊夢は宙に浮き、泡の上を滑る竜の後を追った。足を着けば滑る。浮いたままでは、太刀に体の重さが乗らない。乾いた岩を見つけては一瞬だけ足を着き、踏み込んで斬り、また浮く。着く、斬る、浮く。その繰り返しで、竜の脇腹に浅い傷を一つずつ増やしていく。

 竜も霊夢の動きを読み始めていた。霊夢が乾いた岩に降りる先へ、先回りして泡を吐く。降りようとした岩が、目の前で白く塗り潰された。

 

「こいつ……!」

 

 別の岩へ降りる。そこにも泡が飛んでくる。霊夢は札を一枚放ち、泡を空中で弾けさせた。降り注ぐぬめりの雨を潜り、ようやく乾いた岩に爪先が掛かる。

 竜が身を翻し、やや前へ跳んだ。尻尾が下から上へ、弧を描いて振り抜かれる。

 霊夢は右へ跳んだ。尻尾が左の空を裂く。

 

――二つ目が来る。

 

 勘だった。着地した竜が、間を置かずにもう一度宙返りをする。今度は逆の向きから尻尾が振り抜かれた。霊夢がさっきまで居た右の空を、紫の毛が裂いた。振り抜いた尻尾の先から、泡が前へ撒き散らされる。

 泡の一つが、霊夢の脚に当たった。

 肩の泡と、脚の泡が繋がった。足元の岩まで、ぬめった泡に浸される。踏ん張ろうとした足が、ツルリと横へ流れた。太刀の柄が手の中で滑り、握り直せない。

 

――まずい。

 

 竜が大きく首を擡げた。上顎の奥で、何かが鳴る。

 水が――放たれた。

 細い一本の水流が、竜の口から噴き出す。足元の岩を抉り、その反動で首が横へ振られた。水流が、薙ぎ払いの形で霊夢の方へ迫ってくる。岩が、苔が、水流の通った跡から音を立てて削れていく。

 霊夢は迷わず、[消散剤]の小瓶を叩き割るように頭から被った。

 濁った白い液が髪を伝い、肩と脚の泡を溶かしていく。足の裏が、岩を掴んだ。

――最初に水が当たった所。

 竜の足元、水流が最初に岩を抉った窪みへ、霊夢は飛び込んだ。薙ぎ払いの水流が、頭のすぐ上を通り過ぎていく。首を振り切った竜の顎が、目の前にあった。

 ここが一番近くて、一番安全だ。

 霊夢は息を吸い、太刀に気を込めた。刃が、薄く光を帯びる。

 気刃斬り*3。斬り上げ、斬り下ろし、返す刃でもう一度。気を込めた刃は、先程まで滑っていた鱗に食い込んだ。頭の大きなヒレの一枚が、根元から裂けて宙に舞う。

 竜が仰け反った。

 怯んだ竜は、大きく後ろへ跳び退いた。跳び退きながら巨大な泡を一つ吐く。続けて、三方へ広がる泡を吐き、自分も宙へ跳んだ。一度、二度。泡を撒きながら、舞うように跳ねる。

 霧の中で、泡と竜が舞っていた。

 宙に浮かぶ無数の泡が、竜の跳躍のたびに渦を巻く。紅いヒレが泡を透かして揺らぎ、紫の尻尾が弧を描く。滝のしぶきに日が差し、泡の一つ一つに小さな虹が宿った。

 見とれた一瞬が、狩りでは命取りになる。霊夢は歯を食い縛り、竜の跳ぶ順番だけを目で追った。

 

「御主人様!一番奥の泡です!」

 

 梢の上から、玄爺の声が飛んだ。

 竜が三度目に跳んだ。体を回しながら、泡の列の一番遠い所へ、霊夢の居る場所へ、桃色の泡沫を巻き上げて落ちてくる。

 

――奥に落ちてくるなら、手前は空く。

 

 霊夢は退かずに前へ駆けた。泡の列の手前、竜が跳び立った足元へ。回転する竜の巨体が、頭の上を越えていく。背中で岩の割れる音がした。振り返った時、竜は泡の海の中で、自分が叩き割った岩に脚を取られてもがいていた。

 霊夢は斬った。尻尾の付け根。後脚。脇腹の古い傷の上。

 竜のヒレから、紅が引いていった。

 赤から桃色へ、桃色から青白い色へ。ヒレは張りを失い、首の周りでしなだれる。竜の息が荒い。口の端から泡混じりの涎が垂れていた。

 竜の周りに浮かんでいた泡が、次々と弾けて消えていく。もう新しい泡が湧いてこない。体を包んでいた泡の衣も剥がれ落ち、白い鱗が、乾いた所からくすんで見え始めた。

 竜は口を開け、何かを吐こうとした。喉の奥で水音が鳴る。けれど噴き出したのは、勢いのない水の塊だけだった。水は竜の顎を伝って岩の上に零れる。

 竜は霊夢に背を向け、滝壺へ首を伸ばした。

 魚を獲ろうとしている。腹を満たして、体を立て直すつもりだ。首を水に突っ込んだ拍子に、脚が泡の上で滑り、竜は顎から水面に崩れ落ちた。自分の泡を、もう扱いきれていない。

 霊夢は太刀を下げ、竜を見た。

 今なら、上流へ逃がすこともできる。下流のハンター達と同じように。

 

――明日も、この竜は筌に来る。

 

 勘がそう言っていた。今逃がせば、竜は泡を立てて傷を癒し、また朝の川へ下りてくる。三度目に腕を折るのは――漁師の誰かだ。

 竜が、水から首を上げた。滴る水と泡の向こうで、細い目が霊夢を捉える。逃げようとはしない。青白いヒレを、もう一度だけ広げようとした。

 霊夢は、その首へ踏み込んだ。

 気を込めた刃を、真っ直ぐに振り下ろす。

 手応えが、刃から腕へ、腕から胸へ伝わった。竜の首が、ゆっくりと岩の上に落ちる。ヒレが一度だけ震え、それきり動かなくなった。

 滝の音だけが残った。

 宙に漂っていた泡が、一つ、また一つと弾けて消えていく。弾ける音を聞く竜は、もう居ない。

 霊夢は太刀を岩に突き、しばらく肩で息をしていた。脇腹がまだ疼く。髪からは消散剤と泡の混じった滴が垂れ、鼻の奥に花の匂いがこびり付いていた。

 梢から玄爺が降りてきて、竜の傍らに静かに着地する。

 

「お見事でした」

「……転んだけどね。三回くらい」

「四回ですな」

「数えなくていいのよ」

 

 霊夢は竜の頭の前に膝を突き、短く手を合わせた。

 巫女の祈りが届く先に、この竜は居ない。竜は死んでも霊にならない。それでも霊夢は、手を合わせる時間だけは省かなかった。

 それから、剥ぎ取り用の小刀を抜いた。

 鱗は、光に透かすと水晶のように煌めいた。泡に長く磨かれた物ほど、透き通っている。紫の毛は、尻尾の先の方ほど長く柔らかい。小傘に言われた通り、毛の束を傷めないよう、根元の皮ごと切り取っていく。腹の下の袋からは、透き通った滑液を竹筒に一本分、汲み取った。

 刃を入れるたびに、傷口から滑液が滲んで泡が立つ。死んだ後も、竜の体は泡を作ろうとしていた。泡は霊夢の手を包み、指の間から零れて岩の上に広がる。手に付いた血も泥も、泡と一緒に流れて落ちていった。

 前脚の爪は、どれも硬く、一本も欠けていなかった。泡の上で体を支え続けた爪だ。剥ぎ取りの刃が通らず、霊夢は二本だけ、根元の皮ごと切り離して諦めた。

 頭の裂けたヒレは、根元の方が青白く、縁にだけ桃色が残っていた。

 

「このヒレも持っていきましょう。私の背中なら、もう一枚くらい載りますよ」

「重くない?」

「御主人様が軽い分、楽なものです」

「……どういう意味よ」

 

 玄爺は答えず、首を引っ込めた。

 帰りがけに、霊夢は下流の筌の所で足を止めた。裂けた筌を拾い、竹の割れ目に詰まったぬめりを指で掻き出す。漁師に返せば、直して使うだろう。

 筌の口には、もう新しい泡は絡んでいなかった。

 川岸の小屋の前で、腕を布で吊った男が待っていた。足を滑らせて腕を折った漁師の与平(よへい)だ。霊夢が玄爺の背の素材を指差すと、与平は長いこと黙って、それから深く頭を下げた。

 

「……あれは、毎年見かける竜だったんだ」

「そう」

「去年までは、上の滝壺で寝てるだけだったんだがな。筌に手ぇ出したのは今年が初めてだ。魚が少なかったのかもしれん」

 

 与平は吊った腕を、もう片方の手でさすった。

 

「礼を言うのも、なんだか妙な気分だ」

「言わなくていいわよ。依頼だもの」

 

 霊夢は裂けた筌を与平に渡した。与平は竹の割れ目を指でなぞり、ぬめりの消えた口を確かめて、小さく頷いた。

 


~中央会館 工房~

 

―――工房の作業台に素材を並べると、小傘は長いこと黙っていた。

 紫の毛の束を手に取り、指で梳く。毛の間に滑液を一滴落とし、親指で擦る。泡がフワリと立ち、毛がしっとりと艶を帯びた。

 

「……いい毛だなぁ。泡がよく立つ」

「言われた通り、傷めないようにしたわよ」

「うん。分かるよ」

 

 小傘は鱗を一枚、窓の光にかざした。透き通った鱗の向こうで、色の違う左右の瞳が細くなる。

 

「刀身は、鱗を重ねて打つ。柄には紫の毛を巻くけど、毛のままじゃ滑るから、上から糸を巻く。鞘の内側には滑液を塗る。そうしたら、汚れが勝手に落ちるよ。……霊夢、お手入れは嫌いでしょ」

「よく分かってるじゃない」

「あと、刃に御札の回路を通す。泡狐竜は水の竜だから、打った刃も水の力を持つんだ。札はその力と霊夢の霊力を繋ぐだけ。札で斬るんじゃないからね」

「分かってるわよ」

 

 霊夢は借りていた鉄の太刀を、作業台の端に置いた。刃はところどころ欠け、鞘の口には滑液の白い痕が残っている。

 小傘はその刃を一度だけ撫で、壁の刀掛けに戻した。

 

「お疲れさま」

 

 誰に言ったのかは、聞かなかった。

 それから小傘は、工房に籠もった。

 霊夢が様子を覗きに行くたび、炉の火の色が違っていた。鱗は、普通の火では熱が通らない。泡に磨かれた表面が、火の熱まで滑らせてしまうのだという。小傘は滑液を薄めて鱗の表を洗い、泡の膜を一枚ずつ剥がしてから炉に入れていた。

 鍛え上げた刃は、水を張った桶ではなく、滑液を溶かした水で冷ます。ジュッと音がして、桶の水面いっぱいに泡が盛り上がった。泡が消えた後に現れた刃には、薄紅と淡い青の縞が、波のように浮いていた。

 

「こら、霊夢。覗くなら手伝って」

「やだ」

 

 一つ目の唐傘が、炉の陰でケラケラと揺れた。

 ひと月後、霊夢の手には薄紅と淡い青の太刀が渡された。鞘にも鍔にも、泡のような丸い文様が浮かんでいる。柄の房飾りが、振るたびにフワリと揺れた。

 

「銘は?」

 

 小傘に聞かれて、霊夢は少し考えた。

 霧の中の滝壺。宙を漂う泡。あの竜が尻尾の毛を擦っていた、気持ち良さそうな顔。思い出そうとすると、どれも夢の中の景色のように霞んで、それでいて、脇腹の痛みだけは本物だった。

 

「……夢か現か、って感じだったし」

 

 霊夢は太刀を鞘に納めた。

 

「――『夢現ノ縁』でいいわ」

 


~博麗神社 狩具小屋~

 

―――話し終えた頃には、湯呑みの茶はすっかり冷めていた。

 針妙丸は、途中から針を動かすのを忘れていた。柄巻きの糸の端を握ったまま、お椀の上で胡座をかいている。

 

「……ふうん」

「何よ、その顔」

「別に。四回も転んだんだ、と思って」

「そこは聞き流しなさいよ」

 

 針妙丸は鼻を鳴らし、糸の端を柄の穴に通した。最後の一巻きを締め、結び目を針の先で押し込む。紫の毛の上に、新しい糸が隙間なく揃った。

 

「今も転がって避けてるでしょ。防具の腰の縫い目、毎回同じ所がほつれてるもの」

「泡狐竜の装備は、転がって避けるための物なのよ」

「転がる前提で作らないでくれる?縫う方の身にもなって」

 

 言いながら、針妙丸は自分の指先に目を落とした。

 小さな指に嵌めた、小さな指ぬき。透き通った鱗の欠片を削った物だ。陽にかざすと、水晶のように光る。前掛けの端切れと一緒に霊夢がくれた物で、何の鱗かは、深く考えたことがなかった

。

「じゃあ、これも」

「その時の竜よ。工房で余った欠片を、小傘が取っておいたの」

「……先に言ってよ、そういうことは」

 

 針妙丸は指ぬきをそっと撫でた。それから、ぶっきらぼうに太刀の柄を叩く。

 

「はい、終わり。今度は一年持たせなさいよ。外したら……じゃない、ほつれさせたら、承知しないよ」

「はいはい」

 

 霊夢は棚から太刀を取り上げ、柄を握った。新しい糸が掌に馴染む。鞘の口に指を当てると、内側に塗られた滑液が、まだかすかにぬめった。

 指先に、小さな泡が一つ生まれた。

 泡は霊夢の指を離れ、小屋の窓から射し込む光の中へフワリと昇っていく。棚の一段の高さを越え、梁の近くまで漂って――

――パチン、と弾けた。

 針妙丸がそれを見上げて、ほんの少しだけ笑った。

 

――泡の舞う渓のことを、霊夢が話したのは、それきりだった。

*1:
飲むと傷の痛みが和らぎ、体力が戻る薬。

*2:
体に付いた泡や雪、泥などを洗い落とす薬。

*3:
太刀の技。刃に気を込め、続けざまに斬りつける。




玄爺も居ます。

『玄爺』
所属:人里ギルド(拠点は博麗神社)
役職:輸送協力員。運搬・偵察・救助・空の道の案内
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