ポケットモンスター ―頂への軌跡― 作:あああああ
照りつける太陽、青く澄んだ海。
白い砂浜の向こうには色鮮やかなパラソルが並び、大勢の観光客とポケモンたちの楽しそうな声が響いている。
巨大ポケモンたちに追い回された島を抜けたレンたちが辿り着いたのは、一大リゾート地――アオプルコだった。
「海だぁぁぁぁ!」
サトシが砂浜へ駆け出す。
「ピカピカ!」
ピカチュウもその後を追い、ゼニガメまで嬉しそうに海へ飛び込んでいく。
「ちょっとサトシ! 荷物!」
「あとあと!」
「もう!」
文句を言いながらも、カスミの表情は明るい。タケシも久しぶりに穏やかな景色を眺めながら、大きく息を吐いた。
「まあ、今日くらいはいいんじゃないか? サントアンヌ号からずっと大変だったからな」
「それはそうだけど……」
レンも海を眺める。
サントアンヌ号での戦い。
沈没。
海底からの脱出。
ギャラドスたちの『りゅうのいかり』。
そして巨大ポケモンの島。
思い返してみれば、まともに身体を休める時間などほとんどなかった。
「リザ」
隣にいたリザードが腕を回す。
「リオ!」
リオルも拳を構えた。
どう見ても。
二匹とも特訓する気満々だった。
「今日は軽く身体を動かすだけにしようか」
「リザ!?」
「リオ!?」
二匹が同時に振り返る。
レンは思わず笑った。
「そんな顔しないの。二匹とも最近ずっと戦ったり特訓したりしてたでしょ?」
「リザ……」
特にリザードは不満そうだった。
巨大なリザードンを見てから、以前にも増して強くなることへの意欲が高まっている。
レンにはその気持ちが分かる。
自分が目指す姿を目の前にすれば、すぐにでも近づきたくなるものだ。
だからこそ。
「休むのも大切だよ」
「リザ?」
「疲れた身体のまま特訓しても、いい動きは覚えられない。むしろ変な癖がつくことだってある」
幼い頃、父から何度も言われた言葉を思い出す。
――強くしたいからって、無茶をさせるのは育成じゃない。
レンはリザードの肩や腕、脚を軽く触りながら状態を確認する。
大きな異常はない。
リオルも同じだった。
「朝は身体をほぐす程度。それが終わったら今日は遊ぼう」
「リザ……」
「リオ……」
二匹が顔を見合わせる。
やがて。
「リザ」
「リオ」
渋々ながら頷いた。
「よし」
レンが笑った直後。
「レンー!」
海からサトシの声が飛んできた。
「早く来いよー!」
「ピカピー!」
レンはリザードとリオルを見る。
「だってさ」
一瞬の沈黙。
先に走り出したのはリオルだった。
「リオ!」
「あ、ずるい!」
「リザ!」
リザードも追いかける。
「結局遊ぶ気満々じゃん」
レンも笑いながら海へ向かった。
◇
しばらくして。
「すげえ!」
サトシの声が海上へ響いていた。
一行は一艘のボートに乗っている。
青い海を切り裂きながら進む船上で、サトシは目を輝かせていた。
「もっと速くできないのか!?」
「調子に乗らないの!」
カスミが怒鳴る。
「こういう時くらいのんびり楽しめばいいだろ」
タケシも苦笑する。
レンは海面を眺めながら、僅かに嫌な予感を覚えていた。
(確か、このあと……)
前世の記憶が浮かぶ。
だが、口に出す前に。
「ん?」
前方の海面が盛り上がった。
巨大な影。
「何だ!?」
サトシが身を乗り出す。
海中から現れたのは、巨大なギャラドスを模した潜水艇だった。
「うわっ!」
「避けて!」
カスミが叫ぶ。
間に合わない。
――ドガァン!
激しい衝撃。
「うわあああ!」
ボートが大きく揺れ、レンは咄嗟にリオルを抱き寄せる。
「リザ!」
リザードも船縁を掴んだ。
衝突したギャラドス型潜水艇も大きく揺れ、その内部から聞き覚えのある声が響いてくる。
「何すんのよー!」
「せっかく直したばっかりなのに!」
「また壊れたニャー!」
レンは額へ手を当てた。
「……やっぱり」
「何か言った?」
カスミが振り返る。
「何でもない」
その後。
どうにか岸へ戻った一行を待っていたのは。
「ワシの船を何してくれとるんじゃああああ!」
「「「すみませーん!」」」
船の持ち主である老人、リュウの怒声だった。
◇
壊れた船。
修理費。
当然ながら、旅の途中の少年少女に簡単に払える金額ではない。
結果。
「働いて返してもらうからな!」
というリュウの一言によって、レンたちは彼が経営する海の家を手伝うことになった。
「何で俺まで……」
レンがエプロンを見下ろす。
直接ボートを操縦していたわけではない。
だが。
「サトシだけ働かせるのもね」
「レン!」
サトシが感動したように振り返る。
「やっぱりお前は親友だ!」
「サトシ」
「何だ?」
「注文入ってる」
「え?」
「早く運んで」
「お、おう!」
サトシが慌てて走っていく。
レンは苦笑してから周囲を見る。
人手は必要だ。
なら。
ポケモンたちにも無理のない範囲で手伝ってもらう。
「リオル、これ運べそう?」
レンが小さな料理の皿を見せる。
「リオ!」
リオルは両手で持ち上げる。
重さを確認したあと、危なげなく歩き出した。
「走らなくていいからね」
「リオ!」
一方。
厨房では。
「カゲ!」
サトシのヒトカゲが火を使って調理を手伝っていた。
その隣でリザードも炎を使おうとする。
「リザ!」
「待って待って」
レンが止めた。
「リザ?」
「今の君が普通に『ひのこ』を使ったら火力が強すぎる」
「リザ……」
「でも、ちょうどいい練習にはなるか」
リザードの目が輝く。
「リザ!」
「特訓じゃないよ?」
「……リザ」
「火を使うなら必要な分だけ。料理を焦がさないように、できるだけ小さく」
リザードが調理器具を見る。
いつものバトルでは、強く速く相手へ届かせる。
それを意識して炎を使う。
だが今回は逆、必要以上に出さない。
「リザ……」
口元に小さな炎が灯る。
「もう少し弱く」
「リザ……」
炎が小さくなる。
「そこ」
一定の大きさを維持。
レンは頷いた。
「いい感じ」
「リザ!」
「だから大きくしない」
「リザッ」
慌てて炎を絞る。
横でヒトカゲが楽しそうに笑った。
「カゲカゲ!」
「リザ!」
「張り合わなくていいから!」
厨房に笑い声が広がった。
戦うためだけが技の使い方ではない。
火力を抑える、細かく調整する、それも立派な制御の練習になる。
レンはリザードの炎を見ながら、頭の中へその変化を刻んでいった。
◇
「どうして向こうばっかり客が来るのよ!」
少し離れた別の海の家。
ムサシが悔しそうにテーブルを叩く。
「こっちは全然だ」
コジロウが肩を落とす。
「このままじゃ給料ももらえないニャ!」
三人の後ろで、店主であるオババの目が鋭く光った。
「だったら、向こうに客が行かないようにすればいいんだよ」
「なるほど!」
ムサシたちが顔を上げる。
三人の顔にいつもの悪い笑みが浮かんだ。
◇
昼を過ぎる頃には、リュウの店はかなり賑わっていた。
ピカチュウとゼニガメが客を呼び込み、フシギダネが器用につるを使って料理を運ぶ。
リオルも配膳に慣れてきたらしく、最初より安定して皿を運べるようになっていた。
「リオ!」
「ありがとう。次は三番のテーブル」
「リオ!」
レンが指示すると、リオルは嬉しそうに向かう。
リザードも炎の調整を続けていた。
「リザ……」
小さな炎。
一定。
必要な時間だけで止める。
「うん。さっきよりいい」
「リザ!」
「戦う時にも使えるよ。出力を細かく変えられれば、相手との距離に合わせられる」
「リザ……!」
途端にやる気が増した。
「やっぱり特訓になってるじゃない」
カスミが呆れた顔をする。
「俺は休ませるつもりだったんだけど」
「レンのポケモンってレンに似てるわね」
「そうかな?」
「強くなる話になると急に目が変わるところ」
レンは答えに詰まる。
リザードとリオルを見る。
二匹とも否定しなかった。
「……似てるかも」
その時だった。
厨房から煙が上がる。
「何!?」
「料理が!」
さらに客席では皿が次々とひっくり返り、あちこちから悲鳴が上がった。
「きゃあ!」
「何だ!?」
レンの表情が変わる。
「リオル!」
「リオ!」
リオルがすぐに客席へ向かう。
レンは騒ぎの中心ではなく、まず人を見る。
転倒した客。
泣いている子供。
割れた皿。
「サトシ、犯人探しは後!」
「え?」
「先にお客さんを外へ!」
「分かった!」
サトシもすぐ動く。
「ピカチュウ!」
「ピカ!」
タケシとカスミも客を誘導し、リオルは倒れそうになったテーブルを支える。
厨房。
火が広がりかける。
「リザード!」
「リザ!」
レンが走り込む。
炎を使えば逆効果になる。
「水を持ってきて! リザードは燃えそうな物を火から離して!」
「リザ!」
リザードが『きりさく』で燃え移りそうな布を固定部分から切り離し、安全な場所へ蹴り飛ばす。
ほどなくして火は消し止められた。
大きな怪我人はいない。
だが。
客はほとんどいなくなっていた。
「ひどい……」
カスミが荒れた店内を見る。
リュウは何も言わず壊れた椅子を起こした。
その表情は先ほどまでとは違っていた。
◇
夕方。
レンたちはリュウから事情を聞いた。
この店には借金がある。
期限までに返せなければ。
店だけではない。
リュウが大切にしている船まで手放さなければならない。
「ワシはな」
リュウが海を見る。
「いつか、あの船で世界中の海を回ってみたいんじゃ」
サトシが顔を上げる。
「世界中?」
「ああ。若い頃からの夢じゃ」
「だったら諦めちゃ駄目だ!」
サトシが即座に言った。
リュウが振り返る。
「夢なんだろ?」
サトシは拳を握る。
「だったら最後までやってみようぜ!」
「ピカ!」
レンはサトシを見る。
迷いがない。
こういうところは。
やはりサトシらしい。
「俺もそう思う」
「レン……」
「俺にも夢があるから」
世界最強のポケモントレーナー。
まだあまりにも遠い。
バッジは三つ。
リザードもリオルも成長の途中。
それでも。
「諦めたら、そこで近づけなくなる」
「リザ!」
「リオ!」
リュウはしばらく黙っていたが。
やがて笑った。
「お前さんたちには敵わんな」
その時。
「サトシー!」
聞き覚えのある女性の声が響いた。
「え?」
サトシが振り返る。
「サトシ!」
「母さん!?」
そこにいたのはハナコそして。
「いやあ、こんなところで会うとは奇遇じゃのう」
「オーキド博士!」
レンも驚く。
オーキド博士は笑いながら近づいてきたが。
レンの隣にいるポケモンを見た瞬間。
目の色が変わった。
「おお!?」
「リザ?」
「レン、そのリザードは!」
「ヒトカゲが進化したんです」
「やはりそうか!」
博士はリザードの周囲を回りながら観察する。
「体格もいい。尾の炎も安定しておる。進化してからどれくらいじゃ?」
レンが答える。
「まだそれほど経ってません。進化直後は歩幅も重心もかなり変わったので、一度基本から調整し直しました」
「ほう!」
「今はだいぶ馴染んできましたけど、まだ伸ばせるところはあります」
「リザ!」
リザードが胸を張る。
オーキド博士が笑った。
「本人もその気のようじゃな」
「はい。むしろ休ませる方が大変です」
「リザ!?」
「本当でしょ」
「リオ!」
リオルが頷く。
「リザ!」
今度はリザードとリオルが言い合い始める。
その様子を見ていたハナコが笑った。
「レン君もすっかりトレーナーらしくなったわね」
「まだまだですよ」
「サトシも少しはレン君を見習ってる?」
「母さん!」
「冗談よ」
「絶対冗談じゃないだろ!」
笑い声が広がった。
◇
翌日、アオプルコでは大きな催しが開かれることになっていた。
ビューティー&ポケモン仮装コンテスト。
多くの観光客が集まる、これを利用して店を宣伝できればリュウの店を立て直せるかもしれない。
「よーし!」
サトシが拳を上げる。
「絶対にお客さんいっぱい呼ぶぞ!」
「ピカ!」
カスミも参加することになり、会場は朝から大勢の人で賑わっていた。
レンはリザードとリオルを連れ、宣伝を手伝う。
「無理に引っ張らないで。興味を持ってくれた人に声をかけよう」
「リオ!」
「リザ!」
そんな時、会場の一角が騒がしくなった。
女の子たちの声。
そして。
聞き覚えのある声。
「やれやれ。相変わらず騒がしいね」
レンが振り返る。
「……シゲル」
そこには取り巻きの女の子たちを連れたシゲルが立っていた。
「久しぶりだな、レン」
「久しぶり」
シゲルの視線がリザードへ向く。
「へえ」
僅かに目が細くなる。
「進化したんだな」
「うん」
「リザ」
シゲルは少しだけリザードを観察したあと、レンへ視線を戻す。
「順調みたいだね」
「シゲルも?」
「もちろん」
二人の間に静かな空気が流れる。
険悪ではない、だが互いに相手がどれだけ進んだのかを意識している。
「ところでレン」
「何?」
「バッジはいくつ集めた?」
レンはケースを取り出す。
三つ。
グレーバッジ。
ブルーバッジ。
オレンジバッジ。
「今は三つ」
「三つか」
シゲルが笑う。
「相変わらず丁寧に進んでるみたいだね」
「シゲルは?」
「さて、どうだろうね」
「隠すんだ」
「ライバルに手の内を全部教えるほど、ボクは親切じゃないよ」
レンの口元が僅かに上がる。
「そっか」
「何だい?」
「なら、次に会った時を楽しみにしてる」
一瞬。
シゲルの笑みが深くなった。
「それはこっちの台詞だよ、レン」
その時。
「シゲル!」
大声。
サトシが走ってきた。
「何しに来たんだよ!」
シゲルがゆっくり振り返る。
そして先ほどレンへ向けていたものとは少し違う笑みを浮かべた。
「やあ、サ~トシ君」
「その呼び方やめろ!」
「相変わらず元気だけはいいみたいだね」
「何だと!」
「ところで、サ~トシ君はバッジをいくつ持ってるんだい?」
サトシが胸を張る。
「三つだ!」
「へえ」
シゲルがわざとらしく驚く。
「思ったより頑張ってるじゃないか」
「思ったよりって何だよ!」
「そのままの意味だけど?」
「シゲルー!」
ピカチュウがサトシの肩で苦笑する。
「ピカ……」
レンも思わず笑ってしまった。
「レン! 笑うなよ!」
「ごめん。でも、久しぶりに見たなと思って」
「何を!?」
「二人のそれ」
「それって何だよ!」
シゲルは肩をすくめる。
「サ~トシ君と一緒にされるのは心外だけどね」
「なんだとー!」
「はいはい、喧嘩しない!」
カスミの声が飛び、二人の言い争いは一度打ち切られた。
だがシゲルが去る直前にもう一度だけレンを見る。
レンも視線を返した。
言葉はいらない、次に会う時どちらが先へ進んでいるか互いに楽しみにしている。
◇
コンテストが始まる。
会場は一気に盛り上がった。
カスミもポケモンたちと参加し、サトシたちは客席から応援する。
「カスミー!」
「ピカピカー!」
レンも拍手を送りながら、会場全体へ目を向けていた。
平和だ、少なくとも今のところは。
(そろそろかな)
そう思った直後、海面が大きく盛り上がった。
「何!?」
観客が振り返る。
現れたのは巨大なギャラドス型潜水艇。
「やっぱり!」
「何がやっぱりなの!?」
カスミの声が飛ぶ。
潜水艇の上に三つの影。
「何だかんだと聞かれたら!」
いつもの口上が始まる。
「ロケット団!」
サトシが叫ぶ。
「今度こそ邪魔させないぞ!」
ロケット団の攻撃が始まる。
会場が混乱し、観客たちが一斉に逃げようとする。
「押さないで!」
レンが叫んだ。
この人数で一斉に出口へ向かえば、それだけで危険になる。
「リオル、こっち!」
「リオ!」
「子供たちを出口へ誘導して!」
「リオ!」
リオルが走る。
「リザード!」
「リザ!」
「逃げ遅れた人を手伝う! 攻撃はまだしない!」
「リザ!」
レン自身も観客の流れへ入る。
「慌てなくて大丈夫です! こっちから出られます!」
タケシもすぐに意図を理解した。
「俺は反対側をやる!」
「お願い!」
一方、サトシはロケット団へ向き合う。
「ピカチュウ!」
「ピカ!」
ロケット団の潜水艇から攻撃が放たれる。
さらにミサイル。
「危ない!」
カスミが叫ぶ。
「ヒトカゲ!」
サトシの声。
「『かえんほうしゃ』!」
「カゲェェェ!」
ヒトカゲの炎が放たれる。
飛来する攻撃を迎え撃ち、軌道が逸れる。
「何ぃ!?」
ムサシたちが叫ぶ。
「もう一回!」
サトシの指示でヒトカゲが炎を吐く。
ロケット団の攻撃は、逆に自分たちへ。
「ちょっと待って!」
「こっちに来るぞ!」
「ニャー!」
爆発
「「「やな感じー!」」」
ギャラドス型潜水艇ごと。
ロケット団が吹き飛んでいく。
観客から大きな歓声が上がった。
「やった!」
サトシが拳を上げる。
「ピカピカ!」
「カゲ!」
レンは避難させた最後の子供を家族のところへ送り届けてからサトシを見る。
「やるじゃん」
「へへっ!」
サトシが鼻を擦る。
「当然だろ!」
その少し離れた場所で、シゲルも腕を組んだままサトシを見ていた。
「……ふーん」
いつものように馬鹿にする言葉は今回は出なかった。
◇
騒動が終わったあとリュウの店には以前よりも多くの客が集まっていた。
コンテスト。
騒動。
そしてサトシたちの活躍、色々なことが重なった結果店は立て直すことができた。
そして数日後の海岸。
リュウは修理された船へ荷物を積み込んでいた。
「本当に行くんだな!」
サトシが言う。
「ああ!」
リュウは笑う。
「世界一周。今度こそ行ってくるぞ!」
「頑張れよ!」
「ピカ!」
船がゆっくりと岸から離れる。
レンはリザードとリオルを連れ、その姿を見送っていた。
「夢って」
レンが呟く。
「リザ?」
「リオ?」
「思ってるだけじゃ、近づかないんだよね」
二匹がレンを見る。
「毎日少しずつでも、その方向へ進まないと」
世界最強、口にするのは簡単だ、だがそこへ辿り着くためには一つずつ積み上げるしかない。
三つのバッジ。
リザードの成長。
リオルの成長。
まだ、ほんの途中。
「俺たちも負けてられないね」
「リザ!」
「リオ!」
リザードが拳を握り。
リオルも力強く頷いた。
その後ろから。
「レンー!」
サトシが呼ぶ。
「そろそろ行こうぜ!」
「今行く!」
レンは振り返る。
オーキド博士、ハナコ、そしてシゲルともここで再び別れる。
シゲルは少し離れた場所で。
レンへ片手を上げた。
「次に会う時まで、遅れるなよ」
レンも手を上げる。
「そっちこそ」
「言うじゃないか」
シゲルが笑う。
「おいシゲル!」
サトシが割って入る。
「俺には何もないのかよ!」
シゲルは一瞬考え。
いつもの笑みを浮かべた。
「頑張ってね、サ~トシ君」
「だからその言い方やめろー!」
海岸にサトシの声が響く。
レンは笑いながら。
リザードとリオルと共に歩き出した。
束の間の休日は終わった。
次の目的地へ、そして世界最強へ。
レンたちの旅は再び動き始める。