リリカルマジカル、アーカイブ! 作:なのはEXCEEDS面白かった
EXGVの円盤だとレイハさん達の音声切り替えられるらしくて流石におもろなので初投稿です。
2026/10/19追記
執筆に使っていた「文字数カウントメモ」アプリが不具合により動かなくなり、データが全ておじゃんになったので更新までしばらく掛かります。
管理局外局特例調査機関EXCEEDS。
地球を巻き込んだ大事件『ケース:マクスウェル』の顛末を受けて、管理外世界に関して常に後手に回る時空管理局や聖王教会のやり方に疑問を覚えた八神はやてが立ち上げた組織であり、「世界の存亡に関わる問題を現地の組織と人材によって解決する」という活動方針のもと、管理外世界が抱える様々な問題解決の手助けをしている小規模な団体だ。
小規模といっても、組織の中枢を担う八神家の面々をはじめとして、現場では既に不動のエースと名高い高町なのはや、13歳という若さで難関の執務官試験に合格したフェイト・
初出動となった機械信奉国家ダルナザの一件や、続く瑞穂での侵略種災害など、連続して世界滅亡の危機を阻止している事からその高い実力を示していた。
「──で、今の所成功続きなのは良い事なんやけど……」
思慮なき救いは恒久的平和につながらない。その信条に基づいて、それぞれの世界にスカウトした現地住民によるEXCEEDS支部の運営や協力組織を立ち上げて継続的な問題解決を行える体勢を整えた彼らだったが、ここまでの経験を経てひとつの問題点が浮かび上がっていた。
「やっぱり人手が足らん!!」
「ですよね〜」
「今のEXCEEDSはブラック組織に片足どころか腰まで浸かっている状態です」
EXCEEDS本部の執務室にて、瑞穂での一件を纏めた時空管理局への報告書を作成している最中。
総督である八神はやては、早急にこの問題に着手せねばならないと気勢を上げていた。
ぐぐっと背伸びも兼ねて拳を突き上げる彼女の言葉に苦笑いを浮かべて同意するのは、広報管理官として働くノーティカ・リン。
そして、端末を操作して全職員の勤務時間を確認し、改めて自分達の所属する
3人とも、ここ数ヶ月において全休はおろか半休ですら久しく取っていないという修羅の道を歩む者たちである。
このままやと私たち、魔導師やなくて
「瑞穂の一件で十分な実績は積めた訳やから、お上から追加の人材が欲しいところやけど……」
「そのお上も人材不足に悩まされている側ですからねえ」
「こうなったら、頼むか……? すずかちゃん達に……!」
「それは最終手段、というより禁じ手に近いのです。今は猫の手でも借りたいのは確かですが」
「分かっとる分かっとる。流石に冗談よ」
そう言って、リインに向けてひらひらと手を振りながら席に座り直すはやて。革張りの高級椅子はクッションが効いていて、終わりのない事務作業に疲れ果てたはやての体を実家のソファよりも優しく受け止めてくれるものの、目の前の問題を解決してくれる訳では無い。
これまでの事件解決もなのはやフェイト、ヴォルケンリッターも含めた特記戦力による力押しと、道中でフィリーやゼオ、久瀬シイナといった優秀な現地協力者を確保出来た運による所が大きい。
しかし、前者2名はようやく安定した生活を手に入れた父娘という事でスカウトを諦め、後者は能力の特性や世界情勢も鑑みた結果EXCEEDS瑞穂支部の切り札として現地に残しているため、本部で働く人員の確保という面では黒字どころか赤字である。
人材不足に嘆くのは新規立ち上げ組織の常ではあるが、世界の危機に対応するための組織がこの有様では恰好がつかないというもの。ダルナザから瑞穂まで、次元を超えても付き纏う世知辛い世の中を嘆くはやてであった。
「どっかに落ちとらんかなあ、フレッシュな人材」
「八神総督、流石に人は畑から採れませんです」
「管理外世界も増え続けてますから、こればっかりは根気よくスカウトし続けるしかないですねぇ。──あ、フレッシュな人材といえば!」
総督自らが先頭に立って作成した広報兼勧誘用の動画でも端々からブラックさが滲み出ている有様で、果たして望むような人材が集まるものなのかと疑問に思うノーティカ・リンであったが、口に出して虎の尾を踏みに行くような真似はしない。
代わりに、最近管理局から通達が来ていた「新たな管理外世界」と、そこから送られてきた救援要請についての話題を差し向けた。
「次の任務で行く予定の管理外世界とかバッチリじゃないですか? たしか、識別名は『学園都市キヴォトス』でしたっけ。学園都市なんて名前に付くくらいですから、きっと学生さん達も沢山いるはずですよ!」
「あ〜。キヴォトスなあ……」
しかし、対するはやての返事は何やら訳ありの様子。
喉に小骨がつかえたような微妙な反応にあまり触れられたくない話題だったかとリンは内心焦りを覚えるも、すぐにその原因に思い当たる。
最近発見された管理外世界──現地民の呼称を参考に識別名を「学園都市キヴォトス」とする世界──から送られてきた救援要請の内容は、連邦捜査部シャーレなる現地組織の
「自分らの面倒も見きれていないのに、他人の面倒まで見る余裕なんて無いんよぉ……」
「でも、
「そうなんよなあ〜!」
にっちもさっちもいかない、と頭を抱えるはやて。
現在進行系で人材不足に喘ぐ組織の長としては現地組織の業務改善など現地で完結させてくれ、というのが正直な感想なのだが、EXCEEDSという組織の目的と理念がそれを許さない。
そしてなにより──。
「というかな、もう被害が出てもうてるらしいんよ。世界を跨ぐ規模のでっかいやつ」
「えぇ!? それってもはや管理局の管轄になるんじゃ……」
「いやあ、それがまた絶みょ〜な塩梅でな?」
はやてとリインの言う所によると。
その滅びた世界というのが、ある時点を境に分岐した別の可能性の同一世界──いわゆるパラレルワールドとしての学園都市キヴォトスであり、管理外世界として登録されているキヴォトスは他の次元世界には一切の影響を出さず独力で一連の事件を解決しているのだという。
「つまり……差し引きでは影響が出ていない、と?」
「パラレルとはいえ世界一個滅びとる訳やから、プラマイゼロとは口が裂けても言えへんけど……どうも
「管理局が被害の事を知ったのも、現在観測しているキヴォトスでの現地調査の結果らしいです。それを受けて、管理局は他の管理世界や管理外世界にもパラレルワールドが存在するのか調査したのですが……」
「パラレルワールドは観測出来なかったんですね」
「です。でも
「ちゅー訳で、今のところ
他ならぬキヴォトス自身によって、問題の先送りを封じられた形である。
管理局の上層部は、
「それで、今の管理局が対応するには少し緊急性が足りなさそうなキヴォトスからの救援要請をどうするか、巡り巡ってEXCEEDSまでお鉢が回ってきたのです」
「カリムやクロノくん達お偉方は大変そうやな〜、と
「元々EXCEEDSはそういった先遣隊的役割も兼ねた下部組織ですからね。了解しました、現地の調査と活動準備はこちらで進めておきます」
「ごめんな、お願いな〜」
こうして、瑞穂での侵略種災害を解決に導いた管理局外局特例調査機関EXCEEDSは、新たなる任務の地「学園都市キヴォトス」への着任に向けて動き始めた。
たとえ自分達の組織が火の車であっても、他組織の立て直しが次元世界の危機を救うのであれば喜び勇んで事業改善のお手伝いをする。悲劇の芽を事前に摘み取ることこそが、EXCEEDSの存在意義なのだから。
その為にも、まずは目の前の書類の山を片さねばならない。はやて達は半ば打ち合わせと化した雑談を切り上げると、疲れを滲ませながらも慣れた手つきで書類の山を捌いていくのだった。
「──ではこれより、我々EXCEEDSは管理外世界『学園都市キヴォトス』へと着任します。事前の打ち合わせ通り、高町調査員には瑞穂に引き続き各地の現地調査を。ハラオウン執務官には連邦捜査部シャーレと連携した内勤業務をお願いします」
「分かりました!」
「了解です」
しばらくの時が経ち、遂にEXCEEDSがキヴォトスへと着任する日がやって来た。
世界に学園都市の名を冠するだけあって未成年、それも中高生が主となって政府や国家に類する「学園」を運営するという独特な気風を持つ管理外世界。
その世界観に合わせるため、キヴォトスにおける国際連合に相当する「連邦生徒会」との顔合わせには、総督である八神はやてはもちろん、(現場に出突っ張りのせいで不登校気味ではあるが)いちおう中学生である高町なのはとフェイト・T・ハラオウン。
そして、彼女たちと同年代であるユーノ・スクライアがメンバーとして選定されていた。
無限書庫やEXCEEDSでの内勤生活に慣れきったせいで、こういった場には不慣れなユーノが若干の居心地の悪さを感じる中、フェイトを挟んで隣に立っていたなのはが天真爛漫な笑顔で話しかけてくる。
「頑張ろうね、ユーノくん!」
「……うん。お互い頑張ろう、なのは。フェイトも事務のサポートよろしく」
「私の方こそ。内勤業務のやり方、勉強させてもらうね」
ジュエルシードを巡る事件で知り合った時から更に明るさを増したなのはの言葉とその振る舞いは、ユーノの緊張をいくらか解してくれた。
今回の顔合わせで一緒に向かうEXCEEDS側の人間は、同じ組織に所属している間柄という枠では収まらない、半ば身内のような関係だ。挨拶の場でドジを踏んだとしても、それを嘲笑うような人はいないと断言出来る。
そういった点では、唯一の心配事は連邦生徒会だが──こちらには
「さあ! 各自気合も入ったところで、さっそく行こか! 学園都市キヴォトスへ!」
その言葉と共に、肩に羽織ったコートを翻して転移装置へと向かう八神はやて総督。ヴォルケンリッターがそれに続き、なのは達も転移時の境界を示す枠内に収まるよう移動した。
一度に大勢の人間を転送するということで普段使っているものよりも一回り大型の装置となっているが、それでも9人となると少し手狭に感じてしまう。
同様に転移の難易度もそれなりに上がっているのだが、今回に限ってはシャマルとユーノ、補助魔法のエキスパートが2人もいる時点で変化は無いのと同じだった。
ユーノが装置と魔法を並立操作して転移先であるキヴォトスとの接続を確かなものにし、シャマルが補助魔法でその繋がりを補強する。
数分もしない内に集団転移の準備を終えた2人によって他次元世界への転送が始まると、瞬きほどの合間に特有の浮遊感を覚え、そして──。
『Protection』
「レイジングハート!?」
「バルディッシュも……! いったい何が!?」
──キヴォトスへ足を踏み入れた次の瞬間には、
それは、敢えて言葉にするならば
変化、より正確に表現すれば「上書き」とでも言うべき抗いようのないそれから主を守るべく、独断で防護魔法を起動した魔導端末
魔法の行使に特化したインテリジェントデバイスであるが故の尋常ならざる速度で展開された魔力の盾は、しかし意味を成さず。
「──なのは、フェイト! き、君たちの上に……!」
「へ? ……あれっ、ユーノくんも! その天使の輪っか……」
「バルディッシュにも浮かんでる。これが
驚きの声を上げつつも長年の経験から素早く身構えるなのはたちの頭上、そして何故かRHとBDにも、天使の輪のような真円状の光輪、ヘイローが出現した。
それと同時にぽんっ、と何処かコメディチックな音と共に、はやての姿が煙に包まれる。
「はやて!」
「主はやて!」
「けほっ……大丈夫や、みんな安心して!」
すわ襲撃かとヴォルケンリッター達が殺気立つが、すぐに咳き込みながら姿を表したはやての変化に驚き、目を見開いた。
「はやてちゃん、変身魔法が……」
「やっぱし弾かれたか〜。そうなるかもなあとは思っとったけども」
「おい、リインもちっこくなってるぞ」
「が、頑張って大人のレディになったのに!?」
不自然なほどすぐに晴れた煙の後にあったのは、同じく頭上にヘイローを浮かべた、なのは達よりも少し身長が低い茶髪のショートカットに十字の髪飾りが特徴の
急に視点の高さが変わったことで違和感は付き纏うものの、単純に魔法が解除されただけなので健康が損なわれたり心身に悪影響が出たりといった事はない。
連邦生徒会の代表者との通信や現地調査の報告などを加味した上で、想定されていた可能性のひとつが当たっただけに過ぎなかった。
つまるところ、学園都市キヴォトスという世界のルールがEXCEEDSにも適用されたのだ。
ヴォルケンリッター(リインを除く)以外の全員、そして
リインは何故か小さくなった。
突然のことに戸惑うEXCEEDS一同だったが、現状悪影響は見られないとして、彼女たちが転移してきた大部屋──連邦生徒会のレセプションルームへと入室してきた人影に、ひとまず姿勢を正す。
「管理局外局特例調査機関EXCEEDSの皆さん、キヴォトスの外からようこそいらっしゃいました。連邦生徒会長代行の七神リンと申します。なにやらトラブルが発生した様子でしたが、問題ありませんでしょうか?」
「あはは、ご丁寧にどうも。EXCEEDS総督、八神はやてです。少し転送に手間取ってしまっただけなので、お気持ちだけありがたくいただきます。……わたしも通信の時とは
「分かりました。それでは皆様を会議室に案内します、こちらへどうぞ」
「……ちょっと?」
「黙ってろ」
頭一つどころか、優に二つか三つは変わっているであろうはやての後ろ姿を見て、思わず呟いたなのはにヴィータの小突きが入る。
何食わぬ顔ではやての側に侍るヴィータへと恨みがましい視線を向けたなのはだったが、今がオフィシャルな場であることを思い出し、慌てて姿勢を整え、連邦生徒会と連邦捜査部シャーレとの顔合わせの場に移動する列へと戻っていくのだった。
これが、EXCEEDSがキヴォトスに着任し「連邦調査部エクシーズ」として活動を開始するまでの流れである。
彼女たちの今回の使命は、連邦捜査部シャーレの過剰な業務体制を改善すること。そして、任期中に発生した不測の事態の解決に協力すること。
無限書庫の司書としてヘッドハンティングを受けるほどの事務能力と、それに適した魔導技術を持つユーノが中心となって進める今回の案件は、日常茶飯時である生徒達の小競り合いやトラブルは度外視した上で何事もなければ、はやて達の想定通り、かなりの余裕を持って終わる事が出来る。
先生にも就職は生徒が卒業した後であれば、という条件付きではあるものの、積極的な勧誘の許可を貰っている。
ここで目当ての「フレッシュな人材」を稼いでEXCEEDS安定の足掛かりにするぞ、と意気込んで勧誘活動を行っては隠しきれぬブラック臭から生徒達に警戒されるというお決まりの流れも出来つつあり、とても平和な時間が流れていた。
『氷海地域にて、デカグラマトンの信号を再観測』
──平穏が終わる