リリカルマジカル、アーカイブ! 作:なのはEXCEEDS面白かった
ミレニアムサイエンススクールから列車で出発して、自治区を出てから何本も路線を乗り継ぎ、ハイランダー鉄道学園の車掌さんから向けられる不審そうな目を先生の大人ぱわーで誤魔化しながら移動すること3日ほど。
私たちは遂に、氷海地域へと辿り着きました。
EXCEEDSが以前お手伝いしていた瑞穂という世界では、侵略的外来種という
終点の駅から目的の座標まで私達を乗せてきてくれたヘリのメインローターが回転を止め、機長席で実際にヘリを操縦していたトキさんと、見学のため副操縦士席(車で言うところの、いわゆる助手席)に乗っていた私、高町なのははヘッドセットを外します。
「それではなのは、足元に気をつけて」
「はい! 操縦ありがとうございます、トキさん!」
トキさんにお礼を言いながらヘリから降りて、見渡す限りに青白い氷が広がる氷海地域の大地を踏みしめて。頬を刺す冷たい空気の中、うんと思い切り背筋を伸ばすと、パキパキと小気味よい音を立てて体が解れていきます。
懐から飛び出たレイジングハートが周囲の索敵のため探査魔法を走らせるのを横目に、きょろきょろと辺りを見渡して皆の様子を確認すると、列車で移動していた辺りから既に辛そうな顔をしていた先生が、両手で腰を押さえながら万感の思いで空を見上げているのが見えました。
"ついた……"
「はい、到着しました」
「先生、お疲れ様です〜」
"なのはとトキは元気そうだね……"
「私はEXCEEDSのお仕事で、こういった場所には慣れてますので」
「私はメイドですので。気温は低いですが、幸い風が吹いていないので稼働に支障はありません。まだ耐えられる寒さです」
長距離移動とメイドに何の関係があるのか、とても不思議な返事をするトキさんですが、彼女のメイドへのこだわりは本物だと感じます。
ジャケットの空調機能によって、ある程度の寒さや暑さには耐性がある私ですが、それでも少し肌寒いと思うくらいの気温の中、トキさんはなんとノースリーブでミニスカートという露出度高めなメイド服で活動しているのです。
一端の女学生としてオシャレ道を歩み始めた私には分かります。極寒の中でミニスカートを着るには、とてつもない"覚悟"が必要なのだと。
そこにノースリーブが加わり、メイド服に空調機能が付いている訳ではないとなれば、トキさんがこの寒空の下で平然としているのは彼女が持つメイドとしてのプロ意識と根性の賜物です。
……私が知っている身近なメイドさんといえば、月村家に仕えているノエルさんやファリンさんですが、彼女たちもどんな状況であれ月村家のメイドとしてメイド服を着る事を貫くのでしょうか。ちょっと気になります。
そんな益体も無い事を考えていると、凍った地面をパキリと踏み割りながら近付いてくる電動車椅子のモーター音が聞こえました。
視線を向けると、そこには予想した通りの人物が。少しオーバーな仕草でぶるりと身震いしてみせた彼女は、トキさんの発言にぶつくさと文句を言いながらこちらへやって来ました。
「何を言っているんですか。十分寒いですよ? 海が凍るほどなんですよ?」
"防寒対策バッチリだね、ヒマリ"
「わあ、凄い。モコモコですね、ヒマリさん」
「ええ、改造した防寒スーツを2枚着ていますので。かくも儚げな清楚系天然病弱美少女が着るには少々無骨なシルエットですが、これも寒さという
「にゃはは……」
「こんな事なら、移動中にでもエクシーズのジャケットを個人購入すべきでした」
ミレニアムを出発する前の彼女は、髪や服が全体的に白いことも相まって外見だけなら儚げな印象を受けたのですが……氷海地域に辿り着いてからの彼女は、例えるならばそう、羊。
テレビで見る探検家の人たちが着ているような、フードに大きなファーの付いた黄色い防寒着を身に着けていて、ヒマリさんの言葉を信じるのであれば、その下にもう一着同じものを着込んでいます。
頬に冷たい風が当たるのも嫌なのか、深めにフードを被った顔はファーに半ば覆われかけていて、本人もそれに少し不快そうな表情を浮かべていました。
トキさんが意識の高いメイドさんなら、ヒマリさんもまた筋金入りの寒がりさんだな〜と半ば苦笑いを浮かべていると、そんなヒマリさんの後ろにぬっと現れる肌色多めの人影。
「やっほ〜」
「……」
私の中ではすっかり過激な格好でお馴染みになってしまった、エイミさんです。先生曰く、特殊な体質かつ極度の暑がりさんらしいのですが……その言葉が嘘でなかったことを、私は今思い知りました。
「いつもよりちょっと身体が軽いかも。涼しいからかな」
そんな世迷言を言いながら準備運動をする彼女の格好は──なんと黒ビキニ。
申し訳程度にマフラーを巻いてジャンパーも着ていますが、当然ながら下半身は水着とブーツのみ。私が着ているEXCEEDSのジャケットとは異なり完全な民生品なので、防寒効果なんて微塵も働いていないはずです。
もう一度言いますが、私たちが今訪れている氷海地域は地球でいう所の極地に当たり、見渡す限りに氷の大地が広がる極寒の地。
なのにエイミさんはけろっとしているどころか、ミレニアムにいた時よりも過ごしやすそうな様子です。
これでは確かに、氷海地域より温暖なミレニアムでは制服なんて着ていられないのかもしれません。……だからといってあの下着はナシだと思いますが。
そんな、見ているこちらが寒くなってきそうな格好をしているエイミさんに、相変わらずモコモコのヒマリさんが呆れた視線を向けながら話しかけました。
「エイミ……今さらではありますが、何かおかしいと感じませんか?」
「え、何が? ──ああ、この水着? 先生が選んでくれたの。いいでしょ? ジャンパーとネッククーラーもだよ」
「……えっ、ええっ!?」
『F2 mode, standby, ready』
まさかの爆弾発言に、思わず目を見開いて先生を見ます。
私の驚きように異常事態と思ったのか、索敵を終えたレイジングハートが戻ってきて、いつでも魔法を撃てるように形態変化しました。
流石にデバイスもヘイローも無い人に魔法を撃ちはしませんが、生徒に贈るにはちょっと過激だと思う水着は、先生へ向ける視線を否応なしに厳しくします。
「……先生……?」
「先生?」
トキさんとヒマリさんからも疑いの目を向けられた先生は、快復してきた顔色をもう一度スーッと悪くして──しかし、慌てて言い訳を述べるでもなく、まっすぐな澄んだ瞳で口を開きました。
"まずは上着を羽織らせた事を褒めて欲しいと思う"
……。
3人でアイコンタクトを交わした協議の結果は
対して、無罪判決に深〜い安堵のため息を吐く先生の心境を知ってか知らずか、エイミさんはジャンパーの袖をばさりと振って不満げな表情です。
「先生、これ本当に着てないと駄目? 暑いんだけど」
"万が一風邪を引いたら困るから、そこは我慢してね……"
どうやらほぼ矛盾脱衣状態の今でも、ジャンパーを脱ぎたがる程度には暑いらしいです。もはやここまで来ると、私たちとエイミさんの間でどうにか妥協点を探すしかありません。
見渡す限りの銀世界に水着姿の女子高生がぽつねんと立っている姿は、見た者すべてが思わず目を疑ってしまう異常事態ですが、なんと露出度の面では普段のエイミさんとあまり変わらない──それどころかシンプルな黒ビキニを着ている分、格好の過激さでは今の方が大人しい可能性すらあります。
なんだか騙されている気分ですが、ここらで区切りをつけないといつまでも話が堂々巡りしてしまいます。発端となったヒマリさんが咳払いと共に話を軌道修正して、私たちはデカグラマトンの調査を始めました。
「では、改めまして。私たちはデカグラマトンの信号を追跡し、ここに来ました。任務はシンプルです。ここを隈なく調べ、異常を確かめる。手始めに、なのはさん。先ほどのレイジングハートの探査結果について共有していただけますか?」
「はい! レイジングハート、お願い」
『All right, Master』
チカチカと瞬いたレイジングハートによって、ヒマリさん達の端末に探査魔法で得た情報が送信されました。すぐさま電子地図の情報と突き合わされて、端末上に表示された氷海地域の地図上に、デカグラマトンの勢力と思しき存在の位置が分かりやすく可視化されます。
大小様々なサイズの光点が氷海地域の全体に広がっていますが、その中でも目を引くのは、私たちが今いる氷河から離れた場所にある2つの反応と、その向こう──それなりの都市が丸々ひとつ収まりそうな規模で画面を塗り潰す、巨大な反応でした。
「これは……つまり、どういう事?」
「情報をそのまま受け取れば、超々巨大なデカグラマトンの眷属がいるのでは?」
これまでデカグラマトンの勢力と対峙してきたヒマリさん達もこの冗談みたいな探査結果には困惑していて、端末を前に首を捻っています。
表情を険しくした先生が口元に手を運び、なにやら考えを働かせている横で、トキさんが挙手をしながら私に問いかけました。
「失礼ながら、出力が足りずこの区画まで探査魔法が行き届かなかった、とかではないのですか?」
「う〜ん。これは私たちの魔導技術を信用してもらうしか無いんですけど……キヴォトスの魔力伝導率は比較的高い方なので、私とレイジングハートの探査魔法なら問題無くこの区画もカバー出来ているはずです」
「……なるほど。ならばヒマリ様の言う通り『超々巨大なデカグラマトンの眷属』とやらがここに居座っていると考えた方が良いでしょうね」
「とりあえず、こちらでももう一度探査魔法を使ってみますね。レイジングハート!」
『Area Search』
薄く魔力を伸ばすようにして、氷海地域に散らばるデカグラマトンの反応を再度拾い上げます。私を中心として同心円状に広がる感知範囲が、疎らに散らばる小さな反応をいくつか感じ取って。
──
「っ、敵襲です!!」
『Protection EX』
"な、なのは……!? "
海中を進んでいるとは思えない異常な速度。砲撃での迎撃を諦めた私は、生徒の皆さんに注意を促しながら先生の前に割り込み、バリアジャケットと共に防御魔法を展開します。
流石は歴戦のエージェントと言うべきか、トキさんは私の注意喚起を聞いて即座にその場から飛び退き、アビ・エシュフと呼ばれていたパワードスーツを装備。エイミさんはヒマリさんを車椅子から引っこ抜くように抱えて救出していました。
「こちらでも地下15mより強力なエネルギー体を感知! 速すぎる……これは、氷海の中を
こちらに突撃する「何か」が姿を現したのは、その次の瞬間です。
氷点下の寒さによって分厚く強固なはずの氷河を窓ガラスのように突き破りながら、巨大な白いロボットが勢い良くこちらへと飛び出してきました。
背後にある2つのスラスターから爆炎を噴き出して地面に降り立ったその姿は、まるで四足歩行の獣。
嘴のように鋭く尖った顔や材質不明の角張った装甲といった無機質な見た目とは裏腹に、生き物を想起させる有機的な動きで着地の衝撃を逃がした
砲身の向く先は私。
いや、先生だ。
「させません!!」
「部長は安全な所に退避!」
すかさず放たれたトキさんとエイミさんの援護射撃が砲塔に直撃しますが、どっしりと構えた敵の姿勢は揺るぎもせず。悠々と一拍の溜めを挟んだ後──私たちの視界は青一色に染まりました。
途端に押し寄せる、凄まじい衝撃。
吹き飛ばされそうになった体を飛行魔法で強引に支えながら、私はレイジングハートに指示を出しました。
「シールドを先生に!」
『Aegis Shield Type-Ω, deploy. Protection field generated』
"ありがとう! "
「すみません、なのは。私も入らせてもらいますよ」
「先生! ヒマリさんも! そこから動かないで、くださいね……!」
念のためにと持ってきていたシールドを、この場で一番脆い先生の保護に回します。レイジングハートの制御によってヘリコプターから射出されたシールドが先生の前に滑り出て、彼を囲むように球状のバリアを貼りました。
頑張って車椅子を回収したらしいヒマリさんが華麗な車輪捌きでシールド圏内に滑り込み、これでひとまず非戦闘員を一方的に狙われ続けて敗北するという最悪の可能性は防げたはずです。
後は私がこのビームを何とかするだけ。終わる気配を見せない相手の砲撃に少し旗色の悪さを感じつつも、諦めずに耳をつんざく轟音の中で踏ん張っていると、念話の接続に似た感覚が私を包みました。
それと同時に、揺るぎない声色の先生の声がすっと耳に届きます。
"なのは、後どれくらい耐えられそう? "
反射的に「いつまでも」と答えそうになるのを我慢しつつ、残りの魔力と体力、そして砲撃の強さも加味しておおよその目安を弾き出しました。
「あと……1時間くらいなら!」
"うん、充分すぎるね。それじゃあ、一番大変な役割だと思うけど、敵のビームを魔法で相殺──とかは考えずにこのまま受け止め続けて欲しい"
「分かりましたっ!」
"ヒマリは相手の情報収集と構造計算、出来ればハッキングもお願い"
「お安い御用です」
ただひたすら防御し続ける。先生の指示はユーノ君のと同じくらい分かりやすくて助かります。
与えられた役目を果たすべく、私が張り切って防御魔法の出力を上げる後ろで、次に先生の指示が飛んだのは、敵の狙いを引きつけようと援護射撃を続けてくれているエイミさん達です。
"トキ。私たちは大丈夫だから、砲塔じゃなくて相手の全体に火力投射。アビ・エシュフの火力でその場に釘付けにして! "
「……了解しました!」
"エイミは相手の後ろに回り込んで足下を狙って。長い脚部の方を重点的にね"
「了解。体勢を崩すってこと?」
"見た感じ、今私たちの所に撃たれているのはビームじゃなくて海水だから、勢いが落ちない以上どこかに氷海と直結している
「なるほどね。やってみるよ」
先生が執った指揮の効果はすぐに現れました。
まず最初に、私が砲撃を受け止めている向こう側、恐らく敵がいるであろう位置から、砲撃魔法に似た強い輝きが2回。チカチカと瞬きました。
光の正体は恐らく、トキさんの纏うパワードスーツ『アビ・エシュフ』に搭載された主砲です。科学や魔導とも異なる技術が用いられたというスーツの火力は、かつて戦ったエルトリアのフォーミュラを想起させるほどに常軌を逸していました。
敵──デカグラマトンの預言者の全身から針山のように生えた機関砲からの反撃が始まりますが、スーツの装甲で全て受けきったトキさんは、お返しとばかりに全身のアクチュエーターを唸らせて『アビ・エシュフ』の腕部ガトリングから弾丸の雨を降らせます。
海水のベールに阻まれてその全容を見ることは叶いませんでしたが、本当に単身で敵の巨体を抑え込めているのだとすれば、私の防御魔法でも防ぎ切れるか怪しいほどの馬鹿火力です。
「……崩れた!」
「吶喊します!」
キヴォトスの生徒が持つ力の大きさを再確認して内心冷や汗を流していると、徐々に出力が上がり始めていた敵の海水放射が突然、上へとスッポ抜けました。
ぐおん、と防御魔法を保持していた左腕が持ち上がって開けた視界の向こうでは、エイミさんが即席で作り上げたらしい氷河の落とし穴へ、トキさんが『アビ・エシュフ』による体当たりで強引に敵を押し込んでいるのが見えました。
白亜の巨大ロボットといえど、この連携攻撃を受けてしまっては耐えきれず、四脚で安定させていた姿勢を大きく崩しています。
敵が私たちに初めて見せた、明確な隙。
攻めるべきだという私の判断を裏付けるように、先生からの指示がやって来ました。
"なのは! 思いっきり撃っちゃって! "
「はい! ──せぇ〜、のぉっ!!」
"ヒマリ! "
「ええ。既に仕込みは終わっています」
持っていかれそうになる左腕の勢いに逆らわず、そのまま腕を軸にしてくるりと宙で一回転した私は、右手に構えていたレイジングハートを敵に向けて振り抜きました。
ガチリと杖の内部で機構が作動して、装填されていたカートリッジから魔力が一気に弾けます。
『Load Cartridge. Short Buster』
「ショートバスター!」
排莢と共に圧縮魔力を爆発させて威力を底上げしたショートバスターが、先ほどまでのお返しとばかりに敵の顔面へと直撃しました。
強引に回避されることも考えていましたが、ヒマリさんのハッキングが効いたのか、敵は碌な防御姿勢も取らずに棒立ちのまま私の魔法を受ける事になりました。
着弾。
桃色の魔力弾と、合わせて放たれたトキさん達の攻撃が敵を強かに撃ち抜きますが、生じた爆炎を突き破るようにして現れた白亜の装甲には傷ひとつありません。
預言者の頭上を見れば、そこには私たちにも現れた
『おめでとうございます、超バカの皆さん。まさかゲブラの奇襲を正面から、しかも無傷でやり過ごすとは思いませんでした』
『ち、ちゃんと例の大人を狙って動いたはずなのに、きちんと庇われていましたね……お陰で予想外のデータをとることが出来ました』
『まあ、ゲブラの神秘を貫けなかった時点でこれ以上警戒する必要もなさそうだけどね。撃った本人として感想をどうぞ、キヴォトスの外から来た
「……!」
私よりも幼い──小学生くらいの子供の声?
いやそれよりも、通信装置を乗っ取られている。
思わずヒマリさんの方を振り返りましたが、彼女にとっても異常事態らしく、車椅子から投写されたホログラムキーボードを忙しなく叩いているのが見えます。
"……一体、誰? "
いつになく険しい表情の先生が、未だ姿を見せない声の主に問い掛けます。
目の前にいる預言者も、この声が聞こえてからは動く様子を見せません。まるでこちらの攻撃の一切を意に介していないようなその行動は、とても不気味でした。
問い掛けへの答えなのか、睨み合う私たちと預言者の間にホログラムが3つ、像を結び始め──やがて、3人の少女と思しき人影が姿を表しました。
『自己紹介、したほうがいいかな? 私はアイン』
1人は、口元に小柄な体とは不釣り合いなほど大型で機械的なマスクを着けたツインテールの白い少女。ここでの白い、という言葉は比喩ではなく、文字通り白い──彼女たちはデカグラマトンの預言者たちと同じ様に髪も肌も、身に着けている服装も白かったのです。
防具の
アインと呼ばれた白い少女と向かい合う場所に立っていたもう1人が、無邪気に手を挙げて自己紹介を続けます。
『私はソフ!』
ブレードアンテナを取り付けたヘッドホン、という外見のものを身に着けたショートヘアの白い少女は、笑顔や無邪気な立ち振る舞いから、3人のなかで最も元気──活動的な様子でした。
けれどその元気さは、敵である私たちには牙として向けられるのでしょう。口元の笑顔とは裏腹に、すっと細められた瞳からは、私たちに対する侮りがはっきりと見て取れました。
『自分はオウルと申します』
3人の中央に陣取る最後の1人は、顔の左側を広く覆うように巻かれた黒い包帯に3つの目が浮かぶ、異形の顔をしたロングヘアの白い少女でした。
丁寧な話し方や大人びた髪型なのも相まって落ち着いた雰囲気を醸し出している彼女は、芝居がかった仕草でお辞儀をひとつ。けれど第一声でこちらをバカと呼んだのも彼女なので、この態度は丁寧というよりも慇懃無礼と言ったほうが正しいのかもしれません。
アイン、ソフ、オウル。
預言者ゲブラと合わせて名前が判明した3人の白い少女たちは、自己紹介の締めくくりとして、自らが何者であるかを高らかに謳い上げました。舞台に上がった演者のように、大仰な身振り手振りで述べられた口上は、最後にこう締め括られます。
『私たちはデカグラマトンを敬愛する者』
『私たちは光へと続く
『そして私たちは──最後の王国を準備せし者』
"デカグラマトンの……! "
最後の王国。
これが言葉通り、氷海地域に国を作るつもりなのか、はたまた王国の名を冠する別の存在を示唆しているのか。
そこで私は、奇襲を受ける前に見た、探査魔法に写り込む巨大な光点を思い出しました。
もし最後の王国がそれだったとして、王国でいったい何をするつもりなのか。本体は水底に沈んで喪失したはずなのに、未だ行動を続ける謎に満ちた
預言者の大半が暴走したAIや機械などの無機物であったが故に、限りなく人に近い見た目をした彼女たちはこれ以上ない異質さをもって私たちの前に立ちはだかりました。
「ゲブラ、再び行動を開始!」
「部長と先生はそのまま! なのは、合わせて動ける!?」
「はい! 大丈夫です、頑張ります!」
これ以上の言葉は不要とばかりに動き出した
まずは、あの子達と話をする。話して、理由を聞いて、私たちのお話もして。どこかでお互いに譲り合えないかを話し合わないと。
そのためにも、まずは目の前の敵を、倒す!
「レイジングハート、EXTMモード!」
『All right, Master. Exterminate mode. Drive ignition』
"……えっ、何それ"
この世界では普遍的な武器、銃に似た形状へと変化したレイジングハートを構えます。シールドを1基しか持ってきていないのが悔やまれる所ですが、そこはエイミさん達とカバーしあってなんとかしましょう。
非日常的なこの世界の