【おい!!てぇへんだぞ、オメーら!!】
ビクっ!!!!!!
『うわーーーーーーーー!!!!!!!!』
大地とラビは悲鳴を上げて、大きく仰け反った。その反動で2人ともベンチから転げ落ち、思いっきり腰やら膝やらぶつけてしまい、あまりの痛みに悶絶する。
【ど、どうしたんだ?!スゲー音がしたぞ!!】
【大丈夫か?!何がどうしたってんだ?】
無線の向こうからオセロとドミノの焦った声が聞こえる。
大地とラビは、恥ずかしいやら痛いやらで、しばらく声も出せそうになかったが、ラビがなんとか無線に手を伸ばし、応答する。
「だっ、大丈夫だ、ちょっと、転んじまってよ!」
【転んだだと?……そんなデケェ音を出して、ひっくり返るような場所でもねぇはずだが??】
【ゴミ1つねぇように綺麗に掃除してあるから、もしかして滑っちまったんじゃあ……?】
「そそっ、そうなんだよ!ホントにピッカピカに磨いてあるもんだからさ、ズッコケちゃってさ!」
大地もなんとか起き上がり、無線の向こうに聞こえるように言う。
【そうか?まぁ、大丈夫ってんならいいんだけどよ。】
「そっ、それよりもオセロ!何が大変なんだよ!!」
ラビが叫ぶと、オセロとドミノは慌てたように言う。
【ああっ!!そうだ!!オメーら見張りやってろって言っただろ?!展望デッキにいるくせに、なんで気が付かなかったんだ!!】
【すぐ近くに月と同じくれぇのデケェ惑星があって、しかも何故かどんどんその星に宇宙船が吸い寄せられてて、舵もきかねぇんだ!!】
「なに?!」
「えっ、どこどこ??」
ラビと大地が慌てて辺りを見回すと、オセロが焦れたように怒鳴る。
【宇宙船の正面にあるだろうが!!青く光る星が!!】
言われた方角を見やると、確かに、遠くの方に青い輝きを放つ星が見える。そして、その方向に向かって、宇宙船がどんどんと物凄いスピードで進んでいく。
「ドミノ!舵がきかねぇってどういうことだ?!」
【わからねぇんだラビ!さっきから、どんなに舵をきろうとしても全然動かねぇし、進路を変えることも出来ねぇんだ!!】
【よくわからねぇが、あの星から発する何かしらのエネルギーがこの宇宙船を引き付けていやがるのかもしれねぇぞ。とにかくここまできた以上、もう引き返すことは出来ねぇ。オメーらも覚悟しとけ!】
大地とラビは顔を見合わせる。そして、不敵に笑う。
「誰にものを言ってやがるんだよ!なぁ大地?」
「もちろん、俺たちがいるからには大丈夫!どんな困難があったって必ず乗り越えられるさ!」
自信満々に言った後で、大地はふと思いついて付け足す。
「ただ、ガスもここにいてくれたらって思うけど…。そうすれば魔動戦士が3人全員揃うんだもんな。」
「なんだと?!オレだけじゃ頼りないとでも言うのかよ!」
「違うよ!いつも一緒にいたから、こんなときも一緒だったら良かったのになって思っただけだよ!」
「やっぱり、オレだけじゃ不服だって言ってんじゃねーか!表に出ろ、大地!!」
「だから、違うってば!!大体ここは宇宙だぜ、表に出れるわけないだろ!!」
【オメーら!元気が有り余ってるなら、あの星に着くまでとっとけ!何が起こるか、わからねぇんだぞ!!】
言い合いを始める大地とラビに呆れつつ、オセロは大人として仲裁に入った。なんとなく、この2人と共にいたガスの立場がわかってしまい、内心少しばかり同情する。
その間も、宇宙船はどんどんその星に近づいていき、展望デッキからも宇宙船内からも肉眼でその姿をはっきりと捉えることが出来た。
その星は、あちこちで青いガラスで覆われた山々が連なっていた。もっと近づいてから双眼鏡で見てみると、青いガラス山の麓には街があり、その街の家々も青いガラスで出来ているようで、こちらも青い光を放っていた。
青いガラスの山にガラスの街。それぞれに多少の濃薄はあるものの、全体的に青を特徴とした星で、綺麗ではあるが妙な静けさをたたえていた。
「スゲー……こんな星、見たことねぇ!一体どんだけ遠くまで来ちまったんだよ、オセロ?」
【んなもん、宇宙船のフルスピードでずっと移動を続けてたんだからよ、どれくらいかは知んねぇが月からかなり離れて来ちまったことは確かだぜ。何しろ、どこに行けとか、周囲の様子とか、展望デッキにいるオメーらから全然報告が上がんねぇんだから、こちとら、ただただ真っ直ぐ進み続けてただけなんだからな。ってか、そうだオメーら!展望デッキで見張りもせずに一体今の今まで何やってたんだ?!】
ガン!!ゴン!!
【なっ、なんだ?!今の音は?!】
【せっ船長!何かが展望デッキの柱と椅子にぶつかったようですぜ!】
【なんだと?!おい、大丈夫か、オメーら!!】
大地とラビは、応答が出来なかった。それもその筈。
2人はオセロの言葉で、自分たちが先程まで展望デッキで何をしていたのかを完全に思い出してしまい、羞恥で顔を真っ赤にしながら、ラビは柱に、大地は椅子に、思いっきり額をぶつけたのだ。痛みにまた悶絶するが、それでも先程の行為の恥ずかしさの方が上回っていた。
オセロの声に驚き慌てて仰け反ったものの、実は2人の唇は、ほんの少しだけ触れ合っていたのだ。ちゃんと重なり合ったわけではないのだが、少しばかり掠めるように触れたのが、瞳を閉じながらでもわかってしまった。
そのときの感触を思い返して、更に顔を赤くする。心臓がバクバクと脈打ち、いっそ痛いほどだ。なのに、もっと苦しくなりたいとさえ思う、この理屈では説明できない感情の正体…。ここまできてわからないほど2人とも鈍感ではないのだが、それを認めることに、とてつもない抵抗を感じてしまっているのだ。
ラビは同世代の可愛い子がいれば取り敢えずナンパするほどの女の子好きで、大地の恋愛対象だって勿論女の子だ。それなのに何故、友だちでしかも男同士で……。
好きになるなどありえない、気の迷いか何かだと、2人とも自分に言い聞かせて立ち上がる。そして互いに顔を見合わせ、同時にプッと吹き出した。
「なんだよ、大地お前、顔真っ赤でニンジンみたいだぞ!」
「ラビだって、人のこと言えないぐらい顔真っ赤じゃんか!」
「これは柱に額をぶつけたからさ!」
「それを言うなら俺だって椅子にぶつけたからだよ!大体、なんで真っ赤なのにニンジンなんだよ!ニンジンの色はオレンジだろ?!」
「お前が一番嫌がりそうな例えだからに決まってるじゃねーか。」
「コイツ!!」
「やるか?!相手になるぜ?」
「疲れるからやめとくよ!体力とっておきたいからね!誰かさんと違って、すぐカッとなるほど子供でもないし。」
「なんだと!!オレのどこが子供なんだよ!!」
「あ~れ~俺はラビが、なんて一言も言ってないけどなぁ〜?」
「大地テメェ!!」
「やるか?!」
「やんねぇよ!!ベェ~だ!!」
「ベェ〜!!」
互いに目の下を伸ばして、また同時に吹き出す。
やはり気の迷いか。こんなにも小憎たらしい相手を好きになるなんて、あるわけないもんな、と2人は思い直した。
そのとき、ふと大地は、ラビの額が思ったよりも赤くなっていることに気がついた。
「ラビ、大丈夫か?なんか額スゲー赤いけど。」
「えっ、あぁ、ちょっと強くぶつけすぎたかな。少し痛ぇけど問題ねーよ。」
「駄目だよ、ちゃんと冷やさないと!」
そう言いながら、大地は何気にラビの額に触れる。
「っ、やめろよ!!」
大地の手が触れたのがわかった瞬間、ラビの中でまたしても膨れ上がってきた何かがあり、それを大地に悟られたくなくて、思わず手を払った。パシッ、と手を払ったときの乾いた音が耳に響いてから、ラビはハッとして大地を見る。
大地は、一瞬何が起こったのかわからなかったが、少し間をおいてラビに手を払われたのだと気づき、手を引っ込めて取り敢えず謝る。
「ごっ、ゴメン…。」
傷ついているように見えたのは、気の所為ではないだろう。ラビもラビで手を払い除けてしまったことを後悔した。
「いや、オレも、ゴメン…。」
「……。」
「……。」
重たい沈黙が流れたが、突然の船内の警報音にラビも大地もハッとして顔を上げる。
【ヤベェですぜ、船長!!コントロール効かなくて、このままじゃ墜落しちまう!!】
【情けねぇ声出すんじゃねーー!!宇宙海賊なら、気合いでなんとかするもんだ!!面舵いっぱい!!】
【がっ、ガッテン船長!!】
オセロとドミノの大声が響き渡った途端、ガガンと大きく船が揺れた。船に何かがぶつかったようだったが、その瞬間、コントロールが戻ったようで船が大きく上昇したのが浮遊する感覚でわかった。
【ふぅ~~なんとかギリギリセーフってとこだな!】
【やっ、やりましたぜ船長!】
「おい、オセロにドミノ!大丈夫か?!もうあの青い星に到着したのか?」
ラビは大声で無線の向こうに呼びかけた。
【んなもん、あったりまえだろーが!!とっくに大気圏を越えて、見えてきた山脈に激突しないように旋回してたんだぞ!!オメーらさっきからホントに何を見てやがったんだ?!】
「べ、別にいいーだろんなこと!!それより、どこかに不時着出来そうな場所を探さねぇとだろ?」
【それだったら、さっき旋回してたときに見えた街があるから、その麓に着陸するってのはどうだ?】
【よし、ドミノ、街に向かうぞ!面舵いっぱい!】
【ガッテン船長!】