初めての感想が嬉しすぎて勢いで作りました。
こんなに重たい話にするつもりはなかったんです。許して
文才を誰かくれ頼むから。
初め決めたキャラの設定がコロコロ変わるんだが助けて助けて。あ、でも酒寄家には曇り続けてもらいます
久しぶりに会った妹、彼方が家を飛び出すように出ていった。かぐやも彼方を追いかけて出ていってしまった。私は一人、取り残された部屋で無意識のうちにため息を吐いた。どうして、あんな態度を取ってしまったのだろう。ちゃんと話すこともできた。久しぶり、と笑って迎えることだってできた。昔みたいに、「おかえり」と言ってあげることだって。なのに私は、彼方がそこにいることに驚いてしまった。
「なんでいるの?」
あの言葉が頭から離れない。どうして、そんなことを言ったのだろう。帰ってきてくれた妹に向ける言葉じゃない。何年も離れていた妹に、久しぶりに会って最初に言う言葉でもない。そして最後には、
「帰って」
と言った。私はまた彼方を傷つけた。
昔から、私はそうだった。彼方のことが嫌いだったわけじゃない。むしろ逆だった。昔の私は彼方のことが好きで、隙があれば彼方の近くにいた。そんな私を、彼方は嫌がることなく受け入れてくれた。「お姉、お姉」と後ろをついてきて。私が何をしていても隣にいて。くだらない話にも付き合ってくれて。私は、そんな彼方が大好きだった。
だからこそ、あの子に向けていた感情が、全部綺麗なものだったなんて言えない。
お父さんが亡くなって、お母さんが厳格主義の人になってしまった。お兄ちゃんと彼方は、お母さんと上手くやれていた。私だけがお母さんと上手くいかなかった。私だけが家の中で浮いていた。私だけが、お母さんに認めてもらえなかった。お母さんと喧嘩をするたびに、家の中に居場所がなくなっていくような気がした。
そんな私のことを、彼方はいつも気にかけてくれていた。私とお母さんが喧嘩をしていると、部屋の隅で心配そうにこちらを見ていた。あの視線が、嬉しかった。私のことを心配してくれる人がいる。私の味方をしてくれる人がいる。それだけで、私は救われていた。
お兄ちゃんが一人で上京してしまってからは、私とお母さんの間を取り持ってくれる人もいなくなった。喧嘩は増えた。家にいることが苦しくなった。それでも彼方だけは、変わらず私のそばにいてくれた。本当に優しい子だった。彼方がいなかったら、私はきっと一人で潰れていた。
だから私は、彼方に感謝している。今でも。
……だからこそ、余計に苦しい。
彼方は、お母さんとも上手くやれていた。家族贔屓なしで、彼方は天才だった。何をやらせてもすぐにできる。何をしても一番になる。そんな彼方を、お母さんは可愛くて仕方がなかったのだと思う。
彼方が一番を取るたび、お母さんは優しい声で「ようやったな」と言って、彼方の頭を撫でた。彼方は本当に嬉しそうに笑っていた。
私は、その光景を見るのが嫌だった。
彼方が悪いわけじゃない。そんなことは分かっていた。分かっていたのに、羨ましかった。お母さんが彼方に向ける顔。頭を撫でる手。優しい声。全部、私には向けられなくなったものだった。私がどれだけ頑張っても貰えなかったものを、彼方は当たり前のように貰っていた。
だから、彼方を見ていると苦しくなった。嬉しそうに笑う彼方を見るたびに、胸の奥が醜くなる。
どうして私じゃないの。
どうして彼方なの。
そんな感情を、私は何度も抱いた。
彼方は何も悪くないのに。私を救ってくれたのも彼方だったのに。それでも私は、彼方に嫉妬した。羨ましくて、妬ましくて。そんな醜い感情を抱えたまま、彼方に笑いかけていた。
彼方はそんなことにも気づかず、私のところに来てくれた。
「お姉。お姉」
そう言いながら。褒めてほしそうに。構ってほしそうに。私を慕って。
……今思えば、私は最低だった。
自分を救ってくれた子に、嫉妬していた。自分を一人にしなかった子を、自分の孤独の原因みたいに見ていた。そして私は、そんな自分を彼方に知られたくなかった。
ある日、お母さんと私がいつものように喧嘩をしていた。いつものように、お母さんの理論武装と正論をぶつけられて。私はそれに反抗して。家の空気は最悪だった。彼方はいつものように、部屋の隅で私たちを見ていた。辛そうに。泣きそうな顔で。それでも、いつものように私を心配していた。
その日の喧嘩は、いつもより酷かった。言葉がどんどん強くなって。最後には、お母さんの手が振り上げられた。
私は叩かれるのだと思った。怖くて目を閉じた。
「もぉやめて!」
彼方が割り込んできた。
目を開けると、彼方は泣いていた。泣きながら、私の前に立っていた。私を守るように。
あの時は、まだ少しだけ余裕があった。彼方が止めてくれた。怖かっただろうに。泣いてまで私を守ってくれた。そう思っていた。
でも、その次の言葉で全部が変わった。
「お姉は私が助ける。私が守る」
胸を抉られた。
どうして。どうしてそんなことを言わせた。私はそんなに弱く見えていたのか。私はそんなに頼りなかったのか。妹に守られなければならないほど、私は何もできない人間だったのか。
違う。違うはずだった。
私は弱くない。心配しなくても大丈夫。
そう言いたかった。彼方を安心させたかった。
なのに、口から出たのは、彼方を傷つける言葉ばかりだった。
何を言ったのか、今でも全部は覚えていない。覚えているのは、彼方に向かって怒鳴ったこと。泣いている彼方に、さらに言葉をぶつけたこと。そして、その顔を見てしまったこと。
あの子の泣き顔だけは、今でも鮮明に覚えている。
私は、自分が傷つけられることよりも、彼方を傷つけたことの方がずっと怖かった。
それなのに、私は彼方から離れた。
私は一人で何でもできるようになろうとした。彼方に心配をかけないように。彼方に「私が守らなきゃ」と思わせないように。私は大丈夫だと、彼方に思ってほしかった。私はもう弱くないと。彼方は私を守らなくてもいいと。
……でも、それは全部、私の自己満足だった。
彼方からすれば、突然大好きだった姉が自分から離れていっただけだ。自分が悪かったのかもしれないと、あの子はきっと何度も考えた。
私ならそう考える。
あの子は優しいから。自分が傷つくことより、私がどう思っているのかを考えてしまう子だから。
だから私は、余計に許されない。
今日だってそうだった。
久しぶりに会った彼方が、私の部屋にいた。私は驚いて、
「なんでいるの?」
と言った。
彼方は、ただ私に会いたかっただけかもしれない。話したかっただけかもしれない。昔みたいに、私のそばにいたかっただけかもしれない。
なのに私は、
「帰って」
と言った。
……最低だ。
何年も待たせたくせに。何年も離れていたくせに。ようやく帰ってきた妹に、私はまた「いらない」と言った。
本当は違う。
本当は帰ってほしくなんてなかった。
ずっと会いたかった。ずっと話したかった。抱きしめてほしかった。昔みたいに「お姉」と呼んでほしかった。
でも、そんなことを望んでいいはずがない。
私は彼方を傷つけた。
何度も。
何度も、何度も。
それなのに私は、自分が寂しいからといって彼方に近づこうとしている。
そんな資格、私にはない。
彼方が私を許してくれるなんて、考えてはいけない。許されたいと思うことすら、都合が良すぎる。
だって私は、彼方が私を許すために必要な時間すら奪った。謝ることもしなかった。ちゃんと話すこともしなかった。勝手に距離を取って。勝手に一人になって。勝手に「これで彼方も安心する」なんて思い込んで。
全部、自分のためだった。
私は彼方を守りたかったんじゃない。
彼方に「弱いお姉ちゃん」だと思われるのが怖かっただけだ。彼方に心配される自分が嫌だった。彼方に守られる自分が許せなかった。
だから逃げた。
彼方からではなく。
自分自身から。
そして、その結果。
彼方を一人にした。
私が一番嫌だったはずのことを。
彼方が一番してほしくなかったはずのことを。
私自身が彼方にした。
……私は、何をしているのだろう。
あの子は、私が一人にならないようにずっとそばにいてくれたのに。私が孤独にならないように、何度も手を伸ばしてくれたのに。
私はその手を、自分から振り払った。
彼方に救われていたくせに。
彼方を救える人間になろうとして。
そのために、彼方を傷つけた。
こんな私が。
今さら「仲良くしたい」なんて言っていいのだろうか。
今さら「ごめん」なんて言っていいのだろうか。
……言えない。
言えるわけがない。
謝ったところで、彼方が受けた傷が消えるわけじゃない。私が離れていた時間がなくなるわけでもない。彼方が泣いたことも。私の言葉で傷ついたことも。全部、なかったことにはならない。
だったら私は、許されなくていい。
いや。
許されてはいけない。
彼方が私を許してくれる日が来たとしても、それを期待してはいけない。彼方が優しいからといって、その優しさに甘えてはいけない。
私は、彼方に嫌われても仕方がない。
恨まれても仕方がない。
もう二度と私のところへ来なくなったとしても、文句なんて言えない。
それでも。
それでも私は、彼方に幸せでいてほしいと思ってしまう。
私なんかいなくても。
私のことなんて忘れても。
彼方が笑っていられるなら、それでいい。
……そう思わなければいけない。
そう思わないと。
また私は、自分のために彼方を縛ってしまう。
彼方を追いかけて出ていったかぐやが帰ってきた。
私はいつものように、
「おかえり」
と声をかけた。
「たっだいまー!」
かぐやは汗でべとべとなのも気にせず、私に抱きついてきた。
「ちょっと! 汗だくじゃない、離れてー」
そう言っても、かぐやはえへへと笑うだけで離れてくれない。
まるで何もなかったみたいに。
いつも通りみたいに。
きっと、聞きたいことはいっぱいあるはずなのに。かぐやは何も聞かなかった。
今は、それが少しだけありがたかった。
「かぐや」
「んぇ? なに?」
いつものふざけた返事。
私は少しだけ息を吸った。
「その……ありがと。あの子のこと追いかけてくれて。またちゃんと話すから。あの子のこと」
返事がなかった。
不思議に思ってかぐやを見る。
泣いていた。
「……え、なんで泣いてんのよ」
「だって彼方、可哀想だったし……本当は彩葉とお話したかったはずだもん。それに……彩葉がそんな寂しそうな顔するから……」
寂しそうな顔。
その言葉を聞いた瞬間、胸が痛くなった。
そうか。
私は寂しいんだ。
彼方に会いたかった。話したかった。そばにいてほしかった。
でも。
そんなことを思う資格が、私にあるのだろうか。
一方的に彼方との距離を取ったのは私なのに。
私から彼方を遠ざけたのに。
それなのに私は、彼方がいなくて寂しいなんて。
どこまで自分勝手なんだろう。
今にも「ごめん」と口にしてしまいそうになる。
でも、私は飲み込んだ。
かぐやに謝っても仕方がない。
今ここで泣いているのは、彼方じゃない。
今はこの子を泣き止ませる方が先だ。
「はい、もう泣くの禁止。今日は、ろかとまみに会うんでしょ。早く準備して」
そう言うと、かぐやはすぐに笑顔になった。
「そうだった!! 準備、準備ー!」
かぐやが部屋の中を動き回る。
私はその背中を眺めながら、小さく息を吐いた。
彼方は、今頃どうしているだろう。
泣いていないだろうか。
傷ついていないだろうか。
私のことを、どう思っているだろう。
……考えても、答えは出ない。
怖い。
彼方に嫌われているのが怖い。
もう私のことなんて好きじゃないのかもしれないと思うと、胸が潰れそうになる。
でも。
それでも私は、彼方に「許して」とは言えない。
許されたいなんて、言えない。
私は彼方を傷つけた。
彼方が私を大切にしてくれた分だけ。
私が彼方を大切にしていた分だけ。
その全部を、自分の弱さで壊した。
だから。
もし彼方が私を許してくれなくても。
もう二度と「お姉」と呼んでくれなくても。
私のところに帰ってきてくれなくても。
私は受け入れなければならない。
それが、私が彼方にしたことの償いなのだと思う。
……本当は。
そんな未来、嫌だ。
嫌に決まっている。
もう一度、昔みたいに笑いたい。
彼方の隣にいたい。
「お姉」と呼んでほしい。
あの子の頭を撫でてあげたい。
今度こそ、私が彼方を安心させてあげたい。
でも。
それを願うことさえ、今の私には贅沢なのだ。
だから私は、願わない。
願ってはいけない。
ただ、いつか彼方が私のいない場所でも幸せに笑えるように。
その時、私はちゃんと笑っていられるように。
そう思うしかない。
――たとえその笑顔の隣にいるのが、私じゃなくても。
この作品の彩葉過去が重すぎて、原作よりかぐやに依存気味です。ストーリーに影響ないからまぁええか。
ちなみにお母さんが彼方に激甘なのはお母さん特攻タレ目EXを持っているのがいちばん大きいです
すれ違ってすれ違ってお互いに曇るのめちゃくちゃいいね書いてて心がぴょんぴょんしました