ウマ四駆 ─DIAMOND GAZER─   作:ヘリの準備

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 このコンセプトのウマ娘SSが、少しでも増えてほしいという願いを込めて。


第1話 風水ガールとリギル選抜

 小学校(エレメンタリースクール)の教室でモニターに映し出される、いよいよ宇宙空間に到達しようかという宇宙船。

 子どもたちは自国(アメリカ)や世界の成り立ちを面白く学べる歴史学習の時間が大好きで、宇宙開発の歴史を映像で学ぶ今日の授業も大好評だった。

 

『すげー! こんなに迫力あるんだ!』

 

『船長(コマンダー)、超かっこいいじゃん!』

 

『私もいつか、宇宙に行ってみたい!』

 

『うわっ、切り離された!』

 

 発射からおよそ10分が経過した宇宙船は充分な速度と高度に達し、ETと呼ばれる巨大なオレンジ色の燃料タンクが役割を終えて切り離される。

 宇宙船の本体よりも大きいタンクが切り離されるその様はまるで映画のワンシーンのような迫力があり、子どもたちからは大きく声が上がる。

 

 特に近代の宇宙開発では、宇宙船を構成するパーツはコスト削減などの観点から、その多くが再利用できるよう設計されている。

 しかし映像にある、古い時代の宇宙船におけるETはその例外のひとつだ。

 切り離されたETは間もなく大気圏に再突入し、圧力の急激な変化から生じる熱によって消滅する運命にあった。

 

 映像はまだまだ続く。

 力強く進み続ける宇宙船、神秘的な宇宙空間、勇ましい宇宙飛行士たち。

 子どもたちはその全てに魅せられて、宇宙への夢を膨らませ続ける。

 

 そんな子どもたちの中、一人の少女には───その少女の脳裏には。

 夢のために切り離されたオレンジ色の大きな残像が、いつまでも焼き付いていた。

 

 

 少女の名前は、バニシングゲイザー。

 『消失の観測者』の名を持って生まれたウマ娘が、消えゆく運命を目にして一抹の寂しさを覚えた、その瞬間から。

 彼女の運命が、静かに動き始めた。

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 東京都府中市、中央トレセン学園。

 ウマ娘を育む文武両道の名門校であると同時に、世界的に見てもトップクラスの競争ウマ娘の養成機関でもあるその場所は、ある話題で騒がしくなっていた。

 今年度になって最初の選抜レースが開催される時期を迎えたのである。

 

 国民的な人気を誇る、ウマ娘の競技レースであるトゥインクル・シリーズ。

 その出場には中央トレセン学園への在学だけでなく、トレーナーとの契約もしくはチームへの所属が必須とされている。

 トレーナーによるスカウトは選抜レースを通じて行われることが大半であり、ウマ娘たちにとっては競技人生を左右する極めて重要な戦いだ。

 レースを目前に控えたウマ娘たちは皆やる気と緊張、デビュー後への期待に満ちていた。

 また選抜に出ない者たちも、その多くが選抜レースに興味津々である。

 誰がどのレースに出るのか、あの子は誰からスカウトを受けるのか───

 少女たちの話題は尽きることがない。

 

 公開練習の一環として、学園が一年に四回のみ開催する選抜レース。

 ウマ娘たちの多種多様な適性に合わせて様々な距離とバ場で実施されるが、原則として一度の開催につき一回しか出走が許されない。

 また今年度は試験的に希望者を募り、一部のレースが実戦と近い環境で行われる。

 そこではオンラインでのアーカイブ配信と、プロのアナウンサーによる実況が行われるとあって、こちらを選んだ者も多い。

 

 そしてこの時期に注目を集める学内のレースがもう一種類あり、それがチーム主催の選抜テストである。

 これは一般的な学校の部活動における「入部テスト」に近いものであり、厳密な区分としては「模擬レース」に分類される。

 学園主催の選抜レースと比較すると注目度こそ落ちるが、ウマ娘たちの実力を測るには十分な環境と緊張感があるレースだ。

 こちらの開催時期は特に限定されていないものの、対象となるウマ娘たちは選抜レースの時期にパフォーマンスが高くなるよう調整することが基本であるため、この時期に合わせて選抜テストを実施するチームが多い。

 また一発勝負としての傾向がどうしても強くなる選抜レースとは異なるアピールの場としても重要な役割を持ち、特に有名チームの選抜テストには学内から多くの観衆が集まる。

 そしてそれらの中でも、一際大きな注目を集めているレースがあった。

 

 チームリギル選抜テスト。

 その決勝レースが今日まさに行われようとしていた。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 多くのチームの中で、学園最強と名高いリギルの選抜テストはいつも先陣を切って行われる。

 チーフトレーナーである東条ハナが一人でチームを取り仕切っていた時期は今以上に定員が限られており、あの『日本総大将』スペシャルウィークですら所属が叶わなかった過去が今では伝説のように語られている。

 

 しかし東条トレーナーが「後進育成のため」としてチームに幾人かのサブトレーナーを迎え入れたことにより、現在のリギルは新体制になっている。

 それによるキャパシティの増加や、『皇帝』シンボリルドルフをはじめとするリギルのレジェンド級ウマ娘たちの存在がやはり大きく、所属希望者の数は年々膨れ上がっていた。

 結果としてリギルの選抜テストも大規模化し、今回はついに日を跨いで予選と決勝に分けて開催せざるを得なくなったほどだ。

 

 いくらかキャパシティが増したとはいえ、リギルへの所属は今も極めて狭き門である。

 倍率だけでいえば、東条トレーナーの一人体制だった頃より厳しくなったのではないかとすら言われている程だ。

 リギルが真っ先に選抜テストを行うのは、合格が叶わないであろう大多数のウマ娘たちが他の選抜を受けやすくする配慮では───という噂にも真実味があった。

 

 そんな中で予選を経て、今日の決勝レースへの出走を許されたウマ娘たちはみな優秀であるといえる。

 レーストラックに設けられている観戦席には大勢のトレーナーやウマ娘たち、学園の関係者が訪れており、もはやテストという柵(ラチ)を飛び超えた雰囲気に包まれていた。

 

 トゥインクル・シリーズでの実戦と同じく、レースを目前に控えたタイミングで設けられたいくらかの時間。

 緊張した面持ちで入念に蹄鉄の確認やストレッチを行うウマ娘たちの中で、観衆たちから特に注目を集めている存在が、二人いた。

 

 

「よしっ。今日の運気はバッチリ、私の調子も万全! 風水の力、みんなにちゃーんと見せちゃうよ!」

 

 

 オレンジブラウンのお団子ヘアーに、両耳を覆っている陰陽を併せ持つ配色のメンコ。

 そして、八重歯を煌めかせた笑顔が眩しいウマ娘。

 コパノリッキーがそこにはいた。

 

 選抜に関する話題の中で「あのコパノリッキーがリギルの選抜テストに出る」という噂は二つの理由で有名だった。

 トレーナーが増えた今でこそ軟化したというが、チームリギルには無駄を許さない徹底した合理主義としてのイメージが今も色濃く残っている。

 その一方で誰もが認める風水ガールであるコパノリッキーは吉凶を重んじてトレーニングメニューや食事を変えたり、幾何学(きかがく)的に文字が敷き詰められた風水羅盤に選択を委ねたりするなど、一見すると合理性からは離れた印象を抱かれがちなウマ娘だった。

 

 そしてコパノリッキーは、バ場として芝よりもダートを得意とするウマ娘である。

 チームリギルにはダートでの実績もあるが、その多くは「ダートでも走れる」タイプのウマ娘によるものであり、リギル自体はあくまで芝を主戦場とするチームに分類される。

 実際に今回のレースも芝の1600メートルという条件で行われるため、その点でも噛み合いが悪そうに見える。

 

 コパノリッキーにリギルというチームは合わないのではないのか───

 噂が広まった一つめの理由には、こんな心配が少しばかり含まれていた。

 

 しかしこれに関して、少なくともコパノリッキー本人は全く心配していなかった。

 彼女に言わせれば風水とはオカルトの類ではなく、膨大な情報の統計から導き出された環境開運学であるからだ。

 例えば「八方位それぞれに力が宿っている」とだけ聞くと胡散臭いかもしれないが、その本質は方位によって必然的に変わる自然環境にある。

 朝日の昇る東が活力を、夕日の沈む西が安寧を司る方位とされているのは、しっかりとした根拠がある。

 風水とは環境がもたらす恩恵を最大限に受けられるよう手助けするものであり、そしてとても合理的なものなのだ。

 

 だからコパノリッキーにとって、合理性を重んじるリギルは風水と近くで並び立つ存在。

 五行説*1でいう、互いを活かし合う相生(そうじょう)の関係であると彼女は信じていた。

 

 また彼女がダート適性に気づくきっかけを作り、風水への理解もありつつダート路線もどんと来いな人物───桐生院(きりゅういん)葵(あおい)が昨年度からサブトレーナーとしてチームリギルに在籍している。

 願わくば、桐生院トレーナーを中心に指導を受けてトップチームで活躍し、風水をもっと広めたいという願いがコパノリッキーにはあった。

 

 そして彼女の本領がダートであることは確かだが、バ場を理由にこのレースで遅れを取るつもりは全くなかった。

 今でこそデビュー後にダート路線を進むつもりではあるものの、自身の適性に気づく前までは芝を中心に走る気で満々だったくらいである。

 実際、リギルへの所属を目指す実力派揃いのウマ娘たちの中にあって、決勝まで残るどころか合格の最有力候補と目されるだけの実力が確かにあった。

 

 コパノリッキーならチームリギルの選抜に受かるかもしれない───というのが、噂が広まった二つめの理由。

 先の心配の裏には、こんな期待が大いに込められていた。

 

(今日のレース、絶対に私を合格にさせてみせるんだから!)

 

 気合十分に、コパノリッキーが両手を握りしめる。

 快晴で良バ場のレーストラックは運気上々、10人立てで行われる今回のレースでコパノリッキーの枠番は4枠4番。

 快活でお話し好き、隙あらば風水を広めることに余念がないコパノリッキーだが、彼女は運気だけでなく空気も読めるウマ娘である。

 レース目前で緊迫した今は、出走するウマ娘たちとそれぞれ一言二言を交わす程度にとどめていた。

 

 ほとんどの出走者たちと話し終えた彼女は、自らが入るべきゲートへと歩を進めていき───

 その近くにいる5番のゼッケンをつけた、なんとなく「最後にしよう」と決めていた相手に声をかけることにした。

 

「バニシングゲイザーさん、だよね? 今日は良いレースにしようねっ!」

 

 そう声を掛けられた少女が、コパノリッキーへと顔を向ける。

 

「もちろんです、コパノリッキー先輩。こちらこそよろしくお願いします」

 

 グラウンドで一際注目を集めている、もうひとりの存在。

 上級生のコパノリッキーに流暢な敬語(日本語)で応じつつ、しかしどこか不敵にも感じる笑みを浮かべたウマ娘。

 

 

 ─── 5枠5番、バニシングゲイザー。

 金髪でコパノリッキーよりはやや小柄の、アメリカから来た新入生である。

 

 

 地方や海外から入学・編入するウマ娘も多い中央トレセン学園において、アメリカ出身のバニシングゲイザーの存在は珍しいものではない。

 ただ競争能力の本格化する時期が個人差によって大きく分かれる中で、中等部に入学して間もない時期に選抜を受けるウマ娘は珍しい部類である。

 

 そんなバニシングゲイザーが予選全体でトップのタイムを残した事実、そして彼女の鮮烈な逃げ戦法は、瞬く間に大きな注目を集めていた。

 ウマ娘の実力を測るにあたってレースでのタイムはあくまで一つの目安にすぎないし、終盤ではさすがに減速していたが、それでも危なげなく後続を引き離しての大勝。

 レース後にも余裕のある様子で、あえて早めに減速して力を残したことを伺わせていた。

 

 実戦経験の少なさや緊張から、ただでさえ掛かりがちになる選抜テスト。

 それもリギルの選抜で、入学早々底知れぬ力を見せつけた新入生。

 彼女もまた観衆から、コパノリッキーと同じく合格候補と目されていた。

 

 初対面でこそあるが、コパノリッキーはバニシングゲイザーのことを選抜テストの前からある程度は知っていた。

 ……と(・)あ(・)る(・)事(・)情(・)により、「クールに見えて結構付き合いがいい」「趣味はローラースケート」「将来は宇宙に行くのが夢」という、レースとは直接関係のない情報にばかり偏っているが。

 そしてあちらも恐らく、同じ事情でコパノリッキーのことを知っているはず。

 

 まあその辺りの話を彼女とするのは、次の機会でいいだろう。

 他の出走者たちにそうしたのと同様に、早めに話を切り上げようとして───

 しかしどうしても気になったところがあり、そこにも言及することにした。

 

「あれっ。今日のバニシングゲイザーさんはリボン、オレンジのやつを着けてるんだね」

 

 コパノリッキーの視線は、バニシングゲイザーの髪に着けられたリボンに向けられていた。

 ファッションに敏感なウマ娘は多いが、コパノリッキーはこういった変化に気づくことが特に多い。

 ファッションの変化は運気の変化、気づきが多ければ話も弾んでハッピー。

 風水が彼女にもたらした恩恵の一つである。

 

「リボン、ですか?」

 

「うんうん! 予選のときは青いリボンを着けてたと思うけど、かなり印象が変わるなーって。オレンジは色風水で『思い切り』や『現状からの脱却』を意味する、力強い色だから。今回のレース、きっと何かすごいことを起こそうとしてるんじゃないかな?」

 

 風水について誰かに語るコパノリッキーはいつだって自信満々である。

 もっともそれに対し、困惑した反応をされることも少なくないのだが。

 そしてバニシングゲイザーの表情に浮かんだのは、ただのリボンでレースの展開まで予想するコパノリッキーに対する怪訝なものではなく───驚きと関心。

 

「……なるほど、これが噂に聞く風水というものですか」

 

 少しの間、考え込むように目を伏せていたバニシングゲイザーはコパノリッキーに対して向き直り、再び笑みを浮かべる。

 

「おっしゃる通りかもしれません。改めて今日のレース、よろしくお願いします」

 

 ───闘争心を奮い立たせる狼を思わせる、鋭い笑みを。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 レースに出走する10人のウマ娘がほぼゲートに収まり、ざわついていたレース場がしんと静かになる。

 レースプランの最終確認を終えたウマ娘たちが行うのは、出遅れが致命的になるスタートへの集中だ。

 

 このレースでウマ娘たちにとって、バニシングゲイザーは厄介な存在である。

 有力なウマ娘の情報は選抜の前からある程度は出回るものだが、海外出身かつ入学してそれほど時間が経っていないバニシングゲイザーはその例外だ。

 予選のレースで分かったのは「コーナーこそ得意ではないが、トップスピードは驚異的。パワーよりスピード重視の典型的な逃げウマ娘」というくらいで、その実力はまだ未知数としか言いようがない。

 これに対して彼女たちは、どう戦うべきか難しい判断を迫られていた。

 

 逃げウマは先頭でレース全体の展開を大きく左右する存在であり、それに対抗するにあたってはどのようにペース配分を調整するか、どこで捕らえるかを考える必要がある。

 本来は逃げウマのスタミナがどの程度まで持つかが考察の材料になるのだが───そういった点で、バニシングゲイザーのデータはあまりにも不足している。

 

 今回のレースで逃げ適性を持つウマ娘は他にもおり、予選で先行策をとったコパノリッキーは逃げも大得意である。

 だが逃げを行う際の大きな難点に「逃げウマ同士での潰し合い」があり、この状況でそこに自ら身を投じるのは勇気が要ることである。

 かといって誰も競りに行かなければライバルからその難点が消えることを意味し、結果的に自身の勝利も遠ざかってしまう。

 

 誰かが行かなければまずいかもしれない、だが自分が行けば待つのは破滅かもしれない。

 特に先行気質のウマ娘たちは、そのジレンマに向き合う必要があった。

 

 

 

(───うん、覚悟はできたよ)

 

 ゲートの中でコパノリッキーは感じていた。

 バニシングゲイザーの気迫からなる、ゲート越しにも分かるほどの渦巻く力を。

 そして確信していた。

 今回のレース、間違いなく彼女が何かを仕掛けると。

 彼女こそがこのレースで最大のライバルになると。

 

 風水で何よりも大切なのは、継続する力である。

 やると決めたその日から数週間、数ヶ月、数年と積み重ねることで次第に大きく幸福の果実が膨らんでいくことを、コパノリッキーは実感している。

 だから風水に興味を持ってくれた人が「結果が出ないから」とすぐに諦めてしまうのは、興味すら持たれずあしらわれるよりも辛かった。

 風水とは、幸せになるために行うべき努力を教えてくれるもの。

 ラッキーアイテムを身につけたら空から大金が降ってくる、という類のものでは決してないのだ。

 

 コパノリッキーは、幸せになるための努力を日々怠らなかった。

 そしてそれは、その中で起こった様々な困難から目を背けなかったことを意味していた。

 

 だから今回のレース。

 風水をもっと広めて、みんなを幸せにしたいという願いを叶えるために。

 未知数な実力を持つ困難(ライバル)からも、目を背けるわけにはいかない。

 

 いつも大地の聲(こえ)の導くままに走るコパノリッキー。

 大きな不確定要素を抱えた今回のレースに、もちろん不安だってあるけれど。

 覚悟は決まった。

 

(何があっても、私は全力で戦う。全力を出し尽くして───勝つ!)

 

 決意の表情で、コパノリッキーは全身に力を込めた。

 

 

 ───実際のところ今回の決勝レース、目標を「リギルへの合格」とするのであれば、必ずしも勝つ必要はない。

 合格が確約されるのは1着をとった者だけだが、そうでなくても東条トレーナーやサブトレーナー達の目に留まれば合格となる可能性がある。

 だからリスクを冒して1着を狙うよりも、自分の得意な走りをアピールすることに注力するべきではないか? という考え方もあるのかもしれない。

 

 だがこのゲートに立つ者たちの中で、「負けてもいい」などと考えている者は一人もいない。

 彼女たちの闘志を前に、「最強」の称号を冠するリギルへの所属を目指すのであれば勝利に拘るべきだ───というような建(・)前(・)など必要ない。

 

 「走るために生まれてきた」と言われることさえあるウマ娘たちの本能、そしてそれぞれが持つ願いの向かう先。

 積極策をとる者も、慎重策をとる者も。

 その全てはただ、勝利のために。

 

 

 そして無骨な音とともにゲートが開き、ウマ娘たちが解き放たれる。

 音がなかった空間に、吸い込まれるように音が戻っていく。

 

 雲ひとつない晴天の下。

 チームリギル選抜、決勝がスタートした。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 スタートからおよそ200メートルという、短い距離で最初のコーナーに突入する今回のコース。

 ポジション争いもそこそこに、間もなく先頭が右回りのコーナーへと差し掛かる。

 

 そんな中、逃げウマとして注目を集めていたウマ娘、バニシングゲイザーは───最後方を走っていた。

*1:
自然界に存在するあらゆる物は「木、火、土、金、水」の五つの要素からなるという思想のこと。




 お読みいただきありがとうございます。
 至らぬ点も多いですが、完結まで一気に駆け抜けるつもりです。
 よろしくお願いいたします。
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